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田園


1996年、自らが主演したテレビドラマ『コーチ』の主題歌『田園』が大ヒットし、同年末の第47回NHK紅白歌合戦への出場を果たす。バックバンドには本来のツアーバンドではなく、当時玉置と同じソニー・ミュージックエンタテインメントに所属していたTOKIOを据え、 59.9%の歌手別最高視聴率を記録。放送後に売上をのばし、結果的にグループ/ソロ通じて初のミリオンセラーを記録した。
玉置浩二の元気が出る歌が続きます。^^

1979年からかなり離れていますが・・・まー「安全地帯」の延長線上ということで^^それにしても寒暖の差が激しすぎますねー。
▼1979年10月・・・

13時・・・スカイ・オフィス

横山
「今日の6時ロイヤル・ホテルのカフェで待ち合わせです。オレも行きますけど、食事は2人でして下さいね^^」

オレ
「あーうん。。。」

横山
「絶対に来てくださいよ!」

オレ
「あーわかってる。」

横山
「なんか心配だなー( ̄^ ̄)」

昨日から行われているロイヤルホテルでのファッション・ショーにキョーコが出ていた。最終日の今日、横山が段取りして会うことになった。それまでは懐かしさとともに期待感もあったのだが・・・いざその日がやってくると、急に不安になってきた。

村上
「ムーさん。お電話です」

オレ
「ほい」

オレは受話器をとった。短く返事をして「ちょっと出てくる」といってオフィスを後にした。マンションの北側の通りにある喫茶店「サテン・ドール」に入った。ゆったりした席、木の香りのするスタンダードな喫茶店。メニューは数種類の珈琲と紅茶しかなかった。オレは熱いブレンドをオーダーした。

オレ
「どした今日は?学校は?^^」

優子
「明日は行事があるから、今日は午前中で終わりなの」

オレ
「そっか^^」

優子
「ユーちゃん。浮気してるでしょ!」

オレ
「えっ!なんだ?何があった?」

いきなりストレートを食らったような衝撃にオレの頭は逆に高速回転した。どこかで誰かと一緒にいるところでも見られたのかな?いやそれはない。はずだが・・・

優子
「電話くれないし、電話してもいつもいないし、悪いと思ったけど会社に電話しちゃった。」

オレ
「あーーーごめん。秋はファッション・ショーのシーズンでバタバタしてた。」

優子
「わかってるけど・・・みんなが言うの」

オレ
「みんな?何を?」

優子
「この間、ウイリアムスに行った子たちのひとりが、あんなカッコイイ年上の彼が、高校生のユーコと本気で付き合うわけないって」

オレ
「あははは^^」

優子
「それにきっとステキな彼女が別にいるから、ユーコの体を求めないんだって」

オレ
「あらら^^」

それが「浮気してるでしょ」になるのか?なんともアホらしい理由で飽きれた。ヒマというかなんというか、しかしまー悩み多き年頃なので、それも致し方ない。

優子
「・・・」

オレ
「なんだよそんな人が言った事を真に受けてるのか?(笑)」

優子
「だって遊園地行ってからデートしてないし」

オレ
「そーだな。短い時間しか会えなかったからな」

優子
「それは仕事だから仕方ないと思ってる。でもユーちゃん。他に女の人居る?」

オレ
「居るわけないだろう。オレはユーコに夢中なんだから^^」

優子
「でも、オトコはみんなエッチさせてあげないと浮気しちゃうって」

オレ
「そんなオトコばかりじゃないさ。相手を大事に思って、相手がそう思える時がくるまでやせ我慢するのもオトコだよ^^」

優子
「ユーちゃんは我慢してくれてるの?」

オレ
「うん。時々ユーコの事思い出してオナニーするけどねっ!^^」

優子
「ユーちゃん!!!」

オレ
「あはっ^^」

優子
「優しくてかっこいい事ゆってくれてる時にどーしてそんな事ゆーかなー(笑)」

オレ
「ほんとはスケベだからつい(笑)」

優子
「もう(ーー;)」

オレ
「ははは・・・」

優子
「でも、ちょっと安心した(笑)」

思春期の乙女の考えてることはそれはもう複雑な心理で、純粋に恋愛そのものに憧れながらも、性に対する隠れた欲望が見え隠れする。きっとそういう話は学校でももっと露骨に話題になっているのだろうと思った。

