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大阪ベイ・ブルース


上田正樹 「悲しい色やね」でヒットしましたが・・・
やっぱり「大阪ベイ・ブルース」がしっくりきますよね^^

1982年3月PART7----------------

▼12時・・・麻布十番レストラン「大沢」

麻布十番の人気のレストランに予約を入れ、店の入り口で待っていた。約束の時間より少し早く彼女達は現れた。

刈谷
「ムーさん^^」

オレ
「おう^^」

本橋
「わざわざ来てもらってありがとうございます^^」

オレ
「うん。元気そうで良かった」

本橋はつとめて明るくそう言った。奥まった広い席に案内された。和風の肉コース料理が評判の店だった。ワインとビール。すでに食事のオーダーは通していた。

オレ
「ったく。心配させやがって(笑)」

本橋
「すみませーん^^」

刈谷
「百合はムーさんが来てくれたから元気なんですよ(笑)」

オレ
「あははは^^オレの顔見て元気が出るんならお安い御用だ(笑)」

ワインの味見をしてそのまま3つのグラスにワインを注いでもらった。オレたちは軽くグラスを合わせてカンパイした。

本橋
「この間、間島から電話がかかってきました。ムーさんが金沢に来てくれたって喜んでましたよ^^」

オレ
「うん。初めてあいつの女将姿見てびっくりしたよ^^」

刈谷
「なかなか決まってたでしょう?間島は本来美人系だから和服姿もなかなか似合いますよね(笑)」

オレ
「それにしても何だあの馬鹿でかい豪華な旅館は?間島は大金持ちの娘だったんだな」

本橋
「私達も最初行った時はびっくりしました。間島はお嬢さまだったんだって(笑)」

刈谷
「間島ももう少し融通が効く性格だったら、モテモテなのに(笑)」

オレ
「あははは^^間島はあれで結構頑固なところがあるからなー」

本橋
「頑固と言うか、純情と言うか、間島は未だにムーさん一筋なんですもん」

刈谷
「まーわからなくもないですけどね^^」

前菜が運ばれてきた。オレはどっちかと言うとコース料理は嫌いだった。とっとと次の料理を持ってきて欲しかった。

オレ
「しっかり食おうぜ!^^この店なら関西人でも大丈夫だって聞いたから」

刈谷
「はい。美味しいです^^」

ひとしきりサンフランシスコやこれから店を出すニューヨークの話なんかしながら食事は進んだ。メインのフィレステーキはまーまーだった。そしてデザートが出る頃になってオレは本題に入った。

オレ
「ところで本橋はどうしたい?」

本橋
「・・・」

オレ
「やっぱり斉藤との離婚には応じられないか?」

刈谷
「ムーさん」

オレ
「なー本橋。オレはお前達がある意味で夢だったんだ。学生時代からお前らは付き合って、斉藤はちゃんと就職して、そして結婚した。そのままいつまでも幸せな生活が続くんだろうと思ってた」

本橋
「すべてあの人が・・・」

オレ
「うん。誰がなんと言おうとヤツが悪い!絶対に悪い!どんな言い訳も通用しない!友人のオレでもそう思う」

本橋
「・・・」

オレ
「すまんな本橋」

本橋
「ムーさんがそんな・・・」

オレ
「オレもあんまりエラソーな事を言えないけど、本橋、お前はこれからもっと幸せにならないとダメだ」

「あんなバカヤローはほっといて自分が幸せになる事を考えろ」

本橋
「・・・」

刈谷
「ムーさん。本橋は未だそこまで考える余裕が」

オレ
「そうだろうな。わかるよ」

「本橋も知ってるよな?浜田がニューヨーク行きをドタキャンした事。刈谷と一緒に居たいって言い出して(笑)」

刈谷
「そんな(笑)」

オレ
「で、空きがひとつできてしまった。本橋お前ニューヨークへ来ないか?」

本橋
「えっ?」

オレ
「加納も離婚してヒマにしてるから手伝ってくれるんだけど、一緒にやらないか?」

本橋
「私が?」

オレ
「おう^^これからの季節NYはいいぞー人前でキスしても誰も冷やかさないし」

「芸術の街、ファッションの街、アグレッシブだぞー^^」

「新しい環境でゆっくりとこれからの事を考えればいいじゃないか」

「多くはないがバイト代ぐらいは出せる」

「どうだ?」

本橋
「いいんですか?私、何にもできませんけど・・・」

オレ
「最初は誰でも何もできないさ^^一緒にやろうぜ」

本橋
「ムーさん。。。」

オレ
「何だ?」

本橋
「連れて行ってください」

刈谷
「百合、本気なの?」

オレ
「よし!決まりだ!連れて行ってやる!コキ使ってやろう(笑)」

本橋
「はい^^」

刈谷
「うわー大変だー(笑)」

オレ
「何が大変なんだ?刈谷」

刈谷
「加納センパイと一緒なんでしょ?」

オレ
「あいつも色々あって今は結構まるくなってるぞ!」

刈谷
「この間ちょっと話しましたけど(笑)」

本橋
「もうすぐですよね?さっさと離婚手続き済ませて新しいパスポートつくらないと^^」

オレ
「あははは^^」

オレはまた余計なおせっかいをしてしまった。だが、本橋がどんな理由であれ決心してくれたことは、色んな意味で良かったと思った。

さっそく本橋は弁護士を通じて離婚手続きをするとオレに約束した。オレたちは店の表で別れた。ニューヨーク行きについての細かな詳細は横山に相談するように言った。

オレは六本木周辺をウロウロして少し時間をつぶした。

▼16時・・・六本木カフェレストラン

オレ
「よー^^ひさしぶり」

斉藤
「おう^^」

約束の時間にはちょっと早かったが、斉藤は先に来ていた。目の前に少し大きめのグラスにビールが入っていた。オレは同じ物をオーダーした。

斉藤
「スマンな色々心配かけて」

オレ
「なーにお互いさまだ(笑)」

斉藤
「そーいやお前も離婚したんだってな」

オレ
「うん。まっオレの場合は単純に女房に逃げられた!ってやつだから」

斉藤
「子供の問題とか色々あっただろう?」

オレ
「子供はしょせんオンナのモノだ。(笑)1年に1度ぐらいは会う^^」

斉藤
「そっか。お前は気楽でいいな」

オレ
「ああ(笑)」

ウエイターがビールを持って来た。オレはそれを一口飲んだ。斉藤は相当まいっているようだった。オレは斉藤を楽にしてやろうと思った。

オレ
「さっき本橋と会った」

斉藤
「そーか」

オレ
「刈谷と3人でメシ食ったんだけどな、意外と元気そうにしてた」

斉藤
「あいつは元々お前のファンだからな」

オレ
「らしいな(笑)だから無理やり言う事をきかせた」

斉藤
「ん?」

オレ
「本橋は、明日、離婚届にサインして弁護士に渡すと言ってた」

斉藤
「えっ!」

オレ
「それでいいんだよな?」

斉藤
「あいつ本当に離婚に同意してくれるのか!?」

オレ
「ああ。はっきりとオレの前で約束したよ」

斉藤
「そうか・・・お前が説得してくれたのか」

オレ
「話の成り行きで、ニューヨークへ連れて行く事になった」

斉藤
「えっ!?そーなのか?でもお前いいのか?」

オレ
「ああ。ちょうどショーヘーがドタキャンして空きがあるから」

斉藤
「ムトーすまん。ありがとう」

オレ
「どーせオレはお気楽だから(笑)今度はうまくやれよ^^」

斉藤
「すまん(笑)」

斉藤は大げさにテーブルに手をついて頭を下げた。そしてさっきまでの表情とは打って変わって笑顔が戻った。オレはニューヨークでの予定を色々話した。ショーコの事をネタに今後の本橋の先行きを想像させやすくした。

