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フォー・ユー


「フォー・ユー」高橋真梨子

我侭オンナ・ショーワルオンナもいいですねー(笑)
1982年3月PART3-----------

備前焼を見に行った。ショーコと二人で新幹線に乗り岡山まで、市内のホテルに泊まりショーコの同級生、オレにとっては2年上の大学の先輩にあたる男を紹介してもらった。

そして窯元を見学させてもらい。作品を見せてもらった。上薬を一切使わない備前焼はシンプルで日常的に使う食器として広く知れ渡ったいる。

素朴な風合いは渋好みのオレにはぴったりだった。

電動ろくろで皿を作った。焼き上がりまで暫くかかるが、このスタイルならニューヨークでもやれそうだと思った。

ショーコはオレとの始めての小旅行にご機嫌な様子だった。彼女も住み慣れた実家が人手に渡り、ちょっとナーバスになっていたはずだ。ちょうといいタイミングでそんな風に旅行が出来て少しは気分転換になったのだろう。

それから数日後・・・

▼9時・・・スカイ・マンション1Fカフェ

浜田
「ニューヨーク。ドタキャンになってスマン」

オレ
「いやーそれより刈谷が戻って来て何よりじゃないか^^」

浜田
「女の問題で・・・スマン」

オレ
「何言ってんだ。女の問題が一番大事なんだよ(笑)」

浜田
「でもなー」

オレ
「なんだ?心配事でもあるのか?」

浜田
「離婚したからって、待ってましたとばかりに付き合っていいものかどうか」

オレ
「なーショーヘー。オレが女の事でエラソーな事言える立場じゃないのはわかってるよな?(笑)でもあえて言わせてもらえば・・・男が格好をつけたらダメだと思う。」

「先の事はあまり考えないで、今日のデートで何を食いに行こう?って目の前の楽しい事だけを考えてろ。」

「その方が相手も楽だと思うぞ」

浜田
「ヒロ。お前やっぱり・・・」

オレ
「ん?何だ?」

浜田
「いや、お前の言う通りにするよ(笑)」

オレ
「そっか!良かった(笑)」

通りの向こうからジジーがやって来るのが見えた。浜田はそれを察して「じゃー早速デートに誘うよ」そう言って表に停めてあるハーレーに向かった。

松村
「邪魔して悪いなー^^」

オレ
「いえ、朝の打ち合わせも終わったところですから」

紗也乃
「おはようございます^^毎朝ここに居るって聞いたものだから」

オレ
「えー寒くても暑くてもここが好きなんですよ!毎朝ミーティングしてます」

ウエイターがオーダーを取りにきた。紗也乃ママは珈琲と紅茶をオーダーした。こんなに早くわざわざここへ来るとは・・・きっとリョーコのその後の話なんだろうと見当をつけた。

松村
「あのジャジャ馬にも困ったもんだ」

オレ
「何かありましたか?」

松村
「東京でレストランをやりたいと言い出しおって・・・」

オレ
「そーですか(笑)」

松村
「何故東京なんだ?って聞いたら、私は英語が出来ないからって。それが理由らしい」

オレ
「あははは^^ものすごくシンプルですね」

ウエイターが珈琲と紅茶を持って来た。気を利かせたウエイターはオレのカップを交換して新しい珈琲をそれに注いだ。

松村
「ニューヨークは無理だろうか?」

オレ
「ショーコと四方が行きます。それに混じって彼女がやっていけるか?と言うとたぶん無理でしょう。そして勝手な行動をとると・・・危険です。ニューヨークの裏の顔は今でも犯罪発生率が全米1です。英語が出来なければひとりで行動できませんから、賢明な判断だと思いますよ」

松村
「そうか・・・じゃーユーちゃん。こんな話はどうだろう?」

「ワシと紗也乃もニューヨークへ行く!」

「出来れば四方君を通訳として雇いたい」

「それが可能ならリョーコも向こうでなんとかやれるんじゃないかな?」

オレ
「観光旅行ですか?」

松村
「いや、行く以上は1年ぐらいは滞在しようと思う」

オレ
「リョーコちゃんに付き合う!って事ですか?」

松村
「松村屋のニューヨーク支店を開設する(笑)」

オレ
「ふむっ」

とんだ親バカだと呆れたが、そこまでの覚悟があるのなら、それはそれでいいかも知れないと思った。

松村
「それで申し訳ないんだが、ニューヨーク市内の何処かに支店の場所と住居を確保してもらえないだろうか?できたらユーちゃん達の近くがいいんだが?」

オレ
「わかりました。ちょうど今、住居用の物件を探してもらってるのでそれらと含めていいところを決めます」

松村
「うん。よろしく頼むよ^^」

紗也乃
「うわーいきなりニューヨークに行くことになっちゃったんだ(笑)」

オレ
「ママは嬉しそうですね」

紗也乃
「そりゃー嬉しいわ^^外国はハワイしか知らないけど、ユーちゃん達の近くだと安心だし、食事もユーちゃんのお店で食べられるし全然心配ないわ」

オレ
「あははは^^じゃー早速準備にとりかかります」

話の成り行きからとうとう松村さんまでその気になってしまった。ビルの取得が間に合わなければ香、ショーコ、四方と女3人をひとつのアパートに住ませようと思っていたが・・・松村さんらが来るとなるとやはりビルが必要になる。早急に決めようと思った。

▼1Fファミリー不動産・事務所

石井と前田はすでに外に出ていた。事務所の方には四方。店舗のほうには嶋本と牧村が居た。接客中だったので顔だけを見せてオレは引っ込んだ。連絡帳に目を通す。元田、神崎の名前が並んでいた頻繁に連絡が入っていた・・・

四方
「備前焼どうでした?」

オレ
「うんシンプルだけどなかなか味わい深かそうで面白かったよ」

四方
「そーですか」

オレ
「さっき松村さんがカフェの方に来た」

四方
「この時間にですか?」

オレ
「うん。どうやら彼らもニューヨークへ行くつもりになってる。松村屋のNY支店を開設するそうだ。タカちゃんを是非通訳にと・・・」

四方
「そんな・・・私はムトー商会で」

オレ
「たぶんビル1棟を手配するから、そこにムトー商会、松村屋、そして我々の住居などを全部集約させるつもりなんだ」

四方
「じゃームトー商会も松村屋さんも同じ屋根の下ですか?」

オレ
「暫くは一緒くたになるだろうな(笑)」

四方
「・・・」

四方はオレの前に冷たいお茶を置いた。カフェから戻って来た時はそれを好むのを知っているようだった。

オレ
「浜田が急に行けなくなったからちょうどいいと思ってるんだけど?」

四方
「リョーコさんは何をするんですか?」

オレ
「松村さんのニューヨーク行きはさっき決めたばかりだから、リョーコちゃんはまだ知らないだろう。でもきっと同じように日本料理店をもう1軒新しくやるつもりだろうな(笑)」

