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チャイナタウン


これもいくつかある「チャイナタウン」PVのメイキングシーン入り♪貴重な映像ですねー(笑)しかし・・・削除されてしまいましたのでライブバージョンに差し替えました。

と思ったら・・・またアップされていたので^^

1981年8月PART2-----------------

ユーコと別れた後、浪速区にある倉庫へ行った。コンテナを利用した倉庫、鍵を開けてそこに入った。家具やオーディオセットはなく、ダンボールが山済みになっていた。シーツを取るとハンガーラックに掛けられた大量のスーツがあった。あたりをつけて他のダンボールをいくつか開けてみた。靴やシャツ、ネクタイなどが出てきた。

ひとつの箱の中にロレックスが入っていた。玲子にもらったデイジャスト、メンテナンスに出していたサブ・マリーナふたつともそこにあった。オレはサブ・マリーナを手にとった。キズだらけだったモノがまるで新品のようになっていた。

アメリカで買ったセイコーのダイバーズ・ウォッチを外してもうひとつのロレックス、デイジャストを左手につけた。いくつかの夏用のスーツとそれら一式をSRの後部に積んだ。幌を上げてミナミへ戻った。

▼17時・・・カプセル・イン・トーヨー

持ってきた着替えをロッカーに入れた。そしてそのままサウナに入った。久しぶりのサウナ。頭の毛穴から汗が噴出す。体の中に溜まっていた不純物がすべて吐き出されるような錯覚で気持ちが良かった。

サウナを出て大浴場に、冷たいシャワーを浴びて汗を流してから、熱い風呂に入った。手足を伸ばして体を屈伸させた。

髪に軽くポマードをつけて整髪した。久しぶりにネクタイを締めてダークなサマースーツを着た。気持ちが引き締まり戦闘モードになったような気がした。

横山に連れられて料亭のようなところに入った。女将らしき人に案内され部屋に通された。すでに相手は来ていた。

オレ
「遅くなりました」

内海
「いや、ちょうどいい時間だ」

オレは相手の正面の席に座った。横山は気を利かせたのか席を外した。

内海
「ふむ。ちょっと逞しい顔つきになったな」

オレ
「横山がお世話になっているようで、ありがとうございます」

内海
「逃げ出したヤツが何を一人前に(笑)」

オレ
「あははは^^その通りですね」

内海会長はビールを持ってオレに差し出した。オレは目の前のグラスを片手で持って前に出した。内海会長がビールを注いだ。オレはグラスを置いてもうひとつのビールを持ち同じように内海会長の持つグラスに注いだ。

内海
「とりあえず、再会にカンパイだ」

オレ
「はい」

オレはグラスを軽く上げた。そして一気にグラスのビールを半分ほど飲み干した。年寄りが好みそうな懐石料理が運ばれてきた。仲居が部屋を出て行くまで沈黙が続いた。

内海
「遠慮なく箸をつけてくれ」

オレ
「はい」

内海
「お前のところは崩壊したのに、大下のところは無傷だった」

オレ
「別会社でしたから」

内海
「ふむっ。で何もかも失ってこれから何をするんだ?」

オレ
「さー?横山が意地を見せろ!って言うもんですから(笑)」

内海
「ははは^^意地か?チョーエキに行ってる部下も居る。お前やくざにでもなるのか?」

オレ
「仲間がちょっと荒っぽいやりとりになって、ひとり収監されてますけどだからと言ってやくざはないでしょう」

内海
「お前のことを聞いている」

オレ
「同じです」

オレはグラスのビールを飲み干した。内海会長がビールに手を伸ばしたがオレはそれを断って自分で注いだ。

内海
「どうだ新しい店でもやるか?」

オレ
「興味ありません」

内海
「じゃー和菓子職人はどうだ?」

オレ
「面白そうですけど、今は無理ですね(笑)」

内海
「そうか(笑)実はな・・・この年になって子供ができた」

オレ
「へっ?」

内海
「玲子が生んでくれた」

オレ
「・・・」

内海
「それだけを言っておこうと思ってな」

オレ
「そーでしたか。おめでとうございます」

内海
「うむっ」

オレ
「じゃーオレはこれで、ごちそうさまでした」

オレは立ち上がりその部屋を出た。外は夕立のようだった。廊下の向こうの小さな庭がここがミナミのど真ん中であることを忘れさせる。玄関で靴を履くのに手間取った。女将が傘を用意してくれた。横山は会長に引きとめられ付いて来ていない。オレは傘を差してそこを出た。

周防町に出た。心斎橋方面に向かった歩いた。

ブティック「ガボ」の前を通った。すでに営業時間を過ぎていて、ショーウインドウの明かりだけが点いていた。

スコッチ・バンクの看板。オレはひとりでそこに入った。見知らぬスタッフ。オレはカウンターでいいと彼に言った。

ジャズのLIVEが始まっていた。オレはカウンターの中の人間にバーボンのダブルをオーダーした。カウンターの中の人間に銘柄を問われた。彼は酒棚を指で指した。ジャック・ダニエルの黒、緑、ワイルド・ターキー、IWハーパー・・・オレはターキーを頼んだ。

ジャズのスタンダードを2曲聴いた。カウンターの中の人間がバーボンの追加を聞いた。オレは断って席をたった。キャッシャーで金を払い外へ出た。目の前のタクシーを止め梅田に向かわせた。

新地本通りでタクシーを降りた。すでに雨は上がっていた。濡れた歩道を歩きながらその店の前に立った。

▼20時・・・LINDA北新地

オレは扉を開けて入った。


「いらっしゃいませ^^お一人様でしょうか?」

オレ
「うん。カウンターでいい」

店長らしき男に案内されてカウンターに座った。カウンターの中の人間と目が合った。オレは思わず微笑んだ。オーダーを取りにきた女性に「ジン・トニックとオードブルを」と言った。

