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ハバナ・エキスプレス


「HABANA EXPRESS」寺尾聡の歌の中でコレが一番好きです^^
▼1981年PART3-------------

オレはSRで箕面から171号線で西宮へ出て、夙川を下った。香露園シーサイド・マンションの前の公衆電話から電話を入れた。


「はい。神崎でございます」

オレ
「ムトーです」


「ユーちゃん。^^何処から?」

オレ
「下に居る」


「すぐ降りてくから、待っててー^^」

相変わらず無邪気な話し方だった。でも明るい声でそう言われると、気持ちがいい。ユーコはご機嫌な様子だった。

エントランスからユーコが出てきた。小走りに駆け寄る。オレは両手を広げた。ユーコは飛びついてきた。

優子
「おなか減ってる?^^」

オレ
「うん」

優子
「じゃー夙川のショッピング・モール行こっ!奢ったげるっ」

オレ
「何を?」

優子
「ハンバーガー^^」

オレ
「オッケー(笑)」

SRの助手席にユーコを乗せ、前に1度行った事のあるショッピング・モールへ行った。店内にあるマグドナルドに入った。ユーコはハンバーガーセットを2つ買った。オレたちはそれを持って席についた。昼下がり、子供連れの客が多かった。

オレ
「ハンバーガーいいのか?ダイエット中じゃなかったか?」

優子
「もうダイエットは辞めたの!その代わりフィットネスジムに通おうと思って(笑)」

オレ
「あっそう」

優子
「英会話教室も申し込んだのよ!」

オレ
「そーなんだ(笑)」

優子
「サンフランシスコの本や雑誌もいっぱい買った」

オレ
「(笑)」

オレはもう何もいう事はなかった。何かしら楽しみ、いや目的を持って楽しそうに話しているユーコを見ているだけで嬉しかった。

オレ
「そっか。しっかり頑張れ^^」

優子
「ヒロミにねー電話してユーちゃんが戻ってきたって言ったら」

ユーコの話は続いた。オレはさも興味ありそうに聞くふりをした。実は子供が居るんだ。結婚するんだ。言った方がいいか?こんな笑顔のユーコを前にしてそんなことはとても言えない。オレは来週シスコへ戻る。また暫くはこっちに帰ってこないつもりだから、次に会うことがあったらそれはシスコだ。

ユーコ。最初にハンバーガーを奢ってもらった時も・・・嬉しかったんだぜ!

オレは、この後約束がある。と言ってユーコをシーサイド・マンションの前まで送って行った。オレは必ず電話するとユーコと約束して、その場で別れた。ユーコがエントランスに消えるまでそこを見ていた。

43号線を西へ飛ばした。陽が傾きかけてサングラスをしてても眩しかった。ヨーコの店の前にSRを停めた。

オレ
「腹減った。。。メシ」

ヨーコ
「いつものでいい?^^」

オレ
「うん。ライス大盛りで(笑)」

オレは別に腹は減っていなかった。でもメンチカツが食いたかった。この間は突然オレは消えた。今回はオレなりに挨拶をしようと思っていた。

ヨーコ
「さっきショーヘーが帰ったところよ」

オレ
「ん?あいつ来てたんだ」

ヨーコ
「ヒロが復活した!って喜んでた」

オレ
「そう」

ヨーコ
「何かやらかしたの?(笑)」

オレ
「ん?ゴルフ大会で優勝した^^」

ヨーコ
「ふーん(笑)」

メンチカツにウスターソースをかける。キャベツの千切りとよく合った。そして味噌汁。オレはあっと言う間にそれを平らげた。ヨーコはサイフォンの珈琲を淹れてくれた。

オレ
「もうすぐお盆だな」

ヨーコ
「そーね。」

オレ
「ユーヤが居なくなって9年も経つんだな」

ヨーコ
「・・・」

オレ
「オレ、あいつの代わり出来てたかなー」

ヨーコ
「もう十分でしょ」

オレ
「そっか。あっSRありがとう^^久しぶりに走りまわったよ」

ヨーコ
「うん♪今度は私がエンジン積み替える」

オレはSRのキーをヨーコに渡した。ヨーコの指にはカルチェの3連リングが光っていた。前にオレがプレゼントしたやつと同じ・・・

オレ
「じゃーまたな^^」

ヨーコ
「待って!SRでちょっと走ろう^^」

そう言ってヨーコはエプロンをとって出てきた。一緒に店を出た。ヨーコは運転席に回った。オレは助手席に飛び乗った。ヨーコはシートを調整し、ルームミラーを点検してキーを捻る。いい音がしてエンジンが回る。ギアを入れてSRを出した。

SRは神戸港の中突堤で止まった。

ヨーコ
「もう行くんだ。今度は長いの?」

オレ
「さーわからない」

ヨーコ
「どうしてユーヤの話を」

オレ
「ん?お盆が近いし(笑)」

ヨーコ
「もう私と会えないから?」

オレ
「んな事ないさ^^また会えるさ」

ヨーコ
「・・・」

ヨーコはオレに抱き付いてキスをした。オレはヨーコの舌を吸った。手は自然にヨーコの胸を掴んだ。何度もキスをして乳を強く揉んだ。ヨーコはゆっくりと離れた。

ヨーコ
「続きはサンフランシスコよ」

オレ
「えっ?」

ヨーコ
「必ず年内に行くから、それまで動かないでね!」

オレ
「ああ」

ユーコはエンジンをかけてSRを小気味よく扱って、駅まで送ってくれた。

オレ
「ありがとう」

ヨーコ
「うん」

オレはSRから降りた。人でいっぱいの歩道にたった。

ヨーコ
「ヒロっ!愛してるよ!!!」

ヨーコの張りのある声が響いた。人並みが一瞬止まりヨーコに注目した。そしてオレに・・・SRは勢いよく走りだした。オレはそこに暫く立っていた。久々にユーヤのアネキを見た思いだった。