斉藤にしても本橋が嫌いになった訳じゃないだろう。少なくともオレはそういう経験は誰よりも多いだけにわかっているつもりだった。

最後に斉藤は「頼む」と言った。そしてオレたちはそこで別れた。

▼17時・・・赤坂「ニューオータニ」

昨日チェックインして着替えだけを置いていた。オレはシャワーを使い髪を洗い小さな浴槽に浸かった。そして整髪して新しい下着をつけ着替えた。

部屋から何本かの電話をした。そしてロビーに降りた。待つほどもなくキョーコはやって来た。オレたちは日本庭園に新しく出来た鉄板焼きの店に行った。テーブル席の方をリクエストした。

サーロインとフィレそしてグラスワインとビールをオーダーした。

キョーコ
「沙耶はご機嫌で帰ったわよ」

オレ
「ん?あーそうだったな」

キョーコ
「何を気にしてるの?(笑)」

オレ
「いや、まーなんだ(笑)」

オレは応えようがなかった。先日彼女らが大阪へ来た夜、オレは慌しくキョーコを犯すようにセックスをした。そしてキョーコに急かされるように沙耶の部屋に戻り、続けて沙耶とセックスをした。もちろん沙耶もそれを知っている。

ドリンクが運ばれてきて、軽くグラスを合わせてカンパイした。

キョーコ
「その後、どう?私の妹は^^」

オレ
「ん?あーどうしてもNYでレストランをやりたい!って言うから譲ってやった」

キョーコ
「えっ?どういう事?」

オレ
「今作っているタイムズ・スクウェアの店をヤツにやらせる」

キョーコ
「そうなの」

オレ
「オレは元々鮨屋をやりたかったから、これで良かったのさ」

キョーコ
「ねー松村さんとユーイチはどういう関係なの?」

オレ
「飲み友達だよ!もっとも向こうは身内になったつもりでいるようだけど(笑)」

キョーコ
「身内って、それは私も含めてユーイチが関係しているから?」

オレ
「それもあるかも知れないな」

付け合せに肉のタタキが出てきた。味は、まーこんなもんだろう。と思った。そして肉、これはなかなかのモノだった。もっともこの値段であれば当たり前だろう・・・

キョーコ
「ねーユーイチ。あなたもしかして私の妹が好きなの?」

オレ
「バカな事を言うなよ(笑)お前の妹だとわかってからオレは接触を避けているぐらいだ」

キョーコ
「じゃー私の事で松村さんに何か遠慮してる?」

オレ
「するわけないじゃないか!オレだってお前の身内は亡くなったおばさんとオレだけだと思ってるさ」

キョーコ
「そーよね。でもなんかそんな風に感じるのは気のせい?」

オレ
「ああ。オレはジーさんになんら引け目なんか感じてないよ」

さすがにキョーコは鋭いというかオレの性格をよく知っている。だから何か理由があると思っているようだけど・・・言えないんだ。

キョーコ
「あれ?今私の身内って言った?(笑)」

オレ
「ん?あーそうだっけ?(笑)」

キョーコ
「じゃー私はユーイチの事を人になんて言えばいいのかしら?」

オレ
「同じ年だしな。双子の姉弟でいいんじゃないか?」

キョーコ
「ダメよ(笑)」

オレ
「んーじゃーどうしよう?(笑)」

キョーコ
「いいわ!^^その事は後でゆっくりとね」

オレ
「ん?ああそう。」

食事を終えると、ちょうど陽が落ちていた。オレたちはそこを出てホテル最上階のBARに行った。窓際の席、東京の夜景が広がっていた。

赤ワインを1本。オレはブランデーの水割り

キョーコ
「ねー私って我侭でしょう?」

オレ
「キョーコが?一体何処が我侭なんだ?」

キョーコ
「以前は・・・しょっちゅう無理を言って困らせたわ」

オレ
「ははは^^ずいぶん前の話しじゃないか」

キョーコ
「今はどう?」

オレ
「極めて物分りが良くて、大人のイイオンナになった^^」

キョーコ
「・・・そんなの嫌」

オレ
「えっ?」

キョーコ
「子供が出来た。離婚した。ちゃんとやらなきゃ・・・って」

「あなたに迷惑はかけられない」

「あなたには、沙耶と一緒になってもらいたかった」

キョーコどうしたんだ?いつものお前らしくないじゃないか?何があった?オレは黙って聞くことにした。

キョーコ
「沙耶は私とあなたの関係を抵抗なく受け入れてくれるわ」

オレ
「そう。。。」

キョーコはワイングラスを持って上品に飲んだ。

キョーコ
「ユーイチ。私の妹だというリョーコさんにあなたをとられたくない!」

オレ
「えっ」

キョーコは正面からオレを見ている。その目に変化が起きているように感じた。

キョーコ
「ユーイチ。知ってる?私はあなたが誰よりも好きよ」

オレ
「・・・」

キョーコ
「ユーイチは?」

オレ
「好きに決まってるじゃないか」

キョーコの目が蒼く光っている。久々に見た。オレは緊張した。

キョーコ
「それだけ?」

オレ
「いや・・・」

キョーコ
「もう前のようにはいかない?」

オレ
「キョーコ。ちょっとびっくりしただけだ(笑)オレは今でもお前が大好きさ」

キョーコ
「じゃーこれからはもっと私にかまって!」

オレ
「そうしたいけど、オレは来週ニューヨークへ行ってしまうんだぞ?」

キョーコ
「待っててすぐに追っかけるから」

オレ
「あはっ!あははは^^」

「まるで昔のキョーコだ!」

「今のお前の目、蒼く光ってるぜ!」

「あははは^^」

キョーコ
「どーなのっ!」

オレ
「上等だ(笑)バイクのケツに乗せてやる!」

キョーコ
「うん^^」

「バイクのケツに女を乗せる」それは一緒に死んでもいい!という覚悟がないと乗せない。そんな意味の事をガキの頃言ってた。それはとりも直さず女にその覚悟を持って付き合ってくれ!という硬派な口説き文句だった。