清水
「お久しぶりです^^」

そう言って清水さんはオレの前にジン・トニックを置いた。

オレ
「コレが飲みたくなって^^」

オレはそれを一口飲んだ。

オレ
「旨いっ!」

清水
「ありがとうございます」

それ以上言葉は交わさなかった。すでにこの店ではギター演奏はやってないようだった。隣にオンナが座った。

玲子
「いらっしゃいませ^^」

オレ
「うん」

玲子
「来てくれて嬉しい」

オレ
「さっき内海のジーさんと会ったから」

玲子
「あなたが現れたって聞いて、待ってた」

オレ
「そう」

オレはジン・トニックを飲み干した。すぐにブランデーのセットが用意され玲子が水割りをつくった。

オレ
「ここでは和服は着ないんだ?」

玲子
「うん。もう長い間着てない(笑)」

オレ
「聞かないのか?」

玲子
「何を?」

オレ
「どーしてたのか?って」

玲子
「教えて^^」

オレ
「今は・・・サンフランシスコで漁師をしてる」

玲子
「・・・」

オレ
「信じられないぐらい魚が獲れるんだ。誰も食わないから(笑)それが日本のスシブームで^^」

玲子
「・・・そう」

オレ
「何で泣くんだよ」

玲子
「ううん。元気そうで良かった」

オレ
「子供・・・どっち?」

玲子
「えっ」

オレ
「男?女?」

玲子
「男の子よ」

オレ
「そっか。良かったな」

玲子
「うん」

オレはブランデーの水割りを飲み干した。

オレ
「じゃーまた^^」

オレはカウンター席から立ち上がろうとした。玲子の手がそれを押さえた。

玲子
「もう少しだけ」

玲子の顔を正面から見た。涙で光っていた。オレは横を向いて座り直した。

オレ
「・・・」

玲子
「逞しくなったと思ったら、漁師してるんだ^^」

オレ
「ジェイクって言う50ぐらいのおっさんの手伝いから始めたんだ」

「大変だったよ!荒れた日に巻き上げる網のひっかかりを取ろうとして、海に落ちて流されたり・・・何度か死にかけた(笑)」

「でももう大丈夫だ^^今はジェイクから船を借りて一人で漁に出てる」

「午後からは網の修理をしたりしてね」

玲子
「・・・」

オレ
「何だよ!面白くないか?」

玲子
「ううん。そんな事してるって夢にも思っていなかったから・・・」

オレ
「暫くこっちに居たら、また向こうへ帰るんだ」

玲子
「ずっと漁師続けるの?」

オレ
「さーわかんないけど、納得するまでやる(笑)」

玲子
「そう。気をつけて・・・」

オレ
「うん」

玲子は四国の高知出身で、2年前に亡くなった父親は漁業組合の組合長だった。冗談で高知で漁師やろうか?って話してたこともあった。

オレは立ち上がった。玲子はカウンターに座ったままだった。オレはキャッシャーの女の子に1万円札を1枚置いて店を出た。雨上がりのせいか少し涼しげな風が出ていた。

時間が経つという事はそういう事なんだ。オレはよくわかっているつもりだった。キョーコの時もそうだったし。ただ、玲子の前ではオレはどうしても子供っぽく振舞ってしまう。初めて玲子を見た時オレは19だった。それからオレがミナミでちょっと顔を効かすようになるまでずいぶん世話になった。浮気をしようが何をしようが、最後は信じてくれていつも笑って受け入れてくれた。まるで姉や母親のように・・・

オレは「ミナミのオトコ」を演じるのが嫌になった。虚飾と欺瞞に満ちた人間関係に背を向けた。

線香を上げるためだけに帰ってきた。その帰りのクルマの中で聞かされた事実にも特に驚かなかった。もう関係ないんだ。でももし、その事によって困ってる人間が居るとしたら・・・その落とし前で金を払うと言うのなら受け取って、それをその為に使えばいいと思った。ただ、それだけだった。

そしてそれは色んな人間のその後を知ることになり、オレは・・・

新地本通りを西に歩いた。東に歩くとクラブ「ライム・ライト」がある。そこにまだ洋子が居るのか居ないのか?知らない。

オレはタクシーを拾ってミナミに戻った。

カプセル・インに戻った。4階の事務所を覘いた。横山が居た。

横山
「お疲れ様です^^」

オレ
「ふん。別にオレは働いている訳じゃない」

横山
「もうすぐ前田さんが上がってきます」

オレ
「なんだと?行方不明じゃなかったのか?」

横山
「前田さん。マリーにだけ居所を知らせていたようで、さっきMary'sに現れました。そしてここへ来て、とりあえずサウナへ(笑)」

オレ
「じゃーメシでも行くか?」

横山
「はい^^オレも内海会長から好きにしろ!って言われてしまいましたから^^」

オレ
「ったく」

ドアが開いた。前田と目が合った。

前田
「ムーさん・・・」

前田はいきなりそこへ座り込んで手をついた。

前田
「ムーさん。すみませんでした。オレが・・・」

前田は泣き出した。

オレはイスから立ち上がり前田の前に座った。

オレ
「どいつもこいつも泣き虫だなー(笑)メシ食ってソープでも行こう^^」

前田
「・・・はい」

オレたち3人は道頓堀の「田よし」に行った。昨夜も来たが・・・昔から宴会はここだった。

小部屋に入った。

オレ
「お前はどうしてた?」

前田
「昨日まで岡山の不動産会社で働いてました」

オレ
「昨日までって」

前田
「はい。辞めました」

オレ
「バッカヤローが」

横山がすでに注文していた生ビールが運ばれてきた。同時にスキヤキの用意も

オレ
「オレ、昨日もここでスキヤキだったんだけどなー」

横山
「カニはまだシーズンじゃありませんから(笑)」

前田
「じゃー横山がスキヤキ奉行だな(笑)」

横山
「任せなさい(笑)」

生ビールのジョッキを持ってカンパイした。

前田
「ムーさん。先に松井の事を・・・」

前田は松井が逮捕された詳細を話し始めた。ギャラクシーのビルの前で松井と前田は待ち伏せて、最後の話し合いをしようと沢渡を待った。沢渡は郷田とその取り巻きと一緒にビルを出てきた。松井は沢渡に声をかけ話し合いを求めた。郷田と沢渡にむげに断られ、暴言を投げかけられ突き飛ばされた。

松井はそれでも抵抗せずに沢渡に食い下がったが、郷田の取り巻きに暴行を受けた。そして前田が出て行ってそれらに手を出して苦もなく叩き伏せた。沢渡を引っ張り連れて行こうとして郷田に後ろから何かで殴られ頭にキズを負った。沢渡も同じように松井に殴りかかり、松井が手を出した。

パトカーのサイレンと共に松井は怪我をしている前田を逃がした。沢渡は倒れ救急車で運ばれた。その場に残っていた松井はそのまま傷害の現行犯で逮捕された。

オレ
「たったそれだけで実刑か?」

前田
「沢渡は肋骨を3本折る重傷で、示談にも応じませんでした」

「松井はオレを庇ったこともあり警察の好き勝手に書いた供述書にサインを」

「警察も佐竹署長と沢渡が繋がってますから松井は・・・」

オレ
「やっちまったことは仕方ない。昨日、落とし前はもらった」

前田
「横山に聞きました。でも・・・」

オレ
「食おう^^横山、肉が固くなるじゃないか(笑)」

横山
「大丈夫ですって(笑)」

確かに、肉は柔らかく旨かった。

オレ
「さて、プータローが3人でどーすんだ(笑)」

横山
「オレはまだ辞めてませんよ」

オレ
「同じだろう」

横山
「まーそうですけど(笑)」

前田
「オレ、松井が出てきたら漁師でもいいですよ」

オレ
「ふん。漁師をナメてるな?でも、で出来る仕事じゃねーぞ」

前田
「はい^^頑張ります」

横山
「やっぱりメシは魚ばっかりですかねー?」

前田
「オレ、白身の魚なら大丈夫ですよ!」

オレ
「アホかお前ら(笑)」

その夜は久々に田よしで飲んだくれた。3人、いや松井や関川らも居たディスコ「ミルク・ホール」の時代から「SPEAK EASY」の頃の昔ばなしで盛り上がった。そしてオレと前田はヘロヘロになりソープどころではなく、カプセル・インに戻って、蛸壺のようなカプセルで眠った。

