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もうひとりの俺


「もうひとりの俺」色んなバージョンがある中で新しいのを見つけたので保存^^という事で当初は布袋寅泰とのシンプルな映像だったのですが、削除されてしまいましたので、ライブ版に差し替えました。

1981年8月・・・

湿度が高い。阪急六甲の駅を降りて北側に歩きだしたが、すぐに汗が吹き出した。このあたりはよく知っている。特にこの季節、高校の頃に六甲山のオリエンタル・ホテルでバイトしていた。阪急六甲の駅前のバスに乗って・・・よく馴染んだ街だった。

駅から歩いて数分の篠原本町・・・機動隊のトラックが止まっていた。制服警官が何人も張り付いている。オレはちょっと迷ったが、仕方がない。その為に帰国したのだがから

オレは正面の門に近づいた。すぐに制服警官に阻止された。職質を受けた。名前と来訪の目的を告げた。私服の刑事が4人ほどやってきて同じことを聞かれた。ボディーチェックをされた。

オレはインターフォンを押した。


「はい」

オレ
「ムトーユーイチと申します。由紀さんはいらっしゃいますでしょうか?」


「暫くお待ち下さい」

待っている間も制服警官や私服の刑事はオレの周辺を取り囲んでいた。TVカメラやスチールの記者も数チームいた。

5分ほど待たされた。

門の勝手口が開いた。黒服のわりと普通っぽい男がいた。


「どうぞ中へお入り下さい」

男に招き入れられた。男の隣には2人別の男がいた。そっちは明らかにそれとわかるフインキの男たちだった。


「申し訳ございませんが、改めさせていただきます」

男は慇懃にそう言った。隣の男二人がオレのボディーチェックをした。オレは何も持っていない。ポケットに裸の現金が入っているだけだった。


「どうぞこちらへ」

オレは男に案内されて石段を上がって行った。玄関前から南の方をみた。いい景色だった。玄関に入ると由紀ちゃんが居た。

由紀
「ユーイチ!来てくれたんだ。ありがとう」

オレ
「おっす!ひさしぶり^^」

オレは由紀ちゃんに案内されて応接室の方へ向かった。その間、数名の男たちの緊張した視線を浴びた。応接室に入りソファに座った。

由紀
「どうしてたのよ?行方不明になってるって聞いてたけど」

オレ
「あははは^^その通り、日本には居なかったから」

由紀
「えっじゃー外国に行ってたの?」

オレ
「うん。昨日ちょっと帰ってきた」

由紀
「もしかしてわざわざ・・・?」

オレ
「まーついでもあったし」

ドアがノックされた。「失礼します」と声がかかり男が入ってきた。目の前のテーブルに冷たいお茶が出された。オレは礼を行ってそれを一気に半分ほど飲んだ。男が出て行く前に別の声がかかった。


「まームトー君。よく来てくれて・・・」

オレは立ち上がった。

オレ
「すみません。大変な時にお邪魔して」


「ううん。今日はっとてもいい日だわ」

由紀
「ユーイチ。日本に昨日帰ってきたばかりなんだって」


「そう^^後でゆっくり聞かせて、先におとーちゃんに」

オレ
「はい」

オレはまだ仮の祭壇が置かれている広間に案内された。そこには十数人の男たちが居た。アロハシャツに白のカーペンターパンツ。まるで場違いな服装に男たちの視線が集まった。オレはそっちに向けて軽く会釈した。