四方
「競合するって事ですか?」

オレ
「ははは^^立地を変えれば競合しないさ」

四方
「後でいいですか?」

オレ
「ん?」

四方
「・・・」

オレ
「じゃー上にいる」

四方
「はい」

オレはEVで11階に上がり自宅に戻った。

インターフォンを押し鍵を使って中に入った。玲子はキッチン居た。

玲子
「おかえりー^^」

オレ
「ただいま^^」

オレはダイニングテーブルの前に座った。

玲子
「もうすぐお蕎麦できるからねっ!」

オレ
「うん。そう言えば今週オフクロ来るって言ってたよな?」

玲子
「うん。そうね」

オレ
「もしかしたら今度はクソオヤジもシラーとした顔して一緒に来るかも知れないな」

玲子
「うん。どうぞ^^できたわ」

目の前にざる蕎麦が出された。わさびとネギをつゆに入れる。それに野菜の天麩羅。オレはざる蕎麦をお代わりした。

オレ
「ん?なんだ?」

玲子
「実は昨日、優子ちゃんが来たの」

オレ
「えっ」

玲子
「出ようとしてたら1階のポストの前に立ってたのかわいい子が・・・1110号の郵便受けに何かを入れようとしてた」

「すぐにわかったわ。声をかけたの。驚いた様子で私にお辞儀をして帰ろうとしたから引きとめてカフェに誘った」

「いろんな話をしたわ」

「優子ちゃん。はたちでしょう?あなたの事あんなに好きで(笑)」

「その後、私も色々考えさせられた」

「1110号へ移ってきてまたミナミに戻れば、昔のようになるかも知れないと思ってたけど」

「でも・・・無理だとわかったの」

オレ
「ちょっと待て、一体何が言いたいんだ?」

玲子
「これにサインして」

オレ
「ん?なに?」

玲子
「離婚届・・・」

オレ
「えっ」

玲子
「裕人は高知で育てる。いつでもあなたは帰ってきて^^」

オレ
「・・・」

玲子
「ほら^^この間高知に行った時に叔母が言ってたでしょ?こっちへ帰ってきてこの旅館やってくれ!って」

「ちょっと真剣に考えようかなーって思ってるんだけど(笑)」

オレ
「ユーコがやって来たから離婚なのか?」

玲子
「ううん。あなたにはもっと自由で居て欲しいの」

「離婚は手続き上の事だけよ」

「私はあなたの女だし裕人はあなたの子供だから」

オレ
「優子とでも結婚しろと言いたいのか?」

玲子
「そうじゃないわ。あなたが独身なら問題にならない。今もこれからも」

オレ
「なー玲子。もっとはっきりと言ってくれよ」

「オレがニューヨークに行くのを止めて、高知に行って漁師をやればいいのか?」

玲子
「ユーちゃん。あなたはムトー商会の社長よ!仲間もたくさん居るわ。そんな我侭はできないのよ!」

オレ
「オレは今でも好き放題してるさ!離婚して独身になったからって何も変らない」

「このままだともうNYへ行ってしまうんだぞ!」

「そうか・・・そんなオレはもう要らないんだ」

「ミナミを離れて裕人と二人で暮らす方がいいんだ」

玲子
「違う。誤解しないで私の言い方が悪かったのなら謝るわ」

オレ
「何が誤解だ?お前が店をやりたい。ここに来たい。と言って越してきて何日だ?オフクロやオヤジに何故会った?どうしてNYへ来ない?」

「離婚を言い出す前にやるべき事があっただろう!!!」

「お前らやっぱり・・・」

オレは玄関に行き靴を履いた。怒りは頂点に達していた。これ以上この場に居る事が出来なかった。

玲子
「待ってユーイチ!ごめん私が悪かったわだからもう少し話を」

オレ
「もういい。離婚でも何でもしてやるよ!お前は箕面でも高知でも好きな所へ行けよ!」

玲子
「違うユーイチ。そうじゃない」

オレはEVに乗った。玲子は追ってきたが間に合わなかった。そのまま地下駐車場へ降りてクラウンを出した。

シスコから帰って来て半年・・・結局オレはまた同じ事を繰り返してしまっただけなのか

バカヤローがっ!

オレは大阪駅前の駐車場に車を入れた。大阪駅へ向かった。西へ行くか?東へ行くか?オレはこの間、教えて貰った金沢の間島の自宅に電話を入れた。不在のようだった。

電話案内で旅館の名前を言って間島の居る旅館へ電話をかけた。暫く待つと間島の声が聞こえた

間島
「ムーさん。今週来てくれるんですよね」

オレ
「うん。ちょっとあってオレの頼みを聞いてくれるか?」

間島
「はい。何でしょう?」

オレ
「今からそっちへ向かおうと思うんだが、うちから問い合わせがあっても「知らない。来ていない」と言ってくれるか?」

間島
「・・・わかりました」

オレ
「とり合えず今大阪駅だ金沢まで行く。着いたら連絡いれる」

間島
「はい。待ってます」

オレは駅員に相談して、金沢へ一番早く行く方法を聞きその通りにした。「スーパー雷鳥」の特急で3時間程度で到着すると言われたので、その通りに切符を買った。

ニューヨークは松村さんが行くことになったので、リョーコと山城さんで店をやればいい。ショーコと四方は松村さんについて行けばなんとかる。問題は香だったが・・・後で連絡しよう。

ミナミは横山らが居ればなんとでもなる。ママたちにはまた心配をかけることになるが・・・仕方がない。

間島だけはこれまで何もしてやれてなかったので、最後の約束だけは守ろうと思った。

梅田大丸で着替えを買った。ジーンズ、シャツ、トレーナー、薄手のダウンジャケット、靴下、スニーカー。それらを入れる大き目のダッフルバック。

スーパー雷鳥に乗った。車窓の風景を楽しむ余裕はない。

▼18時・・・

オレ
「すげーな^^一体どのくらいの広さなんだ?」

間島
「それでも2000坪ぐらいですけど」

オレ
「しばらくやっかいになるぞ(笑)」

間島
「ずっとでもいいですよ(笑)」

広大な敷地に立つ日本建築の旅館はイメージとして想像していたものをはるかに超えていた。金沢市内の指定されたホテルにすでに間島は待っていた。そしてそこからクルマで1時間ちょっと・・・加賀市の山中温泉に案内された。