まるで10代の頃に戻ったような気分だった。オレたちは部屋へ行き、競うように服を脱ぎ裸になった。

キョーコをベッドに押し倒し、キスをした。オレはこの間と同じようにキョーコの脚を持ち股間に顔を埋めた。

そして焦るようにきついセックスをしてオレはキョーコの中で放出した。そしてベッドの中に入り抱き合った。

オレ
「ニューヨークへ来ても遠慮するなよ」

キョーコ
「うん。上手にやる」

オレ
「お前の親父も関係ないぞ」

キョーコ
「当然でしょ」

オレ
「沙耶は・・・」

キョーコ
「あの子も一緒よ^^」

オレ
「んーーー」

キョーコ
「その方がいいの(笑)」

オレ
「実は他にも・・・」

キョーコはオレの腕の中から出てきてオレの体に被さるようにしてオレの顔を見た。そしてオレのモノを掴んだ。ゆっくりと指を使う。

キョーコ
「誰?」

オレ
「ショーコと香」

キョーコ
「ショーコさんって、この間Maggieに来たひと?」

オレ
「そーだ」

キョーコ
「香さんは・・・ユーイチと一緒にショーに出てた子ね?」

オレ
「よく知ってるな」

キョーコ
「仕方ないわねー(笑)ユーイチもちゃんとうまくやってね」

オレ
「悪いな」

キョーコ
「ユーイチ言って?」

オレ
「キョーコ。愛してるよ」

キョーコ
「うふん^^」

キョーコの突然の変化・・・それは死んだと思っていた父親が現れ、同じ境遇の妹が居ると知らされ、これまでの人生の延長線上ではない自分の運命に逆らおうとしているように思えた。

そしてそれは過去を引きずらず、オレとの関係を新しく始めたいと思っているようだ。

我侭なキョーコ。怒ると怖いキョーコ。だがオレの最大の理解者で絡まりあうように一緒に過ごしてきたキョーコ。そんなキョーコにオレはずっと惚れていた。そしてまた傷だらけになっても、それはそれでいいと思った。

翌朝ホテルをチェックアウトし、キョーコは帰って行った。オレは念のために斉藤の自宅に居る本橋に電話を入れた。電話の声は元気だった。オレは斉藤と会った事を伝えた。そしてオレは新幹線で大阪に戻った。

▼13時・・・ミナミ「菊水亭」

山城
「わかりました。タイムズ・スクウェアの店はこれまで通りのコンセプトで山城とリョーコさんの共同経営という形で進めるという事ですね」

リョーコ
「はい。どうぞよろしくお願いします」

オレ
「事後報告のような形になってすみませんが、どうぞよろしくお願いします」

山城
「ムトーさんはやはりお鮨屋さんを?」

オレ
「ええ。田川や岩崎が来ますから彼らの為にも早急に店を確保する方向で動いてます」

山城
「よかった^^もしかしたらムトーさんはもうお店をやらないのかと思ったものですから(笑)」

オレ
「ニューヨークへ行くスタッフが結構居ますので、なんとかしないとそれこそやっていけませんから(笑)」

リョーコ
「ムトーさん。山城さん。今後ともどうぞよろしくお願いします」

3人で昼食をとりながらの打ち合わせはスムーズに終わった。ただ今後も経営ミーティングにはオレも関わることを約束させられた。

菊水亭を出て道頓堀に面したカフェに入った。

リョーコ
「勝手な事ばかりしてごめんね」

オレ
「いや、オレも反省してるよ」

リョーコ
「あなたが?何を?」

オレ
「もう少し丁寧に接するベキだったと思ってね」

リョーコ
「よくわからない(笑)」

リョーコは頭のいいオンナだった。当然オレの言いたい事はそれでわかったはずだった。彼女が怒っている原因はひとつだった。ジーさんとキョーコが会った時に、オレはキョーコにリョーコと2回した。と言ってしまったことだった。

オレ
「君との関係をあまりにも軽く誤解されるような表現で話してしまって、申し訳なかったと思ってる。

リョーコ
「気にしてないわそんな事(笑)」

ウエイターが珈琲を2つ持って来た。

リョーコ
「あなたはフレッシュだけでよかったわね?」

オレ
「ん?ああ」

リョーコはオレの珈琲にそれを入れて軽くスプーンを使ってオレの前に置いた

オレ
「その後、オヤジさんとは何か話した?」

リョーコ
「ニューヨークでの生活やお店以外の話はしていないわ」

オレ
「そっか」

オレは珈琲カップを持ってそれを口にした。

リョーコ
「あなたは?私の事で父と何か話したの?」

オレ
「いや何も・・・ただその後の事がお互いどう考えているのかちょっと気になってね」

リョーコ
「その後ってどんなこと?」

オレ
「前に君から聞いた話だと、あと1年ぐらい自由に過ごして、その後はオヤジさんの薦める相手と結婚して親孝行するって言ってたから」

リョーコ
「・・・そうしろ!って言ってるの?」

オレ
「オレがそんな事を言う立場にない。オヤジさんと君の間ではそれが暗黙の了承になっているのかどうか気になっただけさ」

リョーコ
「私もそんな事を父との間で話し合ったわけじゃないけど・・・最近、父の考えが変ってきたんじゃないかと思ってるの」

「無理に結婚させようとは思っていないんじゃないかと・・・」

「だから私もその先の事は考えないようにしてる」

「今はNYのお店を成功させる事だけを考えてるわ」

オレ
「そうか」

リョーコ
「そんな怖い顔しないでよ^^前みたいにジゴロのユーちゃんで居て?」

オレ
「あははは^^」

リョーコ
「ねーユーちゃん。取得したNYのビルの屋上どうするの?」

オレ
「もちろんジャグジーを設置するさ^^」

リョーコ
「ペントハウスは?」

オレ
「店が成功してからの話だな(笑)」

リョーコ
「楽しみだなー^^」

どうやらそれまでのわだかまりが少し取れたようだ。もっともソレはオレの方が意識していた面が強かったのかも知れない。一緒にNYへ行き仕事で付き合う以上、関係修復は必要だった。ただキョーコが言った「妹にとられたくない」と言う言葉が気になっていた。。。

リョーコと別れて東洋ビルに顔を出すと、横山と浜田が打合せをしていた。浜田は会心の笑顔でオレをお茶に誘った。

▼15時・・・周防町「英国屋」

浜田
「斉藤から電話があった^^」

オレ
「そうか(笑)」

浜田
「ヒロ。お前に感謝してたよ」

オレ
「たまたまうまく行っただけだ」

浜田
「お前だから出来たんだよ(笑)」

オレ
「いや、本橋だってわかってたんだよ。ただ、東京にも居たくないし実家の大阪にも・・・ひとりじゃ何処へもいけないし、って事でタイミングが良かったからオレのプランに乗った。」