オレは祭壇から少し離れたところで一礼して、祭壇に近づいた。大きな写真が飾られている。暫く見ていた。

一昨年の冬、高橋の通夜の時に来てくれた。それが最後だった。そんな事を昨日のことのように思い出しながら・・・前に出て正座をし線香を上げた。手をあわせた。

オレはソコから離れた。

オレ
「ありがとうございました」


「こちらこそ、ありがとうね」

由紀
「ユーイチ。おなか減ってるんじゃない?」

オレ
「いや、まーその(笑)」

由紀
「私の部屋に居て何か用意するから」

オレ
「いやー悪いなー^^」

オレは男に案内されて長い廊下を渡った。別に案内されなくてもその場所は知っていたが・・・部屋の前まできた。


「どうぞこちらです」

オレ
「ありがとう」

オレはドアのノブに手をかけた。


「それから、うちの渡辺が後でお時間を頂けたらと言っております」

オレ
「そう。じゃー後で」

オレはドアを開けて由紀ちゃんの部屋に入った。ちょっとしたリビングとその奥にたぶん寝室。部屋の中は空調が効いていた。窓の外からは六甲山の西側がよく見えた。

由紀ちゃんがトレーを持って入ってきた。その後ろには男がワゴンを引いてきていた。トレーをテーブルに置いて由紀ちゃんはワゴンを部屋に入れさせた。

由紀
「ほんとは何処かへ出かけられたらいいんだけど、そうもいかなくて(笑)」

オレ
「うわー昼から豪勢なメニューだ^^」

目の前には焼きたての大きなステーキとスープにサラダ、そしてライスが置かれていた。

オレ
「いただきまーす^^」

由紀
「(笑)何処にいたの?」

オレ
「アメリカをぶらぶらしてて、今はシスコで漁師やってる」

由紀
「えっ?漁師?ユーイチが?」

オレ
「おかしい?(笑)最近のスシブームで漁師も結構な稼ぎになるんだ。60センチもあるヒラメがばんばん獲れるんだ」

由紀
「へーそうなんだ^^面白そうね!」

オレ
「一応ダイビングのインストラクターとしてグリーンビザも降りたし、なんとかやっていけてる」

由紀
「いいなー私も行きたいなー」

オレ
「そう言う予定があったんじゃなかった?」

由紀
「うん。ちょっと延び延びになってて」

オレ
「まっ向こうはオレの方が先だから、由紀が来たら遊んでやるよ(笑)」

由紀
「ほんと?約束よ!(笑)」

ワゴンに乗っていたジャーから由紀ちゃんはごはんのお代わりを入れてくれた。オレはテーブルに出されたものを残さず食べた。

由紀
「いつまでこっちに居るの?」

オレ
「んーーー1週間ぐらいは^^」

由紀
「実家に?」

オレ
「いや、Pホテルに居る」

由紀
「じゃー連絡する^^」

オレ
「うん」

オレは由紀ちゃんと一緒に部屋を出た。さっきの広間に行った。オレを認めるとおばさんはオレの方に来た。

オレ
「ごちそうさまでした^^」


「バタバタしててごめんね。また是非ゆっくりできる時に来てね」

オレ
「はい」

オレは玄関に向かおうとしたが、表は騒々しいから車で送って行かせると言って、広い駐車場へ続く出口の方へ向かった。そこにはゴローちゃんが居た。

由紀
「じゃー電話するからね」

オレ
「うん。また^^」

オレは階段を降りてクルマに乗った。後からゴローちゃんが乗ってきた。

渡辺
「ねーさんも由紀ちゃんも喜んでたよ。ありがとう」

オレ
「いや、不謹慎な格好でお騒がせしてすみません(笑)」

渡辺
「あははは^^確かに、大騒ぎになった(笑)」

クルマは駐車場を出るとすぐにスピードを出して走った。全ての窓にスモークシールドが貼られて、外からは見えない。オレはいくつかの話を黙って聞いていた。磯上通りで降ろしてもらった。

渡辺
「そう言うことで、何かあったら必ずオレのところへ連絡してくれ」

オレ
「はい」

車から降りて歩き始めた。歩道の先が陽炎で揺れている。オレはサングラスをかけた。体全体に不快な熱がまとわりつく。シスコのカラっとした気候に慣れてしまったオレはうだるような暑さに辟易した。

ヨーコの店の前にはSRは停まっていなかった。オレはサングラスをかけたまま店に入りカウンターに座った。

ヨーコ
「・・・いらしゃいませ」

オレ
「ビール。バドワイザーがあったらソレ」

ヨーコはオレを凝視している。どうやらすぐにバレたようだ。オレはサングラスを外した。

オレ
「メシはさっき食ったんだ(笑)」

ヨーコ
「ヒロっ!!!」

オレ
「SR故障でもしたか?前に停まってないけど」

ヨーコ
「あなた一体・・・」

オレ
「(笑)」

ヨーコ
「ショーヘーに電話するけどいいわね」

オレ
「先にビールくれ^^」

表に居た女の子がオシボリと水を持ってきた。そしてヨーコはオレの目の前にバドワイザーの缶を置き無線電話機を取った。オレはバドワイザーのプルトップを引いて口をつけ一気にのどを鳴らして飲んだ。ヨーコがカウンターから出てきてオレの隣に座った。

ヨーコ
「みんながどれだけ・・・」

ヨーコはオレの方へ向き直って座っていた。何かを言おうとして止めたようだった。

オレ
「イイオトコできたか?(笑)」

ヨーコ
「男嫌いで通しているわ(笑)ヒロは元気そうね」

オレ
「ああオレはいつだって元気さ」

ヨーコ
「1年半ぶりよ!今、何処にいるの?」

オレ
「ここに居るじゃないか(笑)Pホテルに泊まってる」

ヨーコ
「そう。なんかちょっと逞しくなったような気がするけど?」

オレ
「肉体労働者だからな」

オレはバドワイザーを飲み干して缶を置いた。

オレ
「じゃーまた来るよ」

ヨーコ
「待って、ショーヘーがもうすぐに来るから」

オレ
「いやまだ行くところがあるんだ。6時にPホテルのロビーで合おうと伝えといてくれ」

ヨーコ
「絶対よ!約束だからね」

オレ
「ああ」

オレはヨーコの店を出てポートアイランドに向かった。この春から開催されているというポートピア博覧会場へ入った。夏休みと重なってとんでもない人ごみの中、時間潰しにうろついたが・・・特に面白さは感じなかった。

