<< 大阪ベイ・ブルース | main | 涙の海で抱かれたい >>
いつか何処かで


「いつか何処かで」桑田佳祐

初期の食道ガンとかで、予定していたLIVEが全てキャンセルになってしまいましたが・・・手術も無事成功したようで何よりですね。

という事でちょっと涼しげな曲を^^
■1982年3月PART8-----------------------

大手建設会社の神戸支店、オレは受付で用件を言って隣接するだだっ広いフロアーのソフに座って待った。人の出入りが多い。もうすぐ昼休みだった。2基あるエレベーターから多くの人が出てきた。

男は受付で話しこっちを見た。そしてオレの方へ近づいて来た。


「どういう事だ!会社にまで押しかけてきて」

オレ
「すみません。どうしてもふたりだけでお話がしたかったもので」

オレは頭を下げた。


「・・・とにかく外だ」

オレ
「はい」

香の父親は怒気を含んだ話し方でビルを出て先に歩き出した。オレはその後について歩いた。ビルから離れたところのコーヒーショップに入った。

オレはブレンド珈琲を注文した。

親父さんは荒々しくタバコに火をつけた。オレは冷静に親父さんを観察した。珈琲が運ばれてくるまでオレは黙っていた。

オレはブレンド珈琲にミルクだけを入れた。

オレ
「香さんはどうしてもおとーさんに了解して欲しいと思ってます」

親父
「それはもう結論の出ている事だ」

オレ
「ぎりぎりまでお願いして、どうしてもダメだったら・・・」

親父
「・・・」

オレ
「黙って家を出ると言ってます」

親父
「そんな事は許さん!!!」

オレ
「勘当ですか?」

親父
「ああそうだ」

オレ
「香さんは悲しむでしょうね。」

親父
「みんなお前のせいだ」

オレ
「ボクをいくら憎んでもらっても構いませんが、香さんはどうなります?」

親父
「お前に心配してもらわなくて結構だ」

オレ
「あなたは何もわかってないですね」

親父
「なんだと!」

オレ
「香さんは自立しようとしてる。その為にこの半年間精一杯努力してきた。見てなかったんですか?」

親父
「ふんっ」

オレ
「わかりました。もう結構です。ボクは香さんの保護者のつもりで居ます。香さんをNYへ連れて行きます。」

「それじゃー失礼します」

オレは伝票を持って立ち上がった。

親父
「待て!」

オレ
「何でしょう?」

親父
「お前は香の事をどれだけ知ってる」

オレはもう1度座った。

オレ
「あなたが思っている以上に知ってるつもりです」

親父
「香は人の考えている事がわかるんだぞ」

オレ
「はい」

親父
「そんな人間がアメリカに行ってもしその事がわかったらどうなる?」

オレ
「アメリカじゃなくても世間に出れば同じです」

「それを悟らせないコントロールも彼女はできます」

「そしてその事を彼女自身がすでに問題にしていません」

親父
「そんな甘くはない」

オレ
「じゃーあなたは香さんが自閉症気味に部屋に一生閉じこもってる方がいいと思っているんですか?」

「彼女の持っている夢や希望は捨てろと言うんですか?香さんのこれからの人生は?」

「あなたやおかーさんが居なくなった後、彼女はどうするんです?」

「何も考えないで反対だけする。無責任な親ですね」

親父
「なんだとー!」

オレ
「怒ってるフリはもう結構ですよ」

「ここはあなたの家じゃない。コケ脅しは通用しません」

「これだけは約束します。向こうに居る間は香さんはボクが守ります」

「以上です」

オレは再び立ち上がり店を出た。歩いて三宮の方へ出た。市営駐車場へ行きクラウンを出してミナミに向かった。

▼14時・・・スカイ・マンション1110号

自宅に戻った。ダイニングテーブルの上にメモがあった。ショーコは今日は仕事には出ずに父親に会いに行っているはずだ。夕方には戻ると書いてあった。

そんなやりとりに特に違和感を感じなかった。いつの間にかこの部屋での想い出は玲子ではなくてショーコになってしまっている。玲子とは数日しかここに住んで居なかったからだろう。