優子
「それとねこの間、ヒロミが声かけてもらってすごく喜んでて、今日も一緒についてきそうだったのよ」

オレ
「ん?来ればよかったのに」

優子
「ダメよー今日も会えるかどうかわからなかったし、もし会えたらせっかく二人っきりになれるのに」

オレ
「そっか」

優子
「あの時ユーちゃんみんなに挨拶したじゃない?みんなユーちゃんカッコいいって、その中のカズミがそーゆー事ゆーのよ」

オレ
「ふーん(笑)」

優子
「今まで年上のカッコイイ彼氏はカズミが付き合ってる大学生だったんだけど、今やユーちゃんの方が人気みたいで」

オレ
「じゃー今度みんな連れて遊びに行こうか?(笑)」

優子
「ユーちゃん!!!」

オレ
「ん?ダメか?」

優子
「そんな事したら益々ふたりで会う時間がなくなるでしょ」

オレ
「あははは^^そっか」

優子
「ユーちゃんこの間、ジャグジー行きたいって言ってたよね」

オレ
「ん?あーそうだっけ?」

優子
「・・・」

オレ
「あっ言った!うん。ユーコと一緒にお風呂入りたいって言って怒られた^^」

優子
「入ってあげてもいい」

オレ
「どーしたんだ?」

優子
「だって・・・」

やばい。変に思いつめている様子だ。この子のいいところは、無邪気でちょっと強気なところがいいのに、こんな風に自信なげな姿は似合わない。なんとか自信を取り戻させなくては・・・

オレ
「ユーコ行こう!^^」

優子
「えっ今から?」

オレは席を立ってレジで支払いを済ませて外に出た。遅れて出てきたユーコに腕を上げた。ユーコは当たり前の顔で腕を組んで来た。

心斎橋を歩いた。昼間のこの時間、見知った人間に会う事は少ない。リチャードが見えてきた。オレたちはそこへ入った。

ゴールドのチェーンを現金で買った。カードも持っていたが、優子の前では使えない。それで財布の中身はほとんどなくなった。その場でそれをユーコに渡した。

オレ
「これお前のだ^^」

優子
「えっ私のなの?」

店を出てすぐのマグドナルドに入った。アイスコーヒーとポテトを注文した。

オレ
「さっそく開けてつけてみて^^」

優子
「ゆーちゃん。どうして?」

オレ
「オトコが買ったチェーンを首にずっとつける。それでオトコは自分のオンナだと安心するんだ。ダメか?(笑)」

優子
「ユーちゃん。。。」

オレ
「ダメだ泣くな!」

優子
「だって、ユーちゃんが」

オレ
「そういう時は、『仕方ないわねー付けてあげるっ!』って言うんだ(笑)」

優子
「うん」

優子は手にゴールドのチェーンを持って暫くそれを見ていた。そして首に付け、シャツの中に入れた。

優子
「嬉しい^^でもコレ高かったじゃない。ユーちゃん大丈夫?」

オレ
「あははは^^暫く、カップラーメンで過ごすよ」

優子
「じゃー今度またお弁当持ってく^^」

オレ
「うん^^」

子供だましだったが、ようやくユーコに無邪気な笑顔が戻った。オレはほっとした。そしてゲーセンへ行って、UFOキャッチャーでムキになった。なんとか大物をゲットした。ひとつしか入っていなかったトラのぬいぐるみ。片隅のテーブルゲームに座り自販機でコークを買った。

