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What's Going On


ラッツアンドスターの「What's Going On」
マービン・ゲイの方はコッチ
個人的にはジェシコリヤングの「What's Going On」が好きなんですけどね。これはもう幻に近くどこをどう探してもありません。もちろんレコードやCDも・・・(笑)
1979年10月PART7-----------

▼18時・・・スカイ・オフィス

オレ
「悪いな遅くまで^^」

村上
「いえ、これぐらいなんともありませんから」

オレ
「あれ?どうした松井」

松井
「忘れ物をとりに、それでちょっと^^」

オレ
「そっか。さっちゃん来客が来たら帰っていいよ」

村上
「はい」

オレはスーツに着替えて客を待った。暫くするとインターフォンがなり来客がきた。オレは入り口のドアを開けて出迎えた。

オレ
「いらっしゃいませ。どうぞ!」

理恵ママ
「急に押しかけてきて申し訳ございません」

オレは理恵ママと連れの男を普段はほとんど使わない応接室に通した。ソファを薦めた。理恵ママは連れの男を紹介した。

理恵ママ
「高橋の部下の白石です」

白石
「白石と申します」

オレ
「どうもムトーです。」

簡単に名刺交換をしたあと席についた。理恵ママと白石の正面にオレは座った。さっちゃんがお茶を持って入ってきた。暫く沈黙が続いた。電話の様子から漂っていた緊迫感は白石という男が登場したことで益々現実味を帯びてきていた。

理恵ママ
「実は、高橋が昨日逮捕されたの」

オレ
「えっ!そーなんですか」

白石
「それで後のことをムトーさんにお願いするようにと」

オレ
「オレに?何を?」

理恵ママ
「もちろんお店のことなんですけど」

オレ
「ちょっと待ってください。オレはシロートですよ?」

白石
「わかっています。組のことは私が、ただビジネスの方はどうしてもムトーさんにと」

オレ
「あのーどういう事なのか最初から説明してもらえますか?」

白石
「はい」

白石は高橋のことを説明しはじめた。K芸能に珍しくガザ入れがあり、あるはずのない短銃が1つ出てきた。とりあえず預かりの若い衆が出頭したが、そいつがゲロッて高橋の名前を出した。そして高橋が逮捕・・・前もあるためにそのまま収監されてしまうだろうと言うことだった。

白石
「それで売買契約を結んでムトーさんのところで管理して頂きたいのです」

オレ
「うちには買い取る資力はありません」

白石
「現実に金は必要ありません。名義を書き換えるだけですから」

オレ
「じゃー店を取得はするけども高橋氏が帰ってくるまで預かるって事ですか」

白石
「そうです。」

理恵ママ
「その間の利益はムトーさんが、ダメな時は処分して頂いて結構です」

オレ
「その代わり、うちの社の取締役にでも高橋氏を入れろ!とか?」

白石
「いえ、高橋も組もムトーさんのところへは一切関わりません」

オレ
「そんな一方的にこっちに都合のいい話をなんでオレに?それに現在問題なく運営されているんでしょ?名義だけなら親戚名義に変えれば済む話じゃないですか?」

理恵
「誰も信用できないのよ」

白石
「高橋はムトーさんを信用しています」

オレ
「断るとどうなります?」

理恵ママ
「困ります・・・」

白石
「とりあえず私はこれで、後はねーさんと話し合ってください。お願いします」

オレ
「・・・」

白石は深入りせずにそう言って立ち去った。まだ事務所に居るさっちゃんに上がるようにいった。理恵ママだけ残った。

理恵ママ
「ユーちゃん。お願い。助けて」

オレ
「・・・」

白石がいなくなると、理恵ママはこれまでの話し方に変わった。

理恵ママ
「あなたしかいないの」

オレ
「・・・わかった。」

理恵ママ
「ありがとう」

これはビジネスではない。危険なゲームだ。高橋がハメられた。高橋のオンナが「助けて」と言う。理恵ママの妹の洋子はオレのオンナだ。そして親友の理沙も・・・

オレ
「どんな風に進めるつもりなんだ?」

理恵ママ
「明日にでも専属の税理士からすべての事業の説明をさせるわ。その上で弁護士を通じて名義変更の手続きになると思う」

オレ
「そう」

理恵ママ
「それともうひとつ。高橋は、私も自分が出てくるまで面倒を見てもらうように!って」

オレ
「ん?面倒って、理恵ママはこれまで通り店の方を管理してくれるんだろう?」

理恵ママ
「まー色々とその内・・・」

オレ
「んーとりあえず店に行ってみようか?」

理恵ママ
「ありがとう」

来客があったせいか松井はまだ残っていた。オレは先に出るといって理恵ママと一緒に事務所を出た。

▼19時・・・クラブ「ギャラクシー」

EVを降りると黒服が挨拶をし、長いアプローチを通り店内に入った。オレは奥のボックス席に案内された。理恵ママがホステスを呼びオレに付かせた。オレに断りを入れ、理恵ママは他のテーブルを回った。ウエイターがブランデーセットを用意した。


「佐和子です。どーぞよろしく^^」

オレ
「ども^^ムトーです」


「以前に何度かお見えになりましたよね?」

オレ
「うん。なかなか一人で来れる身分じゃないので(笑)」


「そんなーMary'sの社長さんなんでしょう?ムトーさん有名じゃないですか」

オレ
「あはっ!もしかしてオンナよりオカマ好きで有名なのかな?」

オンナがつくったブランデーの水割りをオレは口にした。すぐに理恵ママが戻ってきた。

理恵ママ
「さわちゃんは、うちのチーママなの」

オレ
「そう^^」

理恵ママ
「さわちゃん。あらためて紹介しておくわね。この店の新しいオーナーのムトーさん」

佐和子
「えっ!そーなんですか?よろしくお願いします^^」

理恵ママ
「びっくりしたでしょう?(笑)」

佐和子
「はい。こんなに若くてステキなオーナーで嬉しいです^^」

プロのオンナ達、すぐに気持ちを切り替えて新しい状況に対応しようとする。見事というほかなかった。

オレ
「ホステスは何人ぐらい居る?」

理恵ママ
「常時20人ちょっとぐらいかしら」

佐和子
「今日は、22人です。」

オレ
「やっぱりイイオンナばっかりだなー(笑)」

理恵ママは「後は私が」と言うとチーママは笑顔を残して席を離れた。

理恵ママ
「惜しかったわね」

オレ
「ん?」

理恵ママ
「ユーちゃんはうちのスペシャル・ゲストだったのに、その頃なら大抵の子と遊べたけど、オーナーになった以上ダメよ」

オレ
「えっ!そーなのか?」

理恵ママ
「そりゃーそうよ(笑)」

オレ
「それにしても特におかしなムードは感じないけど?何が問題なんだろう?」

理恵ママ
「それが私にもわからないのよ!何故か高橋がすごく心配して焦ってるみたいなの」

オレ
「ここ以外の店は?」

理恵ママ
「ポールは知ってるわよね?他にクラブがもう1軒と生玉にホテルがあるわ」

オレ
「それを全部うちが管理するのか?」

理恵ママ
「そーゆー事^^」

すでに理恵ママがチーママに新しいオーナーだと紹介した以上、その事は今日中にすべてのスタッフに伝わるだろう。何人かうちから人を入れる段取りをしなければ・・・

オレ
「やっぱりヤクザは出入りするのか?」

理恵ママ
「表面的には同じ系列同士だけど、足の引っ張り合いはあるの。いずれ紹介する機会もあるかも知れないけど」

オレ
「じゃー他の店も行ってみよう」

理恵ママ
「そーね。一通り見て」

オレと理恵ママは一緒に店を出た。理恵ママは黒服に声をかけて外に出る事を伝えた。EVに乗り7階で降りた。クラブ「泉」と書かれたドアをノックした。ドアが開き、黒服が笑顔で迎えた。理恵ママとオレはカウンターに並んで座った。