間島
「先に着替えて温泉にでも入ってください。その間に食事の用意をさせますから」

オレ
「オレひとりでメシ食うのか?」

間島
「いいえ。私が付きっ切りでお世話させていただきます。^^もっとも今日から私は仕事は休みです」

オレ
「なんか悪いなー^^」

間島
「(笑)」

オレは浴衣と丹前に着替えて露天風呂の方へ行った。渡り廊下を歩き本館の方へ行く。間島に案内されて結構歩いた。きっと部屋にひとりで戻る時は、係りの人間に尋ねないと無理だと思った。

大きな露天風呂、すでに周辺は陽が落ちていたが庭園の方はところどころライトアップされて美しかった。

ゆっくりと手足を伸ばし肩までつかる。それだけで脳細胞がプツプチと音を立てて新しい細胞に入れ替わるようだった。

室内の大浴場で髪を洗い。部屋へ戻った。

すでに間島はビールの用意をして待っていた。そしていつの間にか和服に着替えていた。

間島
「すみません。今日だけはちょっと手伝いが残っているので着替えました」

オレ
「いやー驚いたなー^^色っぽいじゃないか」

間島
「普段もそう言ってくれるといいのに^^」

オレ
「あははは^^ジョーダンまでプロっぽいじゃないか」

間島にビールを注いでもらい一気に半分ほど飲んだ。

間島
「さっきさっそく横山君から電話がありました」

オレ
「そう(笑)」

間島
「もちろんしらばっくれましたけど、すごく心配そうでした」

オレ
「大した事じゃない。暫く匿ってくれればいい^^」

間島
「あはっ!匿うんですか?なんか犯罪を犯した恋人を必死で匿うドラマみたいでいいですね^^」

オレ
「あははは^^普通の旅行よりそんな感じの方がいいかもな?(笑)」

次々に料理が運ばれてきた。間島はビールは付き合ったが料理の方は手を付けなけない。すべて付き添って簡単に説明をしながらオレに勧めた。そしてそれは終わりがないのではないかと思うぐらい豪華で品数が多かった。

オレ
「オレは大食漢だからいいけど、普通の人は食べきれないんじゃないか?」

間島
「これはムーさん用に特別にオーダーしたものですから^^」

オレ
「へーそうなんだ(笑)ありがとう」

食事の後、ブランデーのセットが用意された。

間島
「明日は九谷焼でも見に行きます?」

オレ
「そーだな」

間島
「ここからは近いですから、体験工房に行きましょう^^その後、美術館で国宝級のものを見たらどうでしょう?」

オレ
「あー任せるよ^^で、後はこの広い部屋でひとりで寝るのか?」

間島
「ここに居る間はひとりでなんか寝かせませんから覚悟しておいて下さい^^」

オレ
「うわー益々プロっぽいな?(笑)」

間島
「ミナミではムーさんに敵いませんけど、ここでは私の手の中ですから^^」

オレ
「でも変な噂が立たないか?」

間島
「何が変なんです?恋人がせっかく来てくれたんですから当然ですよ^^」

オレ
「あっそう(笑)」

間島の親の経営する旅館と呼ぶには大きすぎる温泉旅館。きっとこの地方でも有名なんだろう。そこの若女将・・・間島のこれまでみたこともない一面を見たようで、すべてが新鮮な驚きの連続だった。

間島は30分ほど部屋を出て戻って来た。奥の部屋に布団を敷いた。小さな照明だけの中にまだ着物姿のままの間島が座っていた。

オレ
「布団に入ろう^^」

間島
「はい」

間島はそこで着物を脱ぎ始めた。オレはそれを見ていた。白いものだけになった。間島はそのままオレの傍へきた。オレは抱き寄せてキスをした。胸の前を開いて間島の乳を露出させた。

キスをして押し倒した。股間に脚を入れ開かせた。手を入れて草むらをさぐり割れ目に沿って指を動かした。間島の体は少し仰け反り反応した。

まるで初めて抱く女のような気がした。

間島の体に乗り、間島を2度いかせてからオレは間島の中でいった。

オレ
「これからどんどんイイオンナになって行くんだろうなー」

間島
「はい。だから、ずっと居て^^」

オレは間島を抱いたまま眠った。

翌朝・・・

間島の置きだす気配がした。

オレも起きた。

オレ
「おはよう」

間島
「すみません。起してしまって」

オレ
「いや、ついでだから朝風呂にはいってくる」

間島
「はい。^^」

朝風呂に入り、間島に給仕してもらい朝食を一緒に食った。敷地内の庭園を案内してもらった。そしてクルマに乗り九谷焼の体験工房に行った。電動轆轤を使い大きな皿をつくった。絵付けをして焼いてもらう。出来上がりは2週間後のようだ。間島のところで預かってもらうことにした。

その後、美術館へ案内してもらい周辺の観光スポットにも行った。あっという間に1日が終わった。

宿に戻ると・・・横山と玲子がロビーにいた。

オレは一瞥をくれて自分の部屋に戻った。間島が横山に対応していた。横山の事だ。間島のウソを見抜いたのだろう。間島が部屋に入ってきた。

間島
「すみません。私のウソが下手だったようで・・・」

オレ
「いいんだ。気にするな^^」

間島
「横山君と一緒に来られた方・・・ムーさんの奥さんなんでしょう?」

オレ
「そーらしい(笑)」

間島
「噂通り・・・きれいな方ですね」

オレ
「・・・」

間島
「どうしましょう?」

オレ
「どうとは?」

間島
「ムーさんとお話がしたいとおっしゃってます」

オレ
「どうせやつらも宿泊する気だろう。飯の後にしよう」

間島
「はい。じゃー横山君にそう伝えます」

間島は少しトーンダウンしてそう応えた。もう少し間島とふたりだけで過ごすつもりだったが、間島もオレがそうはいかなくなったと感じているようだった。それが悔しかった。

オレは露天風呂に入った後、間島と一緒に昨晩と同じように豪華なメシを食った。そして食事が終わった後、横山と玲子がオレの部屋に入ってきた。間島は部屋を出ようとしたがオレはあえて引きとめた。