オレ
「ようやく獲れたな^^」

優子
「めっちゃ可愛いコレ^^ありがとう」

オレ
「何だ?今日はずいぶん素直じゃないか」

優子
「私いつもは素直じゃない?」

オレ
「いやユーコが怒ってる時もオレ好きなんだ」

優子
「どーしてよ!怒ってる時より素直な時の方が可愛いでしょ!」

オレ
「あははは^^やっぱりユーコはちょっと怒ったぐらいがいい(笑)」

優子
「ふんっだ!^^」

ようやくいつものユーコに戻ってオレは嬉しかった。そしてできるだけこういう関係で居たかった。

そして地下鉄の駅まで送って別れた。

▼17時・・・スカイ・オフィス

すでにスタッフはそれぞれの店に出ていて居なかったが、横山一人が残っていた。

横山
「おかえりなさい」

オレ
「ん?待っててくれたのか?じゃー急いでシャワー浴びて着替えるよ」

横山
「はい^^」

ロビーでそれぞれが待ち合わせるはずだったが、横山は心配してここで待っていた。それがよくわかった。

ダーク系のダブルのスーツに着替えて横山とふたりで事務所を出た。長堀通りからタクシーを拾ってロイヤル・ホテルへ

窓際の大きなソファ席に座る。10分前だった。オレはその態度とは裏腹に緊張していた。窓の外は庭、その向こうの壁から滝のように水が流れていた。ガラス越しに水音が聞こえてくる。

横山
「ちょっと見てきます。」

横山はそう言って席を離れた。その瞬間・・・キョーコが現れた。笑顔で颯爽とした歩き方。やはりプロのモデルだった。4年ぶりに見るキョーコは変わっていなかった。いやちょっと大人っぽくなって、洗練された美しさがあった。キョーコが近づく、オレも立ち上がった。

キョーコ
「ご無沙汰しています^^」

オレ
「うん。元気そうだ(笑)」

横山
「あっオレやっぱり心配ですから店に戻ります」

オレ
「ダメだ。こっちへ座れっ!」

キョーコの顔を見たのは何年ぶりだろう・・・その瞬間からオレは胸が詰まってうまく声を出すことが出来なかった。オレは帰ろうとする横山を強引に引きとめた。横山もキョーコに会って話をしたいはずだ。いやそれ以上にオレはすぐに二人きりになるのが怖かった。

横山
「はぁ〜じゃー少しだけ」

キョーコ
「横山君にも会いたかったんだから」

横山
「いいのかなー^^なんかオレもすごく嬉しいんですけど」

オレ
「ははは^^最初から3人だったじゃないか」

キョーコ
「そーよ!初めて家に泊まった男たちなんだから^^」

オレ
「(笑)」

ダメだ。涙が出そうで我慢できない。お前はヘーキなのかキョーコ。オレはそれ以上キョーコを見ることができずに窓の外を見ながら暫く黙った。

キョーコ
「新しいお店もどんどんオープンしてシゴトも順調で良かったね^^」

オレ
「オレは何もしていない。(笑)こいつがひとりで走り回ってるだけさ」

横山
「ははは^^煽てには弱い横山ですから^^」

オレ
「ところで・・・沙耶は元気か?」

キョーコ
「うん。大阪で会う!って言ったらついて行くってもう大変だったのよ」

オレ
「あははは^^あいつの怒った顔が想像できるな?横山」

横山
「そういえば、沙耶ちゃんがつくったあんまり美味しくないクッキーをいっぱい食わされて(笑)食べないと怒るし、みんな大変でしたね」

キョーコ
「なんどか宥めて、その代わりに帰ったら全部あったことを話す約束させられたの^^」

オレ
「前に4人でメシ食ったよな?いつかまた一緒にメシ食えるといいな^^」

気持ちを切り替えるためにあえて沙耶の事を話題にした。沙耶、同じマンションで一緒に暮らしていた。横山もそうだが回りはオレのオンナだと思ってたはずだが、本当のところはオトコとオンナの関係にはなっていない。

