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夏の終わりのハーモニー


ラブソングの中でも一番好きな曲に入ります。

ちょっと季節はずれですが、本編の前フリとしては、やはりこれしかないかなーと
1979年8月PART2--------------

▼24時・・・玲子のマンション

玲子
「待った?ゴメンね^^」

オレ
「おかえりー^^」

玲子
「時間に余裕があるのなら店の方に来ればいいのに」

オレ
「なかなかそれは(笑)」

玲子
「じゃー急いで着替えてくるね^^」

新しい事務所に引越してから、オレは夕方からの居場所がなくなった。MaggieやLINDAは営業形態が異なるため中途半端な立場で居る事はできない。純粋に客のような顔をしてカウンターで飲むのが精一杯だったが、それもかなり中の人間に遠慮する。自然とここへ来る時間が早くなっていた。

玲子は着替えてキッチンへ入った。

玲子
「何かリクエストある?」

オレ
「蕎麦^^」

玲子
「そうめんはどう?」

オレ
「んーーー蕎麦がいい」

オレはリビングのソファからダイニングテーブルに移った。キッチンにいる玲子とはそこからの方が話しやすかった。

玲子
「これからもこういう生活が続くのかしら?」

オレ
「こういう生活って?」

玲子
「現場にあまり出なくなって、早い時間に帰ってくるパターン」

オレ
「さーどうなんだろう?別に営業時間になってしまえばオレは行くところがないだけだから(笑)」

玲子
「Mary'sが出来ても?」

オレ
「余計にソコには居られない(笑)」

玲子は出来上がった蕎麦を持ってテーブルについた。新しいグラスを持つとビールが注がれた。

玲子
「でも早く帰らないと、おなかをすかして待ってる人が居ると思うと、帰ってくるのが楽しいわ^^」

オレ
「そう?次はオレが何かつくって待っててやるよ」

玲子
「えーーーそういうの出来るの?」

オレ
「Mellow Beachが出来る前にコレでも厨房の特訓したんだぜ^^」

玲子
「ほんと?じゃー楽しみにしてる。」

オレ
「オッケー♪ごちそうさまでした」

玲子はテーブルを片付けて、新しいビールを冷蔵庫から出した。

玲子
「そういえば、もうMellow Beachもなくなったのね」

オレ
「うん。なんかあっという間に解体されて影も形もなくなった」

玲子
「先月まであれだけ流行ってたのに何か不思議な感じ」

オレ
「結局社長の奥さんの弟が東洋産業の新社長になって、すべてが変わってしまったから」

玲子
「でも新しい事務所はMellow Beachみたいでちゃんと残ってるわよね」

オレ
「うん。いつかまたやりたいと思ってる(笑)」

玲子
「そーだ。旅行代理店からあなたの新しいパスポートがとれた!って連絡があったわよ」

オレ
「そう。じゃー明日にでも行ってみる」

玲子
「ハワイでしたいことある?」

オレ
「色んな店に行こう^^勉強になるだろうし」

玲子
「他には?」

オレ
「あとは海岸かプールでのんびりできればいいよ」

慰安旅行の第1陣が終わったらすぐにお盆になる。お盆は玲子とふたりで5泊6日でハワイに行く事になっていた。オンナとこれだけ長い時間一緒にいることになる経験はこれまでになかったが・・・

いつものように一緒に風呂に入って、そしてベッドに行って濃厚なセックスをした。最近ようやく一緒に寝てもよく眠れるようになった。絶対的に安心できる相手となら頭も痛くならなくなっていた。

翌朝早くにオレは玲子のマンションを出て、スカイマンションへ行った。近くのデリカッセンでサンドイッチとフレッシュジュースを買い、事務所には入らずに直接6階へ・・・

▼9時30・・・レミの部屋

鍵を開けて部屋を覘くとレミは寝室で熟睡していた。キッチンへ行ってコーヒーを淹れた。オレは上着を脱いでハンガーにかけ、ベッドの端に座った。空調が効きすぎているのかかなり部屋は冷えていた。

レミのショートパンツを脱がせた。下着はつけていない。薄い草むらを探り割れ目に沿って指を使う。暫くそうしていたがレミは起きない。眠っていても体は反応するらしく、レミのそこはすぐに濡れた。穴に指を入れクリトリスに親指をあてて挟むように指を動かすとレミはようやく気付いた。

レミ
「んーーーユーちゃん」

オレ
「おはよう^^」

レミ
「あんっもう」

オレ
「コーヒー出来てる」

レミ
「先ににちょっとだけしてー」

オレは下半身だけ裸になってレミを後ろから責めた2度レミが行くのを確認してからレミの穴から離れた。

キッチンのコーヒーをカップに入れて買ってきたサンドイッチを皿に並べた。それらをリビングのソファの前にテーブルに置いた。すでにこの時間でも気温は高い。空調のスイッチを入れて、TVを付けた。

レミはジーンズとTシャツに着替え洗顔を終えてリビングのソファに座った。

レミ
「あっ美味しそう。ありがとう^^」

オレ
「朝からご機嫌なようで何よりです(笑)」

レミ
「あっ!そーでもない事思い出した」

オレ
「なに?」

レミ
「理沙ママ今週の日曜日に引越すって」

オレ
「そっか。(笑)」

レミ
「ねーユーちゃん。私、ものすごく心配なの」

オレ
「ん?考えすぎだ(笑)」

レミ
「私、ユーちゃんとショーコさんが付き合ってるのわかっててもあまり何とも感じないの。でも、理沙ママとユーちゃんがもし・・・」

オレ
「偶然同じマンションになったからって心配することないさ」

レミ
「ユーちゃん取られそうで・・・」

オレ
「そう言えば、レミはまだオレの部屋にきたことなかったな。来るか?」

レミ
「えっ」

オレ
「寝に帰るだけでほとんど居ないんだけどな(笑)」

レミ
「うん」

これまでレミは1度もオレの部屋の事を話題にしたことがなかった。オレも部屋に誘った事はなかった。しかし理沙がうちのマンションに引越してくるとなると、オレの部屋を一度は見せておかないわけにはいかなかった。

レミを連れて自宅に戻った。

▼11時・・・自宅マンション

レミ
「へーここがユーちゃんが暮らしてるところなんだ^^」

オレはフィリップスのコーヒーメーカーで珈琲を淹れた。リビングへ行き、プレイヤーに針を落とし、窓を少し開けた。

レミ
「オトコの部屋って感じでなんかドキドキする(笑)」

オレ
「前はよく浜田や長井が泊まってたんだけどな^^」

レミ
「うん。色々聞いてる」

オレ
「ん?あいつらとそんな話してるのか?」

レミ
「知ってるよ!^^前に住んでたところ、モデルの彼女と一緒に住んでたって」

オレ
「同じマンションに引越しただけだ。それに彼女じゃない(笑)」

そうだ。オレは周りの人間に沙耶を彼女じゃないと言ったことはなかった。誰が見てもそれは彼女のように見える。そしてセックスはしなかったが、確かにオレは沙耶を愛していた。そんな事を誰が信じる?