オレは自室に入りジーンズとシャツに着替えた。そして自分のベッドに座った。

この部屋はシスコへ行く前のデザインに限りなく近く、それまでの思い出がすべて残っているように思える。ユーコが初めてこの部屋に入った時の事、香とここでクリスマスをした事、元はと言えばここに自室を構えたのは・・・ショーコと別れた事がきっかけなのに・・・今そのショーコと暮らしているとは、不思議な運命だった。

春夏用のスーツなどをトランクに詰めなくては、後はこっちから送ってもらおう。そして1110号のここは・・・このままの形で残しておこうと思った。

自宅の電話が鳴った。オレはリビングへ行って受話器を取った。

オレ
「はい。ムトーです」

「ん?あーそうなのか」

「じゃーちょっと上がって来るか?」

「誰も居ないし」

オレは電話を切った。

暫くするとチャイムが鳴った。オレは玄関に行ってユーコを招き入れた。

ユーコ
「お邪魔します^^」

オレ
「どうぞ^^」

ユーコ
「前は事務所だったのに、すごく変ったね」

オレ
「一応自宅になっちまったから」

オレはリビングにユーコを招き入れた。ユーコをソファに座らせた。オレはキッチンへ行って冷蔵庫からコークを出した。それを持ってユーコの隣に座った。ソファの前のテーブルに置いた。