この店のママ「京子」を紹介された。理恵ママはさっきと同じセリフでオレを新しいオーナーだと紹介した。店内は落ち着いたムードで、客の年齢層は以外に若く思えた。ブランデーの水割りを一口、口にしただけで次の店に移動した。

「クラブ・ポール」は浜田のところからギター奏者を派遣しているお得意さまだった。以前に紹介してもらった石田店長がいた。理恵ママがオレを新しいオーナーだと紹介すると、石田はびっくりしていた。

理恵ママ
「あともう1軒だけ見ておいて?」

オレ
「ホテルか?」

理恵ママ
「そう^^」

オレたちは店を出た。理恵はタクシーを拾った。運転手に生玉へ行くように言った。理恵は運転手に指示し地下駐車場へ入った。そこからホテルの部屋に入った。そこは以前、ギャラクシーの接待で来たことのあるホテルだった。

オレ
「ここも高橋さんの?」

理恵ママ
「そうよ」

オレ
「全室にカメラがついてるだろう?」

理恵ママ
「バレてた?」

オレ
「ちょっと仕掛けを見せてくれ」

理恵は電話をかけた。部屋がノックされ理恵が出た。招き入れられたのは蝶ネクタイをつけた黒服だった。オレは案内されるままにホテルの一室に入った。壁一面にモニターが埋め込まれベッドルームが映し出されていた。その数30室。

黒服は一通り説明した。

もうひとつのラックにはモニターと同じ数だけの3/4インチのVCRがあった。映像と音声がこれで録音できる仕組みになっていた。

オレたちは部屋に戻った。

理恵ママ
「ここのスイッチでカメラに映らなくなるの^^」

オレ
「覚えとこう(笑)」

理恵ママ
「もうオーナーなんだからいつでも自由に使えるわよ^^」

オレ
「いや、こういう趣味の悪い部屋はあまり利用しない(笑)という事でもう出よう」

オレは立ち上がった。理恵ママは突然帯を解き和服の衣装を脱ぎ始めた。

オレ
「何やってんだよ!オレは帰るぞ」

理恵の背中が見えた瞬間、オレは凍りついた。その場を動くことが出来なかった。理恵は半裸になって立っていた。

その背中には大きな昇竜が描かれていた。そして全裸になって理恵は前を向いた。それは太もも辺りにも・・・オレは金縛りにあったようにその場に立ち尽くしていた。

理恵ママ
「契約だと思って」

「高橋はあなたでないとダメだって」

理恵ママはそのままオレに近づいてきた。ちょっと伸び上がってオレの首筋に手を回してキスをした。理恵ママの舌がオレの舌にからむ。オレは拳を握り締めて我慢した。

理恵ママ
「お願い」

オレは抱きしめてキスをした。そしてベッドの前で後ろ向きに座らせた。背中の龍を見ていた。きれいに彫られていた。龍の大きな目がオレを見ている。手で触れてみた。理恵は感じるのか吐息を漏らす。オレはその手を前に回して乳を揉む。理恵の上体が揺れると龍が動いているように見える。

理恵ママ
「あー」

オレの手は理恵の尻を撫で、尻の割れ目から秘部を撫でまわした。そこは熱く濡れていた。軽く指先で撫で続けた。

理恵ママ
「あー背中が熱い」

オレ
「・・・」

理恵ママ
「龍が怒ってる」

オレは自分のモノを出した。そして一気に理恵の穴に突きたてた。

理恵ママ
「あぅー」

オレは大きなストロークで出し入れした。理恵の上体が揺れ、龍が本当に怒って動いているように見えた。オレは龍を見ながら激しく責め立てた。理恵は声を上げ続ける。

理恵ママ
「あーーーあーーーあーーー」

理恵はいった。同時に龍が飛び去って行くのかと思ったが、龍はそこにいる。オレは理恵を床に四つ這いにした。方膝をたててオレのものが穴に垂直になるように思いきり突っ込んだ。

理恵ママ
「うぅー」

オレは奥に突っ込んだまま腰を掴んで、小刻みに早く動かした。

理恵ママ
「あぅ あぅ あぅ」

理恵は声を上げ続ける。力強くスピードを上げ動かした。

理恵ママ
あーーーあーーー」

理恵はいった。お構いなしにそのまま責め続ける。

理恵ママ
「あーーー」

立て続けに理恵はいった。オレは理恵の尻から離れた。理恵はその場に崩れた。抱き起こしてもう1度ベッドに上体を預けさせた。龍をみた。龍の目は相変わらずオレを睨みつけている。オレは後ろから理恵を抱くようにして背中の龍を撫でてやった。そして龍にキスをしながら理恵の乳を揉んだ。

オレ
「この龍はどうして?」

理恵ママ
「オトコの為よ!高橋しか知らない」

オレ
「オレは?」

理恵ママ
「2人目」

オレ
「それ以外は?」

理恵ママ
「いない」

オレはそこから離れた。冷蔵庫へ行ってビールを取り出し2つのグラスに注いだ。ひとつを理恵に持っていった。

オレ
「これが面倒をみるってことなのか?」

理恵ママ
「高橋は知ってるの。私がオトコなしで長いこといられないことを」

オレ
「だからって・・・」

オンナに関してはオレにも事情が・・・と言いかけたが、抱いてしまってからそんなことを言っても通用しない。

理恵ママ
「ユーちゃんもミナミのオトコなんだから、オンナの2人や3人居てもおかしくないわよ^^」

オレ
「あっそう。。。」

2人や3人じゃないから大変なんだ。とは言えなかったが、理恵ママは明るい!そういうオンナは好きだった。そして何より背中の「龍」それだけでオレは魅入られてしまった。

オレと理恵はホテルを出て、ミナミに戻った。理恵はギャラクシーに行きオレはMaggieに行った。

▼23時・・・Maggieミナミ

松井
「いらっしゃいませ」

オレ
「流行ってるなー^^」

松井
「もうピークは過ぎましたけど^^」

オレ
「そっか」

オレはカウンターに座った。本山がビーヒーターを持ってこっちを向いた。オレは頷いた。客はまだ半分以上残っていた。

オレ
「退屈してないか?」

松井
「いえ退屈してるヒマありません。(笑)」

オレ
「他店に負けないようにか?」

松井
「ははは^^」

オレ
「ところで、他の店に出向してくれるか?」

松井
「はい」

オレ
「聞いてたか?」

松井
「いえ(笑)」

オレ
「じゃー明日朝事務所で^^たぶん退屈しない」

ギャラクシーには理恵ママを頂点にマネージャーが2人と主任が3人居る。その中に松井を入れようと思った。立場は何でもよかった。松井ならすぐに自分の力でそれらを仕切るだろう。その後「泉」と「ポール」に取り掛かればいい。

歩いて東洋産業のビルへ行きサウナに入った。じっくりと汗を出し、大浴場で手足を伸ばす。退屈凌ぎに東京進出を考えたが、東洋産業の毛利氏との関わりあい方を少し変えようと思った。