▼18時・・・Pホテル

横山
「ムーさん・・・」

オレ
「おう^^やっぱりお前も来たか(笑)」

浜田
「ひさしぶりだな^^ヒロ」

オレ
「うん。暫くぶりだ(笑)」

オレたちはレストランの方へ行った。海が見える窓際の席に座った。適当に食べ物を頼み、後はビールを注文した。

浜田
「どうしてたんだ?」

オレ
「サンフランシスコからハーレーに乗ってサンタモニカまでイージーライダーをした」

浜田
「へーそりゃーご機嫌だっただろう」

オレ
「それからNYへ行ってゴロゴロしてた。」

浜田
「ふんふん。それで?」

オレ
「今はサンフランシスコで漁船を借りて漁師やってる^^」

浜田
「漁師?」

オレ
「それまであまり食わなかった魚がスシ人気で漁師も好調なんだ(笑)」

オレはビールを飲みながら話した。横山は口を挟まずに黙って聞いていた。

オレ
「横山、お前がオレの口座に入金してくれた金で結構遊べたよ!^^」

横山
「・・・」

オレ
「なんだどうした?怒ってるのか?」

横山
「ムーさん。すみませんでした。。。」

それ以上横山は声にならず声を殺して泣いた。

オレ
「そっか。気にするな(笑)浜田のところはどう?」

浜田
「なんとか日本橋だけはオレが買い取って確保したけど」

オレ
「借金だらけになっちまったか(笑)」

浜田
「ヒロ。お前カンパニーがどうなったか知ってるのか?」

オレ
「ん?誰かに全部盗られたんだろう?」

横山
「・・・オレが全部悪いんです」

オレ
「アホっ!(笑)もともとオレたちは何もないところから始まって、ちょっといい気になっていただけなんだ。そんなモノは最初から長続きしないもんなんだよ」

浜田
「お前は簡単に言うけど・・・みんな大変だったんだ。そして散り散りバラバラになっちまったんだぜ」

オレ
「死人は出ていないんだろう?ならいいじゃないか(笑)オレはアメリカで何度も死ぬかも!って思ったさ。バイクで野宿してるところを強盗に襲われたり、NYでもそうさ。漁師を始めても危ない時は何度もあった。でも生きてりゃこうしてまた会える」

横山
「ムーさん。」

オレ
「何だ?」

横山
「松井さんが服役中です」

オレ
「・・・どういう事だ?」

横山は事の次第を話し始めた。伊藤忠の沢渡から大きな不動産取引の話が持ち込まれた。そしてその相手が詐欺師グループで、結果的にカンパニーは騙されて壊滅的な被害を蒙った。その処理を石井が奔走したが間に合わず、カンパニーは不渡りを出し倒産した。

すべての店舗は押さえられた。

そして数ヵ月後、ギャラクシーの新オーナーには沢渡が・・・Maggieはその混乱の中で売却され、Mary'sはマリーらが店を辞めたことで閉鎖、時を同じくしてJulianも閉鎖された。

LINDAは玲子の会社の所有だったので直接的な被害はなかったが南店を閉めて、今は北新地のみで営業を行っているようだ。

生玉のホテルは1軒が売却され、もう1軒は大下社長名義になっていたので唯一それだけは残った。

クラブ純子、クラブキャッツとも秋には閉店したと言う。

松井は沢渡がギャラクシーのオーナーになったことでその裏事情を知り、最後の話し合いをするために前田とともにギャラクシーのビルの前で待ち伏せたが・・・結果的に沢渡を痛めつけて傷害罪で逮捕、起訴され・・・実刑を食らった。

オレ
「松井はいつ頃出れそうなんだ?」

横山
「あと数ヶ月で仮釈放が望めるようです」

オレ
「そっか。関川や前田は?」

横山
「ふたりとも行方不明です」

オレ
「お前は今どうしてる?」

横山
「内海エンタープライズでお世話になってます」

オレ
「そーか^^内海のジジーのところか(笑)」

オレはウエイターにビールを追加注文した。横山や浜田はビールにも料理にも手をつけていない。

横山
「ムーさんはどうするんですか?」

オレ
「オレ?オレはシスコで漁師だ^^」

横山
「・・・」

オレ
「ん?お前も来るか?鍛えてやるぞ(笑)」

横山
「いえ。オレはミナミに残ります」

オレ
「残ってどうする」

横山
「絶対に再起を図ります」

オレ
「やめとけ」

横山
「何故ですか?」

オレ
「そんな思いつめた顔をしてマイナスの感情を持ち続けるような生き方は止めろ」

横山
「・・・」

浜田
「お前、何しに帰ってきたんだ?」

オレ
「ちょっと線香を上げに帰ってきたんだ。ただそれだけだ」

横山
「もうそれは終わったんですか?」

オレ
「あー終わった。ポーピア博も見たし満足だ(笑)」

横山
「ムーさん。変わりましたね」

オレ
「そっか?オレはお前の方が変わったと思うけどな?」

浜田
「ヒロ・・・横山はなー」

横山
「ムーさん。オンナの事は気にならないんですか?」

オレ
「ならない(笑)」

横山
「そうですか。わかりました。じゃーオレはこれで帰ります」

横山は席を立って出て行った。

浜田
「いいのか?」

オレ
「何が?」

浜田
「横山をほっといて」

オレ
「あいつが決めたことだろう?好きにすればいいさ」

浜田
「あいつは必死で頑張ったんだけどな。やっぱりカンパニーはお前が居ないとダメだったんだ」

オレ
「たった1年半の留守も守れないんじゃ仕方ないだろう(笑)」

浜田
「・・・厳しいな」

オレはそこで浜田と別れて、花隈公園の上の福原へ行った。適当なソープランドを見つけてひさびさに日本人のオンナと笑いながらエッチをした。そして深夜、ホテルに戻った。

▼翌日・・・

夕方まで三宮や東通り、北野あたりを観光客よろしくうろついた。ポートピア博の影響で昼間でも観光客でどこもいっぱいだった。

阪神電車で梅田まで出た。地下鉄に乗り換え「心斎橋」で降りた。駅の階段を上がって心斎橋通りに出た。

さすがにここまで来ると感慨深いものがある。目の前のマグドナルドへ入った。ハンバーガーセットを買って席につく。隣の高校生風の女の子を見た。ふとユーコの事を思い出した。もう女子大生になっているだろう。