浜田
「結局はそう言うお前の思いやりが通じたんだろう」

「刈谷も言ってたよ『私もフラれたらムーさんに助けてもらう』って(笑)」

オレ
「あー?そりゃーお前にはっきりしろ!って言ってんだよ(笑)」

浜田
「えっ!?そーなのか?」

オレ
「恥ずかしがらずにちゃんとプロポーズしてやれ!」

浜田
「プロポーズか・・・」

オレ
「あははは^^」

オレはアイスコーヒーを何も入れずにそのまま飲んだ。

浜田
「そー言えば、ヨーコさん結婚するんだって?」

オレ
「ん?あーこの間、相手の男を紹介してもらった(笑)」

浜田
「どうだった?」

オレ
「機械設計の会社に勤めるサラリーマンだ。年は32だとか、車好きで前はレースもやっていたようだ」

浜田
「ふーん^^なんとなくいい感じじゃないか」

オレ
「SRに乗っているヨーコに一目ぼれしたらしい(笑)」

浜田
「益々いいなー^^」

オレ
「ハンパなヤツだったら潰してやろうと思って、きつい態度で色々聞いたんだがな!ひとつひとつ真面目に応えて、なかなかだったよ(笑)任せてもいいんじゃないかと思った」

浜田
「そーか!ヨーコさんもようやくかー良かったなヒロ!」

オレ
「あー良かった。きっとユーヤも喜んでるさ(笑)」

オレはあの時のヨーコの言葉を思い出していた。「ヒロ、言いなさいよ!私にひとりで居て欲しいなら」オレは甘えて言いたかったさ。でもその瞬間ユーヤがヨーコの後ろに立って笑っているように感じた。

▼17時・・・スカイ・マンション1110号

インターフォンを鳴らし鍵を使い部屋に入った。誰も居ないのを確かめるとオレは自室に入って裸になった。そしてそのままシャワーを使った。

腰にバスタオルを巻いたままキッチンへ行きバドを取り出した。南側の障子を開けてミナミの街を眺めた。少し陽が長くなった。夕暮れにはまだ時間があるようだった。バドのプルトップを引いてノドを鳴らして飲んだ。

自室に入ってライティング・デスクを開いた。ルスデンが入っていた。由紀からだった。明日の有馬・・・行けなくなった。との事だった。

夜用のスーツに着替えてMaggieへ行った。

関川
「東京出張だったんだって?」

オレ
「ああ。ちょっと日本料理店とかレストランを見てきた」

関川
「関西人の味覚で東京のメシ食えるか?」

オレ
「ははは^^むずかしい問題だな?でも向こうだって金さえ出せば旨いものは食える(笑)」

関川はオレの前にジン・トニックを置いた。オレは関川の方へ向けて少しグラスを上げてそれを口にした。

ショーコ
「お疲れ様でーす^^」

後ろから声がかかりショーコがやってきた。たぶん見当をつけてやってきたんだろう。

オレ
「うん。さっき帰ってきたところなんだ」

ショーコ
「待ち合わせですか?」

オレ
「いや、ここでは待ち合わせはしない(笑)」

ショーコ
「そーなんだ(笑)あっ私も関川さんのジン・トニック下さい^^」

関川
「了解^^」

オレ
「関川さんの!ってところがいいな^^」

ショーコ
「だって全然違うんですもの^^」

関川
「ショーコちゃんにそう言われると嬉しいなー^^」

ショーコ
「私こそそんな風に呼んでもらえて^^嬉しい」

オレ
「そんな事ないだろう?」

ショーコ
「だって松井さんや前田さん達、ムーさんの周りはみんな私より若いでしょう?「ちゃん」をつけて呼んでくれる人いないもん(笑)」

オレ
「あははは^^じゃーオレもこれからは「ちゃん」をつけるようにするよ(笑)」

ショーコ
「えームーさんが「ちゃん」をつけるんですかー?それはちょっと(笑)」

オレ
「なんでだよ」

ショーコ
「なんか呼ばれる方が恥ずかしいから(笑)」

オレ
「あははは^^」

関川
「オレがこんな事ゆーと怒られるかも知れないけど、ショーコちゃん。NYでもムトーの面倒見てやってくれよな!」

ショーコ
「はーい^^」

オレ
「あははは^^どんな面倒みてくれるのかなー(笑)楽しみだなー」

ギター演奏が始まった。長井と佐伯のふたりでリクエストに応えてる。ショーコは着実にその存在を周辺に認めさせているようだ。そしてそんなショーコをオレは健気だと思っている自分に苦笑するほかなかった。

ショーコとふたりで店を出た。スーパーに寄って食料品の買出しをして1110号に戻った。

▼20時・・・スカイマンション1110号

ショーコは買ってきたものを盛り付けてダイニング・テーブルに並べた。オレはグラスを持つ、ショーコはビールを注いだ。オレも同様にショーコにビールを注いだ。

ショーコ
「今日、横山君にビルの図面みせてもらったわ」

オレ
「そう^^ちゃんと説明してもらったか?」

ショーコ
「うん。1階は店舗、2階は事務所、3階4階はアパートで5階がオーナーのプライベートスペースなんでしょ?」

オレ
「アパートは各階2LDKの部屋が7部屋、合計14部屋ある。もっとも日本の2LDKとは違ってかなり余裕のある部屋だから、そこにそれぞれが住んでもいいぐらいだ^^」