横山
「ムーさん。オレそろそろ行きます。キョーコさん。またいつか^^」

横山はそう言って戻っていった。

オレ
「じゃーメシ食いに行こうか?」

キョーコ
「うん」

ホテルの玄関前からタクシーに乗り丸ビルのトップ・サーティーへ行った。すでに横山の手配で予約されていた。窓際のテーブルに案内された。

オレ
「なんかウソみたいだな」

キョーコ
「私は、夢のようよ^^」

オレ
「そっか」

キョーコ
「来てくれないかもしれないって思ってたから」

オレ
「ははは^^」

ワゴンに乗せられたシャンパンクーラーが運ばれてきた。ウエイターがシャンパンを勢いよいく開けてそれぞれのグラスに注いだ。

オレ
「今日のよき日を」

キョーコ
「神に感謝」

グラスを軽く当ててオレはシャンパンを口にした。オレは少し落ち着いた。不思議な気分だった。こうして一緒に居るだけで信頼関係が取り戻せたように感じていた。

オレ
「実を言うと、横山とお前の話ができるようになったのはつい最近なんだ」

キョーコ
「うん」

オレ
「あいつに聞けばお前の事は大抵わかると思ってたけど、聞けなかった」

キョーコ
「そう」

オレ
「いつかお前に会う事があったら・・・聞きたい事がいっぱいあったんだけど」

キョーコ
「何でも聞いて」

オレ
「忘れちまった。(笑)」

前菜が運ばれてきたのも気付かなかった。次の料理がきた。オレは構わずそれをテーブルに置いてもらった。

オレ
「沙耶との事は?」

キョーコ
「全部知ってる。あの子泣きながら正直に話してくれたから」

オレ
「そっか。最後までアイツをひとりのオンナとして見れなかったよ」

キョーコ
「そう」

オレ
「アイツはいつだって・・・お前の分身だったから」

キョーコ
「ごめんね。」

オレ
「でもキスはいっぱいしたんだぞ(笑)」

オレは無理やり目の前の料理を口にした。味はない。ただ口に入ったものを無理やりに咀嚼しシャンパンと一緒に飲み込んだ。話をすると胸がいっぱいになる。

キョーコ
「おかーさんが亡くなった後、ユーイチ訪ねて来てくれたんでしょ?」

オレ
「何故知ってる?横山も知らないはずだけど」

キョーコ
「仲の良かったお隣の人が教えてくれた。EVの前で聞かれたって」

オレ
「そっか」

キョーコ
「それを聞いて我慢できなくなって、新幹線に飛び乗って大阪へ行ったの。」

オレ
「何だと」

キョーコ
「お店の前まで行ったんだけど・・・帰った」

オレ
「何故だ?」

キョーコ
「私が裏切ったのに・・・」

オレ
「それはオレの方だろう」

キョーコ
「ユーイチがおかーさんが亡くなった事知って、荒れた事も聞いた。嬉しくて申し訳なくて」

オレ
「・・・おかーさんのお墓はどこ?」

キョーコ
「芦屋霊園よ」

オレ
「そっか。じゃー近い内に行ってくるよ」

キョーコ
「・・・」

オレ
「オレまだおかーさんに謝ってないから」

キョーコ
「うわーーーん」

オレ
「あっおい!泣くなっ」

オレは横に置いたエプロンを思わずキョーコに渡した。周りの目を気にした。昔のように子供みたいに泣くキョーコ。ロマンチックなムードが台無しだ。オレは思わず笑ってしまった。

キョーコ
「ごめん。もう大丈夫・・・」

オレ
「まったく。全然変わってないな(笑)」

キョーコ
「だってユーイチが優しいこと言うから」

オレ
「オレお前のおかーさん大好きだったし(笑)」

キョーコ
「うん。おかーさんも最後までユーイチの事気にしてた」

オレ
「・・・」

わかった。それ以上言うな!今度はオレが泣きそうだから・・・

オレ
「バーの方へ行こう」

オレは席を立った。キョーコが立ち上がるのを待って、そのまま奥の席に行った。少し照明が落とされて落ち着いたカップル用の席があった。ブランデーのボトルセットを頼んだ。