マグドを出て東洋ビルへ行ってみた。1階のテナントに入っていたディスコ「クロス」はもうなかった。変わりに「ケントス」という名前で営業していた。「カプセル・イン・トーヨー」と大きく書かれた看板をみながら1階のフロントに入った。


「いらっしゃいませ^^」

オレ
「ムトーと申しますが、横山さんいらっしゃいますか?」


「少々お待ち下さい」

どうやら横山は居るようだった。男は内線電話で何かを言うとすぐに切った。


「すぐに降りてきますので、どうぞそちらにおかけになってお待ち下さい^^」

オレは言われるままに脇のソファに座って見ていた。その間も客の出入りはあり、結構繁盛しているようだった。EVの扉が開き客と一緒に横山が制服のようなブレザーを着て現れた。

横山
「なんですか?」

オレ
「うん。ちょっと出れるか?」

横山
「・・・わかりました」

横山はフロントの男に何か言った。オレは先にそこを出て外で待った。向かいの店「ゴースト・タウン」はまだ健在だった。

オレ
「一杯奢ってやるよ(笑)」

横山
「・・・」

オレは久しぶりの周防町を歩いた。ディスコ「葡萄屋」を過ぎ次の角を南に曲がった。そしてギャラクシーのあるビルの前まできた。

横山
「ここへ入るんですか?」

オレ
「おう^^」

エレベーターで最上階まで行った。

黒服
「いらしゃいませ^^」

知らない顔だった。

オレ
「ムトーが来たとママに伝えてくれ」

黒服
「かしこまりました。少々お待ち下さいませ」

横山
「ムーさん」

オレ
「何だ?(笑)」

横山
「いえ」

佐和子がやってきた。オレの顔を見ても驚いた様子はない。すでに連絡が入っているようだった。

佐和子
「ようこそいらっしゃいました。どうぞ中へ」

オレ
「相変わらず固いやつだな(笑)」

オレはたちは佐和子に案内されて店内に入った。時間が早いせいかまだ客はほとんど入って居なかった。オレたちは特別室に通されソファに座った。

見知らぬホステスがブランデーセットを用意した。

佐和子
「もうすぐオーナーが来られますので」

オレ
「慌てなくていいぞ!こんないい酒飲むの久しぶりだから(笑)」

佐和子
「・・・」

オレ
「横山、いつまでふてくされてんだ?そんな顔してたら運も回ってこないぞ(笑)」

横山
「一体何を・・・」

オレ
「お楽しみはこれからさ(笑)」

オレはホステスが作ったブランデーの水割りを飲んだ。旨かった。奥の扉が開き、男が二人入ってきた。

沢渡
「どうもお待たせしました」

オレ
「うん。」

梅木
「久しぶりですねムトーさん」

オレ
「ああ(笑)」

オレたちの正面に沢渡と梅木は座った。ホステスは離れて代わりに佐和子が座った。

沢渡
「ムトーさんには色々と誤解されていると思いますが・・・」

オレ
「ん?オレは何も誤解はしてないよ^^資産10億の会社がイカサマ博打にひっかかったんだろう?」

沢渡
「さー?でも処理は合法的でした」

梅木
「それではコレ、納めてください」

オレ
「なんですかこれは?」

梅木
「そういう指示がありましたもんで」

オレ
「横山、確認しろ」

横山はテーブルに置かれた白い封筒を手にとって中を調べた。

横山
「額面1億の小切手です」

オレ
「振出人は?」

横山
「沢渡開発です」

オレ
「ほー沢渡さんが振り出した小切手を梅木さんが手渡してくれるんですか?」

沢渡
「・・・」

梅木
「博打の負けの1割戻しだと思ってください。(笑)それに誰が出そうと金は金ですからいいでしょう」

オレ
「ははは^^そっか」

梅木
「じゃーこれで手打ちってことでいいですね」

オレ
「せっかくだからゴルフぐらいしたいなー」

梅木
「ゴルフ?」

オレ
「佐和子。今度の頭取のコンペいつだ?」

佐和子
「・・・」

沢渡
「ムトーいいかげんいしろよ!お前の時代はもう終わったんだ」

オレ
「(笑)佐和子いつなんだ?」

佐和子
「・・・明後日です」

オレ
「場所は?」

佐和子
「池田ゴルフ倶楽部です」

オレ
「うわー懐かしいなー^^」

沢渡
「相変わらず調子のいいヤツだな」

オレ
「沢渡、明後日お前休め!代わりにオレが行く」

沢渡
「なんだと?頭がおかしいんじゃないか?」

オレ
「佐和子7時にスカイ・マンション前に迎えに来い」

佐和子
「・・・」

沢渡
「あははは^^佐和子はオレのオンナだぞ」

梅木
「それじゃー私はコレで、後は好きにやってください」

そう言って梅木はその場を立って出て行った。沢渡は引きとめようとしたが、梅木は首を振って出て行った。

オレ
「沢渡。いいこと教えてやろうか?」

沢渡
「・・・」

オレ
「オンナは何発やっても自分のオンナじゃないんだ(笑)だけどな、家族は10年会わなくても家族なんだよ」

沢渡
「酔っ払ってるのか?(笑)」

オレ
「お前が勘違いしているようだから教えてやったのさ」

沢渡
「そういうのを負け犬の遠吼えって言うんじゃなかったか?(笑)」

オレはブランデーの水割りを口にした。オレは目を細めて沢渡を見ていた。

オレ
「すぐに帰ろうと思ってたんだが、松井がもうすぐ出てくるらしいからオレはそれまで日本に居るよ」

沢渡
「・・・」

オレ