「もう5階は改装工事に入ってるはずだからそこにオレたちは住む^^」

「ホテルタイプのパーソナルな部屋が5室と3LDKが2部屋」

「こんな感じだ」

オレは目の前にあった新聞に入っていたチラシの裏にペンでレイアウトを描いた。

ショーコ
「松村さんたちも?」

オレ
「うん。とりあえずはそのつもりだ。もう1つの3LDKはパブリックなスペースとして使う。それと店舗スペースが面白いんだ」

「現在2店舗。雑貨屋とカフェが営業している。1階と2階が続きになっている店舗が1つ空いてる。そこをオレたちの事務所として使う」

ショーコ
「1階はギャラリーとかやる?」

オレ
「そーだな^^何をやるか決まるまで自由に色んな事やってみよう(笑)」

ショーコ
「もちろん陶芸もやるんでしょ?」

オレ
「うん。例の『備前焼陶芸教室』をやろう^^」

いきなり業務の話になってしまった。もっともそれ自体は他の連中とはほとんど中身について話していなかったので、ショーコ相手にしか話題にできなかった。

ショーコ
「岡山の遠山君、本気で来るみたいだから楽しみね^^」

オレ
「ショーコが独身になったからだろう?あいつ相当だぜ(笑)」

ショーコ
「ちゃんと最初に言ってるから大丈夫よ」

オレ
「何をどう言ってるんだ?」

ショーコ
「ちょっと大げさにね!好きな人が忘れられなくて離婚した!って言ってあるから」

オレ
「ほう^^それはまたなんと情熱的なっ!」

ショーコ
「でしょう?(笑)」

オレ
「でもそれで断念したとは思えないな(笑)」

ショーコ
「とりあえず脈がない事だけは伝えれたはずよ」

オレ
「そっか、じゃー陶芸教室頑張ってもらわないとな^^」

ショーコ
「そーね(笑)」

オレ
「ところでショーコ」

ショーコ
「なに?」

オレ
「mar'sのメンバーで斉藤って知ってるか?」

ショーコ
「浜田君とかと一緒で高校の時からの友人でしょう?」

オレ
「うん。そいつが離婚する事になったんだ」

ショーコ
「あっ!本橋と結婚してたはずよね?」

本来ならプライバシーに関わる微妙な事は絶対に離せなかったが、ショーコに納得してもらう為にオレは全てを話した。斉藤が浮気してその相手が妊娠した事、嫁と別れようとして嫁が応じない事、そしてその嫁が自殺未遂を図った事など一連の経緯を話した。

ショーコ
「それで東京へ行って会ってきたんだ?」

オレ
「ああ。なんとかうまく行った」

ショーコ
「うまくとは?」

オレ
「本橋に離婚を同意させた。・・・その代わりに」

ショーコ
「本橋を・・・NYへ連れて行くのね」

オレ
「えっどうしてわかった?」

ショーコ
「そのぐらいわかる」

オレ
「そっか」

ショーコ
「・・・」

オレ
「どした?」

ショーコ
「あなたは純粋に友人の斉藤君をなんとかしてあげようと思ったんでしょう?でも・・・本橋は誤解する。いや誤解したいものよ!どうする?」

オレ
「オレの実態を知れば、とても誤解なんかしないさ(笑)それに斉藤からも「頼む」と言われてる。だからそんな事心配しなくていい」

ショーコ
「信じていい?^^」

オレ
「ああ。本橋のセンパイのお前の面子を潰すような事はしない(笑)」

ショーコ
「アホっ^^」

ショーコは立ち上がりオレに近づいてきた。オレはショーコの腕をとり膝の上に乗せた。オレはショーコにキスをした。舌を絡ませた。乳を触りたかったが我慢した。抱き合ったままキスをした。

そして翌朝、オレは朝食を用意して、ショーコを起し一緒に朝食を食べた。


▼翌日9時・・・スカイ・マンション1Fカフェ

横山
「来週の第1陣はムーさん。ショーコさん。四方さん。そしてオレの4人でいいですよね?」

オレ
「うん。本橋の件は聞いたか?」

横山
「はい。浜田さんから、それで本橋に連絡入れました。来月中旬頃の第2陣に合わせる方向で言っときました」

「第2陣は、松村さん、紗也乃ママ、リョーコさん、田川、岩崎、そして本橋。後は山城さんのところのスタッフですね」

オレ
「あとひとり予定では北条がいるんだが、まだ親の許可が降りてないんだ。早急にどうするか決める」

横山
「わかりました」

オレ
「キョーコから連絡は?」

横山
「ありました。我侭な私に戻るからよろしく!って言ってました(笑)」

オレ
「そっか(笑)」

横山はオレにそれ以上何も言わなかった。きっとキョーコを質問責めにしたのだろう。たぶんオレの知らない事も知っている。いつもそうだ。オレはそれを聞かないし、横山も話さない。おかしな関係だった。(笑)

ショーコがこっちに来た。

ショーコ
「すみません。打ち合わせ中に」

オレ
「ん?どした?」

ショーコ
「急な電話らしくて・・・」

そう言ってショーコはメモをオレに渡した。オレはそれを見て立ち上がった。横山に後で電話すると言ってオレはショーコと一緒に自宅に上がった。

ショーコ
「ごめんなさい。無線電話の子機が鳴ったからてっきり自宅の電話の方だと思ってとってしまったの」

オレ
「いや、いいさ(笑)」

自宅用の電話とオレ専用の電話。どちらもコードレスフォンを使用していた。間違っても仕方ない。オレは自室に戻ってライティング・デスクを引き出して、そこから電話した。そしてすぐに向かうことにした。

オレ
「ちょっと行ってくる」

ショーコ
「はい」

オレ
「帰ってきたら説明する。心配するような事じゃないから」

ショーコ
「うん。いってらっしゃい^^」

オレはそのまま地下駐車場へ降りた。紺のアウディー、赤のフェアレディー、その隣にクラウン。オレはクラウンに乗って本町の「正味堂」本店に行った。一番豪華に見える和菓子のセットを作ってもらった。そして神戸に向かった。

阪急六甲の南側の花屋でバラの花束をつくってもらった。駐車場に車を預けてタクシーを拾った。

門の前でインターフォンを押して、用件を名乗り少し待った。覆面パトが何台が停まっているようだったが、近づいてこなかった。

オレは中に通された。男に案内され石段を上がり玄関に入った。由紀が待っていた。

由紀
「ごめんね!急に呼び出して」

オレ
「いや、今日はもともとそのつもりだったから(笑)」

男たちの視線を浴びた。中にはオレを見て頭を下げるやつもいた。オレは応接室に案内された。


「わざわざ来てくれてありがとう^^」

オレは大きな赤いバラの花束を渡した。


「まー嬉しい^^」

由紀
「ユーイチが来るときっと花束持ってくる!って楽しみにしてたのよ」

オレ
「あははは^^いつも代わり映えしなくてすみません」


「ううん。こんな風にしてくれるのムトー君だけだから(笑)」

オレ
「あっこれもよかったらどうぞ^^」

由紀
「まー和菓子?あっ正味堂じゃない^^私はこれがいい^^」

オレはソファに座り、正面におばさんと由紀が座った。


「有馬温泉に連れて行ってくれるって聞いてほんとに喜んでいたんだけど、どうしても都合がつかなくて、それでもムトー君の顔みたくなっちゃって(笑)」

由紀
「お昼の用意して待ってたのよ」

オレ
「あははは^^しっかりご馳走になります」

オレはニューヨークで開店するレストランの事などを話した。日本人以外のニューヨーカーが日本食を食べることにおばさんは不思議がっていた。そして、豪華な昼メシ、ステーキを用意してくれた。山盛りのご飯と共に・・・

オレは1時間ほどそこで過ごした。由紀も来週にはLAに戻る予定だった。おばさんは向こうでもオレたちが頻繁に会うと思っているようだった。

いつもの出口、広い駐車場へ続くところまで見送られてオレはそこを出た。駐車場へ降りると梅木が待っていた。

梅木
「お送りします」

オレ
「悪いな^^」

オレは全面スモークウインドウのベンツに乗り込んだ。その後に梅木が続いた。

梅木
「すみません。ムーさん。ちょっと寄り道していただけますか?」

オレ
「ん?ゴローちゃん?」

梅木
「いえ・・・」

梅木は黙りこんだ。密室の車の中でも話せない話か?オレは嫌な予感がした。行き先は花隈の料亭「涼風閣」だった。ゴローちゃんでなければ誰だ?梅木が先に先導する形でオレはそこに入った。奥の部屋・・・和室に入った。