▼7時・・・スカイ・マンション前

オレ
「じゃー行こうか」

佐和子
「はい」

オレは佐和子が運転する白のクラウンの助手席に乗った。

オレ
「昨日遅くまで飲んでて・・・二日酔いだ。着いたら起してくれ」

オレはうとうとと眠った。漁師をやりだして強烈な疲労を体で覚えるようになってから、熟睡できるようになった。昨夜も熟睡した。横山に起されて始めて今日ゴルフだという事を思い出した。しかし、それはあくまでもオレが勝手に沢渡の代わりだと言っただけで、佐和子が本当に迎えにくるとは思わなかったが・・・

佐和子
「到着しました」

オレ
「相変わらずだな(笑)」

佐和子
「皆さんの前では大丈夫です。プロですから」

オレ
「あっそう」

ロビーに集合した。見知った顔が多かった。メンバーはほとんど代わっていないようだ。体調不良の沢渡に代わりに来たことを誰も咎めなかったし、暖かく迎えてくれた。ただ一人厳しい視線を投げかけている人間が居た。オレはそこへ近づいて挨拶した。

オレ
「佐竹先輩お久しぶりです^^」

佐竹
「うん。1年半ぶりだな。元気そうでなりよりだ」

武本頭取
「おームトー君。やっと戻ってきたか^^ちょっとは腕を上げたか?(笑)」

オレ
「いやーなかなか上手くなりません(笑)」

武本頭取
「おっいやに殊勝だな?ほんとは自信満々か?」

オレ
「一応勝つ気で来ています!^^」

武本頭取
「あははは^^そうでないと面白くない(笑)」

アメリカのゴルフ場は解放的だった。パブリックなコースが多く費用も安かった。サンフランシスコに落ち着いてからは、結構ゴルフもしていた。オレはここの倶楽部会員でもあったしこのコースはよく知っているつもりだった。年寄り連中には負けられない。

真夏のゴルフ。オレはパットの調子も良く、結果は武本頭取を抑えて僅差で優勝した。

大浴場・・・

武本頭取
「体も鍛えているようだし、相当やったな?(笑)」

オレ
「いやー優勝できるとは思いませんでしたよ!^^」

前山
「やっぱり若い人はすぐに上達するなー」

光野
「ムトー君はここの会員だし、次はそうはいかないぞ」

武本頭取
「うむ。次はワシのホームだしな」

オレ
「あははは^^楽しみだなー」

風呂から上がって倶楽部ハウスで表彰式が行われた。前山氏の司会でオレは優勝カップを貰った。一言求められた。

オレ
「どーも^^久々に顔を出して美味しいところを持って行ってすみません。という事で、せっかくですからうちの店「ギャラクシー」で打ち上げを行いたいと思いますが、皆さんどうでしょうか?」

会場から拍手と共に野次が飛んだ。

オレ
「ではミナミの周防町通りの真ん中あたりに来て頂ければわかるように手配しますので、どうぞ是非皆さんいらして下さい」

オレはそう言って席に戻った。すぐに佐和子がやってきた。オレたちは倶楽部ハウスを出た。

佐和子
「一体どういうつもりですか!」

オレ
「言った通りだ。(笑)すぐに手配しろ」

佐和子
「無理です」

オレ
「別にオレはこのまま帰ってもいいんだぜ(笑)」

佐和子
「・・・」

オレ
「時間がないぞ急げ」

オレたちは駐車場へ行き、クラウンに乗った。オレが運転して佐和子は車中から電話をかけまくっていた。オレは横山に電話を入れた。前田と共にギャラクシーに行きパーティーの支度をするように伝えた。

佐和子
「何をする気なんですか?」

オレ
「お前は黙ってオレに協力すればいい」

佐和子
「・・・」

オレ
「家長はオレだ(笑)」

周防町の真ん中、すでにギャラクシーの黒服2名が出ていた。オレはそこにクルマを停めた。佐和子はすぐに黒服にいくつかの指示を出した。

オレたちは店に入った。すでに横山と前田は到着して黒服を着ていた。

オレ
「うん。どーしたその服」

前田
「更衣室から合うのを借りました(笑)」

横山
「何を始めるんですか?」

オレ
「盛大にパーティーをやる!^^横山は「泉」にギターやアンプ一式があるはずだからコッチに持ってこさせてくれ」

「前田はギャラクシーの人間をしっかり動かせ!」

横山&前田
「了解です」

オレ
「佐和子!ちょっと来い!」

オレは大声で呼んだ。周りのホステスを含めて、驚いたようにこっちを見た

佐和子
「はい。何でしょう?」

オレ
「ホステスはこれだけか?」

佐和子
「いえ、あと5人ぐらいは」

オレ
「全部で何人ぐらい集まるのか聞いているんだ。オレに数えさせるのか?」

佐和子
「すみません。20人は集まります」

オレ
「泉のホステスも含めてもっと動員をかけろ」

佐和子
「・・・わかりました」

オレ
「違うだろう」

佐和子
「・・・了解しました」

オレ
「オッケー♪」

メンバーが続々とやってきた。エレベータ前に女たちを立たせて、それぞれ客を案内させた。カウンターにはブランデーの水割りとウーロン茶などのドリンクが並べられて、すぐにそれらがウエイターによってサービスされていた。

前山幹事がオレのところへやって来た。

前山
「ムトー君。ここからは打ち上げだから、司会は任せるよ^^」

オレ
「はい。わかりました^^」

オレは前に出てマイクを持った。

オレ
「それではコレより武本会ゴルフ・コンペの打ち上げを始めたいと思います」

「その前に、ホール・イン・ワンこそ出ませんでしたが、今回は優勝を貰った私の招待ということで会費は一切かかりませんので、どうぞごゆっくりお楽しみ下さい」

「それではタケちゃん。一言お願いします!^^」

爆笑と共に大きな拍手が沸いた。

武本頭取
「ただいまご紹介に預かりました。タケちゃんです(笑)」

会場から再び爆笑と拍手が起きた。

「久々に顔を出したかと思ったら、優勝をかっさらって行った憎きワカゾーの奢りらしいので、今日は皆さんと共に大いに飲みたいと思います。それにしてもこれだけのキレイどころをよくもまー独り占めにして(笑)」