「ヨーコ!オレも愛してるよ」

大声で叫びたかったが、小さく呟いて駅へ向かう人ごみに紛れた。

▼20時・・・ギャラクシー

前田
「佐竹さんがいらしてます」

オレ
「そっか」

前田
「特別室にお通ししてます」

オレ
「オッケー」

オレは店内を通り、特別室に入った。

オレ
「すみません。お待たせして」

佐竹
「オレも今来たところだ^^」

ソファには佐和子が居た。オレを認めると立ち上がった。オレは佐竹氏の正面に座った。テーブルにはビールとオードブル。まだそんなに飲んでいないようだった。

オレ
「昨日はドタバタしてすみませんでした」

佐竹
「いや頭取もご機嫌で何よりだったよ」

オレ
「皆さんにも喜んでもらえたようで一安心です」

佐竹
「実は今日何度か沢渡さんから電話があって、夕方には署に来たそうなんだが、忙しくて会えなかった。(笑)」

オレ
「そーでしたか」

佐竹
「もっとも、もう会うこともないだろうけど」

オレ
「すみません」

佐竹
「どうも彼の会社は経理に問題があったようで、銀行が融資を引き上げるとかなんとかそんな情報が他から入ってきた」

オレ
「そうですか」

佐竹
「うちでも問題があってね。あまりおおっぴらに言えないんだけど、資料の紛失が発覚してね。担当を訓告処分にしたんだ。」

オレ
「はぁ〜」

佐竹
「だからうちの署にはもうムトー君の資料がないんだ(笑)」

オレ
「あははは^^」

佐竹
「そういう事で、これからもゴルフ一緒に頑張ろう^^」

オレ
「はい」

佐竹
「じゃーボクはこれで」

オレ
「どうもありがとうございました。さわちゃんお送りして」

佐竹
「いやもうここで^^」

そう言って佐竹氏は特別室の裏口から出て行った。勝手知ったる他人の店というように・・・佐和子はオレの隣に座り直して新しいグラスにビールを注いだ。

オレ
「他には?」

佐和子
「あなたはもうギャラクシーを制圧したのか?とか、郷田とは話はついたのか?とか」

オレ
「それで?」

佐和子
「最初からギャラクシーのオーナーはムトーしか居ません。そしてムトーに手を出す人間はミナミには居ません!と応えました」

オレ
「それでいい(笑)」

佐和子
「ギャラクシーのオーナー伝説の始まりです^^」

オレ
「伝説か・・・オレは来週シスコに戻る」

佐和子
「・・・はい」

オレは特別室を出て店内を見渡した。昨日来ていたメンバーが数人来ていた。オレはそこへ行って挨拶をし軽口をたたいた。一通り店内を回ると、ひとつのテーブルに理恵がついていた。目が合った。理恵は笑顔で客に断りを入れてこっちに近づいてきた。オレはカウンターに向かいそこに座った。

理恵
「ギャラクシーのママは佐和子でいいでしょ?」

オレ
「理恵は?」

理恵
「んーーーオーママかしら?(笑)」

オレ
「あははは^^(笑)」

カウンターの中の人間がジン・トニックをつくってオレの前に出した。一口飲んだ。まーまーだった。オレは笑顔で頷いてやった。

理恵
「何もかも元通りになった」

オレ
「そう^^それは良かった」

理恵
「でもユーちゃんはまた居なくなるんでしょ?」

オレ
「まーな」

理恵
「玲子さんの子供と会った?」

オレ
「ああ」

理恵
「ユーちゃんが留守の間、私も気をつけて見てるから」

オレ
「ははは^^ところで、洋子はどうしてる?」

理恵
「あなたが居なくなって、あの子も東京へ行ったの」

オレ
「銀座か?」

理恵
「うん。向こうで頑張ってるみたい(笑)」

オレ
「そっか。いつかまた会えるといいな」

理恵
「そーね」

オレはジン・トニックを飲み干して席を立った。フロントを通ると黒服たちが一斉に礼をした。すでにEVは開いていた。牧村がそれを手で押さえていた。

オレ
「ありがとう」

牧村
「お疲れ様でした」

オレはエレベーターに乗り店を出た。周防町を歩き心斎橋に出た。北へ向かいソニービルの前の信号を待ちそこを渡った。すぐを東に50メートル。1Fのカフェはまだ営業をしていた。そしてEVに乗って最上階へ・・・

1110号室

インターフォンを押した。すぐにドアが開いた。

横山
「お疲れ様です」

オレ
「うん」

オレは中へ入った。いくつかのテーブルと椅子が入っていた。以前、何処かの店で使っていたものかも知れない。

オレは南側の窓に近づいた。大きなカーテンを開くと、そこからはミナミの街の灯が広がっていた。横山がバドワイザーの缶を持ってきた。

横山
「ムーさん。まだ報告してない事があります」

オレ
「それはいいことか?悪いことか?」

横山
「たぶんいい事かと」

オレ
「ならもっと嬉しそうに言えよ(笑)」

横山
「沙耶ちゃん。去年の秋に結婚しました。アメリカ人のカメラマンだそうです」

オレ
「そっか^^」

横山
「キョーコさんも今付き合ってる人が居て、もう少ししたら結婚するそうです」

オレ
「あははは^^」

横山
「やっぱり・・・あんまりいいことじゃないですよね」

オレ
「バカヤロー(笑)」

横山
「ムーさん。もうオレたちの青春は終わったんですかね?」

オレ
「お前も苦労したからな。ちょっとリフレッシュが必要かも知れん。よしサンフランシスコへ連れてってやる」

横山
「えっ」

オレ
「向こうで漁に出てヘロヘロになって、そしてパーラーで金髪オンナとセックスするんだ(笑)」

横山
「金髪オンナですか?^^」

オレ
「おうハンパなセックスじゃないぞ!まるでスポーツのように激しいセックスだ。それこそ相手を満足させるのにどれだけ体力がいるか(笑)」

横山
「あははは^^セックスがスポーツですか?(笑)」

オレ
「それから気をつけないとボォーとしてたらゲイのやつらにすぐにケツ掘られるぞ!」

横山
「ケツって(笑)」

オレ
「シスコはミナミなんかよりもっとデンジャラスな街だ^^」

横山
「ははは・・・」

オレはバドワイザーを飲み干して、横山と一緒にスカイ・マンションを出た。この時間になってようやく街の熱気は少し治まったようだった。周防町、横山は東に行き東洋ビルへ向かった。オレは西へ行きアメリカ村を歩いた。ひとつ下の道に入る。新しい店が増えて以前よりも賑やかになっていた。見知った看板・・・そこへ入った。