「よく来てくれた^^まっ座ってくれ」

大きなテーブルを挟んでオレは座布団にあぐらをかいて座った。

オレ
「オレは浚われたのかな?って思ってびびりましたよ(笑)」


「あははは^^それはすまなかったな」

「メシでもと思ったんだが、もう腹いっぱい食ってきたそうだな」

竹中さんはビール瓶を持った。オレは目の前のグラスを持った。竹中さんはビールを注ぎ、オレはそのビールビンを受け取ってオレも同じことをした。梅木は同席するのかと思ったが部屋に案内しただけで下がった。

オレ
「えー今日は豪華でしたよ!特上のステーキでしたから、調子に乗ってメシを食いすぎました(笑)」


「お前は細いのにオレよりよく食うからな(笑)」

オレはビールを口にした。声がかかり女将が入って来た。山盛りの刺身の盛り合わせのようなものが出された。


「まーこのぐらいなら食えるだろう^^」

オレ
「あっ旨そうですねー^^いただきます」

オレは箸をつけた。


「実はな・・・お前に頼みがあってな」

オレ
「はい。何でしょう?」


「さっきの梅木と兄弟分の杯を交わしてくれないか?」

オレ
「オレはシロートですよ」


「うん。本来ならオレもそういう事は嫌いなんだが、今はそうも言ってられない。もちろんこれは正式なものじゃない。」

オレ
「・・・わかりました」


「そうか^^」

竹中さんは手を叩いた。オレの後ろの襖が開いたようだ。オレは体を横に向けた。男がふたり入ってきた。ひとりは三法を持ちひとりは酒を持っていた。


「オレが一応媒酌人をつとめる」

そしてそれはいきなり始まった。オレの正面に梅木が座った。その前に三法が置かれ、それに乗っている杯に竹中さんが酒を3度に分けて注いだ。オレは正座のままそれを受け取り3度で飲んだ。その杯に同じように竹中さんは酒を注ぐ、そして梅木はそれを3度で飲み干して和紙に包んで懐にしまった。


「これでお前達は兄弟だ。これからは兄弟仲良くやってくれ!」

オレ&梅木
「はい」


「という事で堅苦しいことはこれで終わりだ。オレも初めてだよこんなのは(笑)」

竹中さんは立ち上がった。オレたちも立った。

「じゃーオレはこれで、お前らはゆっくりしていけ(笑)」

オレ
「来週の水曜日、オレはニューヨークに行きます」


「うん。気をつけてな!」

オレ
「はい」

竹中さんは部屋から出た。梅木は終始押し黙っていた。

オレ
「そっちへ座ろう」

オレは元の席、テーブル前に座った。梅木はオレの隣に座った。

梅木
「ムーさんはどうぞそちらの席に」

オレ
「んーじゃーすまん。そうさせてもらう」

オレは竹中さんの座っていた方へ移った。オレはお盆に載っている新しいグラスを2つとり、ひとつを梅木の前に置いた。梅木は新しいビールをとった。オレはグラスを持ってビールを注いでもらった。同じようにオレも梅木のグラスにビールを注いだ。

オレは軽くグラスを上げてビールを一気に半分ほど飲んだ。

オレ
「それにしても、なんでこんな事になったのかなー?(笑)」

梅木
「私にも皆目わかりません。渡辺も了承済みというのは聞いていますが」

オレ
「ウメちゃんは不本意じゃないのか?」

梅木
「とんでもない。もともと周り兄弟ですから、それよりムーさんこそご迷惑だったでしょうに」

オレ
「でもこれで5分になったわけだし仲良くしようぜ^^」

梅木
「5分じゃありませんよ!私が下です」

オレ
「えっ」

梅木
「杯を仕舞ったのはオレですから」

オレ
「そーなのか?それは困ったなー」

梅木
「もう遅いです(笑)これからはよろしくお願いします^^」

オレ
「だからーオレはシロートで何も出来ないって、この間みたいにオレの方が厄介事持ち込んで迷惑をかけるだけだから(笑)」

梅木
「これからも何かあったらすぐにそうして下さい」

「それから・・・これは言い訳になるかも知れませんが、沢渡に被害届を出させようとしたのはオレじゃありません」

オレ
「・・・」

梅木
「佐竹署長です。それもコッチの県警に手配して・・・」

オレ
「なんだと?」

梅木
「どういう訳かコッチではそれを握り潰したようですが、佐竹さんには気をつけてください」

オレ
「そっか。教えてくれてありがとう^^」

暫く話をした。梅木は本家詰めになりゴローちゃんの右腕になっているようだった。本家に集まる幹部の動きを注視して動静を探る。自らは固く口を閉じ何事も悟られないようにする。緊張の連続で大変な役目だ。もう少し明るく振舞えればトップの器なのに・・・(笑)

オレたちは涼風閣を出た。玄関を出たところに石井が居た。梅木と石井は短く何か話し合いオレは石井の乗ってきた車で阪急六甲まで戻った。そして石井と駅前の大きな喫茶店に入った。

石井
「オレも今朝急に梅木に呼び出されました」

オレ
「何か説明があった?」

石井
「いえ、ただムーさんが杯事をする!とだけ」

オレ
「そっか」

目の前に珈琲が2つ置かれた。オレはフレッシュミルクだけを入れた。

石井
「一体誰と杯事を?」

オレ
「梅木だよ!オレの弟分だってさ・・・」

石井
「えっ!あいつ一言もそんな事は・・・それにしても今更どうしてでしょうね?渡辺さんは何を?」

オレ
「ゴローちゃんは居なかった」

石井
「一体どういう事です?!」

オレは簡単にそこに至る経緯を話した。

石井
「でもムーさんが今日、本家に顔を出すのを早くから知ってないと、いくら略式だからって竹中さんが出てきてそれを行うなんて普通はできないでしょう?」

オレ
「そーだな」

石井
「それにどうして竹中さんなのか?益々わかりません」

オレはコーヒーを口にした。オレは迷った。たぶんオレの予想通りなんだろうけど、それを石井に話すべきかどうか?