オレ
「あっお持ち帰りはできませんから念のため^^」

武本頭取
「あははは^^じゃーここで食べれるだけ食べてやりましょう(笑)」

オレ
「それでは、そろそろカンパイをお願いしたいと思います。皆さんどうぞお手元のグラスを持ってご起立下さい」

武本頭取
「では、皆さんの健康と次は絶対ユーちゃんに優勝させないように皆さんのご健闘を祈ってカンパイ!^^」

「かんぱーい」

オレは武本頭取のマイクを受け取った。BGMが流れて歓談の時間になった。オレは佐和子を連れてそれぞれの席を回り、久しぶりの挨拶をしながら冗談を言い合った。

前山
「やっぱり武本さんはユーちゃん相手だと楽しそうだな^^」

光野
「まったく。いきなり「タケちゃん」だもんなー(笑)オレたちは間違っても言えないよ」

オレ
「あははは^^生意気なワカゾー相手にマジで怒れないだけですよ(笑)」

光野
「なるほど^^そうかも知れない(笑)」

前山
「ユーちゃん。これからはレギュラー参加してくれよ!頼むよ^^」

光野
「うん。ユーちゃんが居たらオレたちは安心して遊べる(笑)」

オレ
「ははは・・・(笑)」

オレは佐竹氏が席を立ったのを目の端で捉えた。黒服に案内されるまでもなくどうやらトイレに向かったようだ。

オレはその導線上で待機した。佐竹氏が出てくるとホステスはオシボリを差し出した。佐竹氏がそれを受け取り手を拭いてホステスに返した。オレの方に近づいてきた。

佐竹氏
「ムトー君が復帰したと考えていいのかな?」

オレ
「はい。」

佐竹氏
「そう。じゃー明日にでもゆっくり話ができるかな?」

オレ
「はい。お待ちしております^^」

佐竹氏は頷いて席に戻っていった。オレは前に出て行った。マイクを握った。

オレ
「えーご歓談中のところ恐縮ですが・・・私は1年半ぶりに帰国しましたので、タケちゃんの歌を長い間聞いていません。是非、聞かせて欲しいと思うのですが、どうでしょうか?」

会場から拍手と野次が飛んだ。

武本頭取はご機嫌で前にやってきた。オレは武本頭取にマイクを渡して演奏の準備を始めた。その間、武本頭取はMCを続けた。頃合を見計らい武本頭取は振り向いた。オレは頷いた。

マイ・ウエイのイントロ・・・

頭取はいい声が出ていた。定期的にボイス・トレーニングを積んでいるのだろう。そして2曲目はオレが提供した曲。オリジナル「愛の彼方へ」を続けて歌った。大きな拍手が沸いた。