「じゃーゴルフの件は頼んだぞ!(笑)」

オレは席を立った。店内を通りながら様子を見た。見知った顔のホステスががまだ何人か残っていた。オレはそれらに手を振りながら店を出た。

横山
「ムーさん。すみませんでした。。。」

オレ
「よく泣くやつだなー(笑)」

横山
「・・・すみません(笑)」

オレ
「さて次行くぞ!オレが顔を出せる店はどこだ?」

横山
「マリーのところなら」

オレ
「よしそこへ行こう」

オレの足は自然と元のMary'sのあった方へ向いた。

横山
「そっちじゃありません。こっちです」

オレ
「そっか^^」

横山に案内されて小さなテナントビルに入った。階段を上がった。扉の上にはネオン菅でMary'sと書かれた看板が出ていた。オレは扉を開けて入った。

「いらっしゃいませー^^」

複数の声がかかった。中からひとりのオンナが出てきた。


「おひとりですか?」

オレ
「いや二人だ^^」


「じゃーこちらへどうぞ^^」

オレはサングラスを外した。女はボックス席に案内する。オレは店内の様子を見ながら歩いた。ひとつ手前のボックス席、そこでマリーは客の相手をしていた。オレと目が合った。オレはウインクをした。

席に着こうとしたら、突然後ろのテーブルから大きな音がした。テーブルの上のアイスペールが落ちたようだ。

マリー
「ユーイチ」

オレはゆっくりと振り向いた。マリーは立ち上がっていた。

オレ
「うん。元気そうだな^^」

マリー
「うわーーー」

マリーは大きな声を上げてオレに抱きつき泣いた。店内の注目が一斉に集まった。カウンターの方を見るとナミが居た。ナミもオレに気付いたようだった。

オレはマリーの背中を撫でてやり、おさまるのを待った。

オレ
「一杯飲ませてくれ^^」

マリー
「うん」

オレは案内されたテーブルにようやく座ることができた。マリーは奥へ行った。きっと化粧でも治しているのだろう


「ママのお知り合いだったんですね」

オレ
「うん。」


「もしかしてムトーさん?」

オレ
「ん?」


「やっぱり^^いつもママが言ってましたから」

オレ
「なんて?」


「いつかその人が帰ってくるから、それまでミナミを離れられないって」

オレ
「そう」

目の前のブランデーセットで女が水割りをつくった。そしてテーブルの前にナミがやってきた。

オレ
「よっ!元気にしてたか?」

ナミは女を押しのけるようにしてオレの隣に座った。

ナミ
「ゆーちゃん。ずるいっ」

そう言うとナミはオレに抱き付いてキスをした。ナミの舌がオレの舌にからんだディープなキスだった。そしてナミはゆっくりと離れてカウンターに戻った。回りの客が拍手をして囃し立てた。

マリーが戻ってきてオレの隣に座った。

マリー
「あらナミに先を越されちゃった?」

オレ
「あーいきなりだった(笑)」

マリーは気を取り直したようだった。そしてオレの方を向いた。しかしその大きな目にまた涙が浮かんできた。

オレ
「わかったから、勘弁してくれ!」

マリー
「うん」

オレ
「そうだモロッコ行ったか?」

マリー
「残念だけど未だよ」

オレ
「そっかじゃーまだ小っちゃいチンポコは残ってるんだな?」

マリー
「そーよまだ残ってる(笑)でもその方がいいんでしょ?」

オレ
「あははは^^」

横山もようやく笑顔でオレたちのやりとりを見ていた。

オレはサンフランシスコのゲイの話をした。ゲイバーでないところで飲んでいてもいつも声をかけられるのはゲイからだったこと、酔っ払って友人だと思っていたヤツのところへ泊まって危うくケツを掘られそうになったこと、警官に呼び止められて職質を受けてるとパトカーに連れ込まれてキスをされたことなどなど・・・

マリー
「うわーサンフランシスコってほんとにゲイの街なんだ?」

オレ
「うん。あっちへマリーらが行ったら絶対ウケると思うなー」

マリー
「いつか行ってみたい^^」

オレ
「そーだな^^」

新しい客が入ってきた。さっきの女が出て「すみません。今日はもう閉店したんです」そう言って客を断った。

オレ
「ん?今日はもう早仕舞いか?」

マリー
「当たり前でしょ^^」

オレ
「あははは^^」

入り口の電話を使っていた横山が席に戻ってきた。

横山
「オレは仕事に戻りますけど、ムーさんは?」

マリー
「今夜は私のところよ^^」

横山
「わかりました。^^それと会長が明日会いたいと」

オレ
「内海のジーさんか?弱ったなー」

横山
「断りましょうか?」

オレ
「んーいや時間決めてマリーのところへ連絡くれ」

横山
「わかりました」

オレ
「それからコレ、お前が換金しろ」

横山
「オレがですか?」

オレ
「なんなら好きに使っていいぞ(笑)」

横山
「了解です(笑)」

横山は店を出た。オレはまだそこでアホな話をネタに旨い酒を飲んでいた。気がつくと他の客はもうとっくに居なかった。

オレ
「あれ?もうオレだけか?」

マリー
「そうよ」

オレ
「じゃー帰るか?」

マリー
「はい^^」

店を閉めて全員でそこを出た。オレとマリーそしてナミはメシを食いに行った。道頓堀まで歩いて「田よし」へ入った。懐かしい匂いがした。mar'sClubの忘年会。そしてSPEAK EASY時代の宴会。