オレ
「ちょっと上に行こう」

レミ
「えっ?」

リビングの脇の階段に誘った。

レミ
「こんなところに階段?2階があるの?うわー寝室なんだ。」

オレは南側のカーテンを開け、テラスに出るサッシを開けた。

オレ
「来てみろ」

レミ
「すごい広いテラス^^部屋と同じぐらいあるっ!」

人工芝を敷き詰め、チェアベッドを置き大きなケンチャヤシのプラントが2本。手すりには木製のブラインド。この季節、昼間ここで寝るとしっかりと日焼けすることができた。もっともMaggie北新地の備品購入の時に余ったものばかりだった。

オレ
「この季節にちょうどいいだろう(笑)」

レミ
「うん。トロピカルになってる^^」

オレ
「ここへ越してきた時にすぐにバーベキューやったらご近所から文句言われた^^」

レミ
「やっぱりダメなんだ(笑)」

オレ
「火事なる危険性があるから禁止なんだって」

オレは部屋の中へ戻った。その瞬間・・・ショーコが上がってきた。

ショーコ
「あらっレミちゃん。いらっしゃい」

レミ
「あっショーコさん。ご無沙汰してます」

オレ
「ちょっと部屋を案内してた」

レミ
「理沙ママがこのマンションへ引越してくるので、ちょっと先に見たくなって^^」

ショーコ
「そう。下の方がクーラー効いてて涼しいわよ^^どーぞ!」

先にショーコは階段を下りた。続いてレミ、最後にオレが降りた。ショーコはキッチンへ行ったようだ。窓が閉められクーラーが入っていた。

オレ
「座って^^」

レミ
「はい」

オレはレミの正面に座った。ショーコは冷たい麦茶を3つ持ってオレの隣に座った。

ショーコ
「キャッツのママは何処の部屋に?」

オレ
「7階らしい」

ショーコ
「最上階はこことレイアウトが違うわよね?」

オレ
「まー場所の確認もあってレミにも見てもらった」

レミ
「ずいぶんインテリアの参考になりました^^」

オレ
「本来このマンションの魅力はメゾネットだからな」

ショーコ
「広いテラスもよかったでしょ?」

レミ
「ジャグジーがあれば最高なんだけど(笑)」

ショーコ
「そーね」

レミ
「ショーコさんはここへはよくいらっしゃるんですか?」

ショーコ
「私?そうね。一応毎日来るように努力してるんだけどなかなか^^」

レミ
「こんなお部屋で過ごせたら楽しいだろうなー^^」

ショーコ
「でもこの人じっとしてるタイプじゃないから(笑)」

レミ
「そうなんだ。^^じゃー私そろそろ帰ります。」

ショーコ
「あら、まだ色々とお話したかったのに」

オレ
「じゃー下まで送ってくよ」

レミ
「ううん。大丈夫」

オレとショーコは玄関まで行ってレミを見送った。ドアが閉まる。ショーコはリビングへ戻り、誰も手をつけなかったお茶を片付けた。オレはもう1度同じレコードをかけた。

ショーコ
「怒ってもいい?」

オレ
「何故?」

ショーコ
「あなたの浮気の相手・・・レミちゃん?それともキャッツのママ?」

オレ
「それは誤解だ(笑)」

ショーコ
「そういうウソは下手ね」

オレ
「いや、誤解だ」

ショーコ
「・・・」

アルパチーノの苦悩がわかったような気がした。ゴッドファーザーのラストシーン。妹の旦那を殺させたが、妹がその事で泣きながら詰め寄った時に、「誤解だ。オレは命令していない」と言い切った。何故かそのシーンと同じだと思った。こんな時にそんなことを思い出すとは・・・

ショーコ
「帰るっ」

オレ
「ダメだ」

ショーコはオレの顔を見ずに玄関へ向かった。オレは後を追って腕を掴んだ。

ショーコ
「離してよ!帰るんだから」

オレ
「このままクルマを運転したら危ない(笑)」

ショーコ
「ほっといてよ!関係ないでしょ」

オレ
「帰るにしても、もう少し居てからにしよう」

オレはキッチンのイスに座らせた。ショーコは顔を上げずそれ以上話さなかった。もしかしたら涙を見られたくないのかも知れない。オレはコーヒーメーカーを洗い、新しくコーヒーを淹れた。暫く沈黙が続いた。新しいカップにコーヒーを入れてダイニングテーブルに置いた。オレはショーコの後ろに回った。

オレ
「ここに引越して来てから、この部屋に女性の客が入ったのは今日が初めてだ」

「もちろんだからと言って何もあるはずがない。」

「この部屋はオレの部屋だけどオレの部屋じゃない。お前の部屋だ」

オレはショーコが座っている後ろに立ちイスに手を置いて、コーヒーカップを持って話した。

ショーコ
「約束して!2度と私以外のオンナをここに入れないって」

オレ
「わかった。誤解でも嫌な思いをさせて悪かったな」

ショーコ
「・・・」

オレ
「向こうへ行こう」

オレはショーコの手をとってリビングへ戻った。ソファに座りショーコを抱き寄せた。ショーコのあごを持って顔を上げさせてキスをした。軽いキスを何度も・・・そのままショーコをソファで抱いていた。ショーコも何も話さない。

オレ
「来週のダイビング・ツアーだけどショーコも来ないか?」

ショーコ
「スタッフの慰安旅行でしょ」

オレ
「第1陣は浜田や長井、佐伯ら学校関係が中心なんだ。それに女手も必要なんだけどさっちゃんは第2陣で行くから困ってるんだ」

ショーコ
「でも公私混同はよくないと思う」

オレ
「ショーコが来てくれればずいぶん華やかになるんだけどなーダメか?」

ショーコ
「どうしても一緒に行って欲しい?」

オレ
「欲しい^^」

ショーコ
「仕方ないわね」

オレ
「ありがとう助かる。あっそれから水着はセクシーなビキニを一緒に買いに行こう」

ショーコ
「ダメよみんなの前で」

オレ
「自慢したいんだけどなー^^」

ショーコ
「もうっ」

もう1度キスをした。舌を入れショーコの舌を吸った。服の上から乳を揉んだ。ショーコはようやく抱きついてきた。そして上に上がってセックスをした。ちょっと安心したのか?或いはオレに何を言っても無駄だと思ったのか?それ以上その事について話題にしなかった。