武本頭取はオレに近づいた。オレは立ち上がった。武本頭取が軽く抱擁してきた。

武本頭取
「色々あったと思うが、これからは力になるから頑張れ!」

オレ
「ありがとうございます」

お互い囁きあうような声だった。

会場からまた拍手が起きた。オレは満足してテーブルを回った。会場のホステス、黒服たちの挙動や目線を注意深く見ていた。

中締めを終え、武本頭取が席を立った。オレはEV前まで見送った。

武本頭取
「いやー今日は楽しかった。ありがとうユーちゃん」

オレ
「ははは^^次もオレに優勝させてくれたら大判振る舞いしますよ」

武本
「何をいうか!そうたびたび優勝を持って行かれてたまるかっ(笑)あははは」

オレ
「お疲れさまでした(笑)」

武本頭取が帰るとメンバーは三々五々帰って行った。すべてのメンバーをEV前まで送り挨拶をし大げさに冗談を言い合った。

そして店内に戻った。

前田
「郷田と沢渡が特室に来ています。それと理恵ママも・・・」

オレ
「わかった。待たせとけ(笑)」

オレは会場の後片付けを中止させて控え室に戻っているホステスたち、厨房のコック、ウエイター、すべてのスタッフを集合させた。

オレ
「皆さん今日は突然の動員にも関わらず快く集まって頂きありがとうございました。どうぞこれからもギャラクシーの為に頑張って下さい。オレも頑張りますから^^」

オレは軽く一礼した。そして特室へ向かった。前田はオレを追い抜いて先に立った。

オレ
「オレひとりでいい」

前田
「絶対ダメです!」

前田の表情には何があっても譲らない覚悟の顔があった。こいつがこんな顔をしたら言うことを聞かない。

オレ
「挑発に乗るなよ(笑)」

前田
「ムーさんこそ(笑)」

前田が特別室のドアを開いた。前田が先に入りオレが続いた。

オレ
「どーもお待たせしてしまって^^」

沢渡
「おいムトー!ゴルフだけの約束だぞ!誰が勝手に店まで使っていいと言った」

オレ
「郷田さん。おひさしぶりです(笑)」

郷田
「ふんっ疫病神がっ」

オレ
「理恵。久しぶりだな?元気にしてた?」

理恵
「・・・」

オレはソファに座った。テーブルを挟んだ正面に郷田の隣に理恵。オレの隣に沢渡が座る格好になった。郷田の後ろには屈強そうな男が二人立っていた。

沢渡
「これが最後だ。ムトー2度とここへは来るなっ!」

オレ
「郷田さん。理恵を返してくれませんか」

郷田
「返すも返さないも、理恵はオレに惚れて付いてきているだけだ(笑)」

オレ
「理恵。オレと帰ろう^^」

理恵
「・・・」

オレ
「オレたちは家族だ。そしてオレが家長だ。そうだろう?理恵」

郷田
「調子に乗るなよムトー」

オレ
「郷田さん。お願いします。わかってもらえませんか?」

郷田
「手打ちは終わったはずだ。それに理恵はもうオレのオンナだ」

オレ
「そーですか・・・」

「高橋の恋人だった理恵をオレは高橋から任されました。」

「そしてその高橋の通夜にゴローちゃんともうひとり『おじさん』が来られました」

「その二人から後を頼まれました」

郷田
「それをお前は無責任にも捨てんだよ!」

オレ
「いいえ。違います。オレが1年半チョーエキに行ってる間に財産と女を取られたんですよ。」

「女にシャブを打って言う事聞かせるなんて・・・」

「そんな事が許されると思いますか?」

オレの目は細まり郷田を見ながら全体を俯瞰で捉えていた。わずかな沈黙の後、突然の笑い声・・・

郷田
「わはははっ^^チョーエキか?そうだったのか(笑)」

オレ
「まだひとり戻ってないのも居ますけどね」

郷田
「そいつはご苦労だったな(笑)仕方ない。放免祝いにお前の『お願い』きいてやるよ」

そう言って郷田は立ち上がり出て行こうとした。

沢渡
「郷田さん!こいつがチョーエキだなんて嘘っぱちだ!!!」

郷田
「沢渡、オレたちはヤクザなんだ。うちのカシラをゴローちゃんって呼ぶこいつとコレ以上関わりたくないんだ。それに今は・・・まっお前には関係ないか」

沢渡
「そんな・・・」

オレ
「・・・」

郷田はそう言うと男たちを連れて出て行った。理恵は蒼白な顔をしてオレの前に座っていた。

オレ
「理恵。守ってやれなくて、つらい思いさせて・・・ごめん」

沢渡
「ムトー・・・」

オレ
「うるさいっ!」

オレは隣に座っている沢渡に裏拳を飛ばした。沢渡は吹っ飛んだ。

オレ
「理恵。許してくれるか?」

理恵
「・・・ユーちゃん。うわー」

理恵は顔を両手で覆って号泣した。オレは立ち上がり理恵の隣にいった。肩を抱き背中を撫でた。正面にいる沢渡は鼻を押さえてソファに座り直した。血がしたたり落ちていた。

オレ
「前田。佐和子を呼んできてくれないか」

前田
「はい」

すぐに前田は佐和子を連れてきた。佐和子はテーブルの傍に立った。

オレ
「沢渡。ギャラクシーと泉は返してもらう」

沢渡
「どういう事だ。それにお前オレにこんなことをして訴えてやるからな」

オレ
「さっきの宴会見てなかったのか?」

沢渡
「・・・」

オレ
「武本頭取も佐竹署長もオレの復帰を認めたよ(笑)ゴルフじゃないぞ」

沢渡
「ふんっオレは合法的にここを手に入れたんだ。そんな事は関係ない」

オレ
「そうか。じゃー管理売春の強要で佐竹署長にお前を引っ張ってもらおう」

沢渡
「ふざけた事を(笑)出来るもんならやってみろ」

オレ
「佐和子。こいつがお前に暴力を振るって命令したんだよな?」

佐和子
「はい」

オレ
「同じように証言するホステスもたくさん居るよな?」

佐和子
「はい。喜んで証言すると思います」

オレ
「じゃー明日オレは佐竹署長に呼ばれているし、報告することにしよう」

沢渡
「汚いぞ!お前らっ!佐和子裏切るのかっ!」

佐和子
「家長の言うことは絶対ですし、私あなたのこと最初から嫌いです」

オレ
「沢渡、明日朝1番で名変書類持ってお前のところへ行く。待ってろ。それが終わったらお前、ミナミをうろつくな。」

沢渡
「・・・」

オレ
「今更悪あがきはしない方がいい。前田を宥めるのに苦労してるんだから、それにもうすぐ松井も出てくるし・・・」

沢渡
「・・・ギャラクシーと泉でいいんだな」

オレ
「理恵のマンションの所有権はどうなってる?」

沢渡
「それは郷田だ」

オレ
「そっか。それは郷田のおっさんから返してもらう。じゃーまた明日^^帰っていいぞ!」

沢渡はソファから動かない。まだ何かを考えているようだった。

オレ
「前田。送って差し上げろ」

前田
「はい」

沢渡
「いやいいっ!大丈夫だ!ひとりで大丈夫だっ!」

沢渡は慌てて逃げるように出て行った。

オレ
「理恵。大丈夫か?佐和子も済まなかったな。」

理恵
「ユーちゃん。私・・・」

オレ
「うん。わかってる。そうだ新しいところへ引越そうか^^」

理恵
「うん」

オレ
「佐和子。ありがとう。これでまたオレが「ギャラクシーのオーナー」だ」

佐和子
「はい」

オレは横山にツインの部屋を2つ手配させた。暫く理恵と佐和子にホテル住まいさせるつもりだった。前田にふたりを頼んでホテルまで送らせた。

オレは佐和子が最初に持ってきたビールを一口飲んだ。すでに気が抜けていた。ラークに火をつけた。

特別室の照明を操作した。天井ライトを消して間接照明だけにした。カウンターバーに入って新しいビールとグラスを出した。ソファに戻りそれを飲んだ。冷たいだけであまり旨くはなかった。

オレは立ち上がって窓際に行った。そこからでも夜のミナミの街の灯がよく見えた。1年半ぶりのミナミ・・・

前田と横山が戻ってきた。

オレ
「お疲れ」

前田&横山
「お疲れさまでしたっ!」

オレ
「こっちで一杯飲もう」

前田と横山はカウンターバーに行き、酒の用意をしてソファに来た。ビールでカンパイした。

オレ
「オレたちはちょっと意地を通せたかな?」

横山
「はい。裏の扉から全部聞いてました。」

オレ
「前田。少しは気が晴れたか?」

前田
「はい。涙が出そうで我慢するのに必死でした」

オレ
「そっか。じゃー後はお前らでやれ」

前田&横山
「えっ」

オレ
「ギャラクシーのオーナーは大怪我をして、もう人前には出ない。だけど居る。そうしよう」

前田
「ムーさん。やっぱりシスコへ?」

横山
「オレは付いて行きますよ」

前田
「オレもっ」

オレ
「お前らには無理だ。(笑)英語もしゃべれねーのに」

横山
「あははは^^じゃー暫くこっちで特訓します」

前田
「オレも船の免許でも取りに行って準備します^^」

オレ
「いつか招待してやるよ(笑)それよりオレは眠いっ」

横山
「朝から大変でしたもんね」

前田
「ホテルまで送ります」

オレ
「いやひとりで行ける」

前田
「ダメです。」

オレ
「しょーがねーなー(笑)」

オレたちは店を閉めてビルの外へ出た。前田は佐和子のクルマをビルの前に停めていた。それに乗って南海ホテルへ行った。一緒に理恵の部屋まで行行きオレが部屋に入るのを見届けて前田は戻っていった。

部屋に入ると理恵と佐和子がいた。

オレ
「ただいま^^」

理恵&佐和子
「お帰りなさいませ」

オレ
「疲れたー(笑)」

オレは上着を脱いでベッドに放り投げ、ネクタイをはずした。佐和子がそれらをハンガーにかけて仕舞った。

佐和子
「じゃー私は向こうに」

理恵
「ごめんね」

佐和子は隣の部屋へ戻っていった。理恵はオレの隣に座った。

理恵
「ユーちゃん」

オレ
「ん?」

理恵
「助けてくれて・・・ありがとう」

オレ
「うん」

オレは理恵を抱いた。キスをして舌をからめて吸った。そして離れた。

オレ
「もう心配しなくていい。誰もギャラクシーのオンナたちに手は出せない」

理恵
「ユーちゃん。居てくれるの?」

オレ
「・・・それは無理なんだ」

理恵
「そう」

オレ
「だけど半年に1度ぐらいは戻ってくるから」

理恵
「はい」

オレは理恵を裸にした。オレも素っ裸になりふたりでベッドに入った。オレは理恵の乳を口に含み指は股間をまさぐり、ごくごくノーマルなセックスをした。理恵は声を上げて泣きながらいった。