マリーは肉だけを先に焼きスキヤキを上手に作った。オレはビールを飲みながらそれを食った。

オレ
「長いこと留守にして悪かったな」

マリー
「ううん。絶対帰って来ると信じてたから」

オレ
「そっか」

ナミ
「帰って来るに決まってるもん」

オレ
「でも時々くじけただろう?そんな時はどうしてた?」

ナミ
「マリーとしてた^^」

オレ
「あははは^^」

閉鎖的な日本に居るよりも、オレやマリーたちはアメリカで暮らす方がよほどハッピーに暮らせるのではないかと思った。それより何より彼女らとこうしてまた一緒にメシが食えるとは思ってもみなかった。

マリーたちのアパートに行った。新しい店を始めるのに借金だらけになり、少しでも節約するためにそのアパートへ引越したと言う。

2DKのアパートに泊めてもらった。オレはアメリカでも似たような生活をしていたのでなんら違和感は感じなかった。そしてひさしぶりに3人でセックスをした。

▼翌日・・・10時大丸1Fカフェ

横山
「どうしましょう?」

オレ
「何が?」

横山
「いや・・・これから」

オレ
「お前が再起を図る!っていうからオレは仕方なく(笑)」

横山
「そんな」

オレ
「お前は何をしたい?ギャラクシーでも乗っ取りたいか?」

横山
「いえ。オレは・・・それにしても「手打ち」ってどういう事です?」

オレ
「いくら合法的にこっちをハメたとしても、今の時期ちょっとナイーブな要因があってな?オレに騒動にして欲しくないんだろう。だから向こうが詫びを入れる形であの金が出てきた。そんなところだろう」