池谷
「ムーさん・・・」

オレ
「ははは^^なんだそんなに驚いた顔して(笑)」

池谷
「いや、行方不明になってたって聞いてましたから」

オレ
「4日前にちょっと戻ってきた」

オレはカウンターに座った。ネストのマスターの池谷はちょっと緊張した面持ちでカウンターに入った。オレはバーボンを注文した。

アメリカン・ロックがかかり、店内のフインキはそのままシスコに持って行っても違和感がない。


「ユーちゃん。。。」

オレはすぐに振り向くことが出来なかった。ゆっくりとカウンターのスツールから降りた。そして振り向いた。

オレ
「よっ!ご無沙汰」

言葉が終わらない内に手が飛んできた。避けようと思えばできなくもなかったが、オレはあえてそれをしなかった。

「パチーン」

オレの左頬は平手打ちを食らった。いい音がした。店内を見渡す。まるでその場に居た人間全員が凍りついたようにこっちを見ていた。

オレ
「もう一発どうだ?^^」

女の目の中には憎悪に似た感情があるように思えた。オレは一番近くのテーブルに移動してそこに座った。その頃になってようやく店内のノイズが聞こえ始めた。それでも客はその成り行きを気にしているようだった。

池谷
「こちらでいいですか?」

オレ
「うん。あーありがとう(笑)」

池谷
「すみませんでした」

オレ
「ん?」

女がオレの前に座った。池谷はワイルド・ターキーのダブルと水を置いてその場から離れた。


「いきなり現れてどういうつもり!」

オレ
「まさかここで会うとは(笑)色々あってな!悪かったな^^」


「あなたが女ったらしだって事が居なくなってわかったわ」

オレ
「そう」


「クラブのママを何人も・・・」

オレ
「うん。みんなに迷惑をかけた。」

オレはターキーを呷りながら正面から香の顔を見て話した。香はメイクが変わったせいか?少しやつれたように見えた。


「あなたが連れて行ってくれたお店は次々になくなるし」

「毎日シューさんとこや、スコッチ・バンクやここへ来て」

「あなたの会社や部屋にも・・・」

オレ
「そっか」


「ちゃんと説明して!!!」

オレ
「うむっオレいい加減なヤツだから特に理由はないんだ」


「開き直るの!」

オレ
「いや。本当に明確な理由があった訳じゃないんだ。しいて言えば・・・精神に膿みがどんどん溜まっていって、我慢できなくなって逃げ出した。」


「・・・」

オレはバーボンをもう一杯オーダーした。


「どうしてまた現れたのよ!そのまま居なくなってればいいじゃない!!!」

オレ
「うん。身内に不幸があって帰国したんだが、仲間が苦労してる事を聞いて4日前にミナミに戻ってきた。でももうそれも終わったから、すぐに出て行く」


「帰国・・・どこに行ってたの?」

香の感情の起伏が激しい。相当酔っているのか?

オレ
「アメリカ」


「アメリカの何処?」

オレ
「サンフランシスコだ。そこで漁船を借りて漁師をやってる」


「プロゴルファーになるって言ってたじゃない!!!」

オレ
「必要以上の金を持って、毎日ゴルフをして女と遊ぶ。そんな生活が嫌になった」


「だからプータローになるかも知れないって言ってたの?」

オレ
「まーそんなところかな?オレ自身その頃はよくわかってなかったから」


「今はどうなの?」

オレ
「4日ミナミに居ただけで・・・また堕落した。(笑)」

新しいターキーを池谷が持ってきてくれた。その場に立ったまま戻ろうとしない。

池谷
「ムーさん。実は今オレたち付き合っているんです」

オレ
「えっ?」


「・・・」

オレ
「そっか。イケちゃんと・・・そーだったか。」

オレは立ち上がってキャッシャーへ向かう。支払いをしようとするとイケちゃんは今日は奢りです!と言った。オレは逆らわずに礼を言って店を出た。

ラークに火をつけた。オレは西へ歩きだした。


「待ちなさいよ!」

オレは後ろから聴こえる香の声を無視して歩いた。


「まだ話は終わってないわ」

香は走ってオレの前に出てきた。

オレ
「もう話すことはない。イケが心配するから戻れ!」


「関係ないわ!これは私とあなたとの話よ!」

オレ
「オレは本当の事を全部話した。これ以上話すことはもうない」

オレは歩き始めた。香りはついてくる。オレは立ち止まった。

オレ
「どうしてもまだ話があるというのなら、日を改めて昼間に話そう。酒の入っていない時に!どうだ?」


「ダメよ!あなたはまた居なくなる」

オレ
「じゃーどうすればいいんだ?」


「そこに行こうよ」

オレは香が指さした方向を見た。「ホテル・カルフォルニア」そこにはバーラウンジなんてものもなくただのラブ・ホテルだった。

オレ
「オレを困らせるのは全然構わない。だけどな、イケの事を考えてやれよ」


「あそこに入ったからって何もないわ!ゆっくり落ち着いて話ができる」

オレ
「オレがイケだったらそんな事されたらたまらないよ!香、絶対に次の機会をつくるから今日は店に戻ってくれ!お願いする」


「あなたは池谷さんの事を理由に私から逃げようとしてるだけじゃないの」

オレ
「・・・」

確かにその通りだが、知ってしまった以上は香を連れ回す事は出来ない。だが・・・このままでは収まりそうもなかった。

オレ
「わかった。じゃー付いて来い」

オレは歩きだした。少し早足で・・・香は黙ってついてくる。遅れると少し走っているようだった。心斎橋を歩き長堀通りで信号待ちをした。ようやく香が追いついた。オレはあえて見向きもしないし、声もかけない。信号が青になりそこを渡った右へ曲がりスカイ・マンション前に・・・

EVに乗り最上階へ1110号室・・・


「ここは・・・」

オレ
「あーまた借りたんだ」

オレは鍵を使ってそこへ入った。壁のスイッチで明かりをつけた。天井照明がついた。すでにこの部屋はリセットされオレたちが居たころのレイアウトではなくなっていた。

ガランと広い場所にテーブルとイスが数組・・・一番手前のテーブル席にオレは座った。

オレ
「それで、何がどうだって?」

香は部屋を見渡していた。


「ここにピンボール・ゲームがあった。Mellow Beachのネオン管も、ダイビング用のボンベもあったわ」

オレ
「・・・」


「そこはユーちゃんの部屋だった。ここでふたりでクリスマス・パーティーしたわ。710号室は?」

オレ
「そこはもう別人が住んでいる」


「そう。あの部屋はユーちゃんが私のために借りてくれてたのに」

ちょっとおかしい。さっきまでの剣幕はどこに?そんなに飲んでるわけでもなさそうだし、どうしたんだ?