そして仕事の打ち合わせを理由にオレは先に部屋を出た。

▼13時・・・スカイ・オフィス

オレ
「じゃー出発の前に机上講習をやってもらえますか?」

時岡
「わかりました。大体1時間半ぐらいで一通りの事はレクチャーできると思いますので、それにムトーさんサブ・インストラクターのライセンスをお持ちなんですから、その後のフォローは間違いないでしょうから」

オレ
「まー身内が教えるよりも他人に教わる方が色々と質問もでやすいでしょうから^^」

時岡
「あとは現地のスタッフが2名付きますから、ムトーさんを含めて10名のケアはお任せ下さい」

オレ
「ところであの辺りは水中施工などの工事は結構あるんでしょうか?」

時岡
「いやーレジャーダイビングがほとんどで工事の仕事はほとんどありません」

オレ
「そーですか。いつかフリーのダイバーになった時に仕事したいなーと思って(笑)」

時岡
「ムトーさんがですか?」

オレ
「えーまー(笑)」

今度の慰安旅行でお世話になる白浜のダイビングスポットを案内してくれた時岡氏は梅田の大きなダイビングショップでインストラクターのチーフを努めていた。スキューバダイビングの初心者講習を事前にこちらで済ませて白浜に着いてすぐに海に入れるように段取りを組んでくれていた。オレがNAUIのサブインストラクターの免許を持っていることに驚いていたが、その昔水中施工のダイバーだったことを説明すると納得してくれた。もっとも白浜で工事の仕事を聞いたのはあくまでもシャレだったが、いつかその仕事に戻るかも知れないという予感めいたものは前からあった。

いくつかの現地資料と机上講習用のテキストの一部を持ってきてもらって打ち合わせは終わった。

オレ
「さっちゃん。ごめん今からまた外へ出るから後頼むよ^^」

村上
「いってらっしゃい^^」

地下鉄に乗り、梅田でJRに乗り換えて神戸に向かった。

摂津本山駅を南側に出ると、セミの鳴き声が聞こえ懐かしい街の匂いがした。濃いサングラスをかけ右手にある本山アーバンライフの回廊へ向かった。すでにアルファルファが無くなって久しい。南側に回りこみ『あおやま』へ入った。

ヨーコ
「いらっしゃい^^」

オレ
「この間、裕也のあれに行けなくて悪かったな」

ヨーコ
「ううん。お花贈ってくれてありがとう」

オレはカウンターに座りサングラスをはずした。店内を見渡すが大きく変化したところはない。アイスコーヒーを頼んで、ラークに火をつけた。

オレ
「宏枝と会った時にもさんざん説教くらったんだ(笑)」

ヨーコ
「うん。聞いてる(笑)ユーイチも大阪でずいぶん頑張ってるようね」

オレ
「頑張り過ぎてプライベートはボロボロだ(笑)」

ヨーコ
「そういえばこの間一緒に来た美人がユーイチの彼女?」

オレ
「一応(笑)」

ヨーコ
「赤のフェアレディー乗ってるのね!それだけで彼女にしたんじゃない?」

オレ
「あははは^^実はその通り」

ヨーコ
「やっぱり年は彼女の方が上なの?」

オレ
「そうS28年生まれだ^^」

ヨーコ
「うそー私と同じじゃないっ!」

オレ
「そーだっけ?(笑)」

葛西洋子、裕也の姉貴でオレのセンパイの彼女。高校時代、裕也の家へよく泊まりに行ってた時からお世話になっていた。

ヨーコ
「ユーイチは年上が好きなのね?まー宏枝もそうだったけど(笑)」

オレ
「いや、年上が好きというより年下が苦手だからそうなるのかも知れない」

ヨーコ
「そういえばケンジも最初、私とユーイチが付き合っていると思ってたもんね(笑)」

オレ
「ははは^^最初ケンジさんにはずいぶん詰め寄られたよ!」

ヨーコ
「私もよ^^」

オレ
「なんて?」

ヨーコ
「絶対関係があるだろうって」

オレ
「ヨーコにもそんな事聞いてたのか(笑)」

ヨーコ
「ユーイチははっきり否定してくれた?」

オレ
「もちろん。裸は何度か見たけどエッチはしてないって^^」

ヨーコ
「あははは^^そう言えば裕也がお風呂に入ってると思ってユーイチも裸になって入ってきたわね!私もユーイチの裸みちゃったけど(笑)」

懐かしい記憶が蘇る。ついこの間まで裕也が居た時の話題はタブーだったはずで、そういう話もしたことがなかったのだが・・・7回忌を済ませて何かひとつの区切りがついたようでヨーコの笑い声が気持ち良かった。

ヨーコ
「この間の法要の後で、ケンジが言ったのよ」

オレ
「ん?」

ヨーコ
「オレがもし事故にあって死ぬようなことがあったら、お前はユーイチに面倒見てもらえ!って」

オレ
「そっか。ケンジさん未だに疑っているんだ。(笑)じゃーケンジさんに言っといて!なんかあった時はオレが絶対ヨーコを守るって^^」

ヨーコ
「ユーイチ」

オレ
「何?当然だろう。オレはいつだって裕也の代わりなんだから^^もっともそうなるのは50年後ぐらいだろうけど(笑)」

ヨーコ
「アホっ!^^」

ヨーコとこんな風に話せる日がくるとは・・・オレはヨーコからSRを借りて2号線のヤナセの向かいに移転した叔父貴のダイビングショップへ行った。大阪へ出てから叔父貴の店に戻ったのは今回が始めてだった。

オレ
「こんにちは」

店員А
「いらっしゃいませ」

店内はカラフルなダイビングの小物でいっぱいだった。ここ何年かのブームで関連商品も実用一点張りからレジャー志向のスタイルに変化していて、明るいイメージになっていた。

オレ
「純ちゃん居る?」

店員А
「えーーーと失礼ですが?」

オレ
「甥のユーイチです」

店員А
「ちょっとお待ち下さい」

店員は奥に入った。オレはショーケースに入っている色んなモノを眺めていた。水中マスクひとつとっても不必要に赤や青のラインが入っていたり、フィンも黄色や明るいブルーなどのモノばかりのように思えた。

純ちゃん
「ユーイチ!!!一体どうしてたのよ!」

オレ
「あっ!コレちょっと冷めちゃったけど」

純ちゃん
「あおやまのピッザね(笑)懐かしい」

オレ
「みんな元気?」

純ちゃん
「変わりないわ!ホントにもう心配ばかりかけて・・・」

オレ
「実は今度白浜のダイビングツアーに行くんだけど、ちょうどその日にここのツアーも入っているって聞いて^^現地でいきなり会うより先に挨拶に寄った(笑)」

あの4年前の夏のオキナワ出張の事故以来だった。あの不幸な事故がなければオレはそのままここでダイバーとしてバイトしていただろう。そして大阪のディスコで働くこともなかった。