▼24時・・・「クラブ純子」

最後の客を見送った玲子が戻ってきた。

玲子
「お待たせっ!」

オレ
「じゃー行こうか?」

玲子はチーママに後を頼み、オレと二人で店を出た。そしていつものステーキ・ハウスへ行った。

オレ
「店に出るの久しぶりだから疲れただろう?」

玲子
「全然。^^楽しかったわ」

オレ
「それにしても大変だっただろう」

玲子
「まーね。でも回りも覚悟してたらから・・・最後は宴会になっちゃった」

玲子の父親が亡くなり、長女の玲子は初七日が終わるまで郷里に留まっていたが、結局10日間あまり居て今日の夜戻ってきた。すぐにその足で店に入っていた。

玲子
「お店の方も何もなくて良かったわ^^ありがとう」

オレ
「オレは何もしてないさ。ただ顔を出してただけだ(笑)」

目の前に表面を焼いただけのサーロインが切り分けられて出された。玲子はオレのグラスにビールを注ぐ。

オレ
「これからちょっと忙しくなりそうなんだ。」

玲子
「新しいお店?」

オレ
「いや、『ギャラクシー』ってクラブ知ってる?」

玲子
「・・・」

オレ
「何か?」

玲子
「ヤクザがやってる店よ」

オレ
「ふむ」

玲子
「その店をどうするの?」

オレ
「面倒みてくれと・・・」

玲子
「やめて」

オレ
「そんなに問題あるところなのか?」

玲子
「確か、ママは『理恵』よね?彼女は私の後輩なの」

オレ
「・・・」

玲子
「ヤクザのオンナになってあの店をやってるようだけど、アブナイ店よ!関わらないで」

オレ
「そっか^^」

驚いた。玲子が理恵を知っているとは・・・理恵の親友の理沙も?これは下手をすると大変なことになる。普段オレのシゴトにほとんど干渉しない玲子が「やめて」という強烈な意思を示した。言葉以上に何かありそうな気がした。

オレ
「そうだ。この後、ジャグジーに入りに行こうか?」

玲子
「いいわよ^^」

食事を済ませて、東洋産業のホテルへ入った。久しぶりに濃厚なセックスをして、一緒にジャグジーに入った。その後、「ギャラクシー」はどちらかも話題にしないまま、眠った。

翌朝早くに玲子を自宅まで送って行き、オレは事務所に戻った。

▼11時・・・スカイ・オフィス

松井
「お見えになりました」

オレ
「うん。お前も同席してくれ」

オレは松井にそう言って、理恵と税理士を招き入れて応接室に入った。

理恵
「こちらは税理士の重野さん。」

重野
「始めまして重野でございます。よろしくお願いします」

オレ
「ムトーです。こちらこそお世話になります」

年齢は60を超えているか?いやもう少し若いかも知れない。頭の禿げた年配の人だった。

オレ
「うちの松井です。今日からでもギャラクシーに入れます。」

理恵
「理恵です。よろしくお願いします!^^」

席に付くとさっちゃんがお茶を持ってきてくれた。理恵はさっちゃんに礼を言った。税理士はそれぞれの店の直近の売り上げと粗利益を説明した。説明は要領よく必要な数字だけを説明し、てきぱきと状況が理解できた。

オレ
「9月の利益だけで5000万ですか?」

重野
「はい。最終的には節税もしますし減価償却もしますから帳面上はかなり圧縮されます」

オレ
「わかりました。」

重野
「あとは弁護士の元川さんが高橋さんの意向に沿って進めてくれるはずです。元川さんももうすぐここへ来られるはずです」

理恵ママ
「そうなんですか?ありがとうございます」

重野
「じゃー私はこれで失礼します」

オレ
「ありがとうございました^^」

そう言うと重野氏は立ち上がり帰って行った。オレは松井に送るように言った。オレと理恵ママだけになった。

理恵ママ
「形だけの売買金額は一応決まってるのよ」

オレ
「ん?」

理恵ママ
「高橋は2億と言ってるわ」

オレ
「えっ!ホテルだけでもそれ以上だろう?」

理恵ママ
「それでいいらしいの」

オレ
「ところで名義は高橋になってるよな?」

理恵ママ
「そうよ」

オレ
「実印は?」

理恵ママ
「自分で持ってるはず。だから警察」

オレ
「・・・」

オレは応接室を出た。すぐに山村弁護士に連絡を入れた。山村さんに至急で依頼をかけた。すぐに動いてもらおうと思った。

インターフォンが鳴った。松井がドアを開けて来客を招き入れた。白石ともうひとり50代の紳士。オレと理恵は応接室に入った。

元川
「売買契約書は形式的なものなので、ざっと目を通して下さい」

オレ
「はい」

白石
「これでひと安心です」

理恵ママ
「そうね」

オレ
「わかりました。一応、弁護士にコレを見せてからお渡ししたいと思います」

元川
「いや、これからすぐに高橋さんに会って押印して頂こうと思っているので、できれば今すぐお願いできませんか?」

オレ
「午後にでもお届けしますから、少し時間を下さい」

元川は白石と顔を見合わせた。

白石
「わかりました。じゃー午後にこちらへうちの若いのにとりに越させますので」

オレ
「お手数かけますが、お願いします」

理恵
「私は面会できないんでしょうか?」

元川
「たぶんまだ接見禁止だと思うので弁護士しか無理です」

理恵
「そーですか。わかりました」

白石
「じゃー私らはこれで」

白石と元川弁護士は用件が済むとすぐに事務所を出て行った。

オレ
「高橋はどこに?」

理恵ママ
「南署よ」

オレは山村さんに至急、南署で取調べを受けている高橋と接触する依頼をした。そして今から迎えに行くと伝えた。

理恵ママ
「どういう事?」

オレ
「説明しているヒマはない」

オレ達は事務所を出た。そしてタクシーで山村事務所へ行った。山村さんを乗せて南署へ向かった。高橋にオレたち以外には売買契約書、白紙委任状などには絶対に押印しないように伝えるようにお願いした。

オレ
「そこの喫茶店で待ってます。高橋にはオレが『龍を守る』と言ってたと伝えて下さい。出来たらこれに押印を!白紙委任状は?」

山村弁護士
「何枚か持ってますから^^」

▼12時・・・南警察署

山村氏は南署へ入っていった。松井には南署の中で待たせた。オレと理恵は少し離れた喫茶店へ入った。

理恵ママ
「わかるように説明して」

オレ
「重野という税理士・・・おかしい」

理恵ママ
「えっどういうこと?」

オレ
「元川弁護士というのも怪しい」

理恵ママ
「ウソでしょ・・・」

オレ
「白石も裏切っているかも知れない。タッチの差で高橋がすでに押印した売買契約書と白紙委任状を出していたら終わりだ」

理恵ママ
「そんな・・・」

オレ
「すべて誰かに乗っ取られる」

理恵ママ
「まさか・・・誰が?」

オレ
「高橋をハメたやつさ」

30分後・・・山村氏が戻ってきた。後ろには松井が付いていた。

山村弁護士
「押印もらいました」

松井
「入れ替わりに4課に白石と元川が現れました」

オレ
「すぐに出ましょう」

オレたち4人はタクシーを拾って南海ホテルへ入った。松井に部屋をとるように言った。そして部屋に4人で入った。松井は一度出て行った。

オレ
「それで?」

山村
「この人は?」

オレ
「あっすみません。高橋の」

理恵ママ
「内縁の妻の理恵です。よろしくお願いします」

山村氏は頷いただけで話を進めた。

山村
「とりあえずムトーさんの依頼で弁護とその他一切を引き受けるようにと言われました。と高橋さんに説明しました」

「怪訝な顔をされてました」

「ムトーさんが『龍を守る』と言ってた事を伝えたら何やら何かを気付いたようでした」

「そして私に弁護を元川弁護士から私に変更して、ムトーさんの言う通りにすると彼は言いました」

「売買契約書と白紙委任状に署名捺印を貰いました」

オレ
「ありがとうございます」

山村
「事情を説明していただけますか?」

オレはわかっている限りの経緯を説明した。

山村
「ムトーさんは何故気付いたんですか?」

オレ
「冴えない税理士の説明が手際よかった。何度も同じ事を説明したように、それに弁護士がすでに段取りしている事も知っていた。理恵は知らないのに・・・そして急ぐように帰った」

理恵
「あっ!」

山村
「ふむっ!どうにか間一髪間に合ったようですね(笑)」

オレ
「たぶん白石と元川は迷ったのでしょう。オレが売買契約書にサインするのを待ってから高橋に会うか?それともそのまま会って白紙委任状だけをなんとか先に手に入れるか?結局迷った分だけオレたちの方が早かった」