横山
「じゃーアレは梅木という男の仕掛けだったんですか?」

オレ
「さーオレにはわからないけど、あいつが出てきた以上そうなんだろう(笑)」

横山
「沢渡は?」

オレ
「その流れに乗ってうまく立ち回ったんじゃないか?」

横山
「昭和相互のゴルフは?」

オレ
「ん?特に意味はない。ちょっと言ってみただけだ。ただの嫌がらせだ。(笑)」

横山
「はぁ〜」

オレ
「あの金はお前と松井で分けろ」

横山
「そんな事できませんよ!それにムーさん松井さんが出てくるまで居るんでしょ?」

オレ
「オレは金はいらない。シスコで漁師だし(笑)松井にはよろしく言っておいてくれ」

横山
「じゃーオレも漁師やりますよ」

オレ
「バカヤローお前みたいなヘナチョコにできるわけないだろう」

横山
「昨日、誘ってくれたじゃないですか(ーー;)」

オレ
「ははは^^」

昨日のギャラクシーでのやりとりの中で、横山も少しは気が晴れたのかも知れない。昨日から感じていたマイナスのイメージが少し和らいでいるように思えた。

横山
「オレもういいですよ^^」

オレ
「ん?」

横山
「ムーさん見てたらなんかバカバカしくなってきました(笑)」

オレ
「そっか」

横山
「ムーさんの私物、倉庫にありますからそれと換金した中からムーさんの口座に1000万とりあえず振り込んでますから」

オレ
「あーあ。暫く帰れないな(笑)」

オレは横山と別れて神戸に戻った。Pホテルをチェックアウトして何本かの電話を入れた。帰り際にヨーコのところへ立ち寄った。

▼13時・・・パームツリー

オレ
「腹減った。ライス大盛りで」

ヨーコ
「オッケー♪」

オレ
「ポートピア博でここの客は増えた?」

ヨーコ
「うちへにはそういうお客さんが来るわけじゃないけど、周辺が賑わうとやはり間接的な効果はあるみたいね」

オレ
「北野あたりはとんでもなく人通りが多いもんなーどんな商売でも当たるだろうなー」

ヨーコ
「どうしたの?こっちで何か考えてるの?^^」

オレ
「ん?いや、出所してくるヤツの商売でも何か考えようかな?と(笑)」

ヨーコ
「そっか。はい。お待ちどうさま」

カウンターの中からいくつかの皿が渡された。久々にヨーコがつくるメンチカツ♪を食べる。スープにサラダ、そして大盛りのライス。

オレ
「いただきまーす」

ヨーコ
「これからどうするの?暫く居る?」

オレ
「そーだなーすぐに帰るつもりだったんだけど、なんかそうもいかなくて」

ヨーコ
「ふーん」

オレはメンチカツにウスターソースをかけて食った。

オレ
「シスコでもハンバーグはあるけどメンチカツ食わせるとこないもんなー」

ヨーコ
「そーなの?」

オレ
「きっとコレは神戸の洋食なんだろうな!^^ごちそうさまでした」

オレはラークに火をつけた。ヨーコはサイフォンから珈琲を入れてオレの前に出した。

ヨーコ
「ヒロは英語しゃべれるの?」

オレ
「まー最初は苦労したけど、1年半も日本語使わない生活だったからな!なんとか(笑)」

ヨーコ
「ヒロ、私も行きたい」

オレ
「ん?何処へ?」

ヨーコ
「サンフランシスコ♪」

オレ
「そう?まーガイドぐらいはしてやるよ」

ヨーコ
「観光じゃなくて、ヒロが生活してるシスコを体験したいなー」

オレ
「ははは^^無理だよ(笑)」

ヨーコ
「どーしてよ!」

オレ
「お上品な女性が混じってひとりでウロウロできるようなところじゃないからさ」

ヨーコ
「私がお上品?(笑)」

オレ
「ヨーコなんか向こうじゃティーンズにしか見えないぜ」

ヨーコ
「ほんと?!嬉しいなー」

オレ
「ははは^^」

シスコに限らず観光ルートから少し離れて、ダウンタウンなんかうろついたら男でも危険な目にあう。特に、英語を話せなくて大金を持ち歩いている日本人はカモだった。そんなニュースにもならない事件は山ほどあった。

オレ
「じゃー行くよ^^」

ヨーコ
「ちょっと待ってよヒロ!連絡先は?」

オレ
「まだ決まってない。当分は横山に連絡すればオレに繋がる」

ヨーコ
「シスコの方も教えといて」

表にいるバイトの女の子からメモとボールペンを受け取り、そこにシスコで借りているアパートの住所と電話番号を書いた。そういえばそろそろジェイクに電話して船の管理を続けてもらうように話をつけなければ・・・

オレ
「じゃーな^^」

ヨーコ
「うん。そーだヒロ!SR使って」

オレ
「いやいいよ」

ヨーコ
「私は大丈夫よ^^だから使って」

オレ
「そっか。じゃー借りるよ」

オレはヨーコからキーを受け取った。店の向かい側の立体駐車場へ行くと、紺色のボディーのSRがあった。オレは幌をつけたままSRに乗り込んだ。エンジンをかけるといい音がした。久々のマニュアル車、違和感はなかった。

43号線に出た。4車線をフルに使って走った。まだ時間はある。芦屋川を北上してJR芦屋の駅前で停めた。花屋でバラの花束を買った。そして芦屋霊園に向かった。

駐車場にクルマを停めて管理室で桶と柄杓を借りた。そして目的の場所へ行った。命日には少し早かった。バラの花を添え手を合わせた。キョーコのおかーさんの墓。来るのは2度目だった。人の近づく気配がして振り向いた。一瞬キョーコかと思ったが違った。子供連れの家族だった。オレはサングラスをかけて戻った。

芦屋霊園から下に降りるとそこは走り慣れた道だった。そして夙川沿いに南へ走った。突き当たり・・・香露園シーサイド・マンション。SRを路上駐車した。堤防の少し先に階段がある。そこを降りると夙川から香露園浜に出ることができる。