理恵
「龍は見ないの?」

オレ
「ん?理恵がもうちょっと元気になったらまた見せてくれ」

理恵
「ユーちゃん」

また理恵の目に涙が浮かんだ。

理恵
「佐和子も・・・」

オレ
「うん」

オレはベッドから降りてバスローブをひっかけた。理恵にキスをして部屋を出た。隣の部屋をノックした。扉が開いた。オレは中に入った。

オレ
「佐和子・・・」

佐和子
「はい」

オレ
「抱いていいか?」

佐和子
「はい」

オレは佐和子を抱きしめてキスをした。舌を絡め佐和子の舌を強く吸った。ベッドに押し倒して服を脱がせ真っ裸にした。両手を上に上げさせて脇の下から乳へ舌を這わせ乳首を口に含んだ。

下半身を指で責めた。

そして佐和子の上に乗って責め立てた。1度いかせてから今度は四つ這いにして後ろから責め続け立て続けに2度いかせた。

オレはベッドに横になった。佐和子は起き出してオレのモノを口にした。指を使い激しく口を動かす。オレは我慢せずに声を上げて佐和子の口でいった。大量の精液が佐和子の口に入った。佐和子はそれを飲み干し、オレのモノを丁寧に舐めた。

オレは佐和子を引き寄せてその口にキスをした。舌を強く吸った。そしてオレは横抱きに佐和子を抱いた。

オレ
「お前とはこれで2度目だっけ?」

佐和子
「たった2度だなんて信じられない」

オレ
「そーだな。もっとしてると思ったけど(笑)」

佐和子
「もっとちゃんと調教して下さい(笑)」

オレ
「あははは^^」

オレは佐和子を抱きしめた。

佐和子
「信じられなかった」

「もうダメなんだって諦めてた」

「でも・・・あなたは勝った」

オレ
「運が良かっただけだ(笑)」

佐和子
「ううん。次もあなたが勝つわ」

オレ
「もうこんな事はごめんだ」

佐和子
「うん。この1年半どうしてたの?」

オレは上半身を起してベッドヘッドに凭れた。そしてアメリカ紀行を一通り話した。シスコで漁師をしている事も・・・佐和子は聞き終わると冷蔵庫からビールとグラスを取り出しそれをもってきた。素っ裸のままで・・・

オレはグラスを受け取りビールを注いでもらい一気に半分ほど飲んだ。佐和子はオレに体を寄せて同じようにベッドヘッドに凭れていた。

佐和子
「そう。漁師やってるから逞しい体になったんだ」

オレ
「ジムにも通ってるしな(笑)」

佐和子
「じゃー私も水泳から始めようかな?」

オレ
「(笑)」

佐和子
「あらっおかしい?」

オレ
「シスコに来るつもりか?」

佐和子
「そりゃー時々は行くわ!別にずっと居てもいいけど(笑)」

オレは佐和子を抱いてもう1度前から乗って責めた。いい声を出して佐和子はいった。「何発やってもオンナは自分のオンナじゃない」自分で言ったセリフが可笑しかった。オレはベッドを降りて佐和子に軽くキスをして部屋を出た。そしてまた理恵の部屋へ戻った。理恵は明るくタフなオンナだ。きっとすぐに元気になってくれるだろう。

理恵を抱きながら・・・オレは眠った。

▼翌朝・・・

前田が迎えにきた。オレは理恵と佐和子らを寝かせたまま1Fのカフェ・バイキングへ行き前田と横山とで朝食を摂った。

前田
「書類関係はKM不動産にでも行って手配します。」

オレ
「それと理恵のマンションの名義だか、郷田のところにはオレから連絡して梅木にでも来させるから、そっちも頼む」

前田
「はい」

横山
「ところで店は誰の名義にするんですか?」

オレ
「んーカンパニーは、もうないか(笑)」

前田
「ムーさん印鑑ありますか?」

オレ
「さー知らない(笑)横山お前は?」

横山
「ありますけど・・・」

オレ
「よし。じゃー横山の名義にしよう」

前田
「新しい法人つくります?」

横山
「2軒の店やるわけだから必要ですよね」

オレ
「まっとりあえず緊急を要することだけの処理を急ごう」

横山&前田
「了解です」

食事を終えて3人でスカイ・マンションの2階にあるKM不動産へ行った。いくつかの書類を貰った。

田上
「ムトーさん。おひさしぶりです^^」

オレ
「ども^^その節は前田や横山がお世話になりありがとうございました」

田上
「いえ。なんのお力にもなれなくて」

オレ
「ところで、今1110号室はどうなってます?」

田上
「あれから何度か転売されて今の持ち主は・・・えーと確か正味堂さんだったはず」

オレ&横山
「えっ」

オレ
「じゃー賃貸に出されているんですか?」

田上
「それが出していなくて、だからと言って使われる様子もありません」

オレ
「そーですかわかりました。じゃーちょっと急ぎますので今日はこれで」

田上
「はい。またいつでも声をかけてください」

前田の運転で本町にある「沢渡開発」の事務所へ行った。念のために横山をクルマで待機させてオレと前田で事務所へ入った。沢渡は鼻のあたりが腫れ上がって絆創膏をはっていた。不機嫌そうに応接室で対応し、前田が用意したいくつかの書類に署名、押印した。

クルマに戻り前田はそのままギャラクシービルの管理を行っている不動産屋へ行った。クルマは横山が運転した。オレは車中から内海会長の自宅へ電話を入れた。スカイ・マンションの事で話があると言うと、自宅で話すことになった。

▼10時・・・内海会長、自宅

家人に奥の部屋に案内された。少し待たされた。会長は咳をしながら現れた。

オレ
「大丈夫ですか?」

内海
「あー大丈夫だ。で、1110号をどうしたいって?」

オレ
「使っていないようでしたら貸して頂けないかと」

内海
「プータローが生意気にあんなところへ住む気か?」

オレ
「ええ。あそこは色んな意味で思い出が多いところなんで」

内海
「まー貸してやらんでもないが・・・こっちに長く居るのか?」

オレ
「実は・・・」

オレは昨日の武本氏とのゴルフの話、そしてその後の成り行きでギャラクシーを返してもらったことの結果だけを伝えた。その為に新しい法人をつくり事務所に使いたいと説明した。