オレ
「ここはカップル用だから、並んで座ったらお前の顔が見えない」

キョーコ
「これでどう?」

キョーコは少し体を捻ってこっちを向いた。オレも同じようした。

オレ
「うん。よく見える^^」

キョーコ
「ユーイチ。髪短くなってなんか大人っぽくなった」

オレ
「それはお前の方だ。大人の女になって恐ろしいぐらいイイオンナになった」

キョーコはブランデーの水割りをふたつ作った。そのひとつをオレに手渡した。オレはそれを受け取りずっとキョーコを見ていた。

キョーコ
「どうしたの?」

オレ
「いや、ずっと会いたいって思ってたから、暫く見ていたい」

キョーコ
「・・・」

オレ
「お前は何か話してくれよ。オレは見てるから」

キョーコ
「また泣きそう・・・」

オレ
「でも会えて良かった。これでようやくケリがつけられる」

キョーコ
「・・・」

オレ
「これでも結構苦しかったんだ」

キョーコはいきなり抱き付いてきた。声をころして泣いていた。オレは抱きしめた。懐かしい匂い。背中を撫でていた。

キョーコはゆっくりと離れた。

キョーコ
「ごめん」

オレ
「ありがとう。懐かしくていい匂いだった^^」

オレは立ち上がった。キョーコが立ち上がるのを待って店を出た。EVで1階に下りてタクシーに乗った。ロイヤルまで送った。タクシーの扉が開いたがキョーコは握っていた手を離さなかった。そのまま引っ張られるようにオレも降りた。

オレ
「まだ飲みたりないか?(笑)」

キョーコは腕を絡ませた。EVに乗り7階で降りた。キョーコはキーを取り出した。オレは部屋の前で立ち止まった。キョーコに腕をとられて部屋に入った。

キョーコ
「最後の我侭だと思って」

オレ
「・・・」

キョーコは抱き付いてオレにキスをした。オレはキョーコの舌を吸った。強く緩く、キョーコもオレの舌を吸った。すこし離れた。

オレ
「キスは大好きだ^^」

キョーコ
「もう2度と会わないつもりなんでしょ」

オレ
「・・・」

キョーコ
「最後の夜にして」

オレは上着を脱いで部屋の中央へ入った。ネクタイを緩めた。

オレ
「キョーコ見せてくれ」

キョーコはゆっくりと服を脱いだ。そして下着も全部・・・キレイな体が全部見えた。昔と変わらずいつもそうしてくれたように、見せてくれた。オレも服を脱いだ。下着をとり裸になった。キョーコはずっと見ていた。そのまま近寄ってキスをした。そしてベッドに入って昔と同じようなセックスをした。

オレ
「お前が眠っているうちにオレは帰る。いいな」

キョーコ
「うん」

キョーコはオレの体に脚を絡めて眠った。


翌日・・・9時スカイ・オフィス


いつの間にか部屋に戻って眠っていた。シャワーを浴びてコーヒーを入れた。自分のデスクの向こうの窓際に近づいてブランインドを開けた。明るい陽が差し込んだ。気持ちのいい朝だった。

思い立って芦屋霊園の電話番号を調べ、電話した。事情を説明して所在を聞いた。村上が出勤してくるのを待った。ジーンズとシャツそれにスタジャン姿で村上に簡単に業務連絡を指示して地下駐車場へ向かった。

SRの幌を畳んで、エンジンをかけた。サングラスをかけた。長堀通りから43号線に出て神戸に向かった。反対方向は混雑していたが、神戸方面はそうでもなかった。片側4斜線の道路を軽快に前を走る車をかわしながら芦屋に向かった。

駅前の花屋でバラの花を買った。

岩園のトンネルを抜けて、気持ちのいい風を感じながら芦屋霊園の駐車場へSRを停めた。管理事務所で所在を確かめて・・・手桶に水を汲んで、橘家の墓に向かった。

景色のいいところだった。目的の墓をみつけて水をかけバラの花束をその場に置いた。そしてサングラスをはずして合掌した。再びサングラスをかけようとした時、振り返るとキョーコがこっちにくるのが見えた。オレはサングラスをかけた。