オレはあれこれ純ちゃんに質問攻めにあいながら今の現状を簡単に説明した。

純ちゃん
「じゃーユーイチは学校へ行かずにたった4年で会社をつくって、自分の店を何軒も持ってるってわけ?」

オレ
「んーーーまーそうかな?(笑)」

純ちゃん
「この名刺の住所の事務所に居るのね?近い内に元君と一緒に行く!(笑)」

オレ
「いつでもいいよ^^」

叔父貴のところも人が増え、レジャーダイビングも工事部門も忙しそうだった。レジャーダイビングのクラブ員も世代交代が進んで、オレが居た当時の人たちはもうあまり来ていないようだった。ちょっと立ち寄っただけのつもりが、長居してしまった。

ちょっと前まではこの街は自分の街で、毎日退屈せずに暮らせたところだったが・・・今こうしてクルマで走っていても当時の知り合いに会うこともない。時間の流れとともにこの街もやはり新陳代謝を繰り返しているんだと気付いた。

▼17時・・・自宅マンション

部屋に入るとリビングにメモが置いてあった。

「やっぱり海には行けません。それから鍵はポストに入れておきます」

たったそれだけが書かれていた。上に上がって部屋の中をみたが特に変化はなかった。クローゼットを開ける。着替えや下着などショーコの私物の一切がなくなっていた。

オレは部屋を出て1階のポストを見に行った。封筒の中にショーコに渡していた部屋の鍵が入っていた。オレは神戸に行って午前中の悪夢を振り払って来たが、あの後ショーコは・・・ひとりになって彼女なりに色々と考えることがあったのだろう。

オレは冷蔵庫からバドを取り出した。プレイヤーに針を落とした。思い直してスーツに着替えてタクシーを拾って東洋ビルへ行った。2階のサウナのフロントで始めてみる新しい支配人に一般客を装いサウナに入った。

高温の熱でじっくりと汗を搾り出して、大浴場で手足を伸ばして湯に浸かった。そういえば3年前の夏、リョーコの部屋を出て行った時にこのサウナで3日間過ごしたことがあった。今回はショーコがオレの部屋の鍵を置いてオレのいない間に私物を持ち出した。まるで立場が逆転しているが、気分はあの時と同じだった。もしかしたら・・・レミもスカイマンションを出て行くかも知れない。何故かそんな風に思った。

オレは髪をバックにセットしてスーツを着直してSPEAK EASYに入った。

嶋本
「おはようございます^^」

オレ
「おはよー^^あと少しだけど頑張ろうなっ!」

オレは店内に入った。オープンしたばかりだがトワイライトと同じ料金設定のファイナルプランで若年層の客が結構入っていた。店内を1周する。VIPルームには客は入って居ない。BOSEのスピーカーの下に立ってダンスフロアーを見ていた。

女の子
「ムトーさんでしょ?」

オレ
「はい。何でしょう?」

女の子
「あーやっぱり覚えてないんだ」

オレ
「???」

女の子
「この間、1曲踊る約束させといて居なくなった。(ーー;)」

オレ
「あーごめん^^急に仕事で呼び出されて」

女の子
「声かけといて信じられない」

オレ
「でもどーして名前知ってるの?」

女の子
「あのあとマネージャーさんが来て謝ってたから^^」

オレ
「あっそーなんだ(笑)」

女の子
「私と踊りたい?」

オレ
「うん。踊りたい」

女の子
「じゃー次のスロータイムで1曲だけねっ!」

オレ
「いやー嬉しいなー^^」

オレが立っている場所からその子のテーブルが良く見える。今日は二人できているようだった。壁を背にして二人で並んで座っている。こっちもよく見えているようだった。オレは次のスロータイムまでに逃げ出すつもりでいたら・・・いきなりそれは始まってしまった。

フロアーで踊っていた客の何組かのカップルはそのままチークを踊っていた。暫く様子を見ていると、さきほどの女の子のところにチークを誘う客が居た。まわりを見るがホールスタッフは気付いている様子はない。仕方なくオレはそのテーブルへ行って、テーブルに座っている若い男に断りを入れた。若い男は素直に引き下がった。

女の子は当たり前の顔をして立ち上がった。成り行きでオレは女の子の手をとってフロアーに降りた。腰に手を回して少し体に隙間をつくり踊った。すぐに1曲目は終わったが、女の子は離れる様子がなくそのまま2曲目もくっついて踊った。

オレ
「1曲以上踊ってるけどいいのかな?」

女の子
「さっきのは途中からだったから」

オレ
「そっか^^ラッキー♪」

女の子
「そうよ特別よ^^私チーク踊った事ないんだから」

オレ
「あらら・・・そうなのか?」

女の子
「そうなの(笑)」

そして2曲目が終わりオレは腰に回していた手を解いて女の子を元の席へ戻した。

オレ
「ごめんねっ!友達お借りして^^」

もうひとりの女の子は笑って首を振った。オレはカウンターへ行って、ノンアルコールのトロピカル・ドリンクを二つオーダーした。それを持って先ほどの女の子のテーブルへ行った。

オレ
「一緒に踊ってくれてありがとう^^」

女の子
「さっきの男の子がまた誘ってくる(ーー;)」

オレ
「んーーーじゃー席変わる?」

女の子
「ムトーさんちょっとここに居て?」

オレ
「別にいいけど、なんか職権乱用みたいで気が引ける(笑)」

女の子
「女の子を守るのも仕事のうちじゃん^^」

オレ
「そーだな(笑)」

オレは彼女らの正面に座った。暫くするとホールスタッフがジン・トニックを持ってきた。オレは礼を言った。

女の子
「ここ今月で本当に終わっちゃうの?」

オレ
「うん。この辺りに新しいディスコがいっぱいできたから」

女の子
「新しいディスコはみんなゴテゴテしたお店でしょ?私はSPEAK EASYの方が好きなんだけどなーそういうお客さんって多いと思うけど?」

オレ
「嬉しいこと言ってくれるじゃない^^でもオレたち残念ながらクビになっちゃうんだ」

女の子
「えーーークビになるの?可哀そう」

オレ
「来月からなんかバイト探そうと思って(笑)」

女の子
「他のディスコで働くの?」

オレ
「そーだなーまだ全然考えてないけど(笑)」

たぶんこの子たちの年齢は・・・よくて18歳、もしかしたらそれ以下だろう。そんな子たちにテキトーな事を言ってるオレはもしかしたら結構通用するかも知れないとバカなことを思った。もちろん対象外なのだが