ユーコ
「ユーちゃん。結婚してたもんね」

オレ
「ん?あーそうだった(笑)ほらっこっちへ」

オレは立ち上がって南側の障子を開けた。

ユーコ
「あー街が見える。前と一緒だー^^」

オレ
「うん。何も変ってない。そーだオレの部屋を見せてやろう」

オレはリビングから廊下に出て、手前の部屋のドアを開けて入った。衝立のようになったワードローブ。すぐに左へ抜けると部屋全体が見える。

ユーコ
「あっ!ここは・・・」

オレ
「そう。前のままなんだ」

ユーコ
「初めてユーちゃんの部屋に入った時と一緒だ^^」

オレはベッドに座った。ユーコも同じように隣に座った。

オレ
「ここでキスをしようとしたら、ユーコは泣きべそをかいた」

ユーコ
「うそーそうだった?(笑)」

オレ
「この部屋を出てピンボールのゲームをした時にキスをした」

ユーコ
「うわーユーちゃんよく覚えてるのね^^」

オレ
「だって初めてのキスだったんだろう?」

ユーコ
「そーよ^^懐かしいなー」

オレはユーコに軽くキスをしようとした。ユーコはオレに抱き付いてきてオレはベッドに押し倒される形になった。

ユーコ
「この部屋に私の匂いいっぱいつけたいっ!」

オレ
「あははは^^裸でゴロゴロするか?」

ユーコ
「いいわよー(笑)」

オレ
「あの頃はかわいい高校生だったのに」

ユーコ
「ユーちゃんが変えたんでしょ!」

オレ
「すぐに怒って生意気な口を聞いてた」

ユーコ
「別に怒ってなかったわ^^あの頃ユーちゃん子供っぽかったから」

オレ
「あははは^^そーか?(笑)」

ユーコはキスをしてきた。オレたちは抱き合ってベッドでゴロゴロした。そしてそれ以上はここではしなかった。

オレ
「何か言いたい事があったんじゃなかったか?」

ユーコ
「あっそーだ。すっかり忘れてた(笑)ユーちゃん昨日ヒロミの家に行ったんでしょう?ヒロミから電話で聞いてびっくりしたわ」

オレ
「ヒロミも何回も電話くれてたし、ここにも来たようなんだけどオレ会ってなかったから、悪いと思って最後に謝っておこうと思ってな」

ユーコ
「電話で長いこと話して全部聞いた^^やっぱりユーちゃん。すごい!」

オレ
「ヒロミの親父さんが話のわかる人だったから良かった」

ユーコ
「うちのおかーさんも喜んでた」

オレ
「そっか^^」

ユーコ
「でも、ヒロミ変に舞い上がってるよ!」

オレ
「なんで?」

ユーコ
「ヒロミに『ひとりで淋しい思いはさせない!』って言ったんでしょう?」

オレ
「それは、ヒロミのおかーさんがそう言うから、そう言っただけだよ」

ユーコ
「ヒロミはもうそれだけで(笑)どうする?」

オレ
「遊ぶ時は3人で遊べばいいじゃないか?」

ユーコ
「それはいいけど・・・ユーちゃんと私のデートはどうするの?」

オレ
「んーーーまそれはその時考えよう(笑)」

ユーコ
「もうっ(笑)」

オレ
「オレ、メシ未だなんだ。なんか食いに行こうぜ!」

ユーコ
「仕方ないわねーじゃーマグド奢ってあげようか?^^」

オレ
「うん^^」

オレたちは部屋を出て、心斎橋に向かった。ユーコは腕に纏わり付いてふざけ合いながら歩いた。ひさしぶりにユーコはご機嫌な様子だった。心斎橋の地下鉄の降り口の向かいにあるマグドナルドに入った。