キョーコ
「ありがとう。やっぱり来てくれたんだ」

オレ
「いや、ついでがあったから(笑)」

キョーコ
「駐車場のSR見てまさかと思ったけど」

オレ
「ははは^^アレが好きなんだ」

キョーコは同じようにその場で暫く合掌していた。とっくに新幹線に乗って帰って行ったと思ったが、せっかく大阪まできたんだから、キョーコがここへ来るのは当然と言えば当然だった。オレはボケていたのかも知れない。

キョーコ
「ねー乗せてくれるっ?」

オレ
「もちろんさ!」

もう1度おかーさんの墓に頭を下げてそこを離れた。手桶を返して駐車場へ向かった。オレはSRの助手席のドアを開いてキョーコを乗せた。前から回り込んで乗りエンジンをかけた。

そのまま芦屋に下りて2号線を西に進み、JRの本山駅付近を一周した。

キョーコ
「懐かしい^^駅前は全然変わってないね。」

オレ
「うん。アルファはもうないけどな」

キョーコ
「ユーイチと初めて会ったところ」

オレはゆっくりとロータリーを回って、信号を左折した。『あおやま』の前を通り過ぎた。もうそこにはヨーコは居ない。彼女は三宮で自分のカフェをオープンさせていた。その事をキョーコに教えた。

上の幹線道路に出て駐車場へSRを停めた。

オレ
「岡本あたりまで歩こうか?」

キョーコ
「うん^^」

駅前の昔からある喫茶店に入った。注文を取りに来たのはこの店の店主のおばちゃんだった。熱い珈琲と紅茶を注文した。途中でおばちゃんは振り返って笑顔をみせた。どうやら思い出してくれたようだったが特に話はしなかった。