大きなテーブルの正面に横山と玲子は並んで座った。玲子は座布団をはずして少し下がった。

玲子
「あなた・・・本当にすみませんでした。」

「もう2度と勝手な事をしませんから許して下さい」

そういって手をついてその場で頭を下げた。芝居がかった対応にオレは興ざめした。オレは黙っていた。

横山
「ムーさん。すみません。オレからもお願いします」

オレ
「横山、お前は前にここに来たことがあるんだよな?」

横山
「・・・はい」

オレ
「オレも来てびっくりしたよ!ここまで大きくて立派な旅館だとは思ってなかった(笑)」

「玲子。ちゃんとここの料理食ったか?」

玲子
「はい」

オレ
「そう(笑)」

玲子は間島の方へ向き直った。

玲子
「間島さん。このたびは主人が大変お世話になりありがとうございました」

そう言って玲子は頭を下げた。

オレ
「それにしてもここに居るのがよくわかったな(笑)」

横山
「パスポート残ってましたから国内だろうと(笑)」

オレ
「だったらもう少しゆっくりさせてくれてもいいだろう」

横山
「すみません。NY絡みの急ぎの案件ばっかりなんで」

玲子
「みんな私の責任です」

オレ
「そう思うのなら黙って帰れ」

玲子
「・・・」

横山
「ムーさん」

一瞬その場の空気が氷ついた。オレはビールを口にした。オレと話がしたいのなら何故横山を連れてきた?オレは言葉を飲み込んだ。

オレ
「ニューヨークには松村さんが行く。オレが居なくてもやれる」

「ムトー商会はお前と松井、前田の3人でやればいい」

「オレは・・・またひとりでやるよ」

玲子
「あなたお願い。私の話も聞いて」

オレ
「横山、間島、悪いけど玲子とふたりにしてくれるか?」

横山と隣に居た間島は黙って部屋を出て行った。

玲子
「すみません」

オレ
「・・・」

玲子
「突然、離婚届なんか出して本当にごめんなさい」

「あれは入籍した時にいつかユーイチの為に必要になると思って持ってたの」

「ユーコちゃんと会って思ったの。彼女は20歳、私は34よこれからの事を考えたらユーイチには若い子が必要だと思った」

「ミナミに戻って、1110号室に引越して、少し変るかな?と思ったんだけど変らなかった・・・それは私が変ろうとしなかったからね」

「あなたがニューヨークへ行った後の事を考えると・・・ミナミ以外で待ってた方がいいと思った」

「そしてそれならいっその事、あなたを独身にしてあげた方がいい」

「そう思っただけ・・・大好きなあなたをもっと自由にしてあげたかった」

「本当にそれだけなの」

オレ
「エスポをやってくれと理恵や佐和子に頼まれた時・・・他に何を話した?」

玲子
「・・・」

オレ
「オレをガキだと思って、お前らはいつも勝手にオレに知らないところで話し合って決めるじゃないか」

玲子
「彼女たちはエスポワールの事だけを相談しにきたの」

「でも私は、ユーイチの正妻としてミナミに居て、ユーイチが帰る場所をつくれって言われているように思ったわ」

オレ
「何故その時に私はNYへ行くことになってる!とあいつらに言わなかった?」

玲子
「私だけが・・・言えなかったわ」

オレ
「そうやってオレに何も相談せず決めてしまうのなら仕方ない。この間と一緒だ。ひとつが壊れる時は・・・全部壊れる」

玲子
「ごめんなさい」

オレ
「もういいや・・・」

玲子
「私は・・・どうすれば」

オレ
「・・・」

好きにすればいい!喉元まで出掛かった言葉を言えなかった。このままオレが帰らなければ、玲子はオレと同じ事をする。間違いなく玲子は裕人を連れて居なくなるだろう。その覚悟が言葉の端々からわかった。

オレ
「離婚届けにサインすればいいんだな?玲子は高知に帰って裕人を伸び伸びと育てればいいじゃないか」

玲子
「・・・」

オレ
「明日、横山と帰れ。オレは・・・もう1日居てから帰る」

玲子
「わかりました」

オレは立ち上がって部屋から出た。露天風呂に向かった。疲労感でいっぱいだった。美しい庭園を眺めながら思った。あのままシスコに居たら今頃は・・・

タオルで前を隠して横山が入ってきた。

横山
「ここの露天風呂は最高ですねー^^」

オレ
「ああ。そこからちょっと背伸びをしてみろ女湯見えるだろう」

横山
「えっ!どこ?何処からですか?!」

オレ
「バカヤロー(笑)」

横山
「あははは・・・見えるわけないですよね(笑)」

横山は湯に入りオレの傍に来た。

横山
「ムーさん。すみません。玲子ママはひとりで行くと言ったんですけど、オレが無理やり付いてきました」

オレ
「付いてきてどうする気だったんだ?」

横山
「次の行き先だけは教えてもらおうと思って」

オレ
「まだ何も決まってねーよ」

横山
「・・・」

オレ
「心配するな(笑)オレはミナミに戻るから」

横山
「ほんとですか?」

オレ
「どーせNYへ行くんだから・・・もう少しの事だ」

横山
「わかりました」

ニューヨークへはオレが居なくても松村さんが行く事で何も問題はなかった。ただ、ショーコと香を放って置くわけにはいかなかった。それだけがオレを思いとどまらせた。

風呂から上がって簡単に横山と打合せをしてオレは部屋に戻った。間島がビールの用意をして待っていた。

オレ
「何度入ってもいいなーここの露天は」

間島
「ありがとうございます^^」

オレ
「なんだ若女将に戻ってるじゃないか^^」

間島
「だってムーさんの奥さん女将みたいで圧倒されましたから」

オレ
「ははは・・・」

間島
「横山君に教えてもらいました」

オレ
「そう(笑)」

間島
「離婚するんですか?」

オレ
「うん。四国の高知が実家なんだがそこで暮らすそうだ(笑)」

間島
「そーですか」

オレ
「オレもとりあえずはNYだし、何処へ行こうと同じなんだけどな」

間島
「明日帰るんですか?」

オレ
「やつらは明日帰る。オレはもう1日ここに居る」

間島
「じゃー明日は金沢へ行きましょうか?^^」

オレ
「うん。任せる^^それと、今晩もここに居てくれるか?」

間島
「・・・はい」

間島には何もしてやれてなかった。だから来たのだが・・・オレは迷ったが間島を優先した。

翌日、朝食をとり部屋でゆっくりとした。玲子がやってきて先に戻ると言った。オレは特に何も言わなかった。横山はちょっと神妙な顔つきで、どうでもいい業務の話をした。

オレと間島はクルマで金沢まで出て、観光名所を周った。間島とこうして旅行気分に浸るのも初めての事だった。

そして少し早めに戻って風呂に入った。間島は食事に付き合った。そしてまた一緒に寝た。

翌日、朝食を終えると間島は金沢市内までクルマで送ってくれた。

間島
「またいつか必ず来て下さい」

オレ
「おう^^それより先にNYへ来い!今度はオレが案内する(笑)」

間島
「はい^^」

オレ
「じゃーまたなっ!^^」

特急スーパー雷鳥は3時間で新大阪に着いた。そしてオレはミナミへ戻った。

1110号室のインターフォンを鳴らし鍵を使って入った。

ダイニング・テーブルの上に封筒が置いてあった。それを見る前に部屋を見て周った。寝室に入った。大きなベッドだけがあり玲子のドレッサーはなかった。クローゼットを開けた。玲子のモノは一切なかった。裕人の部屋・・・おもちゃやぬいぐるみで溢れていたはずが、何もないただの空部屋になっていた。オレの部屋に入った。そこだけは変っていないようだった。