オレは先に席についた。ユーコはハンバーガーセットを2つ買ってトレイに乗せて持って来た。

ユーコ
「どーぞ^^」

オレ
「ありがとう^^」

ユーコ
「ユーちゃんのジーンズ姿。前とちっとも変らないね」

オレ
「そう?ユーコは変ったな」

ユーコ
「うそーどんな風に?」

オレ
「すっかりオンナらしくなってキレイになった。みんなからもそう言われるだろう?」

ユーコ
「えーーーそう?^^まー高校の時と比べると少しはそうかな?」

オレ
「あの頃は、まだコロコロしてて、ここでよく泣いたよな」

ユーコ
「だっていつもユーちゃんが泣かすんじゃない!」

オレ
「あははは^^」

オレはハンバーガーを頬張った。ユーコはアイス・ティーにミルクとガムシロップを入れてオレの前に置いた。

ユーコ
「ねーユーちゃん。この間、本当に私と別れた。って思った?」

オレ
「あー思ったさ。一晩中オレは泣いた。。。」

ユーコ
「ウソばっかり(笑)」

オレ
「でも本当に心が痛かったよ」

ユーコ
「私は・・・すぐに無理だと思った。だからひとりでもNYへ行く決心をしたんだー^^」

オレ
「ったく。」

ユーコ
「ユーちゃんの奥さんだった玲子さんと話した時にわかったの」

オレ
「なに?」

ユーコ
「ユーちゃん。サンフランシスコから帰ってきた時・・・真っ先に香露園浜に来てくれたんでしょう?」

オレ
「・・・そうだったかな?」

ユーコ
「玲子さん言ってた。私のところへ来たのはずいぶん経ってからだって」

オレ
「そう」

ユーコ
「玲子さんは、ユーちゃんは私に一番会いたかったんだって言ってくれた」

オレ
「そっか」

ユーコ
「玲子さんって・・・優しくてどこかママに似てた」

オレ
「ふーん」

オレは目の前にあったユーコのハンバーガーも食った。

ユーコ
「あー私の(笑)」

オレ
「一口あげるよ」

ユーコ
「うん^^」

オレはハンバーガーを差し出した。ユーコは一口だけ食ってオレに渡した。

ユーコ
「ユーちゃん。淋しくない?」

オレ
「なんでそんな事言うんだ?」

ユーコ
「私じゃ玲子さんの代わりできないもの」

オレ
「その内できるようになるさ」

ユーコ
「うん。頑張るっ!」

明るくて無邪気でその若さが色んな可能性を秘めている。きっとどんどんイイオンナになって行くんだろうなーと思った。

ユーコ
「ユーちゃん。うちのママ好き?」

オレ
「そりゃーユーコのママだし、キレイだし、好きだよ」

ユーコ
「頼んであげようか?^^」

オレ
「なっ何を言い出すんだよ」

ユーコ
「ユーちゃん。何焦ってんのよ?(笑)ユーちゃんもママの子供にしてもらおうと思っただけなのに」

オレ
「オレがママの子供???」

ユーコ
「そうよ^^この間、家に泊まったでしょ!ユーちゃんがママの子供になったらずっとみんなで暮らせるじゃない?」

オレ
「何だー?」

ユーコ
「そうだったらすごく楽しいのになーって思って(笑)」

オレ
「ははは・・・」

ユーコ
「時々ユーちゃんがママに抱き付いて甘えるの^^」

オレ
「あのさー」

ユーコ
「でもそこまでよ^^それ以上はダメ」

オレ
「まるでお伽話しのようだな^^」

ユーコ
「うん。でもユーちゃん。そーゆーの好きでしょ?」

オレ
「ああ。大好きだ」

そしてオレはユーコにせがまれてジャグジーに行った。しっかりときついセックスをいっぱいした。

ユーコを地下鉄の心斎橋の駅まで送りオレは自宅に戻った。夜用のスーツに着替えた。

▼18時・・・ギャラクシー・オフィス

オレ
「最近佐竹さんは来る?」

理恵
「事件の後、1度来ただけで全然お見限りよ」

オレ
「そう。じゃー佐和子もちょっと呼んでくれる?」

理恵は受話器を持って内線で佐和子に来るように言った。そしてオレのグラスにビールを注いだ。ドアがノックされ佐和子が入ってきた。

佐和子
「お疲れ様です^^」

オレ
「うん^^」

佐和子は理恵の隣に座った。

オレ
「実は佐竹署長の事なんだけど、どうも変な誤解があってオレとうまくいってないんだ」

佐和子
「でもこの間ムーさんは佐竹さんを助けたばかりじゃないですか?」

オレ
「理由はわからないが、どうも誤解があるようなんだ。だから明日佐和子が訪問してきてくれないかな?ビール券でも持って(笑)」

佐和子
「わかりました。こっちへ来てもらいましょうか?」

オレ
「そーだな^^オレがちょっと怒ってる。とでも言ってみてくれ」

理恵
「どーしたの?ユーちゃん」

オレ
「ニューヨークへ行く前にはっきりしときたいんだ」

理恵
「わかった。でも気をつけてね」

オレ
「うん」

ドアがノックされた。松井が声をかけて入ってきた。入れ替わるように理恵と佐和子が松井に冗談を言いながら部屋を出た。

松井
「紗也乃ママから電話があって、連絡が欲しいとの事でした」

オレ
「わかった。明日の朝ミーティングだけど前田とふたりで来てくれないか?」

松井
「わかりました。それと日曜はNY行きの送別会ですから来て下さいよ」

オレ
「おう^^楽しみにしてる(笑)」

オレはビールを飲み干して事務室を出た。松井と一緒に店内に入り暫く様子を見ていた。客の入りはこの時間にしてはまーまーだった。オレは松井に声をかけてギャラクシーを出た。

ビルの外から電話をしてエスポワールに行った。

黒服に案内されて奥の席へ案内された。

紗也乃
「すみません。急にお呼び立てして・・・」

オレ
「いえ」

ウエイターがブランデーセットを用意して持ってきてくれた。オレの水割りをつくった。オレはそれを見ていた。少し濃い目の水割り。すでにオレの好みを知っているようだった。

紗也乃
「ニューヨーク行けそうにありません」

オレ
「そーですか」

紗也乃
「本人にはまだ言ってないんですけど」

オレ
「医者はなんて言ってるんです?」

紗也乃
「とにかく入院して治療をと」

オレ
「そうするとどうなります?」

紗也乃
「・・・数ヶ月先になるだけです」

オレ
「このままだと?」

紗也乃
「夏は越せないだろうと」

オレ
「・・・」

オレは水割りを飲んだ。松村さんの病気を知らされたのは、キョーコと会った後だった。紗也乃ママから教えられた。オレはそれ以来、松村さんの希望にそう形で物事を進めてきたが・・・

オレ
「リョーコさん置いて行きましょうか?」

紗也乃
「今更なんて言って?リョーコさん納得しないと思います」

オレ
「正直に話すしかないでしょう」

紗也乃
「でもそれは・・・」

当初は無理をしてでもニューヨークへ行って、向こうで治療を受ける予定だった。治療と言っても治すのではなくて、麻薬に近い痛み止めを使用しながら極力平常な生活が続けられる終末医療のような形をとるはずだったが・・・