オレ
「そうだったな。香、こっちにきて座らないか?」


「うん」

香はオレの正面に座った。オレは立ち上がりキッチンの方へ行こうとした。


「ダメ!」

オレ
「冷蔵庫をちょっと」


「行かないで・・・」

オレ
「・・・」

オレはイスに座り直した。


「九州のツアーから帰ってきて、待ってた。電話が鳴る度にユーちゃんが近くに来て、車から電話してるんだと思って・・・」

オレ
「送って行ければいいんだけどな。今はクルマも持ってないんだ。後でタクシー拾ってあげるよ」


「ユーちゃん。私の事おかしいって思ってるでしょ」

オレ
「いや、オレが心配をかけすぎて香を傷つけたんだと思ってるよ」


「少しは反省してる?」

オレ
「ああ反省してる」


「じゃーもう何処にも行かない?」

オレ
「うん。何処にも行かない」


「私に居て欲しい?」

オレ
「ああ」


「ちゃんと言って」

オレ
「香に居て欲しい」


「じゃー居てあげる^^」

オレ
「ありがとう。ちょっと電話していいか?」


「うん」

オレは電話機を持ってキッチンの方へ行った。冷蔵庫からバドワイザーを出した。ポケットをさぐるとネストのマッチがあった。オレはそこへ電話をした。池谷に代わってもらって迎えに来てもらうように言い電話をきった。オレはバドのプルトップを引いた。グラスを2つ持ってテーブルに戻った。バドをグラスに注いで、ひとつを香の前に置いた。


「ありがとう^^ユーちゃん」

オレ
「うん」


「今度またジャグジー行こうか?」

オレ
「そーだな」


「赤とか青とかになってキレイだった^^」

オレ
「うん」


「ユーちゃん。一緒にバイク乗りたい。乗れるんでしょう?」

オレ
「ああ」


「ユーちゃんの運転するバイクの後ろに乗るの。いっぱい抱き付いて」

オレ
「自転車じゃダメか?ほらポール・ニューマンがキャサリン・ロスを前に乗せて走ってたじゃないか」


「うん」

チャイムが鳴った。オレは入り口に行きドアを開けた。池谷を招き入れた。

池谷
「香ちゃん。もう遅いから家まで送るよ」


「ごめん。今日はここに居るの!ユーちゃんが居て欲しいって言うから」

池谷はオレの方を見た。オレは小さく首を振った。

池谷
「でもさーおかーさんが心配して電話かけてきて、オレが送り届けますって言ったんだ。だから家に帰ろう?」


「お母さんには私から電話する。ユーちゃんと一緒だから安心してって」

オレ
「じゃー香。オレを香の家に泊めてくれないかな?ここには引越したばかりでベッドも布団もないんだ」


「それじゃーお母さんに頼んでみる」

オレ
「そっか。じゃー行こうか?」


「うん」

オレは池谷に目配せした。先に彼は出た。オレは香を先に出そうとしたが、香はオレの腕に絡んできて離れない。仕方なく一緒に出た。EVに3人で乗った。香は離れない。オレと池谷は沈んだ表情で香を見ていた。

池谷は自分のクルマ「ボルボ」を長堀通にハザードをつけて停めていた。

オレ
「じゃーお願いできるかなー?」

池谷
「はい」


「ユーちゃん。一緒に後ろに乗ろう^^」

オレ
「ああ」

オレは心が痛んだ。池谷はどんな気持ちで・・・クルマはゆっくりと発進して神戸へ向かった。香はオレの腕を抱いて体をくっつけていた。カーステから穏やかなソウルが流れていた。適度な振動、薄暗い車内。誰も何も話さなかった。香を覘きこむと彼女は寝息をたてて眠っていた。

オレ
「ずっとこんな風なのかな?」

池谷
「いえ。酔うと時々・・・」

オレ
「今日もかなり飲んだのかな?」

池谷
「うちの店では飲んでません」

オレ
「そう」

池谷
「ムーさんが現れてショックを受けたんだと思います」

オレ
「ふむ」

池谷
「ムーさんの歌とか王子動物園とか有馬温泉とか何度も聞かされました」

オレ
「・・・」

赤坂通りの香の家の前に池谷はクルマを停めた。オレは香を抱くようにしてクルマから降ろした。


「あっ寝ちゃった?私」

オレ
「あーヨダレたらして寝てた」


「うそーそんな」

オレ
「ウソだよ(笑)」


「もぉーユーちゃん(笑)」

玄関のドアが開いて、母親らしき人が出てきた。池谷は顔なじみらしく挨拶して事情を説明しているようだった。香の母親がオレの方を見た。その目は明らかにオレを敵視していた。

オレ
「ムトーと申します。夜分遅くにすみません」

母親
「あなたが・・・」


「おかーさん。ムトーさんよ!」

母親
「よかったね。香」


「うん。今日ムトーさん泊めてあげてもいいでしょ?」

母親がまた冷たい目でオレを見た。オレはゆっくりと首を振った。

母親
「いいわよ!それじゃー香、先に着替えたら」


「うん。じゃーユーちゃん後でね」

香は2階に上がって行った。オレは小さな声で「失礼します」と言って外へ出た。池谷とボルボに乗ってそこを離れた。

オレ
「イケちゃん。オレ来週にはシスコへ帰る予定なんだ」

池谷
「そーですかシスコへ行ってたんですか」

オレ
「もう2度と香には会わないつもりだ。申し訳ないけど、後の事、お願いできるかな?」

池谷
「ムーさん。オレ複雑な気持ちですよ」

オレ
「えっ?」

池谷
「もちろんムーさんには香と会って欲しくないんですけど、あんなに喜んでる香が可哀そうで・・・」

オレ
「・・・」

オレは何も言えなかった。香の母親の冷たい目を思い出した。相当ひどい状態があったのだろう。

そう言えば香は異常に勘がいいと言うか人の考えを読んでいるような時がしばしばあった。そういう意味では繊細な精神の持ち主なんだろう。

オレ
「あのまま大人しく眠ってくれればいいんだけど」

池谷
「たぶん・・・ダメだと思います」

オレ
「ダメとは?」

池谷
「ムーさんが居ないのがわかると、暴れるんじゃないかと」

オレ
「そうなのか?」

池谷
「感情の起伏が激しいんです」

オレ
「・・・」

池谷はミナミまで戻ってスカイ・マンションまで送ってくれた。オレは礼を言って別れた。オレはタクシーを拾って西区の理沙のマンションへ行った。

▼25時・・・メゾン「西本町」

玄関前のオートロックで部屋番号を押した。


「はい」

オレ
「ムトーです」


「どうぞ^^」

鍵の空く音がしてマンション内に入った。EVに乗って最上階で降りた。ドアの前でもう一度インターフォンを押した。すぐにドアが開いた。

笑顔の理沙がそこに居た。

理沙
「おかえりなさい^^」

オレ
「ただいまー^^」

オレは部屋の中に入った。上着を脱ぐと理沙がそれを受け取りハンガーにかけた。リビングのソファに座った。理沙はキッチンへ行きビールの用意をしている。オレは部屋を見渡した。何も変わっていない。出て行った時のまま・・・