キョーコ
「また会っちゃったね」

オレ
「あははは^^そーだな(笑)」

キョーコ
「おかーさん喜んでた」

オレ
「そっか?オレは怒られた」

キョーコ
「えっ」

オレ
「来るのが遅いっ!って(笑)」

キョーコ
「あははは^^」

珈琲と紅茶が運ばれてきた。

オレ
「おばちゃん元気?」

店主
「あーあんた達も元気そーね^^」

それだけの挨拶を交わしておばちゃんはカウンターへ戻っていった。

キョーコ
「ここにふたりで来たの数回よ?それにずいぶん前なのに^^」

オレ
「うん。誰かと間違ってるかも知れないけどいいじゃないか^^」

オレたちは小さい声で囁きあった。

キョーコ
「ユーイチはそういう格好をしてSRに乗ってるとほんと昔のままね!」

オレ
「学校へも行かずにアルファでバイトしてた頃とあんまり変わらないさ」

キョーコ
「あの頃は毎日が楽しかった」

オレ
「そーだな」

窓の外は阪急電車から降りてきた学生でいっぱいだった。どの女子学生もおしゃれでオレたちがこのあたりを闊歩していた頃から比べると雲泥の差のような気がした。

キョーコ
「カメイちゃん今、家の近くに居るのよ」

オレ
「へーーーそうなんだ。」

キョーコ
「離婚して再婚して東京暮らし^^」

オレ
「そう^^元気でやってるんなら何よりだ」

キョーコ
「うちの子、保育園に預けててカメイちゃんに今預かってもらってるの」

オレ
「そっか^^」

キョーコ
「まだ6ヶ月なんだけど、私が頑張って働かないとダメだから^^」

オレ
「ん?」

キョーコ
「今、親権めぐって大変なの(笑)」

オレ
「何?よくわからないんだけど」

キョーコ
「うん。離婚調停中だから」

オレ
「お前がか?」

キョーコ
「元々うまくいってなかったの^^当然よね。」

オレ
「そんな事・・・」

キョーコ
「横山君にも言ってない。心配かけたくなかったから」

オレ
「じゃーお前は今・・・」

キョーコ
「カメイちゃんの家の近くでひとりで、じゃなかった裕子とふたり暮らし」

オレ
「なんだよソレ!幸せにやってるって」

キョーコ
「ごめん。でも心配しないで!これから私頑張るんだから^^」

「言うつもりはなかったんだけど、昨日の夜一緒に過ごせたから私も吹っ切れた」

「だからこれからは頑張れる^^」

オレ
「・・・」

そう。さっきまでののんびりとした昔話がふっとんでしまいまた新たな現実に直面してオレは・・・

オレ
「もしかして好きな人がいるのか?」

キョーコ
「好きな人はずーーーと一人に決まってるじゃない」

オレ
「そいつはとんでもなくいいかげんなヤツだろう?」

キョーコ
「ううん。いつだって正義の味方なの(笑)」

オレ
「オレは・・・」

キョーコ
「ユーイチは若くて健康な人と結婚して幸せな家庭を築くのよ!それが私の願いよ」

ちょっと怒ったような真剣な目、青く光っている。その目がオレを見ていた。

オレ
「青い目、ひさしぶりだ(笑)」

キョーコ
「そう^^じゃー言う事きいてねっ!(笑)」

オレは立ち上がってカウンターへ行ってボールペンとメモ用紙を借りた。

店主
「あの子が怒った時は逆らわない方がいいよ!」

おばちゃんは片目をつぶってみせた。すぐにそれがウインクだとはわからなかった。

オレ
「わかった。^^」

オレはテーブルに戻った。

オレ
「これに住所と電話番号を書いてくれ」

キョーコ
「・・・」

オレ
「書いてくれよ!年賀状ぐらい出したいじゃないか(笑)」

キョーコは広告の裏を使ったメモ用紙に書いた。オレはそれを財布に閉まった。オレはもう1度カウンターに行ってボールペンを返した。ついでに支払いをした。

オレ
「おばちゃん。ありがとう」

店主
「じゃーまたね!」

オレ
「うん^^」

オレはキョーコと連れ立ってそこを出た。

オレ
「新幹線何時だ?」

キョーコ
「ちょっと待って、12時30分」

オレ
「芦屋から快速に乗って新大阪まで、なんとか間に合うな」

オレはSRでJRの芦屋駅まで行って一緒に駅の構内まで入った。

キョーコ
「本当にありがとう。」

オレ
「いやこっちこそ」

キョーコ
「彼女とうまくやってね^^」

オレ
「ああ。お前も大変だけど、頑張って^^」

キョーコが快速電車に乗るのを見届けた。そしてオレはSRに乗り事務所に戻った。

▼14時・・・スカイ・オフィス

オレ
「おはよう^^」

横山・前田
「おはようございます」

オレは自分のデスクに座り連絡事項を確かめた後、何本かの電話をかけた。さっちゃんがマグカップに入った珈琲を持ってきてくれた。それを持って大きなテーブルの方に行った。

横山
「明日の会議資料ですけど、各店の数字の集計が出てますので、先に目を通しておいてください」

オレ
「うん。そうだ。昨日はありがとう^^」

横山
「いえ^^」

それ以上は昨日の事について話さなかった。グラフになった数字を眺めた。9月よりも各店数字が上がっている。まったく問題ないどころか、すこぶる好調だった。当然ながら予定通り、年内に出店が可能な状態だったが・・・さて、どうするか?

その後、関川、松井、田川、嶋本らが出勤してきた。雑談をしながらそれぞれの店の情報交換をしながら事務処理をしていた。オレはところどころで話を混ぜっ返しながらそれぞれの店の様子を聞いていた。