山村
「なるほど」

オレ
「とりあえず始まってすぐゲームオーバーにだけはならなかった(笑)」

理恵ママ
「ゆーちゃん。ありがとう」

ドアがノックされた。オレはドアに近づいた。松井が「オレです」と応えたドアをあけた。松井は何処かで買ってきた缶ビールやコーラを下げていた。

オレ
「ところで金の管理は?」

理恵ママ
「経理担当マネージャーの酒田が・・・」

オレ
「すぐに連絡して確保しよう」

理恵の顔色が変わった。部屋から外線を使って電話した。不在のようだった。

オレ
「そっちはもう押さえられてるかも知れない」

理恵ママ
「そんな」

オレ
「キャッシュはいくらぐらいあった?」

理恵ママ
「10日分の売り上げだからほぼ3000万ぐらい」

松井がグラスに注いだコーラをそれぞれの前に置いた。

オレ
「じゃー先に売買契約書にうちの署名をして、すぐに名義変更の手続きをお願いできますか?」

山村
「知り合いの司法書士に急ぎで依頼します。」

オレ
「それから押印してある委任状を1枚預かってもいいですか?」

山村
「・・・わかりました」

山村氏は一瞬考えたようだが、高橋が署名捺印した白紙委任状を1通オレに渡してくれた。それからいくつかの段取りを確認しながら話を終えて、先に山村氏は戻った。

理恵ママ
「信じられない。こんなことになってたなんて・・・」

オレ
「いやもしかしたら全てがオレの早とちりかも知れない(笑)」

理恵ママ
「・・・」

オレ
「今日あたり店に行けばわかるだろう(笑)」

理恵ママ
「でも・・・お金が戻ってこなかったらホステスの給与が払えないわ」

オレ
「それぐらいうちでなんとかする」

理恵ママ
「ユーちゃん」

オレ
「心配ない。任せろ(笑)」


▼13時・・・ギャラクシー


「えらい早いご出勤だな?理恵ママ」

理恵ママ
「あら郷田さん。まだ開店してないんですよ」


「今日からこの店はオレが仕切ることになった」

理恵ママ
「ご冗談を(笑)」


「オレは冗談がきらいなんだ(笑)」

エレベーター前、見るからにそれっぽい厳つい男ともうひとりがオレたちの前に居た。

オレ
「中で話しませんか?」


「なんだお前は?」

オレ
「この店のオーナーです」


「何を寝ぼけてるワカゾー」

オレ
「ムトーっていいます。高橋の友人です」

隣にいた普通っぽい男が合田に何か説明した。


「いいだろう。中でゆっくり話そう」

オレと理恵、そして松井の3人は店に入った。店内にはチーママの佐和子とウエイターが2人にいた。それとチンピラ風の男が2人。手前のボックス席に座った。郷田と呼ばれた40代の男と隣には30代の男。テーブルを挟んでオレと理恵。松井は少し離れたところに立った。カウンターに居たチンピラ風が松井との距離を詰めた。