リビングのソファに座って玲子の手紙を読んだ。

金沢へ来た様子とは打って変わって明るい文面で、先に高知へ行くと書いてあった。ニューヨークへ行っても危ない事はしないで、体に気をつけて日本料理店を流行らせてくれ!と言っていた。そして1年に1度ぐらいは高知に来てくれと・・・

電話が鳴った。オレはサイドボードの無線電話を取った。

オレ
「はい。ムトーです」

「なんだお前か」

「わかった降りる」

もしかして玲子かと思ったが横山だった。1階のカフェに居るというので、こっちには呼ばずに降りていくことにした。

オレは席に着く前にウエイターに珈琲をオーダーした。

オレ
「なんだ?今帰ってきたところで早速仕事か?」

横山
「昨日の夕方に玲子さん高知へ向かいました」

オレ
「そう」

横山
「ムーさんの事、くれぐれも頼むって・・・」

オレ
「お前はNYに行かないのにな(笑)」

横山
「お願いがあるんですけど・・・」

オレ
「ダメだ」

横山
「いや、聞いて下さい」

オレ
「これを読んでみろ」

オレは玲子の手紙を横山に渡した。横山は当たり前のようにその封筒を開けて玲子からの手紙を読んだ。そして丁寧に封筒に戻してオレに返した。

オレ
「1年に1度会いに行く。それでいいんだ」

横山
「・・・」

オレ
「お前にはほんとに面倒ばかりかけて、スマンな」

横山
「ムーさんはいつだってそうですね。男には優しい事が言えるのに・・・」

オレ
「あははは^^オレ女嫌いだから(笑)」

横山
「・・・」

横山の言いたい事はわかっていた。NYへ行く前に高知に行って、玲子に会いもう少し話し合えと言いたかったのだろう。

オレは玲子が居ると思って帰ってきた・・・空っぽの部屋をみた時、すべてが終わったんだと思った。

そしてそうさせたのはオレだ。

玲子は迷っていた。あの時オレが玲子の部屋へ行き玲子を抱いていれば・・・もう少し違ったかも知れない。オレはあの時玲子に優しく出来なかった。ただ間島に引け目を感じさせたくなかっただけだったが・・・

こんな終わり方になるとは・・・

▼17時・・・ギャラクシー・オフィス

理恵
「ユーちゃん。ごめん。私が余計なことを言ったからこんなことになって」

オレ
「理恵が謝ることなんかないさ。これはよくある男と女の問題なんだから」

理恵
「ユーちゃん。私どうしたらいい?」

オレ
「理恵までそんな事言うなよ!お前にまで愛想を尽かされたらオレはやってけない。」

「ほらっ^^明るく笑って」

理恵
「うん^^」

やはり今回の事はみんなに知られているようだった。もちろんそんな事は秘密に出来ない。きっと玲子は後の事を理恵に頼んだのだろう。そういう意味では女たちはオレに関するすべての情報を共有していた。少しでもオレがその場の怒りにまかせて何かを言うと、取り返しのつかないぐらい誰かが傷つく。

オレは久々にギャラクシーの店内に出た。

黒服が客を案内して、チーママがホステスを差配する。佐和子ママが忙しく他のテーブルを周る。

待機していたホステス達が新しい客のテーブルにつく。

オレはカウンターの横に立って松井と言葉を交わして店を出た。

▼18時・・・Maggie

オレはカウンターに座った。ほとんど同時に関川がカウンターに入って来た。

関川
「今日帰ってきたのか?」

オレ
「ああ」

関川
「一体何があったんだ?」

オレ
「さーオレにもよくわからないんだ(笑)」

関川
「ちゃんと話し合ったんだろう?」

オレ
「結局子供の事を考えるとミナミでは無理だって事だった」

関川
「そっか、難しいかったか」

オレは意外だった。関川は玲子と仲が良かっただけにもっと色んな事を言われるかと思っていたが・・・あっさりとした応えだった。目の前にジン・トニックが置かれた。

グラスを口にした。清水さん譲りのソレは旨かった。

この店、MaggieとLINDA北新地、そして東洋ビルは玲子の会社名義になっている。玲子はそれらをムトー商会に返すと横山に言ったようだが、横山はそれをまったく受け入れず、これまで通り玲子のモノとして管理のみムトー商会が続ける。と言った。結果だけをやつはオレに言った。