砂は熱く焼けて、海からの風が強かった。目の前にはどこかの大学のヨットが数艇出ていた。砲台跡あたりまで歩いた。のどかな光景。シスコの海とはまったく違う潮の匂い。

来た道を戻る。北側に隣接するマンションを見上げた。6階の左から3番目・・・テラスに人が出ていた。オレは視線をはずしてゆっくりと歩いた。

河口の向こう側には独特の建物、回生病院。小学生の頃おばーちゃんが入院していた。オレはよく見舞いに行って夙川でヤツメウナギの稚魚を取ったものだった。

堤防の階段を上がると、マンションのエントランスから出てきた人と出くわした。

優子
「ユーちゃん!やっぱりユーちゃんだった」

オレ
「・・・」

優子
「どーして・・・」

オレはサングラスを外した。

オレ
「あはっ!ちょっと驚かそうと思って(笑)」

優子
「バカーーーうわーん」

ユーコは泣きながら抱き付いてきた。オレは軽く抱いて背中を撫でた。ユーコがおさまるのを待った。

オレ
「お茶でも飲みに行こう」

ユーコをSRに乗せて2号線沿いの広い駐車場があるレストランに行った。アイスコーヒーとアイスティーそれにクッキーをオーダーした。

オレ
「ちょっと親戚に不幸があってな!それで帰ってきたんだ」

優子
「帰ってきたって、何処から?」

オレ
「アメリカのサンフランシスコ」

優子
「アメリカ・・・」

オレ
「漁船を借りて漁師やってるんだ。時々ダイビングのインストラクターもやってる」

優子
「・・・」

オレ
「ようやくグリーンビザも取れたし、腰を据えて頑張ろうと思ってる」

優子
「そう」

オレはグラスにストローを突き刺した。すでに甘い味になっていた。思わず隣のグラスの水を飲んだ。

優子
「ここのアイス、最初からガムシロが入っているからユーちゃんには無理ね(笑)」

オレ
「じゃーそっちと交換してくれ(笑)」

優子
「ダメよ!私もダイエット中なんだから」

オレ
「へっ?なんで?」

優子
「今年の春からモデルの仕事始めたの。だから気をつけてるの」

オレ
「そう(笑)」

オレはウエイターを呼んだ。ユーコがアイスティーをもう1つオーダーした。

優子
「今の彼は大学生なの」

オレ
「そう^^」

優子
「関学の3年生」

オレ
「クラブとかやってるのかな?」

優子
「アメリカン・フットボールやってる」

オレ
「そりゃーいい^^」

優子
「ユーちゃんと違って優しいし、浮気なんかしないし、いつも電話くれるし」

オレ
「うん。そうゆう普通に優しい人が一番いい」

オレはユーコのアイスティーを奪って飲んだ。

優子
「ユーちゃん。さっきそのまま帰るつもりだったでしょ」

オレ
「えっ!いや、まー」

優子
「家に居る時は、よくビーチを見るの」

オレ
「うん。あそこからの景色はいいもんな^^」

優子
「いつかユーちゃんが現れると思って、ずっと見てるの」

オレ
「ははは・・・」

優子
「上から見てて、心臓が止まりそうだった。」

「ユーちゃんこっち見て知らん顔した。」

「すぐに降りて行かないとと思って・・・」

オレ
「・・・」

優子
「モデルになったらユーちゃんの事わかるかも知れないと思った」

オレ
「そう」

優子
「やっぱりユーちゃん有名人だった」

「でも誰もユーちゃんの消息知らなかった」

「長井さんや浜田さんも・・・」

オレ
「そうゆういいかげんなヤツなんだ(笑)」

優子
「本当に誰も知らなかったの?」

オレ
「ああ。ある朝・・・もうこれ以上は無理だ。って思って、着替えも持たずにパスポートだけ持って」

優子
「何度か帰って来たの?」

オレ
「いや、1年半ぶりに2日前に帰ってきた」

優子
「どうしてビーチ歩いてたの?」

オレ
「さーわからない」

優子
「私は・・・どうしたらいいの?」

オレ
「ユーコは今の彼と今を謳歌すればいい。もっと色んな恋愛をするのもいい。そしてユーコを大事に守ってくれる相手と結婚して・・・」

優子
「嫌!」

オレ
「・・・わかった。わかったから泣くな」

優子
「モデルも大学も辞めて英会話勉強する」

オレ
「ダメだ」

優子
「ジムにも通って体も鍛えるしダイビングも習う」

オレ
「別に大学辞めなくてもそんな事はできる」

優子
「もう会えないなんて嫌!絶対に嫌・・・」

優子の目から大粒の涙が溢れ出した。やばいっ

優子
「うわーーーん。」

オレは慌ててユーコの方へ座り肩を抱いた。

オレ
「わかった。黙って居なくならないから」

優子
「ユーちゃん私の事なんか・・・」

オレ
「大丈夫だ。アメリカに居ても居場所は教える」

優子
「うわーーーん」

ちょっとやそっとではおさまりそうになかった。オレは黙って肩を抱くしかなかった。

オレ
「あのSR覚えているか?オレが18の時から乗ってるクルマだ」

優子
「・・・」

オレ
「友達に預けてたんだけど、アレに乗ってこのあたりを走ると、いつもあの頃の気分になる」

「いっぱい夢があって、毎日が楽しかった頃だ」

「いくつかの夢はかなった(笑)」

「すぐにシスコに帰るつもりだったんだけど、ちょっとやり残したことがあって、暫く帰れそうにないんだ」

「だから・・・また会える」

優子
「・・・」

オレ
「じゃー行こう」

オレはユーコと店を出た。SRの幌を畳んでオープンにした。グローブボックスに入っているサングラスを出してユーコに渡した。駐車場を出て夙川の上の方を走った。坂にある喫茶店を通り越して、坂の上でSRを停めた。大きなポプラの下、影になっている場所、そこから見える景色は街が一望できる。

向かいのマンションは・・・昔、キョーコが居たマンションだった。

オレ
「友達はみんな元気にしてるか」

優子
「うん。ヒロミはまだ彼が居ない」

オレ
「あらら・・・(笑)」

優子
「友達から何人も紹介されてるけどダメみたい」

オレ
「そっか」

優子
「未だにチェーンつけてるし」

オレ
「ん?」

優子
「ユーちゃんのクリスマス・プレゼント」

オレ
「あははは^^」

オレはSRを出した。夙川を下ってユーコのマンションの前に戻った。

優子
「約束して」

オレ
「ん?」

優子
「今週また会って」

オレ
「んーーー」

優子
「でないと・・・」

オレ
「ん?」

優子
「クルマから降りない」

オレ
「(笑)じゃー明後日だ」

優子
「絶対よ!どこで?」

オレ
「ここへ来る」

優子
「わかった」

ユーコは抱き付いてオレに軽くキスをした。まだ陽は落ちていない、しかも自宅前・・・オレはユーコの体を離した。

オレ
「家の前だぞ」

優子
「いいのっ」

オレ
「じゃー^^」

優子
「明後日よっ!」

ようやくユーコはクルマから降りた。何度も振り返りエントランスの前で立ち止まり手を振っている。オレは片手を上げてSRを出した。

ちょっとした気まぐれで立ち寄っただけが・・・そういう巡りあわせだったのだろう。もしかしたらという期待がオレにもあったかも知れない。でも今のオレにはこれ以上は難しかった。アメリカでひとりでやっていくだけで精一杯なのだから・・・

オレと関わった他のオンナ達もそうだった。気にはなったがそれぞれ自立している女達だった。その内、機会があればまた会えるだろうと思った。


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