オレ
「高橋からこの店を譲り受けました。今日から私がオーナーとして経営します」


「あんた本家の坊ちゃんと知り合いらしいが、これは内々の話ですでにケリがついてるんだ。」

オレ
「どうケリがついているんです?」


「理恵があんたに何を言ったか知らないが、こっちは高橋から依頼されて店を任されているんだ」

オレ
「おかしいですね。うちの弁護士がすでに高橋氏の依頼を受けて、動いているんですけど」


「それはこっちの方だ(笑)」

オレ
「じゃー確認してみて下さい」


「何?」

隣の男が席を立った。どうやら確認するために電話でもしに行ったのだろう。


「理恵どうだ?この際オレのオンナにしてやろうか?」

理恵
「いい加減にして下さい。私は高橋のオンナよ」


「残念だけど高橋はこのままチョーエキだろう(笑)」

理恵
「高橋が出てくるまで私はこの店を守るのが役目ですから」


「わからないやつだな。もうこの店はオレのモノなんだよ(笑)」

男が緊張した感じで戻ってきて郷田に耳打ちをしている。郷田の顔色が変わった。


「お前シロートのくせにオレにケンカ売る気か?」

オレ
「とんでもない。オレは純粋にビジネスとして高橋から依頼されただけです」


「組内のシノギの問題なんだよ」

オレ
「どこの組でしたっけ?」


「・・・山健組だ」

オレ
「わかりました。明日ゴローちゃんに事情を説明してきます」


「なにぃーうちの頭をゴローちゃんだとー!!!」

隣の男がまた耳打ちした。郷田はオレを睨みつけていた。


「そんなハッタリが通用すると思ってるのか?」

オレ
「明日になればわかるでしょう」

男はタバコを咥えた。小指の先がなかった。隣の男がすぐにライターで火をつけた。


「1000万くれてやるからそれで手を引け」

オレ
「引けません。高橋との約束ですから」


「ほう^^どうしてもオレとやり合う気か?(笑)」

オレ
「いえ。ただ高橋との約束を守るだけです」


「バカやろうが、1000万やろうって言ってんのに(笑)どうなっても知らんぞ」

オレ
「・・・」


「今日のところは引き上げるが、明日までに理恵、店を出る用意をしとけ!」

オレ
「高橋からの委任状はすでに持ってますし、明日オレは神戸です。それで終わりにしましょう」


「・・・」

郷田は捨て台詞を吐いて店から出て行った。他の連中も一斉にいなくなった。チーママと残っていたウエイターを呼んだ。

理恵ママ
「さわちゃん。あなたこんな時間にどうしてここにいるの?」

チーママ
「・・・郷田さんに呼び出されました」

理恵ママ
「いつ?」

チーママ
「今日・・・」

理恵ママ
「あなたたちは?」

ウエイター
「・・・」

オレ
「そっか。今回の騒動は100%オレが勝つ!間違えないようにしてくれ!それから今日は悪いがこのまま帰って自宅待機してくれ」

松井に理恵とここに残るように言った。

松井
「ムーさんは?」

オレ
「ちょっと出てくる」

松井
「オレも行きます」

オレ
「お前は理恵ママをカバーしてくれ」

松井
「何処へ行くんですか?」

オレ
「心配ない」

松井
「K芸能でしょ」

オレ
「・・・」

松井
「店を閉めて3人で行きましょう」

松井はチーママとウエイターらに店の鍵を持っているか確認した。チーママから鍵を取り上げすぐに店から追い出した。そして店に施錠して3人で店を出た。

K芸能の事務所に向かった。周防町、喫茶英国館の一本下の道。N興行と乱闘したところだった。松井と理恵に英国館に居るように言った。

K芸能のドアをノックした。オレは名前を言って白石に面会を求めた。ドアが開いた。オレは入った。

白石
「わざわざ来て頂いてすみません。^^契約書ですよね?」

オレ
「ちょっと二人だけで相談がありまして」

白石
「今ちょっと重要な連絡待ちで・・・」

オレ
「そうですか」

机の電話が鳴った。隣の若いやつが電話をとり白石の方をみた。白石はオレに断り電話に出た。短いやりとりをして「折り返します」と言って電話を切った。

白石
「・・・郷田の叔父貴ともめたんですって?」

オレ
「いや、誤解があるようなので話あっただけです。明日にはカタがつきます」

白石
「叔父貴は半端な人じゃないですよ」

オレ
「高橋は半端なんですか?(笑)」

白石
「・・・」

オレ
「すでに神戸の本部にアポを入れて明日ゴローちゃんに会うことになってる」

白石
「でも店はもう手に入りませんよ」

白石はまだわかっていないようだった。南署で松井は白石を見つけたが、白石は気付いていなかったのだろう。

オレ
「さっきオレたちが南署を出てから、元川さんとあんたがやって来た」

「その時すでにうちの弁護士が契約書と委任状に押印をもらいました。」

「高橋に誤魔化されたでしょ?」

白石
「・・・」

オレ
「ふたりだけで話がしたい」

オレは白石を連れ出した。外に出ると松井が居た。知らん顔をしてバンブーハウスの向かいにある喫茶店に入った。

白石
「なんでわかったんだ?」

オレ
「あんたが教えてくれたじゃないですか(笑)高橋はハメられたって」

白石
「違う。それはオレじゃない」

オレ
「高橋が逮捕されてすぐに、協力するように言われたのでしょう?」

白石
「今更どっちでも同じか・・・」

オレ
「今ならまだ間に合います協力してもらえませんか?」

白石
「・・・」

オレ
「まだ誰も知らない。今ならオレがフォローします。約束します。」

白石
「でももう」

オレ
「いえ、ここでK芸能が全面的にこっちへ付いている姿勢を見せるだけで、向こうは手が出せません」

白石
「・・・」

オレ
「いくら嵌められたからって、高橋はこれで終わるようなヤツじゃないでしょう」

白石
「わかりました。郷田の叔父貴にはこれ以上協力しません」

オレ
「オレはギャラクシーに居ますから何かあったら連絡下さい」

オレは先に店を出た。松井は離れてついてくる。英国館に入った。理恵が座っているテーブルの隣に前田が居た。

オレ
「何だ来てたのか?(笑)」

前田
「事務所に居たら松井から連絡があって1分で来い!って(笑)全力疾走しましたよ^^」

理恵ママ
「足引っ張ってるようでごめんなさい」

オレ
「美人にはボディーガードがつくもんだよ(笑)じゃー戻ろう」

4人で英国館を出た。松井と前田。この二人が居たらなんの問題もなかった。ギャラクシーに着くとすでに何人かのスタッフが出勤してきていて店の前で待っていた。鍵を開けて店内に入った。

オレ
「他にマネージャーは?」

理恵ママ
「2名いるわ。牧本と島田、もうそろそろ」

オレ
「マネージャーが来たらこっちへ連れてくるように」

松井にそう言い、店内のスタッフを掌握するように指示した。前田にも手伝わせた。オレと理恵ママは更衣室の隣の事務室に入った。

オレはそこにあった電話機から何本かの電話をかけた。

オレ
「白石以外に使えそうな高橋の部下は?」

理恵ママ
「玉城と高坂ぐらいかしら」

オレ
「呼び出してくれる?」

理恵はすぐに電話をとってK芸能に電話を入れてすぐに店にくるように言った。

理恵ママ
「あの子たちは大丈夫かしら」

オレ
「来ればわかるだろう」

理恵ママ
「白石は?」

オレ
「これ以上郷田には協力しない。と言ってくれた」

理恵ママ
「ホステスもウエイターも誰も信用できなくなってきたわ」

オレ
「大丈夫。オレたちがすべてうまくやる(笑)」

理恵ママ
「うん」

ドアがノックされ「松井です」と声がかかった。オレはドアを開けた。松井は牧本と島田というマネージャーを中に入れた。

理恵ママ
「新しいオーナーのムトーさんよ」

オレ
「酒田マネージャーから連絡は?」

牧本
「いえ、まだ今日は会ってませんが」

島田
「私もです」

オレ
「連絡が取れないんだ。他のものにも連絡があったら必ずオレか松井に知らせるように伝えてくれ」

「それから、オレたちが勝つから安心して働いてくれ!^^よろしく」

牧本、島田
「はい。失礼します」

彼らは松井とともに事務室を出た。入れ替わりに前田がビールを持って入ってきた。

オレ
「おっ!スマンな^^」

理恵ママ
「あっ気が付かなくてごめんなさい」

前田
「他には何か?」

オレ
「K芸能の連中がくることになってる」

前田
「了解です」

前田が出て行くと理恵はグラスにビールを注いだ。オレはそれを半分ほど一気に飲んだ。

理恵ママ
「ユーちゃんが居なかったらと思うとぞっとする」

オレ
「理恵ちゃんも気丈に頑張ったさ!^^」

理恵ママ
「ユーちゃん」

オレ
「心配ない。あいつらをきっちりと追い払ってやるさ(笑)」

理恵がビールを注ぎ足した。オレは一気にそれを飲み干した。グラスを置いた。

オレ
「開店前に全員集めて朝礼をやろう。」

理恵
「はい」

▼16時半・・・ギャラクシー店内

早番で出勤しているスタッフを集めた。

オレ
「オーナーのムトーです。引継ぎを含めてもしかしたらバタバタするかも知れませんが、これまで通り安心して働いてください。それから今日から責任者として入る松井です。」

松井
「何でも相談して下さい。これまで以上に店を流行られせて頑張りましょう。それから前任の酒田マネージャーは解雇処分となりましたので、もし連絡などが入った場合、すぐに私に知らせてください。以上です」