オレ
「医者がオッケーを出さないんですか?」

紗也乃
「どうも向こうでの医療を信用していないようなんです」

オレ
「来週オレたちは先発しますから、すぐに医療関係に当たって用意します。強引に行きましょう」

紗也乃
「・・・」

紗也乃ママはもう限界だろう。これ以上ひとりで背負っていけない。松村さんの息子たちも知らない。オレと紗也乃ママふたりだけの秘密だった。紗也乃ママを楽にしてやろうと思った。

オレ
「じゃー主治医から松村さん本人に告知してもらしましょう。病状が進めば隠し切れません。」

紗也乃
「でも・・・」

オレ
「そして松村さん自身に治療方針を選択させる。それが一番いいと思いますよ」

紗也乃
「わかりました。ムトーさんの意見に従います」

オレはブランデーの水割りを口にした。

オレ
「ママ。今からふたりでホテル行ってエッチしましょうか?^^」

紗也乃
「えっ」

オレ
「明日でもジーさんに紗也乃ママを抱いた!って言ってやろうと思って(笑)」

紗也乃
「ムトーさん。。。」

オレ
「あはっ^^きっと不機嫌になるだろうなー(笑)見てみたいなー」

紗也乃ママの表情がちょっと変った。それまで痛々しいほど落ち込んでいたが・・・

紗也乃
「いいえ!きっと喜んでくれると思うわ^^良かったなー紗也乃って」

オレ
「あははは^^(笑)」

紗也乃
「ユーちゃん。ありがとう」

オレ
「ニューヨーク皆で行きましょう^^」

紗也乃
「はい^^私も頑張るわ」

さすがにミナミの超一流クラブのママだった。明るい笑顔が似合っているミナミのイイオンナだ。

オレたちは店を出て、紗也乃ママをタクシーに乗せて別れた。ニューヨークへ行ってもいずれば皆にバレるだろう。でもそれはそれでわかった上で最後まで楽しく過ごせればいいと思った。

▼20時・・・Maggie

関川
「さっきまで横山とショーコちゃんが居たんだけどな」

オレ
「そっか入れ違いか」

関川
「ちょうど良かったんじゃないか?ほらっ」

オレは振り返った。リョーコが店に入って来たところだった。迷わずにこっちに向かってきた。

リョーコ
「いいかしら?^^」

オレ
「どーぞオレも今来たところだ」

そう言った瞬間、関川がオレの前にジントニックを置いた。

リョーコ
「私も同じモノを」

オレはラークに火をつけた。リョーコは灰皿をとりオレの方へ置いた。

リョーコ
「入れ違いだったみたいね?」

オレ
「ん?別に約束してたわけじゃないから」

リョーコ
「私、今日東京から戻って来たところなの」

オレ
「・・・」

ショーコの事かと思ったが、どうやら東京の話・・・オレがキョーコと会った後、キョーコに会って来たようだ。一体に何を話したと言うんだ?まーいい。

リョーコ
「ねーそんな怖い顔しないでよ」

オレ
「関川。オレ怖い顔してるか?」

関川
「(笑)いや、いたって普通だ」

オレ
「って言ってるじゃねーか(笑)」

リョーコ
「ううん。私には怖い顔にみえるわ」

オレ
「それは何かやましい気持ちがあるからそう見えるのさ」

リョーコ
「そーかも知れない(笑)」

関川はリョーコの前にジン・トニックを置いた。リョーコはそれを持ってオレの方を見た。オレはだんだんイラついて不機嫌になっていた。言いたい事があるならさっさと言えよ!