理沙
「着替えの服も夏物を用意したわ。もちろん他のモノも全部あるわ」

オレ
「そっか」

理沙
「長い出張だったわね(笑)」

オレ
「ははは・・・出張か?(笑)」

理沙
「おなか減ってる?」

オレ
「いやいい」

理沙はトレイに載せたものをテーブルの上に置いた。そして隣に座った。オレがグラスを持つとビールを注いだ。理沙に新しいグラスを渡してオレがビールを注いだ。

オレ
「帰ってきて良かった」

理沙
「うん」

軽くグラスを合わせてオレはそれを半分ほど一気に飲んだ。

オレ
「北新地はどう?」

理沙
「お客さんもホステスもみんな清ましてるわ^^」

オレ
「それは面白くないってことか?」

理沙
「ミナミの方がやっぱり元気があって好きよ」

オレ
「そっか^^」

理沙
「ごめんね。」

オレ
「えっ?」

理沙
「私・・・理恵を助けられなかった。」

オレ
「あの環境では誰も助け出すことは出来なかっただろうな」

理沙
「あなたは一瞬で何もかも解決したのね」

オレ
「運がよかった。ただそれだけだ」

理沙
「理恵がなんか羨ましい(笑)」

オレ
「何でだよ」

理沙
「ユーちゃんがものすごく優しかったって」

オレ
「・・・」

理沙
「どうしたの?」

オレ
「いや、きっとオレは優しくなんかないさ(笑)」

理沙
「優しいからなんでもひとりで抱え込んで悩んで、でもいつも無理して明るく振舞って、我慢し続ける」

オレ
「ふーん」

理沙
「だってあんな可愛い顔して泣くんだもんっ」

オレ
「ふんっ」

理沙
「あんな風にもっと泣いたらいいのに^^」

オレ
「アホっ!女の前で泣いたのは後にも先にも今日だけだ」

理沙
「うわーじゃー私だけが見たんだ?あの泣き顔」

オレ
「もう勘弁してくれよ(笑)」

オレは理沙を抱き寄せてキスをした。理沙の舌を吸った。何度もキスをした。服の上から胸を揉んだ。理沙の顔にオレは自分の顔をこすり付ける。

理沙
「あーユーイチ」

オレ
「懐かしい理沙の匂い。いい匂いだ」

理沙
「ユーイチもよ!あなたの汗の匂いとってもいいの」

オレ
「ベッドに行こう」

理沙
「うん」

寝室に入った。部屋の照明スイッチを入れる。間接照明だけの柔らかい灯りの中、理沙は自分で服を脱いだ。下着はまったくつけていない。オレはその体を見ていた。オレは自分の服を脱ぎ捨てた。立ったままオレは後ろから理沙を抱いた。

オレ
「キレイな体だなー」

理沙
「そう?」

オレは理沙の乳を揉んでいた。

オレ
「みんな理沙を見たらこうして抱きつきたいと思う」

理沙
「ダメよ。『蒼い蝶』がいるのよ」

オレ
「誰かに見せた?」

理沙
「誰にも見せてない」

オレ
「触らせてもいない?」

オレは手は胸から腹を撫でていた。

理沙
「うん。誰でも触らせてない」

オレは理沙のなだらかな丘を撫でた。

理沙
「あーーー」

オレ
「ベッドに座って」

理沙は両脚を揃えてベッドヘッドに凭れた。キレイな脚は少し膝を立てて伸びていた。理沙は自分で乳を揉み始めた。両手で乳の下から上に指を使って揉んでいる。

オレ
「理沙。みせてくれ『蒼い蝶』を」

理沙はゆっくりと右脚を上げた。うちふとももに大きな蝶が羽を広げている。オレはそこへ顔を近づけた。理沙の左足も上がり膝が立てられた。オレはもっと見えるように理沙の脚を開かせた。

理沙
「あーーー」

理沙は見られているだけでたまらく恥ずかしいのだろう。深く刻みこまれた縦線が下にいくほど開いている。すでにそこからは液体が流れ出ていた。

オレは内ふとももの蝶から順番にキスをした。

理沙
「あーーーん」

そして割れ目に舌を居れた。

理沙
「うぅー」

丁寧にゆっくりと固く尖ってコロコロしているクリトリスを吸った。

理沙
「あぅー」

オレはもう我慢できなかった。理沙をそのまま座らせたままオレのモノを女の穴にあてがい挿入した。

理沙
「うわぁーーーー」

オレのモノが半分ほど入っているのが見える。オレは腰を使ってそれを見ながら出し入れした。オレのモノが黒光りしていた。

理沙
「あーユーイチ。もっと、もっとよ」

オレは理沙の両脚を持ってそのまま後ろへ引きずった。理沙はゆっくりとベッドに倒れた。オレは理沙の体を折りたたむように両脚を持って腰を突き出した。

理沙
「うぁーーー」

そのままリズミカルに腰を使う。理沙の穴の奥までオレのモノが届いているのがわかる。そこを責め立てた。

理沙
「あーーーあーーーあーーー」

理沙はオレにしがみ付いて、オレの背中に指を立てものすごい力で背中を掴もうとした。強烈な痛みが背中に走った。

ゆっくりと理沙の体から降りた。

理沙の体を裏返して、腰を両手で引き上げた。理沙はどうされるかわかっている。四つ這いになり両脚を揃えて尻を高く持ち上げた。卑猥な性器がむき出しになってよく見えた。オレは女の穴を指で開いた。ピンク色のきれいな穴が見えた。

オレ
「理沙よく見える」

理沙
「あー欲しい」

オレ
「すぐに入れてやるよ」

理沙
「いっぱい犯して」

オレは理沙の腰を持ってオレのモノを一気に突き刺した。

理沙
「うわぁーーー」

大きなストロークで水平になるようにしっかりと両手で理沙の腰を持って、オレは動いた。

理沙
「うぅーうぅーうぅー」

徐々に動きを早めて力強く責めた。

理沙
「あーーーあーーーあーーー」

理沙は大きな声を上げていった。穴の奥が緩み熱いものが吹き出した。オレは奥に入れたまま理沙の腰を持つ手を力いっぱい動かした。

理沙
「あぅーあーまた」

「あーーーあーーーーあーーーー」

理沙は立て続けにいった。理沙の体を放してオレは布団の中に入った。そして理沙をその中に入れて抱いた。理沙の口はまだ開いて声にならない声を出していた。オレの手は理沙の股間に入った。指を使って穴の周りを少し強く押しながら揉んだ。