関川
「これで良かったんだよムトー」

「お前もすぐにNYだろう?」

「子供を抱えてミナミに居るよりずっとその方がいい」

オレ
「そーだな」

関川
「それでもなんかオレは淋しい(笑)」

オレ
「そっか」

関川
「純子ママはミナミのイイオンナの象徴だったからなー」

オレ
「ミナミのオンナか(笑)」

関川
「おかしいか?」

オレ
「いや、だんだんミナミのオンナも少なくなってきた気がする」


「ムーさん♪」

オレ
「ん?よう^^」

ご機嫌の様子で声をかけてきたのは刈谷だった。浜田との交際が再び始まりこの店にもよく来ているようだった。

刈谷
「隣いいですか?」

オレ
「おう^^大歓迎だ!」

刈谷
「この間はありがとうございました」

オレ
「ん?何だっけ?」

刈谷
「浜田さんが急にNY行きをドタキャンした件でムーさんに迷惑かけたって」

オレ
「ははは^^実を言うとなアイツが来れなくてホッとしてるんだ(笑)」

刈谷
「えーそうなんですか?」

オレ
「英語できねーアイツの面倒を誰かが見ることになるだろう?」

「観光で遊びに来るのならいいけど、居候じゃ正直大変だなーって思ってたから」

刈谷
「うわーそう言って貰えると少しは気が楽になりました^^」

オレ
「浜田には言わないようにな!暫くオレに借りが出来たと思わせておきたいから(笑)」

刈谷
「はぁ〜い(笑)」

刈谷の前にモスコが置かれた。これも関川のオリジナル・モスコだった。

刈谷
「この間、ヒトミとも久しぶりに会えて楽しかったです^^」

オレ
「そう^^」

刈谷
「学生時代はみんな一緒だったのに卒業するとそれぞれの道があるんだなーってヒトミを見てると思います」

オレ
「うん。間島の場合特別頑固だからなー(笑)」

刈谷
「でもあれほど一途になれるのもなんか羨ましいです」

オレ
「今じゃ大きな旅館の若女将だもんなー」

刈谷
「違いますよ!ムーさん一途って意味です」

オレ
「あらら・・・あっそう」

刈谷
「私たちが入学してすぐの頃・・・mar'sのLIVE見て最初本橋が言ったんですよ」

「ボーカルの人いいなー^^って」

オレ
「ん?あーオレの事か?」

刈谷
「はい(笑)そしたらヒトミもちょっといいわね!って言ってて」」

オレ
「ほー」

刈谷
「そしたらヒトミはすぐにmar'sClubのサークルに入ってしまったんです」

オレ
「へーそんな経緯だったのか?初めて知ったよ(笑)」

刈谷
「本橋は仕方なく諦めて斉藤さんと(笑)だから今でもムーさんが本橋をからかうとあの子変に喜ぶんですよ」

オレ
「あははは^^」

オレは目の前のジン・トニックを飲み干した。1杯目はジン・トニック。そして次は少し濃い目の水割りが出てきた。

刈谷
「この間、初めて聞きました。1年の時にムーさんに告白して振られたって」

「バンド仲間としてなら『永遠に愛し合える』って言ったそうですね?」

オレ
「さーそんな事言ったかなー?(笑)」

今でも覚えている。そして昨晩それを間島は言った。結婚しなくてもこうして来てくれるだけで『永遠に愛し合える』と・・・

刈谷
「たぶんヒトミはこの先も結婚しませんよ!ずっと男嫌いで通すと思います」

オレ
「もったいない話だ(笑)」

刈谷
「変な事聞いていいですか?」

オレ
「はい。何でしょう?」

刈谷
「ムーさん。加納センパイに振られたって本当ですか?」

オレ
「あははは^^本当だ」

刈谷
「今。加納センパイは離婚してムーさんのところを手伝ってるんでしょう?」

オレ
「うん。頑張ってもらってる」

刈谷
「それってやっぱり加納さんがムーさんのところへ戻って来たって事ですか?」

オレ
「んーーーちょっと意味合いが違うな」

彼女らのセンパイである加納翔子は学生時代ある意味で有名人だった。ショーコとの事は浜田から聞いていたのだろう。

刈谷は自分の事と重ね合わせているようで、オレに聞くことでオトコの気持ちを知ろうとしているように思えた。本来なら人のプライバシーに関わる事は言えないが・・・オレはしゃべった。

オレ
「ショーコの場合、自分の家との絡みもあって非常に難しい問題を抱えてたんだけどね。やっぱりうまくいかなくて離婚を選らんだようなんだ。でももう帰るべき家もない。だから偶然再会したオレが少しだけ協力することになった」

刈谷
「協力・・・ですか?」

オレ
「そう。ショーコが自立してもっとイイオンナになる為に応援する」

刈谷
「いいなー加納センパイは・・・」

オレ
「あははは^^オレは口ばっかりで未だ何もできてないけどな(笑)」

刈谷
「でもそんな風に思ってくれる人が居るだけで頑張れるじゃないですか」

オレ
「刈谷、お前だってそうさ」

刈谷
「えっ?」

オレ
「ショーヘーは堅物で、むっつりスケベなとこもあるけど、本当にいいヤツだ」

刈谷
「あはっ^^」

オレ
「離婚したからって負い目なんか持つな!あいつの懐はオレよりでかいぞ」

刈谷
「・・・」

オレ
「遠慮なんかしないで飛び込んで行け!(笑)もっともアソコはオレの方がちょっとだけでかいけどな^^」

刈谷
「ムーさん(笑)」

オレ
「ショーヘーの事、よろしく頼む^^」

刈谷
「はい」

オレは人の事をアレコレ言ってる場合じゃなかったが・・・学生時代の仲間の事はどんな事でも話していてるとそれだけで癒された。

周防町をブラブラした。三寺筋を歩きダイヤモンド・ビルの前に行った。喫茶「ミルバ」に入り珈琲を頼んだ。

窓の外から向かいのビルを見る。あのビルの7階に玲子がやっていたクラブ「純子」はあった。

ビルの中から4、5人の女達が出てきて中年の客を見送っている。玲子の顔とダブった。

7年前、初めて玲子をここからみた時、いつかあのクラブへ行ってあのママと一緒に酒を飲みたいと思った。オレはまだ20歳だった。

千日前のディスコでマネージャーになり、客の無理なオーダーに対応するためにクラブ「純子」に高級なブランデーとシャンパンを譲ってもらうために行った。

それから・・・当時のパトロンだった大下社長を紹介され、周防町に新規オープンするディスコの責任者としてスカウトされた。

そのディスコがわずか4ヶ月で閉店し、再起を図るためにオレはひとりで店に残った。そして3ヶ月後、再びそこでディスコをやる事になった。その勢いを駆って2軒目をオープンしようとした時、社長の依頼もありクラブ「純子」の系列店のオープンに関わる事になった。その過程の中でチーママの冴子とオレは寝た。

「LINDA」ミナミ店。オープン当初から盛況だった。

1年後、「LINDA」の所有権を巡って大下社長と玲子が対立した。オレは社長を説得して店を玲子に譲るように交渉した。

結果LINDAは玲子のものとなったが・・・LINDAを任されていた冴子が造反してあろうことか大下社長のバックアップを受けてクラブ「冴子」を新規にオープンさせることになった。

LINDAの女の子達の引き抜き工作も進んでいた。

玲子はオレに相談を持ちかけた。「自分のオトコになって助けて欲しいと」一方で大下社長からは冴子のバックアップも頼まれていた。

冴子に協力する傍らで「LINDA」へ関川を入れ新しいホステスを募集しLINDAにダメージが残らないようにした。

そこから玲子との付き合いが始まった。冴子の店のオープンと平行してLINDA北新地をオープンさせた。そのあたりからオレは好むと好まざるとに関わらず女ったらしになっていった。

玲子は気付いていたが、大抵の事は我慢してくれていた。イイオンナだった。だから・・・いつも最後は玲子の言う通りにしようと思っていた。

子供を欲しがり・・・オレは消え・・・再び戻って来た時、玲子はオレの子供を生んで待っていた。入籍して箕面で暮らし・・・オフクロやオヤジにも紹介したが・・・別れは唐突にやってきた。