女の子
「知ってるディスコに聞いてあげようか?」

オレ
「どこのディスコ?」

女の子
「葡萄屋とか」

オレ
「そこにはよく行くの?」

女の子
「たまに友達がそこへ行きたがるから、私はここの方がいいんだけど」

オレ
「ここの何処がそんなに気に入ってる?」

女の子
「なんとなくフインキいいし、スタッフもいいし」

オレ
「そのいいスタッフにオレも入ってる?」

女の子
「んーーー一応(笑)」

オレ
「そっか^^でも葡萄屋さんはこれまでライバルだったしちょっと働きづらいからいいよ」

女の子
「そう言えばライバルよね。友達に他の店も聞いとく^^」

オレ
「ありがとう^^」

スロータイムが終わったのをきっかけにオレは席を立った。そしてフロントへ戻った。

オレ
「久しぶりに若い子と踊ってしまった。スマン(笑)」

嶋本
「いや、そんな事で謝られてもf^^;)」

オレ
「しかし無防備というか無邪気というか(笑)」

嶋本
「そーですか(笑)ムーさん年下ダメなんですよね?」

オレ
「よく知ってるなー^^一緒に踊っても全然その気にならない(笑)」

嶋本
「それはでも困りますね^^」

オレ
「あははは^^ほんと困ったもんだ。」

フロントでバカ話をしていると、さきほどの女の子2人がそうそうに帰るようだった。

女の子
「今日は早く帰るの^^」

オレ
「そっかえらいなー^^」

女の子
「これでもマジメなんです」

オレ
「うん。^^」

女の子
「そーだ。今からマグド行くんだけど来る?奢ったげるっ」

オレ
「ウソっ!ほんとに?^^」

女の子
「ハンバーガーぐらいなら(笑)」

あまりにもバカバカしくて断る理由もなくオレはついて行った。心斎橋のマグドナルドでハンバーガーセットを奢ってもらった。

オレ
「いやーちょうど腹減ってて、どうしようかな?って思ってたところなんだ」

女の子
「ハンバーガーぐらいで大げさだよ」

女の子2
「このポテトもよかったらどーぞ^^」

オレ
「うわーオレこんなに優しくされたの始めてだよ^^なんか嬉しくて泣きそうだ(笑)」

女の子
「もう(笑)ここで泣かないでよー」

オレ
「あはっごめん(笑)」

なんでこんなに愉快なんだ?なんて優しくていい子たちなんだ。彼女らが私立の女子高の3年生であることや、夏休み中でよく一緒にふたりで遊びに来てることやなどを聞いてオレは楽しんだ。

女の子
「明日ももしかしたら来るかも知れない。ムトーさん居る?」

オレ
「たぶん。職探しに行ってなかったら居ると思う(笑)」

女の子
「じゃーまたねー^^」

彼女らは目の前の心斎橋の地下鉄の駅へ降りて行った。オレは彼女らに手を振って見送った。もうSPEAK EASYには戻る気はなかった。心斎橋を南に歩いた。道頓堀の手前を左に曲がり「クラブ純子」へ立ち寄った。

本山
「いらしゃいませ」

オレ
「お邪魔します^^」

オレはカウンターに案内された。カウンターに客はなくテーブル席には4組の客がすでに居た。玲子は手前のテーブル席の補助イスにかけて背を向けていたがオレを認めると笑顔でちょっと会釈した。

チーママ
「いらっしゃいませ!最近早いんでしょう?お仕事終わるの」

オレ
「うん。夕方からはほとんどすることなくて、さっきまでディスコでウエイターの真似事やってた」

チーママ
「そういえばディスコも今月で閉店なんですって?」

オレ
「うん。長いことそれでやってきたからちょっと淋しい(笑)」

シン・トニックが目の前に置かれた。オレはさっそくそれを飲んだ。やっぱり清水さんのつくったのは旨かった。オレはかいつまんで高校生の女の子たちの事を話した。

チーママ
「うわーハンバーガー奢ってもらったんだ^^すごい(笑)」

オレ
「そーだろう?ろくにお小遣いもないはずなのに、奢ってくれたんだぜ」

そんな話をしていると玲子がやってきてオレの隣に座った。

純子ママ
「そう^^ハンバーガーが好きって始めて知ったわ^^」

オレ
「ははは・・・何年ぶりだろうそんなの食ったの(笑)」

チーママ
「ポテトもどーぞ!って可愛いわねー^^」

オレ
「でしょ?」

純子ママ
「ふーーーん。そういうのに弱いんだ(笑)」

オレ
「あはっ!」

ひとしきりその話題で盛り上がり、オレは2杯目のジン・トニックを断って店を出た。玲子はEVまで腕を絡ませて送ってくれた。

純子ママ
「今日も早く帰ってる?」

オレ
「うん。待ってるよ」

純子ママ
「じゃー後で^^」

小さな声でそういった後・・・

純子ママ
「今日はわざわざありがとうございました。また是非いらしてくださいねっ!」

玲子は済ました顔で営業用の挨拶をしたあとウインクをした。オレは笑って手を上げてEVに乗った。

歩いてスカイマンションへ行き11階で降りた。事務所に入り空調のスイッチを入れて、照明は間接照明だけにした。ユウセンをかけ窓際に行った。フラインドを上げるとミナミの街のちょっとした夜景が見えた。

『メゾン西本町』オレはそこを出る決意をした。たった1度レミを連れて行った時にショーコと鉢合わせする不運に見舞われた。彼女らが話す間オレは何も口を挟むことができず、ただ人事のように傍観していた。そしてショーコはオレに部屋の鍵を返した。それだけで十分だった。オレはこの事務所のひとつの部屋にベッドを入れて暮らす。

本来であればショーコにすぐに電話でも入れるべきなんだろ。いやショーコの自宅まで行ってすぐに話し合いをすべきなんだろう。わかっていてオレはそれをしなかった。レミにも電話を入れてまずい対応を謝るべきなんだろう。それもしなかった。ショーコとレミ・・・同時にふたりを失ったように思った。

▼1978年8月PART3-----------

翌日・・・

玲子のマンションを出て自宅に戻った。リビングを見渡す。壁一面に沿ってサイドボードがオーダーしたように収まっている。ヤマハのシステムで揃えたやつだった。それにTV、オーディオセット、ソファとテーブルセット、スタンド照明が2本。家具らしいものはその程度だった。後は最初から作り付けになっているクローゼットにすべて収まっている。