そして彼らはそれぞれの店に散っていった。

▼18時・・・Maggieミナミ

オレ
「彼はどこで?」

浜田
「実はLINDA北新地の賀川さんの紹介なんだ」

オレ
「そっか。なら大丈夫だな」

浜田
「うん。オレたちよりこのシゴトのキャリアはあるみたいだし」

オレ
「じゃー営業かけて新しい店も増やそうか?」

浜田
「それは能代さんが2つほど話を持ち込んできてるんだ」

オレ
「ほー自分で営業先を持っていながら、Player'sへ入ってきたのか?」

浜田
「どうも金銭的な問題でそうせざる得なかったってことらしい」

オレ
「なんなら一度オレが話を聞こうか?」

浜田
「できたら・・・頼む(笑)」

オレ
「了解」

新しい奏者が入ったことで、とりあえず浜田がフォローにまわる体制ができたようで、オレ自身としては安心だった。こうして浜田と営業時間中にゆっくり話ができるようになって、Player'sもひと段落ついたように思えた。

オレ
「ところでこの間は、すまなかったな」

浜田
「ん?何だっけ?(笑)」

オレ
「間島を口説いてくれて」

浜田
「あははは^^あいつはオレが口説いたぐらいで落ちるヤツじゃない」

オレ
「オレも脅しを入れられたよ『私を誰だと思ってるんですか』って(笑)」

浜田
「くっくっくっ^^お前のびびってる様子を想像するだけで爆笑だな(笑)」

オレはジン・トニックを飲み干した。本山がブランデーのセットを用意して目の前のカウンターに置いた。

オレ
「お前の方はどうなんだ?刈谷とは」

浜田
「まーなんとか^^そーだお前にその礼を言ってなかったな。世話かけて、ありがとう」

オレ
「ん?知らんなー(笑)」

浜田
「ったく。人が素直に礼を言ってるのに(笑)」

刈谷から浜田のシゴトが両親に理解されていないので不安だという事を聞いて、オレはPlayer'sに業務移管することを思いついたのだが、どうやらそれが良かったようで、刈谷はオレに礼を言いに来たことがあった。そのことを浜田は知ったのだろう。

オレ
「そーだ今後ヨーコの店に一緒に行こうか?」

浜田
「そう言えば、三宮でカフェをやるとか言ってたけど」

オレ
「先月オープンさせたらしいんだ」

浜田
「そーなんだ。^^じゃー何かお祝い持って行かないと」

オレ
「うん。そろそろケンジさんと結婚するんじゃないかと思ってたんだけど、まだまだ先になりそうだしな(笑)」

浜田
「ケンジさんって、お前をいきなり殴ったセンパイか?」

オレ
「そーだ。(笑)ヨーコの胸のホクロをオレが知ってたって誤解したんだ」

浜田
「(笑)なんでお前は知ってたんだ?」

オレ
「裕也に仕組まれて、間違ってヨーコが入っている風呂にオレが裸で入ったんだ」

浜田
「あははは^^あいつはよくそういうイタズラをしてたな」

オレ
「裕也もそうだが、ヨーコもとんでもないんだ。『あらヒロ背中を流してくれるの?^^』っていきなりこっちを向いて立ち上がるんだぜ!胸どころかあそこまで見てしまって、オレは慌てて自分のモノを隠したよ(笑)

浜田
「ぎゃははは^^やっぱりとんでもなくいたずら好きの姉弟なんだな」

オレ
「それ以来さ。オレがヨーコの使いっぱしりさせられるようになったのは(笑)」

浜田
「でもなんでお前はヨーコさんを呼び捨てにするんだ?やっぱり疑われるぞ(笑)」

オレ
「裕也はなんて呼んでた?」

浜田
「んーーー自分の姉貴なのにやっぱり呼び捨てにしてたな?」

オレ
「裕也が死んだ後、『あんたもそうしなさい』って、その代わり私もユーイチって呼ぶようにするからって」

浜田
「そうか・・・」

オレ
「だからお前らにもそうお願いしたのに(笑)」

浜田
「あの頃は今更ユーイチって呼べなくてな、斉藤と相談してムトーになったんだ(笑)」

オレ
「ふーーーん(笑)」

このところようやく昔の話ができるようになった。少しづつわだかまりもなくなってきた。きっとそれはいいことなのだろう。しかしそんな平和な時間が長く続くとは思えなかった。これまでの経験からそれはわかっていた。


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