内海
「横山君。ちょっと席をはずしてくれるか?」

横山
「はい」

横山は応接室を出て行った。たかがマンションの部屋ひとつを貸すのに大げさだと思いながらも内海氏が話すのを待った。

内海
「そういえばお前、この間ワシに店は興味がないって言わなかったか?」

オレ
「はい。だからオレは関わりません。店はオンナ達のために取り返しました」

内海
「ほーオンナの為にだと」

オレ
「ちょっと事情がありまして、オンナ達が可哀そうな状況に置かれていたもんですから」

内海
「何を言っとるかお前は!!!」

内海会長は急に怒りだした。オレは戸惑った。別に怒鳴られるのは一向に構わないが、その理由がわからないので困った。

オレ
「何処かおかしいですか?」

内海会長
「うぅー」

オレ
「内海さん。落ち着いてください」

内海会長
「このバカタレがっ」

オレ
「はい。(笑)」

内海氏は目の前のお茶を掴んで一気に飲んだ。そして大きく咳き込んだ。オレは仕方なく内海氏の後ろへ回り背中をさすってやった。

内海会長
「もういい。向こうへ行け」

オレは元の席に戻った。

内海会長
「・・・今から言うことをよく聞け」

オレ
「はい」

部屋は冷房が効いていた。内海さんは夏風邪でもひいたのか、話をしながらも時々咳き込んだ。応接室の窓の向こうには和風の庭園が広がっていた。オレは急に背中に冷たい汗が流れるのを感じた。握りしめた拳が震えた。頭の中が真っ白になった。

オレは何を言って内海会長の自宅を出たのかもわからないまま横山の声にふと気がついた。

横山
「ムーさん。聞いてます?今日中に倉庫の私物を1110号に運びますよ?」

オレ
「ん?あーそうだな」

横山
「暫く前田さんもいいですか?」

オレ
「ああ」

横山
「じゃー先にサウナにでも入っててください。オレはクルマを駐車場に入れてきますから」

オレ
「ああ」

横山
「・・・降りないんですか?」

オレ
「あっスマン」

オレは周防町で降ろされた。目の前はブティック・ガボだった。目が合った。店の中からシューさんが飛び出してきた。

ガボマスター
「ユーちゃん。ユーちゃんじゃないか!何時?いや何処に?いやそんな事はどーでもいいちょっと、ちょっと入ってくれ」

オレはシューさんに引っ張られるように店に入った。


「ユーちゃん。。。」

オレ
「理沙・・・」

オレはショッキングな話と突然理沙に会った混乱で・・・涙が溢れてきてどうしようもなかった。なんとか声は出さずに我慢してたが、理沙が立ち上がってそんなオレを軽く抱いてくれて、もうそれが限界だった。オレは声を上げて泣いた。

理沙
「ユーちゃんが泣いたら私、泣けないじゃない」

オレは上着の袖で顔を拭い鼻をすすって理沙の顔を見た。理沙は指でオレの目を拭う

理沙
「シューさん。ごめんちょっとユーイチと出てくる」

ガボマスター
「うん」

シューさんはサングラスをしているからその表情はわかりづらかったが、どうやら同じように泣いていたのかも知れなかった。オレはまだ涙が止まらなかった。理沙に連れられるまま向かいの喫茶「英国屋」へ入った。

理沙はアイスコーヒーをふたつたのんだ。オレはちょっとふてくされたような態度で上着のポケットからラークを出して火をつけた。

理沙
「びっくりした」

オレ
「・・・」

理沙
「いきなり現れて」

「あんなに泣いて、あなたが泣くなんて・・・」

オレはラークを1本吸い終わるまで声を出せなかった。自分自身のバカさかげんやオンナの優しさに触れてどうしようもなく哀しかった。

オレは目の前に出された理沙のハンカチを使って目を拭った。

オレ
「もう大丈夫だ」

そう言って無理に笑顔をつくった。

理沙
「そう^^」

オレ
「3日前に帰国した」

オレはまたアメリカ紀行を語った。そしてシスコで漁師をしていることも・・・

理沙
「そうだったんだ」

オレは目の前のノン・シュガーのアイスコーヒーを飲んだ。

オレ
「昨夜、ギャラクシーを取り戻した」

理沙
「えっ」

オレ
「理恵と佐和子の安全も確保した」

理沙
「そんな事が・・・」

オレ
「運が良くて、そうなった(笑)理沙はどうしてた?」

理沙
「北新地で働いてるの」

オレ
「そうか」

理沙
「あなたの会社があんなことになって・・・ミナミに居るのが辛かったから」

オレ
「キャッツも被害を蒙ったのか?」

理沙
「ううん。私はさっさとキャッツを処分したから大丈夫よ」

オレ
「よかった」

理沙
「もしかしたら帰ってくるかも知れないと思って・・・部屋はそのままよ」

オレ
「えっ」

理沙
「おかしい?」

オレ
「いやキャッツがなくなったって聞いて当然マンションもとっくに引き払ったものだとばかり・・・」

理沙
「鍵もそのままよ^^」

オレ
「あっ鍵はシスコで強盗にあった時に失くした」

理沙
「そう(笑)」

オレ
「ひとつだけ教えてくれるか?」

理沙
「何でも聞いて?」

オレ
「玲子と理恵と理沙・・・3人で何を話し合った?」

理沙
「そう。やっぱりそれが原因だったの?」

「あなたが玲子さんと付き合ってるのは最初から知ってた」

「ユーちゃんがギャラクシーのオーナーになった時、理恵と私が玲子さんにご挨拶に行ったの」

「ユーちゃんがどうしても必要だからってお願いしに」

「そしたら玲子さん『絶対にユーイチを危険なところに追い込まないで』って言って」

「あの子は、ああ見えて挑発に弱くてケンカっぱやいからって、あなたの事を心配ばかりしてた」

オレ
「・・・」

理沙
「ただ、それだけよ。私たちは玲子さんに約束させられた。その日会った事も、お願いした事も絶対ユーイチには知らせないでって」

オレ
「オレの間違った一人合点だったのか・・・」

理沙
「ユーちゃんの元気な、ううん泣き顔見れて良かった^^」

オレ
「ふんっオレは昔から泣き虫なんだ(ーー;)」

理沙
「初めて知ったわ(笑)」

オレ
「今夜行っていいか?」

理沙
「私はいいけど・・・いいの?」

オレ
「そんな応え方するなよ」

理沙
「わかった。来て!待ってるから^^」

オレ
「うん」

オレたちは店を出た。とりあえずシューさんには理沙から説明するように頼んだ。オレは角を曲がりカプセル・インの事務所へ行った。

前田
「ムーさん。オレまだなんか信じられません(笑)」

横山
「オレもです。また1110号で始められるなんて・・・」

オレ
「ん?オレは出て行った時の状況に戻るだけだから、んな事は当たり前なんだよ」

前田
「ははは・・・そーですね^^」

横山
「なんかひとりでカリカリしてたオレは一体何だったかと思うとバカみたいですよ(笑)」

オレ
「さて、とりあえずギャラクシーと泉の体制の建て直しを始めるぞ!」

前田&横山
「了解です!」

オレ
「じゃーオレちょっと出てくる」

前田&横山
「いってらっしゃい^^」

オレはロッカールームで着替えた。アロハに白のパンツ。そしてデッキシューズ。シスコから帰ってきたままのスタイルで外に出た。サングラスをして駐車場へ行ってSRを出した。