これらをスカイ・オフィスと玲子のマンションのオレの部屋へ分散して放り込めばなんとかなりそうだった。まだ玲子にはその事は伝えていなかったが・・・

リビングの窓を開けて部屋の空気を入れ替えた。空調をつけキッチンへ戻ってコーヒーを淹れた。その間にジーンズとTシャツに着替えた。

電話が鳴った。

オレはそれを無視してオーディオセットの下のレコードが収納されているところからプリズムを選んだ。プレイヤーに乗せ針を落とした。軽やかなメロディーは朝の気分にぴったりだった。

ゆっくりとコーヒーを飲んだ後、来客用スペースに置いているSRに乗って区内にある梱包資材屋へ行って引越し用のダンボールを買った。部屋に戻り上に上がって束になったそれを置いた。ベッドサイドの電話で不動産屋へ解約手続きの為の電話を入れた。

午前中一杯をクローゼットの中身をダンボールに詰め込む作業に費やした。

▼13時・・・スカイ・オフィス

村上
「午前中にあった連絡事項です」

オレ
「ありがとう^^そーだオレ来月からここに住むから^^」

村上
「えっ!そーなんですか?」

オレ
「玄関のすぐのところの部屋、アソコにベッドと着替えだけを持ってくるから(笑)」

村上
「わかりました。後でちょっと片付けておきます^^」

オレ
「いやいいよ!オレがやるから^^」

メモをみるとショーコとレミから電話が入っていたようだった。オレは個室になっている6畳程度の部屋に入りざっくりとレイアウトを考え、壁面の採寸をした。デスクに戻って理沙の部屋のインテリアを考えるために収集したシステム家具のパンフを眺めた。

村上
「ムーさん。お電話です」

オレ
「ほい」

目の前の電話機から外線を選択して受話器をとった。

ショーコ
「すみません。何度も電話して」

オレ
「ちょっとバタバタしてて^^」

ショーコ
「今・・・下のカフェなんだけど忙しい?」

オレ
「いや、ランチに出ようと思ってたらから降りていくよ」

オレはさっちゃんに下に行くと言って事務所を出た。1階のカフェはこの時間混雑していた外のオープンカフェにショーコはサングラスをかけて大きなパラソルの影の中に居た。オレはウエイターにアイスコーヒーを頼んだ。オレを認めるとショーコはサングラスをはずした。

オレ
「おはよう^^」

ショーコ
「ごめん。急に押しかけちゃって」

オレ
「実はオレ、今月いっぱいで引越すことにした。もっとも新しいところを借りるんじゃなくて、この事務所の一室で寝泊りする(笑)」

ショーコ
「そんな・・・」

オレ
「Maggie北新地やMary'sの方へ行ったり来たりすることなってバタバタするし、そうなったら今まで以上に寝るだけになってしまうから職住一体で暫くやることにした」

ウエイターがアイスコーヒーを持ってきた。微笑んで会釈して彼は去った。

オレ
「今日も暑いな^^」

ショーコ
「・・・」

オレ
「夏は色んなことがあるなー」

ショーコ
「実は私・・・」

オレ
「ん?いいさ君が決めたことだから謝ることはない」

ショーコ
「・・・」

オレ
「色んなオレの事情で引越すことになっただけだから」

ショーコ
「私の事も聞いて」

オレ
「午前中にダンボールをいっぱい買ってきて汗だくになって荷物をまとめた(笑)上の部屋だけだけどね」

ショーコ
「少しの我侭もダメなの?」

オレ
「そんな事はない。これはオレの我侭なんだから」

ショーコ
「ほんとはそういうつもりじゃなくて」

オレ
「わかってるさ。みんなオレのせいだから^^」

ショーコ
「やっぱりダメなのね」

オレ
「これからは事務所に頻繁にくればいいじゃないか」

ショーコ
「・・・」

オレ
「もっともダイビングツアーが2回に盆休みに実家へ帰るから今月はもうほとんどいないけどな(笑)」

ショーコ
「ごめん。帰る。さよなら」

ショーコはサングラスをかけてテーブルを離れて去っていった。オレに涙をみせるのを嫌って帰ったのか?最後のプライドのように思えた。

オレは事務所に上がろうと思ってEV前に行くと、レミはそこに居た。

オレ
「おはよう^^」

レミ
「ゴハン食べた?」

オレ
「いや食い損ねた。レミは?」

レミ
「まだ・・・」

オレ
「じゃーちょっと行くか?」

レミ
「うん」

長堀沿いに少し歩いて、ランチをやってるカフェに入った。ウエイトレスにランチをふたつ注文した。一時の混雑は終わっているようだったが、ほとんど満席に近かった。

レミ
「私、キャッツ辞めることにした」

オレ
「・・・」

レミ
「もっと大きいところへ移って頑張ろうと思って(笑)」

オレ
「そっか。レミも新しいステージに挑戦するんだ?^^」

レミ
「少し前からスカウトされてたんだー」

ウエイトレスがランチを運んできた。プレートに乗せられたスパゲティー。もちろん食欲などこれっぽっちもなかったが・・・オレは食べ始めた。

オレ
「シューさんとか淋しがるだろうなー(笑)」

レミ
「ショーコさんは帰ったの?」

オレ
「うん。オレに怒ってた」

レミ
「そう。新しいお店に移ったら支度金が出るの、そしたらユーちゃんに借りているお金返すからね^^」

オレ
「そんなの気にしなくていい」

レミ
「うん。ありがとう。でもまた引越すかも知れないし」

オレ
「そっか」

レミはまったく手をつけていなかった。オレは食べ終わった。ラークに火をつけた。店内はユウセンではなくてたぶんオリジナルに選曲されたテープがかかっている。それがこの店に合うのかどうか?わからなかった。

オレ
「明後日から慰安旅行なんだ」

レミ
「そうだったね」

オレ
「今月はほとんど出っ放しだ(笑)」

レミ
「忙しいもんね」

オレはラークを灰皿に押し付けた。レジに行って支払いをしてレミと店を出た。レミは腕にからんでくるが、いつものようにじゃれついた調子ではなかった。EVに乗った。オレは6階と11階のボタンを押した。6階でレミは降りる。

オレ
「オレは仕事するよ^^」

レミ
「うん」

レミの表情が歪んだ。こっちへ来るように見えたが、EVの扉は閉まった。事務所に戻ると横山が出勤していた。

オレ
「明日の午後からダイビングの机上講習があるから第1陣のメンバーに集合かけておいてくれ^^」

横山
「わかりました^^いよいよですね(笑)」

オレ
「そーいえばお前も潜るの初めてじゃなかったか?」

横山
「一度ありますよ!キョーコさんと3人で日本海へ行った時に無理やり潜らされたじゃないですか(笑)」

オレ
「そうだったな(笑)」

横山
「ところでショーコさんはどうなりました?」

オレ
「えっ」

横山
「ツアーですけど」

オレ
「あっ!スマン。誘ったんだけど公私混同しない方がいい!って言われて」

横山
「そんなに気を使うメンバーじゃないのに、でもショーコさんらしいなー^^」

オレ
「そっか。。。」

まださっちゃんからオレがここへ住むことを聞いていないようだった。それを横山が知ったら・・・オレはさっちゃんに口止めをしなかった。

オレ
「今日もこれから打ち合わせに出てくる。」

横山
「はい。いってらっしゃい^^」

オレはタクシーを拾って大国町あたりで降りた。そこから電話をかけた。場所を教えてもらってそこへ向かった。すでにマンションの前で待っていた理沙を見つけて彼女の部屋へ案内してもらった。