オレと理恵はもう1度事務所に入った。

ドアがノックされた。「松井です」と声がかかる。オレはドアを開けた。松井はオレに耳打ちした。

オレ
「白石だけを入れて後は待たせてろ」

松井が白石を部屋に入れた。テーブルを挟んで白石を座らせた。松井はテーブルの脇に立っていた。

白石
「ねーさん。すみませんでした」

白石はそう言ってハンカチを差し出した。左手には包帯を巻がれていた。オレはハンカチを隠すようにそのまま受け取った。

理恵ママ
「白石・・・どうして」

オレ
「誤解があったようだが、白石もハメられたんだ。今はこっちの身内だ」

理恵ママ
「わかったわ。力貸してくれる?」

白石
「はい。申し訳ありません。」

オレ
「コレ、郷田に渡したらどうだ?」

白石
「・・・」

オレ
「それで向こうにもケジメつけたことになるだろう?」

白石
「すみません」

オレは松井に玉城と高坂を入れるように言った。

理恵ママ
「紹介するわ。高橋の部下の玉城と高坂、こちらは高橋の友人のムトーさん」」

オレ
「ムトーです」

玉城と高坂はそれぞれ挨拶した。オレは手短に郷田と揉めていることを説明した。白石と共に理恵に協力する事を依頼した。

オレ
「いいかな?」

高坂
「もちろんです。おかしいと思ってたんですよ」

玉城
「郷田の叔父貴とケンカですか!面白いですね^^」

オレ
「身内でケンカはしない。向こうにもちゃんと話をすればわかってもらえるはずだから」

机の前の電話が鳴った。理恵がとった。

理恵
「郷田の隣に居た梅木があなたと話がしたいって」

オレ
「じゃーこっちへ来るように」

理恵はそう伝えて電話を切った。

理恵
「何かしら?」

オレ
「会ってみればわかるよ。店の奥の部屋は?」

理恵
「用意するわ。あなたたちは暫く居て」

オレは理恵に案内されて店内の一番奥にある別室に入った。そこは20畳ぐらいの広さの特別室になっていた。

窓の外の景色はそれなりにいい。もっともスカイ・オフィスほどではなかったが・・・

ドアがノックされた。松井が声をかけ入ってきた。

松井
「梅木さんがお見えになりました」

オレ
「じゃーこっちへ通してくれ」

ホステスに案内されて梅木は特別室に入ってきた。松井は部屋に残った。

理恵ママ
「梅木さん今度はなんですか?」

梅木
「えームトーさんとちょっと」

オレ
「どーぞかけてください」

ホステスがビールを持ってきた。理恵がグラスにそれを注いでオレと梅木の前に出した。

梅木
「明日、本部へ行く時に私もご一緒しようと思いまして」

オレ
「何故ですか?」

梅木
「誤解があってもいけないと思いまして」

オレ
「どんな誤解ですか?」

梅木
「身内のゴタゴタを他人から聞かされると頭も不愉快だと思いますから」

オレ
「そーですか。しかしその為だけに訪問するわけじゃありませんから、そちらはそちらでアポをとって行って下さい」

梅木
「別に一緒に行っても同じでしょう」

オレ
「同伴者も別に居ますから(笑)」

梅木
「・・・」

オレ
「そう言えば白石が話があるとか?理恵ママ白石呼んでくれますか」

理恵は部屋を出て行った。暫くすると白石を連れて戻ってきた。白石は梅木の前にハンカチを置いた。

白石
「オレの落とし前です」

梅木
「うちがこんなモノを白石さんから受け取る理由はありませんけど」

白石
「・・・」

オレ
「酒田と金も返してもらいますよ」

梅木
「それは誰です?」

オレ
「高橋も本家とは仲がいいですよ!明日、白石も連れて行ってもいいですけどね」

梅木
「・・・」

オレ
「それにうちの弁護士が動いてるから名義変更も明日中には済む。それとも先にこれに何か書いときましょうか?」

オレは高橋の署名捺印された白紙委任状をポケットから取り出して、少し離して梅木に見せた。

梅木
「あんた本当にシロートか?」

オレは梅木を目を細めて見ていた。どういう事態にも対応できるように、緊張感がピークに達していた。そして一歩も引かない意思を示した。

梅木
「わかりました」

オレ
「・・・」

梅木
「じゃーこうしませんか?白石の指で郷田のオヤジに侘びを入れたという事で手打ちに」

オレ
「酒田と金は返してもらいますよ」

梅木
「それは知りません」

オレ
「じゃーダメだ」

梅木
「でも金は半分うちが持ちましょう。これが限度です」

オレ
「消えた6000万の半分の3000万だけですか?」

梅木
「いえ・・・1500万です。(笑)」

オレ
「じゃー2000万だ。それと酒田は?」

梅木
「こっちでも探してみましょう」

オレ
「わかりました。」

梅木
「本部には行くんですか?」

オレ
「いえ止めときます。(笑)代わりに本家へ行ってきます。ご機嫌伺いに」

梅木
「そうですか、じゃー私はこれで、明日もう1度伺います」

オレ
「お疲れ様でした(笑)」

梅木が立ち上げると同時に松井がドアを開けた。

松井
「ありがとうございました」

そのまま梅木を松井が見送りドアが閉まった。

オレ
「白石さん。何かあったら必ずこっちに連絡下さい。ご苦労さまでした」

白石
「失礼しますっ!」

白石も部屋を出た。部屋にはオレと理恵が残った。

理恵ママ
「ゆーちゃん。私、我慢できない」

オレ
「何なんだ(笑)」

理恵が抱き付いてきた。伸び上がってキスをしてきた。

理恵ママ
「1000万は持って行かれたけど、勝ったわっ!^^」

オレ
「まっそれで大人しく引き下がるだろう」

理恵ママ
「それにしてもあなたすごいっ!」

オレ
「その代わりオレは本家に行かないと・・・」

理恵ママ
「ホントに行くんだ?」

オレ
「きっとあいつらは調べるよ!どんな形であれオレが本家に出入りしたことを確認すればそれで諦めるだろう」

理恵ママ
「ご苦労さまです」

オレ
「あはっ^^」

ドアがノックされ松井が戻ってきた。オレたちは特別室を出た。理恵はいつもと同じように客席を回り挨拶をしていた。

オレはカウンターで玉城と高坂と3人で飲んだ。

玉城
「オレ、ムトーさん覚えてますよ」

高坂
「ムトーさんじゃないだろう。叔父貴だろう」

オレ
「いやそれは勘弁して」

高坂
「じゃーどう呼ばせてもらったらいいですか?」

オレ
「周りはムーさんって呼んでいる」

玉城
「ムーさん。なんか親しみがあっていいですね」

オレ
「そっか。じゃーそう呼んでくれ」

高坂
「お前はなれ馴れしいんだよ」

オレ
「別にいいよなれ馴れしくて(笑)」

玉城
「ムーさん。N興行の専務をいきなりぶん殴りましたよね」

オレ
「あーーーあん時居たんだ?」

高坂
「オレの持ってた木刀をとろうとしましたよ」

オレ
「うん。オレ剣道やってたからつい(笑)」

高坂
「うわー危なかった(笑)」

玉城
「高橋の兄貴も言ってましたよ。見かけは優男なのにイケイケだって」

オレ
「あははは^^」

高坂
「松井さんもそんなタイプですね」

オレ
「仲良くしてやってくれ(笑)」

玉城
「はい。^^これからは身内同然ですから」

オレ
「いや、オレたちはあくまでもシロートだから」

高坂
「えっウソでしょ?」

オレ
「ほんとだ」

玉城
「高橋の兄貴と兄弟分になったんじゃないんですか?ねーさんそう言ってましたけど」

オレ
「いやただの友人だ」

高坂
「まーでもオレたちにとってはどっちでも一緒ですけど(笑)」

オレ
「そっか。理恵ちゃんのこと頼むな!^^」

高坂&玉城
「はい。^^」

彼らもとりあえずK芸能の事務所に戻った。入れ替わりに松井がカウンターの傍に立った。

松井
「ムーさん。初日からとんでもないスケールで楽しませてくれますね(笑)」

オレ
「ははは^^暫くは退屈しないだろう(笑)」

松井
「はい^^それからスタッフは整理して、新しく入れていいですか?」

オレ
「あー任せる」

松井
「じゃー明日にでも声かけます」

オレ
「前田は?」

松井
「それが困ったことに、あいつもこっちに残る気になってますよ」

オレ
「それはまずいな(笑)」

松井
「横山もすでに嗅ぎつけているみたいですし」

オレ
「益々まずい(笑)」

松井
「それから、今夜あたり危ないかもしれませんね」

オレ
「一応用心しておく^^」

理恵が戻ってきてオレの傍に立った。松井はカウンターから離れて店内を回りだした。

理恵
「あと私は何をすればいい?」

オレ
「たぶん明日中に決着するだろうけど、でも今夜は一緒に居た方がいいかも知れない」

理恵
「ほんと^^なんか嬉しい^^」

オレ
「ははは・・・」

理恵は店内を回り、オレはカウンターの端に座って様子を見ていた。客の流れホステスの付き方。ウエイターの動き方。広い店なので飽きなかった。時おり理恵はこっちにやってくる。VIP客を詳細を教えてくれた。中にはヤクザっぽいのも居た。理恵はそつなく対応していた。

松井
「関川さんと横山が来ました」

オレ
「えっ?もう嗅ぎつけたのか?」

松井
「何か手伝わせないとうるさいですよ(笑)」

オレ
「そーだな(^。^;)」

▼21時・・・ギャラクシー事務室

関川
「オレたちだけのけ者かよ(ーー;)」

横山
「一体何が始まったんです?」

オレ
「あははは^^バレたか」

関川
「前田に聞いても全然要領を得ないんだよ」

オレ
「ケリがつくまでシークレット・モードなんだ。結構ヤバイことになってるし」

関川
「だったらオレだろう?」

オレ
「うん。まー最初は簡単だと思ったんでな(^。^;)それより店の方は?」

横山
「大丈夫です。人も育ってますからオレたちが抜けても店は回ってますから^^」

オレ
「あっそう(笑)」

店が乗っ取られそうになっているのを防ぐためにヤクザと揉めている。明日にはほぼ決着がつくところだが、まだ油断できない事、店の中にもスパイが居ることなどなど・・・簡単に説明した。