理沙の体の中に残っている快楽を解放しながら新たな快楽を与えて理沙の体をクールダウンさせる。

理沙
「うぅーーー」

オレ
「ひさしぶりだからキツかったな」

理沙
「あー溶けるー」

オレ
「うん。眠っていいぞ」

理沙
「いや・・・」

オレは股間の手を放して背中を撫でる。理沙の頭を抱えるように抱いた。理沙は抵抗できないまま眠った。オレはゆっくりと理沙の体をベッドに置いて起さないように寝室を出た。

風呂場に行ってシャワーを使った。頭から熱いシャワーを浴びた。背中に湯があたると痛みが走る。体の汗を流して風呂に入った。湯温調整機械が動作していていつでも適温の湯がはられている。

背中がズキズキと痛んだ。

ドアが開いて頭にタオルを巻いただけの理沙が入ってきた。

オレ
「目が覚めた?」

理沙
「まるで催眠術みたい・・・」

オレ
「そう?」

理沙
「あのまま眠ったらものすごく後悔するわ。眠らせないで」

理沙はシャワーを使い同じように汗を流している。理沙の全身が見えている。まったく隠す様子もなく、湯船の中に後ろ向きで入ってくる。

大量の湯があふれ出た。

理沙
「気持ちいい^^」

オレは後ろから手を回して理沙の乳を弄ぶ。

オレ
「後でまたしようなっ」

理沙
「うん。いっぱいして」

オレ
「でも・・・背中が痛い」

理沙
「はっ!もしかして・・・見せて」

理沙は体を入れ替えてオレの方に向いた。オレは湯船から出た。

理沙
「うわー大変。。。すぐに手当てしないと」

オレ
「あははは^^1年半も放っといた罰だな(笑)」

理沙
「ごめーーーん」

風呂から上がり理沙は救急箱を持ってきてオレの背中を消毒した。それ以上何かをしようとしたがオレは断った。ひっかき傷、消毒さえしておけばそれで良かった。

そしてベッドに戻りまた濃いセックスをした。

▼9時・・・スカイ・オフィス

オレ
「おはようー」

前田
「おはようございます」

オレ
「昨夜は梅木来た?」

前田
「はい。オレだけの対応に不満そうでしたが、名変手続きだけなので事務的に済ませました」

オレ
「じゃーコレでとりあえず完了だな!」

前田
「はい^^」

オレと前田は1階に降りてカフェで朝飯をオーダーした。外はすでに暑かった。来週はお盆でミナミの街も閑散とするだろう。横山が通りの向こうから現れた。こっちに気付いて向かってきた。

前田
「松井の面会に行ってこようと思ってるんですけど」

オレ
「そっか。安心させてやってくれ」

前田
「はい^^ムーさんは?」

オレ
「行った方がいいか?」

前田
「いえ、オレだったらそんなとこムーさんに見せられないし」

オレ
「ははは^^」

横山
「おはようございます^^ソレ旨そうですね!オレも食べよーっと」

オレ
「横山、お前朝からご機嫌だな?」

横山
「はい^^もう何もかも悩みがなくなりましたから(笑)」

前田
「オレもなんかミルク・ホール時代に戻ったようで一気に若くなった気分ですよ(笑)」

オレ
「ははは^^ミルク・ホール時代かー(笑)」

前田
「そーだ。佐和子さんからクラウン預かってます」

オレ
「ん?」

前田
「ムーさん必要だろうからって!これ鍵です。」

再スタートする新しいカンパニー♪それぞれが辛酸を舐め、人には言えない苦労をしただろう。だが、こうしてまた希望を持って始めることができるチャンスに素直に喜んでいた。

しかし、オレが帰ってきた事はいいことばかりではなかった。昨夜の香の事が重くのしかかっていた。

朝食を済ませ事務所の片づけを始めた。倉庫にあったオレの私物を一旦スカイ・オフィスの一室に入れた。もっともダンボールを山済みにしてハンガーラックにかかったままのスーツなどを並べただけだった。

インターフォンが鳴り横山が受話器をとった。

横山
「はい。ムトー商会です」

「少々お待ちくださいませ」

横山は受話器を手で押さえた。

横山
「K芸能の高坂さんですが・・・」

オレ
「ん?入ってもらおう」

前田はドアを開いた。高坂ともうひとり男が居た。

高坂
「ムーさん。ご無沙汰してます^^」

オレ
「やー^^久しぶり」

高坂
「うちの営業部長の西岡です。」

西岡
「始めまして西岡です。ムトーさんには高橋や石井がずいぶんお世話になっていたと聞いてます。どうぞよろしくお願いします」

オレ
「いえ、どうぞ何もないところですがおかけください」

オレは3つあるテーブルの一番奥をすすめた。

西岡
「これは似つかわしくないかも知れませんが、事務所開きと言うことでどうぞご笑納下さい」

オレ
「うわー日本酒かー嬉しいなー^^ありがとうございます」

オレは朱桶の酒を受け取り前田に渡した。横山はグラスに入った冷たいお茶をテーブルに置いた。

オレ
「それにしても、どうしてここが?」

高坂
「ムーさん。オレ若いやつ何人か連れてずっと張ってたんですよ(笑)」

オレ
「えっ?」

高坂
「4日ほど前に事務所でニュース見てたら、派手な格好したヤツが警官に取り囲まれながら本家に入っていくじゃないですか!もうその瞬間に絶対ムーさんだと思いましたよ(笑)」