そしてとてつもなく大事なものを失った気がした。

オレはミルバを出て花屋に行った。大きなバラの花束をつくってもらいキャッツへ行った。

未来
「いらっしゃいませ^^」

オレ
「うん。理沙ママを」

未来
「はい^^」

接客中の理沙が店内のドアのところまで笑顔でやってきた。オレは手に持っていた赤いバラの花束を理沙に渡した。

理沙はバラの花に顔を寄せてうっとりとした表情をした。

理沙
「ユーちゃん^^ありがとう」

オレ
「理沙ママの笑顔が見たくて^^」

理沙はオレに軽く抱擁した。バラの花の香がそこらじゅうに広がったようだ。オレはずっとそうして居たかったが、すぐに離れた。そのままカウンターに案内された。

ガボマスター
「ユーちゃん。オレ大抵の事には嫉妬しないけど、それだけはたまらない(笑)」

オレ
「えっ?それって?」

ガボマスター
「花束のプレゼント♪そして人前での抱擁」

オレ
「はぁ〜オレの周りでは昔からそういう事する人多かったですよ(笑)」

ガボマスター
「それがビシっと決まる男はそうはいない」

「似合わないことをすると滑稽に見えるだけだもんなー」

「決まってるユーちゃんに嫉妬するよ(笑)」

オレ
「あははは^^オレはただの道化ですよ」

オレはシューさんの隣に座った。未来はカウンターの中に入ってオレの水割りをつくってくれた。理沙は花束を置いて、もう1度他のテーブルを周った。

未来
「さっきまで横山さんも来てくれてました^^」

オレ
「そう^^」

ガボマスター
「最近ママと親密そうに話してるんだ(笑)もっとも仕事の話だとか言ってるけどね」

オレ
「きっとあいつも理沙ママの魅力に取り付かれたんじゃないですか?(笑)」

理沙ママ
「あらそうだと嬉しいんだけど?残念ながら仕事の話ばっかりよ(笑)」

理沙はオレの隣に座った。オレはブランデーの水割りを口にした。きっと横山は今回の事を細大漏らさず理沙に伝えたことだろう。

ガボマスター
「ユーちゃん。奥さん出て行ったんだって?」

理沙ママ
「シューさん!」

オレ
「あははは^^愛想尽かしされてしまいました(笑)」

ガボマスター
「大丈夫かい?」

オレ
「さーどうでしょう?でも彼女が決めたことですから」

ガボマスター
「ユーちゃんだよ」

オレ
「オレですか?大丈夫ですよ^^」

理沙
「シューさん。どうしたのよ!ユーちゃん苛めないで」

ガボマスター
「そういうつもりはないんだけど、みんな心配してるのに誰も何も言わないだろうから・・・」

オレ
「シューさん。オレこれでも結構失恋してるんですよ^^大丈夫です慣れてますから(笑)」

ガボマスター
「じゃー予定通りNYへ?」

オレ
「ええ。もちろんですよ」

ガボマスター
「ならいいんだけど・・・また居なくなるんじゃないかって思ってね」

オレ
「ははは^^女房に逃げられたなんてよくある話じゃないですか」

ガボマスター
「じゃーこの間は何で1年半も居なくなったんだ?」

オレ
「1週間ぐらいリフレッシュしてこようと思ってたら・・・1年半になっただけです(笑)」

理沙ママ
「ユーちゃん。お腹減ってるでしょう?ごはん行こう^^」

オレ
「えっ?」

理沙ママ
「行こう^^」

オレ
「今から?」

オレは理沙に腕を取られるようにしてそのまま店を出た。

オレ
「大丈夫かよ(笑)店の客がみんなびっくりしてたじゃないか」

理沙ママ
「いいの。シューさんの無神経に我慢できなかった」

オレ
「あはっオレは別に何とも思ってないよ」

理沙ママ
「あなたの哀しそうな顔をみるのが嫌だったの」

周防町を歩いた。ひさしぶりに「バラの木」に入った。2階席へ案内された。窓際の席が1つ空いていた。

理沙はメニューを見て肉料理とワイン。それにオレ用にビールをオーダーした。

理沙
「この季節オキナワはもう海開きなんですって?」

オレ
「そういやあっちはもうそんな時期だな」

理沙
「プライベートビーチがあったりしていいんでしょう?」

オレ
「うん。オキナワの海はたぶん世界一だ(笑)」

理沙
「ヒコーキだとそんなに時間かからないわよね?」

オレ
「ん?あーそうだけど・・・もしかして行きたいのか?」

理沙
「一度ユーイチとそんな風なところで過ごしたいなーって思ってた」

オレ
「よしっ!じゃー行くか?」

理沙
「うん^^」

ビールとワインが運ばれてきた。ワインでオレたちはカンパイした。理沙はオレを元気づけるためにオキナワの話をしただけだと思っていたが、意外にもオキナワへ行きたがった。普段ならオレの仕事の都合などを考慮してそんな事は言った事がないのに・・・

オレ
「新しい水着オキナワで買おう^^」

理沙
「蝶が見えちゃうけどいいかなー?」

オレ
「ビーチなら問題ないさ!見られたとしても流行のシールだと思うさ(笑)」

理沙
「そーね^^初めての経験よ!よろしくね^^」

オレ
「おう^^船に乗せてやる。そして海の中も一緒に潜ろう」

理沙
「うわー私にできるかなー?^^」

オレ
「大丈夫だ。船はあまり長時間乗らない。それに海は泳げなくても潜りは出来る。海の中でもオレが手を繋いでいるから安心しろ^^」

理沙
「そーなんだ?かるーくしてね(笑)」

オレ
「うん。それと夕方にはサンセット・ビーチを手を繋いで歩こう^^夕焼けがきれいだぞー」

「夜はビーチで寝っ転がって満天の星を見よう」

「ロマンティックだぞーーー(笑)」

理沙
「なんか想像しただけでゾクゾクしてきたわ」

オレ
「ははは^^現実はきっともっとすごいぞ!」

「明日準備して明後日から3泊ぐらいで行こう」

理沙
「オッケー♪」

理沙はいつになく明るく振舞った。オレはオキナワの事を話しているだけで元気になってきた。雪が残る冬の温泉から帰って来たばかりだったが、次は一気に夏本番のオキナワへ向かう。気分転換にはもってこいだった。