石井
「どういう意味を持つのでしょう?」

オレ
「オレの事を知ってる人も居なくなって、オレの繋ぎになるヤツをつくってくれたんだろう。」

石井
「杯事までする必要があったのでしょうか?もし梅木で間に合わなかったらムーさんは直接渡辺さんとコンタクトとれるわけですし」

オレ
「ゴローちゃんとの小さな確執を心配したんだなきっと。それで竹中さんが出てきてあえて梅木と杯事をさせた。」

「健一おじさん亡き後、オレのケツをもってくれる直参・・・それが竹中さんなんだろう」

「もちろんゴローちゃんにももう1度オレの特殊性を理解させたかったんじゃないか」

石井
「どなたの意思でしょう?」

オレ
「そんな事を考えてすぐに実行できる人は・・・ひとりしかいないだろう」

石井
「やっぱり・・・三代目姉と呼ばれている人ですか」

オレ
「・・・」

おばさんだと思った。これからどうなるかわからないから、誰か近くに居る人間をオレにつけてくれたのだろう。そしてその事を頼める相手として竹中さんが選ばれた。もしかしたら・・・

オレ
「ケンちゃん。独立しろ」

石井
「えっ?」

オレ
「ムトー商会の不動産部門は前田でいいだろう?」

石井
「ちょっと待って下さい!オレは前にも言ったように組には戻りませんよ!オレはムトー商会の人間です」

オレ
「もちろんそうだ。独立したからといってこれまでの関係が変るわけじゃないけど・・・ウメちゃんをバックアップしてやったらどうだ?」

石井
「それは構いませんが、それとこれとは・・・」

オレ
「オレは松井や前田にやくざと一切関わるな!って言ってる」

「だけどそのオレ自身が深く関わっている」

「松井や前田が今更そうだとは言わないけど、その下に居る連中がどうも勘違いしてるようだ」

「この間もギャラクシーの黒服が酔って外で他所と揉めた時、ムトー組だって言ったそうじゃないか?」

石井
「はい。聞いてます・・・」

オレ
「岩崎のような例もあるし、これからはそういう事がないようにしないと大変な事になると思うんだ」

石井
「わかりました。それもムトー商会を磐石にするためなら喜んで」

オレ
「たぶん。きっと跡目問題で相当揉めるだろう。もしかしたら世代交代があるかも知れない」

「そして、もしそうなったら血の雨が降る。」

「それが終わったら、それを正面から切り抜けたヤツが次を狙える位置につく」

石井
「やっぱり渡辺さんですか?」

オレ
「そうなった時に梅木は確実に2番手にいないとダメだ」

石井
「ムーさん。何考えてるんです?」

オレ
「何も・・・ただ、オレは自分の役目が果たしやすいような人に跡をとって欲しいと思ってるだけさ(笑)」

「オレはNYだし、とりあえずそういう事で頼むよ」

「オレたちは兄弟だろう?^^」

石井
「わかりました。そうさせて頂きます^^でもオレも竹中さんに媒酌してもらいたかったなー(笑)」

オレ
「アホっ^^シロート同士に関わってくれるわけないだろう(笑)」

石井
「あははは^^そーですね(笑)」

そしてオレたちはそこで別れた。石井はセドリックに乗ってミナミに戻った。オレはクラウンに乗って東に向かって走った。車内から何本かの電話を入れた。芦屋の駅前で車を停めて花屋に行った。バラの花束を2つ作ってもらった。アンリに寄ってケーキも買った。

クラウンを走らせて、芦屋霊園へ向かった。キョーコのおかーさんの墓の前にバラの花束を置いた。オレは色んな事を考えながら手を合わせた。キョーコと松村さんを会わせた事、キョーコの妹にも会わせた事、最近少しキョーコが変わってきた事などなどを・・・報告した。

そして芦屋駅前に戻り駐車場に車を入れた。

▼17時・・・大下邸


「せっかくムトーさんに来てもらったのに、また風邪を拗らせていて休んでいるんですよ。すみませんねー」

オレ
「いえ、後で少しだけ覘かせてください(笑)」


「はい。勝也もムトーさんのおかげで無事卒業する事ができました」

オレ
「いえ本人の努力の結果ですよ!就職もいいところが決まってるんでしょう?」


「ええ、亡くなられた内海さんのおかげで住友銀行へ」

オレ
「そーですか!それはすごい^^」


「何もかもみなさんに助けられて、本当にありがとうございました」

佐知代ちゃんが入って来た。トレーを持ってテーブルの上に置いた。さっき玄関で渡したバラの花束はすでに大きな花瓶に入れられてすぐそこに置かれていた。

佐知代
「ムトーさんは甘いものダメなんですよね?」

オレ
「うん。買うのは好きなんだけどね(笑)見てるだけでいいんだ」

佐知代
「花もそうなんですか?^^」

オレ
「そう^^喜んでもらえるだけで嬉しい(笑)」


「ムトーさんならニューヨークへ行けばもっと似合うかも知れませんね^^」

オレ
「ははは・・・」

佐知代
「でも時々は帰って来るんでしょう?」

オレ
「ええ、今年は12月にこっちではずせない仕事があるんで戻ってきます」

佐知代
「それでも12月なんですね」


「この子も海外に行きたがってしょうがないんですよ!そんな贅沢な事言ってられないのに(笑)」

オレ
「そういうチャンスはこれからいくらでもあるから焦らないで^^」

佐知代
「はーい(笑)」

オレはつい余計な事を言いそうになったが、かろうじてそれを止めた。オレは社長が寝ている様子を少しだけ見て大下氏の自宅を後にした。

オレは待ち合わせの場所、駅前のミスター・ドーナッツに行った。入り口でアイス・コーヒーを買った。すでに彼女は来ていた。オレはアイス・コーヒーを持ってそのテーブルに行き正面に座った。

オレ
「ひさしぶり^^」

ヒロミ
「はい^^電話びっくりしました」

オレ
「何度も電話を貰ったり、来て貰ったりしていたのにごめんね」

ヒロミ
「いえ、ムトーさんも色々と大変だったでしょうから」

オレ
「話はユーコから聞いた?」

ヒロミ
「はい。大体全部教えて貰いました。良かったです^^」

オレ
「うん。なんとかユーコのおかーさんが認めてくれてオレもほっとした」

ヒロミ
「でも・・・うちは変化なしなんです」

オレ
「そっか。でもまだ時間はあるから頑張ってお願いしよう」

ヒロミ
「はい。。。」

オレ
「きっとユーコやユーコのおかーさんも応援してくれると思うから」

ヒロミ
「ムトーさん。うちの母に会ってもらえませんか?」

オレ
「えっ」

ヒロミ
「ムトーさんが話してくれたら母もきっと安心してくれると思います」

オレ
「いや、逆効果になる可能性の方が高いんじゃないかと・・・それにもうオレ、来週には行ってしまうから」

ヒロミ
「今からじゃダメですか?」

オレ
「・・・ははは」

ヒロミ
「お願いしますっ!」

ヒロミはオレの前で頭を下げていた。ユーコが行けるようになってヒロミが行けない。それも元はと言えばオレが原因で・・・オレはもうやけくそ気分になった。

オレ
「わかった。じゃー今から行こうか」

ヒロミ
「はい^^」

オレはヒロミをクラウンの助手席に乗せてヒロミの自宅に向かった。玄関前のわき道に車を停めてヒロミに案内されて家に入った。入ってすぐの部屋、以前にもユーコと一緒にきたことのある応接室で待った。