オレ
「カンパイする理由があるか?」

リョーコ
「残念ながらないわ(笑)」

オレ
「じゃー勝手にやってくれ」

リョーコ
「怒らないでよ」

オレ
「オレたちきっと相性悪いんだ」

リョーコ
「・・・」

オレはラークを灰皿に押しつぶした。ジン・トニックを一気飲みした。

オレ
「ごちそうさま^^そろそろ帰って寝るよ」

オレは関川にそう言ってカウンターのスツールから降りた。リョーコの手がオレの腕にかかった。

リョーコ
「どんな話をしたか聞きたくないの?」

オレ
「大体想像はつくからいいよ」

リョーコ
「まだ連絡は入ってないみたいね」

オレ
「・・・」

リョーコ
「すみません。ブランデーセット用意してください。向こうのテーブルに」

リョーコは関川にそう言いオレの腕をとったままそのテーブルに引っ張って行った。オレの頭の中は巡るましく回転した。

オレは半分ふてくされた態度でイスに座り、またラークに火をつけた。

リョーコ
「一生懸命お願いしたけどダメだった」

オレ
「何のことかさっぱりわかんねーよ(笑)」

リョーコ
「キョーコおねーさまにお願いした。あなたとの仲を認めてもらおうと思って」

オレ
「そう」

リョーコ
「おねーさまは何も知らないみたいだった」

オレ
「・・・」

リョーコ
「あなた・・・やっぱり独り占めする気なの?」

オレ
「なんの事だ?」

リョーコ
「しらばっくれないでよ!」

オレ
「そっか。ジーさんの財産の事か?何を勘違いしているのか知らないが、オレは関係ない」

リョーコ
「あくまでも認めないわけなんだ」

オレは立ち上がった。

リョーコ
「待って私の言い方が悪かったわ!お願い座って」

オレは無視してそのまま店を出た。リョーコは追ってきた。店を出てすぐの道路・・・

リョーコ
「お願いだから協力して・・・助けて!」

オレの腕を掴んで離さない。

オレ
「助ける?(笑)お前はただ金が欲しいだけなんだろう?」

リョーコ
「そうよ!それがどうしていけないの?300億よ」

オレ
「残念ながらオレは人を騙して、人の気持ちを弄んでまで金が欲しいとは思わない」

リョーコ
「そうじゃない!そうじゃないけど一生優雅に遊んで暮らせるのよ!」

オレ
「その代わり一生人を信じられないし人を愛せないぞ」

リョーコ
「・・・」

オレ
「オレを引っ張り込むのは諦めるんだな」

リョーコ
「どうしたらいいのよー」

リョーコはそこに座り込んで泣き始めた。

オレ
「立てよ!みっともない」

オレはリョーコの腕をとって引っ張り上げた。周防町を歩きスコッチ・バンクに入った。リョーコはトイレに入った。奥の席に案内された。オレはブランデーセットとオードブルをオーダーした。