オレ
「リゾート・ホテルに泊まろう。エステサロンで海で遊んだ後しっかり体のメンテができるように」

理沙
「それは有難いわーもう若くないし(笑)」

オレ
「何言ってんだよ!セクシーな水着着て理沙がビーチに出れば一気に注目の的だ^^」

ひとしきり沖縄旅行の話をして食事を済ませた。そしてそのまま生玉のホテル、キング・コングへ行った。

蝶を見てキスをし、きつーいセックスをして理沙の乳でオレは眠った。

▼9時・・・スカイマンション1Fカフェ

オレ
「明日から3泊4日でオキナワへ行ってくる」

松井
「オキナワですか?いいですね^^」

前田
「やっぱり陶芸ですか?」

オレ
「いや、理沙をちょっと海に連れて行ってくる」

前田
「それはいい^^」

松井
「でもいきなりムーさんの言う海に、理沙ママ大丈夫ですか?」

オレ
「あんまり無茶しないから大丈夫だ^^まっお前らにも心配かけたが・・・もう暫く遊ばしてくれ(笑)」

前田
「NYへ行ったらまた大変でしょうから今のうちに遊んでください^^」

松井
「居所さえわかればずっと遊んでいてくれてもいいですよ(笑)」

オレ
「あははは^^悪いな(笑)」

オレは1110号には上がらずにそのままナンバの旅行社へ行った。飛行機とホテルを予約した。高島屋に寄ったがまだこの季節夏用のモノはなかった。

▼11時・・・スカイマンション自宅

リビングに入った。当たり前だが昨日出て行ったままの状態だった。寝室と裕人の部屋を覘いてみるが同様だった。現実に引き戻されて急に淋しさがこみ上げてきた。

オレは自分の部屋に入った。そこだけはこれまでと変っていない。ワード・ローブを開き夏用の服を探した。白のコットンパンツ、アロハ、Tシャツ、ジーンズなどなど・・・ビィトンのボストンに詰めた。

壁面と一体化した書棚の一部を手前に引き下ろした。簡単なライティング・デスクになる。適当なイスがない。ダイニングに戻りそこのイスを持って来た。電話をそこに持ってきて何本かの電話をした。

リビングの方の電話が鳴った。

部屋を出て電話を取った。

オレ
「はい。ムトーです」

「うん。居るよ」

「オッケー(笑)」

「じゃー何か買ってきてくれ^^」

電話を切ってキッチンへ行った。きれいに片付いている。冷蔵庫を開けた。生ものは何も入って居なかった。バドワイザーを出してテーブルに置いた。せっかく沢木さんにデザインしてもらったキッチンシステムだが・・・ほとんど使うことなくその役目が終わってしまった。

チャイムが鳴った。オレは玄関に行きドアを開けてショーコを招き入れた。

ショーコ
「すっかり変ってしまったわね!」

オレ
「うん。でも無駄になってしまった(笑)」

ショーコ
「そっか。でもこれまでもしっかりデザインして1年も住まない内に引越しばかりしてたじゃない(笑)」

オレ
「そーだな(笑)」

ショーコは下のムトー商会の事務所に居た。そして隣に出来た新しいピザ屋で買ったピザを持って上がってきた。オレはダイニングに座ってそれを食った。

ショーコ
「私は今でもあのメゾネットの部屋が好きよ!部屋の隅々まで全部思いだせるわ」

オレ
「うん。あの部屋は・・・良かった^^」

ショーコ
「あの部屋ほんとに私だけだった?」

オレ
「最後にレミと出っくわしたけど、あれは本当に部屋を見にきただけだった」

ショーコ
「(笑)」

オレ
「何だよ」

ショーコ
「まるで昨日の事のようね(笑)」

オレ
「ははは・・・そうだな」

そう言えばあの時も苦しかったな・・・ショーコとレミに同時に去られて。もっともそれ以前に理沙が来ることになってはいたが

オレはビールを飲みながらピザを食っていた。ショーコは手を出そうとしない。オレの前で微笑んでいた。

ショーコ
「離婚する事になったんですって?」

オレ
「うん」

オレはラークに火をつけた。ショーコはキッチンへ入り灰皿を探して持って来た。

ショーコ
「大丈夫?」

オレ
「ん?」

ショーコ
「突然だったみたいだしショックでしょう?」

オレ
「ああ」

ショーコ
「可哀そうに・・・」

ショーコはイスに座っているオレに近づいて後ろから優しく抱きついた。

オレ
「慰めてくれるのか」

ショーコ
「うん」

オレはショーコを膝の上に乗せて抱きしめた。暫くそうしてショーコの匂いを嗅いでいた。イイオンナの匂いだった。

▼15時・・・神戸・王子動物園

オレ
「明日からオキナワなんだ」


「また陶芸で?」

オレ
「いや、今度は出張なんだ」


「そう^^」

オレ
「なんだよ(笑)」


「私はNYへ連れて行ってもらうからいいわ^^」

オレ
「あははは^^」

香にはどんなウソも通じない。ウソをつくと言う事は香に言えない事情だと言うことで、それはまちがいなく女絡みだという事を香は知っている。


「午後はここも人が少ないね」

オレ
「ん?午前中は多いのか?」


「遠足なんかでちびっ子が多いみたいよ」

オレ
「そっか。動物園はそういうところだもんな(笑)デートの場所には不向きだな。クサイし」


「ううん。ユーちゃんと動物園来るの好きだもの」

オレ
「そう?」


「他の人と絶対行かないでしょう?(笑)私は家が近いからだけど」

オレ
「まーそうかも知れないな」

右手には色んな鳥が集められたゾーン。左手はトラとライオンの大きな動物のゾーンになっていた。そこを抜けると子供用の遊園地に併設されたカフェがあった。

オレたちはそこで珈琲と紅茶を買ってオープンな席についた。香はもう気付いているだろう。離婚する事になったとオレは言った。香は驚いていた。香自身オレの入院中に何度も玲子と会っていて、玲子とオレの事を話し合ってもいた。


「何か哀しいことがあったんだとは感じたけど・・・」

オレ
「急な話だったから、でももうこれで終わった」


「教えてくれてありがとう」

オレ
「ははは・・・それよりおとーさんの方はどう?」


「この間、おかーさんと一緒にNYへ行きたいって話たの」

「絶対に許さん!って言ったっきり何を説明しても聞いてもらえなかった」

「それからまた断絶状態なの」

オレ
「そうか。香はどう考えてる?」


「おとーさんには悪いと思うけど、ユーちゃんについて行きたい」

オレ
「そっか。じゃーオキナワから帰って来たら一度お邪魔するよ」


「えっ」

オレ
「一応オレからもお願いしてみる」


「おとーさん怒り出すと思うからそれは・・・」

オレ
「一発や二発殴られたってヘーキさ(笑)」


「そんな」

オレ
「とりあえずおかーさんにそう言っておいて」


「ユーちゃん」

オレ
「今年はここの桜見れないな(笑)」

王子動物園は桜の名所としても人気があった。今月末に一斉に開花するであろう桜。その頃にはもうオレたちはニューヨークへ行っているはずだ。そして次に帰ってくるのは12月になる。

その時には高知へ行ってみるか?オレは玲子の明るい笑顔を思い出していた。


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