新御堂を北へ走り、箕面方面へ向かった。渡されたメモの住所を見てもよくわからなかった。オレは途中でクルマを駐車場へ入れてタクシーを拾った。書かれた住所地で降ろしてもらってその辺りを探した。目指すマンションがあった。新築のマンション、オートロックになっていた。部屋番号を押した。


「はい。」

オレ
「ムトーです」


「今降りていきます」

オレは緊張していた。セミの声が煩かった。日陰になっている。サングラスを外した。

玲子
「お帰りなさい」

オレ
「うん」

EVに乗った。4階までしかない。

オレ
「今日も暑いな!」

玲子
「向こうは暑くないの?」

オレ
「湿度が低くてこれでほどうだるような暑さじゃない」

401号。オレは部屋に上がった。対面キッチンにフローリングのダイニングとリビング。南側の窓にはブラインド。正面に大き目のTVが置いてある。サイド・ボードには前からあったステレオセットが置かれていた。

オレはリビングの窓に近づいた。となりの家の大きな木が目に入った。周辺の住宅街の中にある低層のマンション。いい環境だった。

オレは窓から離れてリビングのソファに座った。玲子はビールとグラスを持ってきて隣に座った。オレは黙ってグラスを持つ、玲子がビールを注いでくれた。オレは半分ほど飲んでグラスを置いた。

オレ
「ここへはいつ?」

玲子
「クラブ「純子」を処分してすぐだったから去年の10月かな?」

オレ
「どう?住み心地は?」

玲子
「うん。静かでいいところよ」

オレ
「そっか。名前、なんて言うんだ?」

玲子
「ひろと」

オレ
「どんな字?」

玲子
「裕人」

オレ
「ははは^^『ゆうと』と間違って呼ばれるかもな?」

玲子
「あなたみたいに?^^」

オレ
「ああ」

玲子
「会う?」

オレ
「うん」

オレは隣室に案内された。正面にオレの写真が大きく飾られていた。一緒に行ったハワイで撮った写真だった。その下にベビーベッドが置かれていた。そこに近づいて覗き込んだ。小さな子供が眠っていた。コレが・・・オレの子供か・・・

オレ
「誰に似てるんだろう?」

玲子
「目元は・・・あなたにそっくりよ」

オレ
「よくわからない」

玲子
「さっき眠ったところなの」

オレ
「そっか。じゃーまた後で」

オレと玲子はその部屋を出てリビングに戻った。ソファに座りオレはビールを飲み干した。

玲子
「あなたの部屋はそっちよ」

オレ
「そう。後で見るよ」

玲子
「ごめんね。勝手な事して・・・」

オレはまた泣きそうになった。玲子を強く抱きしめた。玲子は泣いた。声を上げて泣いた。オレは力を緩めて背中を撫でた。

オレ
「明日にでも籍入れよう」

玲子
「・・・」

オレ
「だけど、もう少しだけフラフラしていいかな?」

玲子
「ユーちゃん。あなたは気にしないでずっと自由で居て」

オレ
「いや、もう少しだけだ」

オレは玲子を抱いていた。玲子はオレの胸に顔を埋めながら話した。

玲子
「この間、サンフランシスコで漁師してるって聞いて本当に嬉しかった」

オレ
「そう」

玲子
「高知で漁師してくれる。って言ったのウソじゃなかったんだって思って」

オレ
「ははは^^」

玲子
「でも裕人は都会で育てたいの」

オレ
「そっか」

玲子
「子供ずっと欲しかったから。ユーちゃんの子供」

「あなたが居なくなってから、妊娠してることがわかったの」

「会社があんな事になって、内海さんがお店の処分やここも全部手配してくれた」

「ユーちゃんは大下を助けてくれたから、今度はオレの番だって」

オレ
「玲子に自分の子供を生ませたなんて言いやがってあのクソジジーが(笑)」

玲子はオレの胸から離れてオレの顔を見た。

玲子
「あはっ!そんな事内海さん言ったの?ユーちゃんそれを信じたんだ?」

オレ
「えっ!じゃー何故最初にオレが店に行った時にオレの子供だと言わなかったんだ?」

玲子
「当然知ってるって思ってた(笑)」

オレ
「バカな!オレが知ってらあんな・・・いや同じか」

玲子
「でも私も見たかったなーその時のユーちゃんの顔(笑)」

オレ
「何だよ!オレはオレですっげーショックだったんだぜ」

玲子
「あはっ(笑)」

オレはビールを飲み干した。ここ何日間でいつもオンナにビールを飲ませてもらってる。シスコでまたストイックな生活に戻れるだろうか?ちょっと心配だった。

子供の泣き声がした。玲子とオレはそこへ行った。昼寝から目覚めたようだ。玲子は裕人を抱いた。

玲子
「ちょっと持っててくれる?ミルク作ってくるから(笑)」

オレ
「ああ」

オレはソイツを抱いた。軽くておもちゃの人形と変わらない大きさ・・・赤ん坊ではない。もうひとりの人間がオレの腕の中にいた。オレはそいつをただ見ていた。

玲子
「うん。やっぱり泣かないわね!結構人見知りするようになったんだけど」

オレ
「ふーん」

玲子
「生まれた時からユーちゃんの写真いっぱい見てるからね^^」

オレ
「そう」

玲子
「どうしたの?」

オレ
「いや・・・全然実感がわかなくて」

玲子
「そりゃーそうよ(笑)」

オレ
「ふむ」

玲子は裕人をそこに座らせた。そいつは這ってウロウロしようとする。玲子はそいつを捕まえて哺乳瓶を咥えさせた。そいつは玲子に凭れて哺乳瓶を持ってゴクゴクと飲んでいる。目はオレの方を見ていた。

オレ
「そろそろ行くよ」

玲子
「うん^^」

オレ
「また来ていいか?」

玲子
「あたり前でしょ!あなたの家じゃない。(笑)あっ鍵渡しとくね」

オレは部屋を出て玄関に向かった。そうか・・・ここはオレの家か。嫁と子供の居るオレの家か・・・オレは玲子から鍵を受け取った。

オレ
「じゃー行って来る」

玲子
「いってらっしゃーい」

玲子は裕人を抱いて見送った。オレは周辺を歩いた。クルマを停めたあたりまで歩いた。1年半の旅で、サンフランシスコの海で、オレはまた夏を取り戻した。だからもう少し、もう少しだけ我侭させてくれ!


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