▼15時・・・理沙自宅

リビングのソファに通された。すぐに冷えたビールが出され理沙は隣に座った。グラスを持つとビールが注がれた。

理沙
「何かあった?」

オレ
「いや、特には・・・」

理沙
「昨日レミが辞めたいって言ってきた」

オレ
「そっか」

理沙
「私のせいかな?」

オレ
「さー違うと思う。で、どうした?」

理沙
「大きなところで本格的にこの仕事やりたいって言うから、今月いっぱいで」

オレ
「迷惑かけて悪いな」

理沙
「何があったの?詳しく教えて!」

オレは簡単に昨日の出来事の事実だけを話した。ショーコと今日会った事は伏せたがレミと一緒にランチを食ったことは話した。もっともレミは食べなかったのだが・・・

理沙
「あなたはどうなの?」

オレ
「どうって?」

理沙
「それでいいの?」

オレ
「・・・」

理沙は薄化粧で健康的な美しさをみせていた。コットンの涼しげなノースリーブで肩から腕のラインがきれいだった。

オレ
「707号室は、照明の工事も済んだし、システム家具の設置も終わったからもういつでも住むことができるぞ!^^」

理沙
「ありがとう。あなたにも哀しい思いさせちゃったね」

オレは思わず理沙に抱きついていた。涙がこぼれそうになるのを我慢しながら、せめて性欲でも出てくれればいいと思ったが、まったくそんな気にはならなかった。暫く何も言わずそうしていた。

オレ
「打ち合わせが残ってるから行く」

理沙
「うん。気をつけて^^」

ナンバシティーまでタクシーで行った。玲子が予約しているハワイ旅行の旅行代理店に寄ってオレのパスポートを受け取った。ウロウロしてると千日前の入り口に来た。懐かしい店の看板が目に付いた喫茶「ケニア」思わずオレはそこに入った。

窓際の席に着き、熱い珈琲を頼んだ

怒って、ちょっとすねて見せて鍵を返した。そんな風にする時もあるじゃないか?それが許せなくて、まるでそんな部屋は無くなってしまえばいい!と言ってるかのように解約してしまう。それを次の日に詫びに来ているのに・・・お前は許せないのか?

レミにしたってそうさ。何故一言優しい言葉をかけてやらないんだ?

理沙が来る。三つ巴の争いが起きるのは目に見えている。そうなるともっとオレ以外のすべての人間が大きく傷つく。そうならないためにオレは引越すことを選んだんだ。それが説明できない以上、相手の判断に委ねるしかない。

レミも理沙と明確に争いたくないという気持ちからオレと離れようとしている。

どちらもまだ相手がどう決心するか?のチャンスは残されている。でも見てろよオレはどっちからも相手にされず、愛想をつかされるだけだから・・・自問自答は終わりがなかった。

▼18時・・・SPEAK EASY

東洋サウナで今日1日の精神に溜まった膿みを出しきって、昨日と同様店内に入った。もしかしたらと思ったが気まぐれな女の子たちは来ていなかった。(笑)それでも店内をウロウロし厨房のスタッフに声をかけ、終わりに向かって1日1日過ぎる店を楽しんだ。

嶋本
「ムーさん。ご面会です」

オレ
「ん?」

嶋本
「昨日の高校生です^^」

オレ
「あっそう^^」

オレはフロントへ行った。確かに昨日の女の子が居た。

オレ
「いらっしゃいませ!どうぞ^^」

女の子
「今日は急に友達が来れなくなってひとりだから・・・」

オレ
「そっか。じゃーお茶でも行こうか?」

女の子
「うん^^」

周防町に沿って東に行く。ビルの2階にゲームカフェがあった。オーナーは旧Mellow Beach時代からの常連客で、年は30を越えていたが見た目は若く見えた。

オーナー
「いらっしゃいませ!あれムーさん珍しいですね^^」

オレ
「ども^^お邪魔します^^」

挨拶だけを交わして店の奥に進んだ。テーブルゲーム。すでにインベーダーゲームのブームが去り、ナムコのクルマのゲーム「ドットオン」が流行っていた。

女の子
「あーこのゲーム知ってる最近メチャ流行ってるやつでしょ?」

ウエイトレスが注文をとりにきた。彼女はアイス・カフェオレをオーダーしたオレも同じものを頼んだ。オレはレジに行って100円玉に両替して戻り、2人用ゲームを始めた。オレは最初の1面だけ、クリアーする方法を知っていたが、彼女は知らないようで、ひとつひとつ教えながらだんだんと彼女はムキになった。

店内を見渡す。見知った客がちらほらと居た。

女の子
「うわーやったー^^できたっ!」

オレ
「ほんとだ(笑)」

女の子
「見てた?最後のゴールの画面」

オレ
「あーーー見てた。」

女の子
「ずいぶん失敗したけど、満足^^」

店内には一体型のソニーの反射型プロジェクターが設置してあり、カリフォルニアあたりの映像とサーフィンシーンが映し出されていた。Mはカラパナが流れていた。

オレ
「ところで名前なんて言うんだっけ?」

女の子
「神崎優子^^」

オレ
「みんなからなんて呼ばれてる?」

優子
「家族からはユーちゃん。」

オレ
「そっか。それはどうも呼びづらいな」

優子
「どーしてよ」

オレ
「実はオレもそう呼ばれることが多くて(笑)」

優子
「えっ?なんで?なんて名前だっけ?」

オレ
「ユーイチっていうんだ」

優子
「へーそーなんだ^^」

オレ
「まっいっか!そんなに会うわけでもないし(笑)」

優子
「そんな風に言わないでよ(ーー;)せっかくだからユー子ちゃんでいいよ」

オレ
「そのままじゃん(笑)」

優子
「その代わり私はユーちゃんって呼んであげるから^^」

オレ
「わかったよ!ユー子^^」

優子
「あっ!彼氏でもないのに呼び捨てにした( ̄^ ̄)」

オレ
「そっか。呼び捨ては彼氏だけなんだ(笑)」

優子
「うん。そう決めてるんだー」

オレ
「あっそう」

優子
「まだ居ないんだけど(笑)」

オレ
「なんだよソレ(笑)」

18歳の女の子は思ったりまともな子のように見えた。もっともその年齢差からくる感覚的なものには相当のギャップがあるように思えたが、それは仕方がない。できるだけ彼女に合わせようと思った。