ヒロミがトレイにお茶を持って入ってきた。そしてオレの隣に座った。

ヒロミ
「もうすぐ母が降りてきます」

オレ
「うん」

特にオレたちは何も話さず、ちょっと緊張して待った。暫く待たされ人の気配がした。ドアが軽くノックされヒロミの母親が入ってきた。そしてオレたちの正面に座った。


「わざわざお越しいただいてありがとうございます」

オレ
「いえ、突然お伺いして申し訳ありません」


「神崎さんはNYへ留学なさるそうですが、うちはNYへの留学は反対です」

オレ
「どうしてでしょうか?ユーコさんとヒロミさんは一緒に留学することをずいぶん楽しみにして頑張っているようですし」


「あなたとユーコさんはそれまでお付き合いをしていたんでしょう?そしてあなたがNYへ行くからNYの大学に留学する事になった。うちのヒロミはまったく関係ありません。ですからNYへの留学は反対なんです」

ヒロミ
「そーじゃないのおかーさん。何度も言っているように、確かにきっかけはそうだったかも知れないけど、私自身NYの事を調べているうちにNYで暮らしてそこで勉強をしたいと思ったの」


「NYは治安も悪いんでしょう?あなたみたいな何も知らない女の子が行くのは危険です」

ヒロミ
「十分気をつけて真面目に生活するから大丈夫よ」


「ユーコさんを悪く言うつもりはないけど、ユーコさんにはムトーさんが居てそれは楽しい留学になるでしょうけど、あなたはひとりぼっちで淋しい思いをするだけなのよ」

オレはヒロミとおかーさんのやり取りを聞いていた。なるほどおかーさんの言ってる事は正しい。オレは反論する気がだんだんなくなってきた。

ドアがノックされて男が入って来た。


「あなた・・・ここは私がお話をしますからあなたは待ってて下さい」


「そんな硬い事を言わずにボクにも聞かせてくれよ^^」

ヒロミの父親はそう言って向かい側に座った。


「君がムトー君か?」

オレ
「はい。ムトーユーイチと申します」


「そうやってヒロミと一緒に座っていると、なんだかヒロミをくれ!って言いに来たみたいに見えるな(笑)」


「あなた、なんて事を!」

オレ
「あははは^^残念ながら期間限定のお話で恐縮です」


「ほう^^期間限定か?なるほど、あははは^^」


「あなた。真面目な話をしているんですから混ぜっ返さないで下さい」

オレ
「おかーさんのお話はまったくその通りで、ボクが親だったら同じように思います」


「ほう^^納得するのか?」

オレ
「はい。ただ。ボクもヒロミさんが高校生の時から知ってます。彼女は優しくて礼儀正しくて、本当にいい子だと思います。」

「仲のいいユーコちゃんと一緒に留学できるのを楽しみにしてました」

「ユーコちゃん同様、向こうでの安全はボクが出来る限り注意します」

「できれば3人でNYで頑張りたいと思います。ヒロミさんだけに淋しい思いは絶対にさせません。お約束します」

ヒロミ
「ムトーさん」


「わかった。君の言葉を信じよう^^ヒロミをよろしく頼む」


「あなた何を!」


「お前は今のこの人の言葉を信じられないか?」


「・・・」


「ヒロミももう大人だ。自分の事には自分で責任を持っていい年だ。」

「ヒロミ。NYへ行きたいんだろう?」

ヒロミ
「はい。真面目にちゃんとやりますから行かせて下さい」


「私は知りませんよ!あなたが責任持ってくださいね」


「まーNYぐらい大したことないだろう^^なームトー君」

オレ
「ええ、大したことありません(笑)」

それからヒロミのおとーさんはビールの用意をさせて、そこでオレたちは飲んだ。いつの間にかヒロミとおかーさんは食事の用意まで整えてくれた。

オレはサンフランシスコでハーレーに乗りイージーライダーをした話。サンフランシスコで漁師を始めた話。などなどをした。

ヒロミのおとーさんはよく聞くと医者だった。そのいかつい顔からは想像も出来なかったが、芦屋で3代続く内科の医院の院長兼経営者だった。飛行機が苦手でこれまで海外には1度しか行った事がないという。しかしオレの話を興味深く、時に冗談を言い、楽しく飲んだ。


「ボクも勇気を出してみようかな?(笑)」

オレ
「その気になりました?落ち着いたら是非ヒロミちゃんの顔を見に来られたらどうです?」

ヒロミ
「そーよおとーさん。ブロード・ウエイ・ミュージカル一緒に観よう^^」

ヒロミはおとーさんにビールを注ぎ、オレにも注いでくれた。

オレ
「おかーさんも是非いらしてください^^」


「仕方ないわね。ムトーさん。よろしくお願いします」

オレ
「はい。保護者のつもりでみてます。当然勉強もしっかりやってもらいます」

ヒロミ
「ありがとうおかーさん」


「でもムトー君は、面白いヤツだな(笑)」

オレ
「いやーおとーさんこそ!最初は怒鳴られるかなー?一発ぐらい殴られるかなーって思って覚悟しましたよ」


「ボクがか?」

オレ
「だって、その顔ですもん(笑)」


「あははは^^失礼なヤツめ!」

居心地も良かったせいかオレはすっかり長居してしまった。そして玄関まで見送られてオレはヒロミの家を出た。ヒロミは車のところまできた。

ヒロミ
「ムトーさん。本当にありがとうございました!」

ヒロミは行儀よくお辞儀をした。

オレ
「いやーどうなる事かと思ったけど、良かったなヒロミちゃん。^^」

ヒロミ
「はい^^とっても嬉しかったです」

オレ
「うん^^」

ヒロミ
「淋しい思いは絶対にさせません!って言ってくれた時・・・」

オレ
「ははは^^遊ぶ時はみんなで遊ぼうなっ!(笑)」

ヒロミ
「やっぱり私、ムトーさんが好きです」

オレ
「ん?あーありがとう^^じゃーな!しっかり家の手伝いもして頑張るんだぞ」

ヒロミ
「はい^^」

オレは車に乗ってヒロミの自宅を離れた。また余計な約束を背負ってしまった。しかしちょっと嬉しい気もした。オレはユーコに連絡しようかと思ったが・・・きっとヒロミがすぐに電話でもするだろうと思って、夙川を素通りしてミナミに戻った。

ニューヨークへ行く前の仕事はほとんどこれで終わった。後は、香の親父だけだったが・・・コレはほぼ絶望的だった。香は覚悟を決めているようだが、そうはさせたくなかった。できることならあの頑固親父の了承を取り付けたかった。

明日ぐらい様子を見に行こうと思った。


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