関川
「じゃー明日、敵が手打ちに来ればそれで決着なんだな?」

オレ
「たぶん」

横山
「・・・まだ安心できませんね」

関川
「なんで?」

横山
「手打ちになる前に理恵ママがさらわれたら終わりです。」

オレ
「脅かすなよ(笑)」

関川
「いやその通りだ。徹底してガードしよう」

オレ
「ははは・・・」

関川はちょっと出てくるといって事務室を出た。オレは横山に管理する店の詳細を話した。

横山
「クラブ3軒にホテル1軒ですか・・・とんでもないですね(笑)」

オレ
「せいぜい1年だと思ってくれ」

横山
「それでもすごいですよ!」

高橋は短くても3年は出られないだろうと言うことだったが、オレは1年ぐらいで別会社にして返そうと思っていた。オレ自身それが限界だと感じていた。

24時・・・

客が全て帰った後、終礼を行い。遅番のウエイターやホステスが帰って行った。

オレ
「とりあえず来た以上紹介しとこう」

オレはその場で理恵に関川と横山を紹介した。

理恵ママ
「理恵です。ムーさんにお世話になることなりましたのでどうぞよろしく^^」

オレ
「いやーちょっと誤解が生じる表現に聞こえるけど、仲間という事だ(笑)」

関川と横山は笑いをかみ殺した表情で、それぞれ自己紹介した。松井が近づいてきた。

前田が急ぐようにこっちへきた。

前田
「さっきのK芸能の二人が下でうろついてます」

オレ
「高坂と玉城なら心配ない。きっと同じように心配してくれてるんだろう」

関川
「お前らコレ持ってろ」

関川は松井と前田にどこで買ってきたのか特殊警棒を渡した。そしてオレにも

オレ
「まーお守りだと思うことにするよ(笑)」

前田と横山が先に降りてタクシーを拾いに行った。

その後、4人で外に出てタクシーに乗り込んだ。危ないフインキはなかった。高坂と玉城はオレたちに知らん顔をしながら周辺に気を配っているようだし他にも人数が居るようだった。

関川の取り越し苦労だった。オレと理恵は南海ホテルの前で降りた。一緒に降りようとする関川を押しとどめるのに苦労した。関川は事務所に泊まると言った。

オレはロビーを抜けて反対側からタクシーを拾い理恵とふたりで乗った。生玉の東洋産業のラブホテルに行った。

理恵
「用心のため?」

オレ
「いやここの方が居心地がいいんだ(笑)」

理恵
「なんかリゾートっぽい感じね^^」

オレ
「ジャグジーもある」

理恵
「ほんと^^)」

オレ
「ここはオレがデザインしたホテルなんだ」

理恵
「へーそうなんだ」

オレは事務所に連絡を入れた。横山が出た。松井、前田、関川とも事務所に泊まり込むようだ。オレは南海ホテルとは別のところに居ることだけを伝え、明日の朝にはもう1度連絡を入れることにした。

オレは風呂場に行ってジャグジーに湯を入れた。戻ると理恵はビールを用意していた。オレがグラスを手に持つと、理恵はビールを注いだ。半分ほど一気に飲み干した。

理恵
「ここへは理沙とよく来てるの?」

オレ
「えっ」

理恵
「実は昨日、あなたのところへ行く前に理沙と会ったの」

「高橋があなたに協力を求めていることを相談した」

「その時に理沙が『あの子は私のオトコよ』ってびっくりしたわ」

「そして、最後は協力してくれるだろうって」

オレ
「そっか」

理恵
「私は理沙とこれからも仲良くやるわ。あなたも理沙とうまくやってね」

オレ
「洋子はどうするんだ?」

理恵
「忘れてたわけじゃないんだけど・・・それもうまくやって」

オレ
「いずれわかるだろうな」

理恵
「そうね。わかった。私から洋子にはうまく話をするわ」

オレ
「愛想尽かしされるだろうな(笑)」

理恵
「たぶんそうならないからやっかいなのよねー^^」

オレは別の事を考えていた。よほど玲子の事を聞こうか?と思ったが今のタイミングで聞くと必ず見破られてしまう。と感じて聞かなかったが・・・

オレ
「風呂入ろう^^」

オレはその場で素っ裸になって風呂場へ行った。頭からシャワーを浴びた。肩から背中・・・そして浴槽に入った。

理恵が頭にタオルを巻いただけで現れた。見せ付けるようにシャワーを使った。オレは背中の「蒼い龍」から視線をはずすことが出来なかった。

ゆっくりとした動作で浴槽に入ってきた。オレはスイッチを入れた。浴槽の中の水がブルーに変わり大きな気泡が湧き出した。

理恵
「うわー気持ちいい^^」

オレ
「なっ!いいだろう?疲れがとれるし楽しい^^」

理恵
「私、一般の温泉入れないから嬉しい(笑)」

オレ
「あははは^^あっちのホテルにも導入したら?」

理恵
「そうね。もうあなたのモノなんだから自由にして」

オレはスイッチを切り替えた。浴槽の中が青から赤に変わりジェット水流が噴出した。

理恵
「すごい^^」

オレ
「いつか一緒に入れる温泉に行こう^^」

理恵
「うん。楽しみにしてるわ」

理恵は抱き付いてきた。キスをし理恵の舌がオレの舌を探り、軽く吸った。そして強く。理恵の手はオレのモノをまさぐった。オレの手も理恵の股間に入った。

オレ
「ここで立って」

理恵はオレの前で立ち上がった。目の前に黒々としたところがあった。オレは理恵の体を動かして尻から上を見た。腰のあたりから背中にかけて、龍が描かれている。ものすごい迫力の龍だった。

理恵
「理沙のおじいちゃんに彫ってもらったのよ」

オレ
「えっ」

理恵
「理沙の『蝶』もそうよ」

オレ
「そうだったのか」

理恵
「理沙のおじいちゃんは、たぶん日本一の彫師」

オレは立ち上がった。理恵を浴槽の淵に手をつかせて腰を持って後ろからゆっくりと挿入した。

理恵
「あぅ」

オレは龍を見ながらゆっくりと出し入れした。龍の目がオレを睨んでいる。オレは激しく突きたてた。龍も動きだした。

理恵
「あーーーあーーーあーーー」

理恵がいった。オレは龍から離れた。理恵の体を浴槽に入れて抱き寄せた。

オレ
「この龍はオレが守る。」

理恵
「ありがとう」

オレ
「高橋が出てくるまでだけど」

理恵
「はい」

長い1日が終わろうとしていた。一瞬たりとも気が抜けないゲーム。下手をするとけが人が出る可能性があった。手に入れたものは大きいかも知れないが、あくまでも預かり物だと思っていた。

▼翌日・・・

事務所に電話を入れて理恵をスカイ・オフィスに連れて行った。松井と前田がマンションの入り口に居た。道路の脇に関川も居た。ちょっと笑ってしまうぐらい大げさな警戒姿勢だった。

理恵にオレの部屋を使うように言った。

オレ
「じゃー理恵ちゃんを頼む!3時にギャラクシーに戻るから」

関川
「ほんとに神戸に行くのか?」

オレ
「行かないとブラフになってしまう(笑)」

関川
「やっぱりオレも行く」

オレ
「あははは^^神戸の方が安心なんだよ^^連絡は頻繁に入れるから」

トランザムに乗って神戸の本家、由紀ちゃんの自宅を訪問した。隣の広い駐車場に誘導された。中年の黒いスーツに身を固めた男二人に案内されて、玄関脇から中に入った。

別の男に案内されて由紀ちゃんの部屋に案内された。間単に事情を説明した。すぐに由紀ちゃんはゴローちゃんに連絡を入れてくれた。電話を代わって貰ってあらためて挨拶に伺うことを約束した。そして東京に居る満さんにも電話したが、あいにく不在だった。