オレ
「そんな事がニュースになってたのか?」

高坂
「そりゃー親分亡くなったばかりですから・・・」

「それで絶対にミナミに現れると確信して『ギャラクシー』張ってました」

「そしたらやっぱり現れて・・・それからの事は大体聞いてます」

「郷田の叔父貴凹まして、ネーさん助けてくれて・・・」

オレ
「ははは・・・」

西岡
「公にはうちは関われないので、高坂の独断と言うことで」

オレ
「じゃーギャラクシーをずっと」

高坂
「郷田や沢渡が来た時は動員かけてましたから」

オレ
「そう。それで何事もなかったんだ。ありがとう」

高坂
「いえ。松井さんの代わりですから」

オレ
「いやオレが勝手したために石井さんまであんな事になって」

西岡
「とんでもない。うちこそ松井さんになんとお詫びしていいか」

オレ
「とりあえずは、郷田さんにもわかってもらえましたし、沢渡にも店を返して貰いましたからこれで終わりです」

高坂
「ムーさん。ありがとうございました」

オレ
「礼を言うのはこっちの方です」

西岡
「何かあったら何時でも連絡下さい。私らで出来る事ならなんでも」

オレ
「ありがとうございます」

そう言って彼らは早々に引き上げていった。オレは玄関まで見送った。そして中に戻った。

前田
「ムーさん。石井さん破門になったの知ってたんですか」

オレ
「詳しい事情は知らないんだ」

前田
「石井さんは・・・」

前田の説明を黙って聞いていた。松井と前田が郷田と沢渡に話をつけようとして事件になった後、石井はひとりで郷田を狙ったがそれは失敗に終わったという。石井はそれまで沢渡と組んで大きな仕事をしていたらしいが、高橋をハメたのも郷田。そして今度はカンパニーをハメて理恵までも・・・そんな理由で郷田を付け狙った結果、破門になったようだ。

オレ
「でもまー結果的に石井はカタギになったわけだし、あいつならいい仕事するから良かったんじゃないか?」

前田
「そーですね^^ギャラクシー伝説を耳にすれば石井さんも安心するでしょう」

横山
「1110号にムーさんの旗が立ってる限り、いつかみんな現れますよ」

オレ
「ん?そう言えばお前さっき『ムトー商会』って言ってたけどなんだそのセンスのかけらもないネーミングは?」

横山
「あはっ^^咄嗟に口から出てきました(笑)」

前田
「いいじゃないですか!『ムトー商会』ムーさんがアメリカで遊んでても『ムトー』の名前があればオレたち仕事やりやすいですよ^^」

横山
「うん。その通りだ!オレもたまにはいい事言うなー^^」

オレ
「アホっ!オレはアメリカで漁師やってんだ。遊んでねー」

オレはテーブルの上のグラスを手に取り口にした。冷たい麦茶が旨かった。

前田
「ムーさん。郷田の前で言いましたよね!理恵ママに『オレたちは家族だ』って」

横山
「あんな状況で・・・聞いてて感動しましたよ」

前田
「オレたちもそうですよね?まさかオンナでないと家族にしない!なんて言うんじゃないでしょうね(笑)」

オレ
「バッカヤロー!(笑)」

インターフォンが鳴った。横山が受話器を取った。

横山
「北条さんです・・・」

オレ
「うん。じゃーちょっと出てくる」

前田
「いってらっしゃい」

オレはドアを開けた。香がちょっと緊張した顔で立っていた。

オレ
「ちょうどいい時間だからメシ行こうか?」


「はい^^」

EVに乗り1Fへ降りた。香は腕を絡ませて来ない。オレは長堀通りを少し西に歩き、以前あったはずのイタリアンの店を探した。そしてソレはまだあった。

席についてランチを2つオーダーした。

オレ
「昨日は悪かったな?」


「ううん。あんなに突然ユーちゃんが泊まるはずないの最初からわかってわよ(笑)」

オレ
「そっか。香はずいぶん酔ってたようだけどゆっくり眠れた?」


「うん。久しぶりにゆっくり眠れた^^それより昨日はずいぶんひどい事ユーちゃんに言ったと思うけど・・・ごめんね」

オレ
「さー何だっけ?オレも酔っ払ってたから忘れた(笑)」


「でもあの部屋にユーちゃん戻って来たから、安心したの。すぐには居なくならないだろうと思って」

ランチメニューのサラダとパン。それにパスタが運ばれてきた。

オレ
「そう。イケちゃんもずいぶん心配してたぞ」


「うん。さっき電話してちゃんと謝った」

オレ
「そっかそれは良かった^^」

昨夜、池谷はオレが泊まらなかった事で、香は暴れるだろうと言っていたが、どうやらそれはなく逆にぐっすりと眠れて家人も安心しただろう。しかし・・・すぐに来るとは思わなかった。うかつだった。

目の前のランチにも香は手をつけている。ちょっと大げさにオレは考えすぎていたのかも知れないと思った。


「ユーちゃんに変な心配かけたくないし」

オレ
「ん?」


「聞いてくれる?」

オレ
「なに?」


「さっきの人、横山さんでしょ?」

オレ
「うん。」


「何回もあの事務所へ行ってユーちゃんの事聞いたの横山さんに・・・」

「私も最初の1週間ぐらいはどっかほっつき歩いているんだろうと思ってた」

「2週間、3週間、1ヶ月経っても連絡がない。横山さんたちもすごく心配して探しまわってるって、その様子がとても普通じゃなくて、ユーちゃん誰にも言わずに行ったんだってわかった」

「その時になってわかったの。私ユーちゃんがすごく好きなんだって」

「そしたらつらくて・・・」

オレ
「わかった。わかってる。頑張れ!泣くな!」


「うん。泣かない^^」

「忘れよう。あんな勝手なヤツ嫌いになろう。ってずーーーとそう思ってたら眠れなくなって、無茶苦茶したくなって」

「家の中で暴れたり、外で男と遊んだり・・・そんな時に池谷さんが優しくしてくれた」

「ユーちゃんの話いっぱい聞いてくれて・・・」

「でも、もうダメ」

オレ
「ん?何が?」


「さっき池谷さんに電話して、もうお付き合いできません。って言って謝った」

オレ
「なんだとっ!」


「だって、ユーちゃん帰って来たんだものもう無理よ!そうでしょ!」

オレ
「・・・」


「なんか言ってよ」

オレ
「うん。」


「私、変じゃない。普通よ!嫌わないで、お願いユーちゃん。嫌わないでーーー」

香の叫び声が店内にこだまし香は慟哭した。オレは真っ青になって香の隣に座り香を抱いた。

オレ
「大丈夫。大丈夫だ香。安心して、嫌ってなんかいない!ちょっとびっくりしただけだ」

オレは本気でそう思おうとした。香はオレの気持ちを読んだ。オレは正直その時、まずい。やっかいな事になったと思い気持ちが引いた。それを香は「嫌われる」と察知したのか。

オレ
「香・・・ちょっと歩こう」

オレは店内にいるすべての人間から冷たい視線を浴びせられているような気がした。しかしそんなモノは一向に構わなかった。それより事の重大性にどう対処したらいいのか?今、香に何をしてやればいいのか?それすらも考えられなかった。