優子
「ユーちゃんは彼女にはやっぱりユーちゃんって呼ばれてるの?」

オレ
「まーな!ユー子はこれまで通りムトーさんって呼んだら?」

優子
「またー(ーー;)ユーちゃんでいいじゃんその方が若く思われて」

オレ
「オレの年、知ってるのか?」

優子
「んーーー28歳」

オレ
「残念。24歳でした」

優子
「似たようなものじゃない^^」

オレ
「あっそう」

なるほど、18歳の彼女にしてみれば24も28も同じなんだ。それこそ親戚のお兄いちゃん。或いはおじさん?ぐらいにしか感じていないのだろうと思った。

オレ
「そーだ。メシ食いに行こうか?昨日奢ってもらったしごちそうするよ」

優子
「えっいいの?お店サボって」

オレ
「これまで頑張って働いてきたから少しぐらいいいんだ^^」

優子
「じゃーごちそうになる^^」

外に出てオレは腕を出した。ちょっとためらいながらも優子は腕を絡めてきた。オレはステーキ・ハウスまで歩いた。この時間周防町を歩くとあちこちから声がかかった。

マスター
「いらっしゃいませ」

オレ
「そっちはミディアムでこっちはレアで、どっちもサーロイン♪それと生とコークをひとつ」

目の前でマスターが肉を焼く。食べやすいようにサイコロ状に切り取ってオレのはすぐに目の前に出てきた。優子の分は切り取った側面も簡単に火を通して出された。

ビールとコーラでカンパイした。

優子
「美味しい^^いいのかなこんなご馳走してもらって?後で変な事しようと思ってない?」

オレ
「思ってないから安心してしっかり食べて笑)」

優子
「でも来月からプータローでしょ?」

オレ
「あははは^^少しぐらい大丈夫さ!それに昨日のハンバーガーめっちゃ美味しかったし」

優子
「えーただのマグドのハンバーガーよ?」

オレ
「ははは・・・そうなんだけど^^」

ちょっと失敗した。こういうところへ連れてくるんじゃなくて、もう少し彼女の年齢にあったところへ行けば良かったと思ったが、それがどんなところか思い浮かばなかった。

そして楽しくメシを食った後、もっと何処かへ連れて行きたかったが・・・我慢した。オレは昨日と同じように心斎橋の駅の方へ送った。

優子
「ねー電話番号教えたげよーか?」

オレ
「ほんと?実はいつ聞こうかと思ってたんだ。^^」

オレはスーツの内ポケットからクロスのボールペンを取り出した。同じように薄い長い手帳を開き優子にボールペンを渡した。彼女は開かれたページに名前と電話番号を書いた。

優子
「じゃーねーユーちゃん。電話してきていいからねっ!バイバイー♪」

オレ
「オッケー!ばいばーい^^」

彼女は地下鉄の駅に向かう階段を下りていった。オレはSPEAK EASYに戻った。嶋本に顔を見せて、先に上がることを伝えた。電話ボックスから電話をかけた。心斎橋へ戻ってケーキ屋を見つけ、バースデー用のケーキを買った。ロウソクを19本つけてもらった。

20時・・・マリーマンション

チャイムを鳴らす。すぐにドアが開いた。

オレ
「こんばんわ」

マリー
「どーぞ入って^^」

ナミ
「いらっしゃい^^」

オレ
「うん。いい匂いだ。おっ!そーだコレおみやげ」

オレは勝ってきたケーキをナミに渡した。ナミはマリーの方を見た。

マリー
「開けてみたら?」

マリーはケーキの箱を開けた。ニコと微笑んだ顔が可愛かった。

ナミ
「誕生日まだだけど?」

オレ
「うん。別にいいじゃん。なんかお祝いしたくて(笑)」

オレはローソクを立てた。ナミも同じように立てた。ライターで火をつけた。明るいままナミは火を吹き消した。

オレ
「おめでとー^^ナミ」

オレはひとりではしゃいだ。マリーはそれを静かに見ていた。ナミの表情はよくわからない。マリーはナイフと皿を持ってきてケーキを切り分けた。

オレ
「あっオレはいいよ」

ナミ
「ダメ一緒に食べて」

オレ
「あーじゃー一緒に^^マリー悪いけどビールくれる?」

オレはビールを飲みながら無理にケーキをうまそうな顔をして食った。甘いものは苦手だった。。。

オレ
「ほんとは10月だったよな?誕生日」

ナミ
「11月」

オレ
「あははは^^惜しい(笑)」

ナミ
「美味しい」

オレ
「うん。^^」

ナミ
「ごちそうさま」

ケーキを食べるとナミは自分の部屋に戻っていった。マリーはオレの隣に座りビールを注いだ。

マリー
「ナミ。嬉しそうにしてた」

オレ
「あれで?」

マリー
「うん。だんだん変わっていく」

オレ
「そっか(笑)」

マリー
「ありがとう。でもユーちゃんここに居ていいの?」

オレ
「・・・」

オレはビールを飲んだ。マリーは新しいビールを取りに行った。そして注いでくれた。この間、マリーはショーコの事を束縛しろと言った。昨日、或いは今日、ショーコから連絡があったのだろう。

オレ
「さっきまで女子高生とTVゲームしてメシ一緒に食ったんだ^^」

マリー
「ふーーーん。珍しいわね」

オレ
「ナミと同じ年だった。無邪気で溌剌としてた。今度ナミと一緒にどっか行こう」

マリー
「ユーちゃん。」

オレ
「ん?」

マリー
「私は何があっても離れないからね」

オレ
「あははは^^」


------------------


そして・・・

ダイビングツアーは第1陣、第2陣とも無事事故もなく行われ、スタッフ全員が海の中を体験することができた。

玲子との5泊6日のハワイ旅行も頭が痛くなることもなく楽しく過ごせた。

25日にはMary'sがオープンし、初日から盛況だった。

オレはそんな忙しさの中、ほとんど自宅マンションには帰らなかった。もちろん理沙のところへも行っていない。そしてレミのところにも・・・

ショーコからはあれ以来直接的な連絡はなかった。。。

30日になって引越し屋を入れて自宅マンションを引き払った。時は前後してレミもそれ以前にスカイマンションを引越した。事務所のポストにレミからの短い手紙が入っていた。

「ユーちゃんと見た星、一生忘れない。ありがとう」

こうして1979年の夏の終わりとともにSPEAK EASYも閉店した。


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