トランザムに由紀ちゃんを乗せて六甲山へ上がった。オリエンタル・ホテルのレスランで昼食をとった。

オレ
「変な話で煩わせてごめん」

由紀
「ユーイチがこういうの珍しいじゃない。苦労したんでしょ?」

オレ
「ちょっと危なかったんだ(笑)」

由紀
「そういう時は絶対に遠慮しないのよっ!」

オレ
「ありがとう」

由紀
「私また私東京へ行くことになったの」

オレ
「そーなんだ。長期で?」

由紀
「うん。いろいろ仕事で企画したいことがあるし」

オレ
「オレが手伝えることがあったら何でも言ってくれ^^」

由紀
「ユーイチが一緒にやってくれたらいう事なしなんだけどね」

オレ
「あははは^^暫くまたミナミから離れられなくなっちまったから」

由紀
「まーお互い頑張ろう^^」

暫く見ない間に由紀ちゃんはずいぶん明るくなったように感じた。もしかしたら恋人とうまく行ってるのかも知れなかった。

▼14時・・・山村事務所

山村
「午前中にホテルの方の名義変更は終了しました。これで正式にムトーさんの所有となりました。あとそれぞれの店の方のテナント契約の方は司法書士に動いてもらってます。これも数日中に終わる予定です。」

オレ
「ありがとうございました」

山村
「高橋さんには午後から会える予定です。何かお伝えする事は?」

オレ
「トラブルは今日中に穏やかに解決します。とだけお願いします」

山村
「わかりました。事件の方は高橋氏は否認を続けています。その方向で進めます」

オレ
「その件なんですが・・・」

オレはいくつか自分の考えを言って、裁判でそれが有利になるかどうか相談した。そしてひとつのプランを実行してみることにした。

▼16時・・・クラブ「ギャラクシー」特別室

梅木
「2000万・・・ご確認下さい」

オレ
「簡単に」

オレは紙袋に入った帯をしてある現金を紙袋ごと松井に渡した。松井は関川と二人で現金をチェックした。

梅木
「ムトーさんはアメ車が好きなんですね?人気のトランザムいいですね」

オレ
「ほんとはコンバーチブルが欲しかったんですけど、時間がかかるのでハードトップにしました」

梅木
「でもオープンは危険ですよ(笑)」

オレ
「そーですね。でも危険な方が好きなんですよ^^」

オレは松井の方を見た。松井は頷いた。

オレ
「じゃー受け取りは出せませんが、確かに」

梅木
「・・・これでいいですね!」

オレ
「酒田は?」

梅木
「近日中に姿を現すんじゃないですか?じゃー私はこれで」

オレ
「松井。お見送りを!」

松井が梅木を送って行った。関川とオレは特別室から出なかった。暫くすると松井が事務室に居た理恵を連れてきた。遅れて前田と横山が入ってきた。

オレ
「とりあえずコレ返しておく」

理恵ママ
「ムーさんが持ってて」

オレ
「わかった。金の事はオレでもいいし横山に言えばいつでも大丈夫だから」

理恵ママ
「すみません」

オレ
「売買契約書にも署名捺印をすでに貰って名義変更も完了した」

前田がいつの間にかビールを持ってきた。関川、松井、前田、横山、理恵、それぞれのグラスにビールを注いだ。

オレ
「今日のよき日を」

「神に感謝っ!」

オレは一気にビールを飲み干した。

オレ
「という事で100%とはいかなかったが、90%の勝利ということで一件落着だ^^」

理恵ママ
「皆さんのおかげです。本当にありがとうございました。そしてこれからもどうぞよろしくお願いいたします」

松井
「ところでムーさん。トランザム乗ってるんですか?」

オレ
「あっいや、ちょっと友人に借りているんだ」

関川
「梅木がそれ知ってるってことは、あいつらやっぱり本家をチェックしてたんだな」

横山
「でもこれでもう手を出せないでしょうね」

前田
「さて、忙しくなるなー(笑)」

オレ
「すでに動いている店ばかりだからな。焦らずにやろう^^」

松井
「ムーさん。イーグルマスクですか?」

オレ
「もちろんだ。^^後で乗せてやるよ」

松井
「絶対ですよっ!^^」

オレ
「ああ(笑)」

その後、彼らは一斉に部屋を出て行った。さっそく「泉」や「ポール」のチェックを行うようだった。そしてオレと理恵だけが残った。

理恵ママ
「高橋が苦労してた事、あなたは一瞬で解決したのね」

オレ
「ん?オレは外部の人間で余計なしがらみがないから(笑)」

理恵ママ
「それなのに、周りの人の前でもなんかとっても可愛いし^^」

オレ
「ははは^^今日からまたブラブラするよ(笑)」

理恵ママ
「私も引越しすることにしたの」

オレ
「そう。」

理恵ママ
「理沙に電話したら、ユーちゃんにデザインしてもらったらって」

オレ
「あっそう(笑)」

理恵ママ
「絶対にお風呂の大きいところ、できたらジャグジーが設置できるところ探す」

オレ
「ふむっ水回りの大改装だな」

理恵ママ
「楽しみにしておいて」

オレ
「ははは^^」

▼17時・・・スカイ・オフィス

村上
「お疲れさまです」

オレ
「うん。なんかちょっと疲れた(笑)」

村上
「皆さん心配してました」

オレ
「さっちゃんにも心配かけたけどなんとか無事終わった^^」

村上
「良かった。^^ビールがいいですか?」

オレ
「うん」

村上
「私もいいですか?」

オレ
「おう^^ふたりでカンパイしよう」

さっちゃんがバドワイザーとグラスを2つ持ってきた。オレはグラスを持ちさっちゃんに注いでもらった。オレはさっちゃんのグラスに注いだ。

オレ
「全員無事で一件落着しました。カンパイ^^」

グラスを合わせた。オレは一気に半分ほど飲んだ。見るとさっちゃんもいい飲みっぷりだった。

オレ
「近々、宴会をやろう^^」

村上
「はい。^^でも関川さんって面白いですね」

オレ
「そう?」

村上
「1時間に1度か2度このマンションの周辺を見回ってくるって、戻ってくるたびに『ムトーから電話はあったか?』で心配されているんです」

「そのたびに前田さんや松井さんが怒られて」

オレ
「なんで?」

村上
「ムトーさんを追っかける予定だったそうですが、すぐに戻って来たんです」

「タクシーを拾った気配がないって」

「皆さんムトーさんの新しいクルマ知らなかったみたいです」

オレ
「あははは^^ついてこられたらオレは困る」

村上
「私は全然心配してませんでした」

オレ
「そう?」

村上
「正義の味方が負けるわけありませんから」

オレ
「あははは^^こんなスケベな正義の味方はいないよ(笑)」

村上
「そーですよねーいっぱい女性の方からお誘いありますもんね(笑)」

オレ
「さっちゃんには全部知られてるなー」

村上
「聞いていいですか?」

オレ
「なに?」

村上
「どーしてそんなに・・・バカっぽく振舞うんですか?(笑)」

オレ
「ぎゃははは^^」

村上
「すみません。(^。^;)でも、その方が可愛くていいです^^」

そんな話をしながらさっちゃんは暫くいた。そして先に上がってもらった。

オレは自分のデスクのイスに座り後ろの窓の方に向いた。夜のミナミの灯りが見える。理恵はオレの事を「ミナミのオトコ」だと言った。いつの間にかそんな風になってしまっている自分に一時期嫌気がさして早くこの世界から出て行こうと思っていたが・・・現実は益々離れられない状況になっていた。そしてそれは思っていたほど苦痛ではなくなっている。

そう言えば理恵が引越しすると言っていた。一時的にせよ店が増えた事で、事務所もより多くの人間が集まる事になるだろう。オレもいつまでも事務所暮らしをしているわけにもいかなくなった。自分の部屋をまた探そうと思った。



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| My History | 10:05 | comments(2) | trackbacks(0) | ↑PAGE TOP
http://www.youtube.com/watch?v=fJFZLPiU4Dw

これなら
音だけでも取り出せますね。
| 藤野 | 2010/05/12 12:54 PM |

おぉーーーあった^^すげー^^
ん十年探していた曲がゴロゴロ出てきた。
いやーもうさっそくDLしまくりですよ

どもーヾ(^o^)
| るーく | 2010/05/13 8:02 AM |










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