店を出て東へ暫く歩いた。香の背中に手を回して体を持ちながら・・・いい考えが浮かばない。何処へ行こうか迷っていた。


「ジャグジー行こう?」

オレ
「・・・そーだな」

オレはタクシーを止めて生玉のホテルへ向かった。キングコングの前で止めてもらってふたりで歩いて入った。ここは大下社長名義にしてあったので一連の騒動に巻き込まれずにすんだ。

案内表示に従ってオレたちは部屋に入った。リゾート風にアレンジされたデザイン。オレのプランはそのままの形で残されていた。

オレは冷蔵庫からビールとコークを出して、グラスを持ちテーブルに置いた。上着を脱いでベッドに放り投げた。

香はビールのプルトップを引いてグラスにビールを注いだ。オレはコークを取って同じようにグラスに注いでやった。


「ごめんね。あんなところで泣いて・・・ユーちゃん恥ずかしかったよね」

オレ
「いや、それより香。お前、オレの考えている事、いや人の考えている事がわかるのか?」


「・・・知りたい!って強く思ったらなんとなく」

オレ
「そう。それは昔からなのか?」


「うん。でも普段はそんな事思わないようにしてるから全然大丈夫」

オレ
「じゃーオレと居る時は?」


「・・・さっきは知りたいと思ったから」

オレ
「そうか」


「でもわかってる。考えてる事や思ってる事がそのまま行動にならないって。ちゃんと理性や抑制が働いて、最終的に行動になるからって」

オレ
「それは誰が?」


「大学のカウンセリングの先生が・・・」

オレ
「ふむっ!そうだよな?エッチな事想像したり、言ってるからってそれがすぐに行動になったら大変だもんな(笑)」


「でもユーちゃんはいつも正直で可愛かった(笑)」

オレ
「そっか?(笑)」

オレはビールを飲みながら香の話に付き合っていた。瞬間的に浮かぶ色んな事はわからないようだ。ただ大きな決心や問われた事に対する答えなどは明確にウソか本当かは見抜かれそうだ。

オレ
「オレの事はもう横山あたりに色々質問して見破ってるよな?」


「・・・ごめん」

オレ
「いや。謝らなくていい。オレのことを心配してくれた上の事なんだから」

「昨夜も言ってたよな?オレに他にオンナがいる事知ってるって・・・」

「以前に香は付き合っていた相手が二股掛けてたからって学校辞めてまで別れた話をしたよな?」

「それと比べたらオレなんかもっとひどいだろう?ならやっぱり嫌いになるだろう?」


「・・・」

オレ
「深読みしないでいい。ただ聞きたいんだ。オレがいなくなって好きだと気付いたけど、やっぱり嫌いになろうとして・・・で、昨日はいきなり会ったから香は混乱したけど、今冷静になって考えてどう?やっぱりオレみたいなのはダメだろう?」


「ユーちゃん。好きよ」

オレ
「オレはどうすればいい?」


「ユーちゃんも不思議な人ね」

オレ
「ん?」


「だってそんな事真剣に聞くなんて・・・本当に無になってる(笑)」

オレ
「いやそんな事じゃなくて、たくさん居るオンナ達は・・・みんな好きなんだ。選びようがないぐらい。今のオンナたちは不思議だけどそれを許してくれてるようなところがあって・・・」


「そうなんだ。家族かぁ〜」

オレ
「こらっ!まだ言ってない事を先読みするな!(笑)」


「うふっ^^ユーちゃんと居たら私ものすごくリラックスできる」

オレはグラスに注いだビールを一気に飲み干した。

オレ
「実はな、帰国して始めてわかった事なんだけど・・・子供が居るんだ」

「だから、そいつと結婚しようと思ってる」


「・・・」

オレ
「もっとも籍だけ入れて、オレはまだフラフラするんだけど・・・」


「ユーちゃん。普通なら、ものすごくショッキングな話よ」

オレ
「うん」


「でも・・・それがわかっても変わらない」

オレ
「どういう事だ?」


「居なくなる。会えなくなるよりはいい」

オレ
「シスコにも帰ろうと思ってる」


「そうみたいね」

オレ
「どうした?怒らないのか?」


「だってユーちゃん私の事、嫌いじゃないでしょ?今は少しは好きじゃない?」

オレ
「それもわかるのか?(笑)」


「そんなの読まなくてもわかるじゃない(笑)」

オレ
「さっきは泣いたじゃないか」


「うん。まだみんな見えてなかったし不安がいっぱいだったから」

オレ
「オレの事がか?今は見えたっていうのか?」


「正直に大事な秘密を教えてくれた。」

オレ
「ふむ」


「私サンフランシスコへ行く。ずっとじゃないからいいでしょ?」

「ユーちゃんも時々はこっちへ帰ってくるんでしょ?」

「電話が嫌いなら、手紙でもいい。ううん。写真にメモでもいい。」

「そしたら私頑張れるから」

オレ
「何を頑張るんだ?」


「挫けないように・・・」

オレ
「そっか」

香は立ち上がってオレに方にきて抱き付いてきた。


「ほんとはずっと一緒に居たいんだから・・・」

「でも無理言ったらまたユーちゃん居なくなるから」

「うわーーーん」

オレは香の背中を撫でてやることしか出来なかった。ユーコの事を思い出していた。やっぱり何も知らせずに居なくなるのはダメだ。そんな傷つけ方は一番ダメなんだと香を見ていたわかった。

オレたちはセックスをしてジャグジーにも一緒に入った。夕方まで過ごした後、ホテルを出でタクシーに乗りスカイ・マンションへ戻った。地下駐車場に置いてあるクラウンで香を自宅まで送ろうと思った。

スカイ・マンション1FEV前


「やっぱり・・・」

オレ
「やー^^イケちゃん」


「・・・」

池谷は体の後ろから短い棒を出した。オレはサングラスを外した。よく見るとナイフだった。


「ムトー」

叫ぶようにオレの名前を呼ぶとナイフを腰ダメにして走ってきた。腕を組んでいた香がオレの前に出ようとした。オレはとっさに香の体を横に突き飛ばした。池谷とオレは正面からぶつかった。


「お前が居たらダメなんだ」

オレ
「そーだな・・・」

池谷はオレの体から離れた。手にナイフが光っていた。オレの腹から下が急に軽くなったようでちょっとフラついた。オレは腹を押さえた。


「キャーーーユーちゃん!!!」

「うわーーー」

「イヤーーー」

オレはそこに膝をついた。カフェの黒服が入ってくるのがわかった。顔を上げようとしたができなかった。やっぱり帰ってくるんじゃなかった。そう思った時、オレの意識はそこで飛んだ。


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