化粧を直したリョーコがオレの正面に座った。

リョーコ
「ごめんなさい。どうかしてた・・・」

オレ
「明日一緒にジーさんのところへ行こう」

リョーコ
「えっ?」

オレ
「そこで適正な財産分与をお願いする。それでどうだ?」

リョーコ
「そんな・・・」

オレ
「正直に話して理解してもらえばいいじゃないか」

リョーコ
「父を悲しませるだけだわ」

オレ
「今更何を言ってるんだ(笑)」

ウエイターがブランデーセットを持って来た。リョーコはそれに手を伸ばした。オレはそうさせずにオレが水割りを2つ作った。ひとつをリョーコの前に置いた。

オレ
「ジーさんはお前のそう言う考えをとっくに見抜いてるよ!だからオレに接近してきたんだろう」

「残念ながらオレもキョーコもアホだから、ジーさんの期待に添えなくてな」

「だから明日そう言って、お前は必要なだけ貰えばいいじゃないか」

リョーコ
「父はあなたが思ってるような人じゃないわ」

オレ
「どういうことだ?」

リョーコ
「大槻は父の援助で事業を始めて成功したのよ」

オレ
「・・・」

リョーコ
「父が認めた私のフィアンセだったわ」

「私はあなたと寝たことを大槻に言ったわ。父にも接近していて父のお気に入りだって」

「そしたらあなたをヤクザを使って襲わせようとした」

「それが失敗に終わっただけじゃないくて、あなたを守るやくざに大槻は追い込まれて・・・今じゃギャンブルの借金で逃げ回ってるわ」

「父はそんな大槻をすぐに見捨てたわ」

「父は大物やくざにあなたを陥れるように依頼したらしいけど・・・相手があなただとわかると反対に忠告を受けたって言ってたわ」

「警察にも同じ事を依頼したようだけど、ダメだったって」

「ヤクザにも警察にも相当なコネがある。父はそんなあなたの裏の顔も知ったようよ」

オレ
「可哀そうに・・・その大槻という男もそれなりの男だったはずだろう?なんとも思わないのか?」

リョーコ
「私はあなたが好きになってしまったし、あなたなら父を超えると思った。」

「ところがいきなりあなたの昔の女が私の姉として現れた」

「父が変ったのはあなたと姉が父に対面してからよ」

「あなたは最初からそれを狙ってたんだと思ったわ」

「父は私の代わりにあなたと姉に後を託そうとしたのよ」

オレ
「思うのは勝手だけど、こっちにしてみりゃー大きな迷惑だ」

リョーコ
「でも、今やあなたは父の絶大なる信頼を得ているわ」

「たぶんこのままだとあなたが後継者になって全財産を管理するようになる」

「私と姉はあなたからの許可を得てその都度必要なお金を貰う」

「もっとも姉はそんな事考えてもいないってのは会ってわかったけど」

「私はそんなの嫌・・・って思った」

「今初めてあなたが本当にお金なんか欲しくないんだとわかった」

オレ
「息子3人とお前の4人で仲良く分ければいいじゃないか。キョーコはいらない。明日そう言ってすべてを白紙に戻せばいいさ」

リョーコ
「もう遅いと思う。父はあなたがそんな事を言い出せば、余計にあなたにお願いするわ」

オレ
「そんな事ないさ(笑)もうオレはたくさんだ。勝手にすればいい」

「お前らはニューヨークに連れていかない」

「これで縁切りだ」

「じーさんによろしく言っといてくれ」

オレは立ち上がった。もうリョーコは引きとめようとしなかった。オレはキャッシャーで金を払って店を出た。

ふとさっき会った紗也乃ママの顔が浮かんだ。もしかして病気の話もすべてウソかも知れないと思ったが・・・もうどうでも良かった。オレは理沙の部屋に向かった。理沙の帰りを待ちながら飲んだくれようと思った。

そして翌日の午前中まで理沙の部屋で過ごした。

▼9時・・・スカイ・マンション1Fカフェ

オレ
「という事でオレは梅木と杯を交わした。だからと言ってオレはやくざじゃない。」

松井
「そーですか何か変な具合ですね」

前田
「梅木・・・さんもファミリーの一員という事ですか?」

オレ
「いや、あくまでも形式上の事だ。今後、ムトー商会は一切やくざとは関わらない。問題が発生した時には守代を払っているK芸能に一任すればいい」

松井&前田
「了解です」

オレ
「まーこれまでも問題はオレ自身が引き起こしていたようなもんだから、オレがNYへ行ってしまえばもうそんな事は起きないだろうけど(笑)」

松井
「はい^^大丈夫です(笑)」

オレ
「石井はうちのファミリーの一員だ。独立したからと言ってそれは変らない。後は前田がやってくれ」

前田
「はいっ^^」

オレ
「それと警察だが・・・今後はうちを特別扱いしないはずだから気をつけてくれ」

松井
「佐竹さんとは?」

オレ
「たぶん。今晩やってくるだろと思うけどその話し合いの中でそういう結論になると思う」

松井
「まっこれまでも普通にやっている分には何も問題は発生していませんから大丈夫ですよ」

オレ
「うん。不動産関連もややこしいところとは関わらないように」

前田
「はい^^それはもうこりごりですから(笑)」

松井
「ややこしーのは全部石井さんところですか?」

オレ
「そーだ(笑)横山には後でオレから言っとくから」

外はいい天気だった。そろそろ桜も満開になる頃だった。しかしオレの気持ちは昨夜から沈んだままだった。

オレ
「という事で日曜の宴会、楽しみだな^^」

オレはそう言って席を立った。そして自宅に上がった。

オレ
「ただいまー^^」

ショーコ
「おかえりなさい^^」

オレはショーコを抱いて軽くキスをした。そしてリビングに入った。珈琲のいい香がしていた。

ショーコ
「珈琲?それとも」

オレ
「珈琲でいい^^」

オレはまだ松村さんの事を話すつもりはなかった。紗也乃ママは松村さんがニューヨークへ行くのは難しいと言った。一応オレはそれでも誘ったが・・・それが本当かどうかはわからない。昨日のリョーコの話もすべてを信じたわけでもない。

オレ
「昨日は深酒しすぎて理沙のところで過ごしてしまった」

ショーコ
「そう。^^理沙ママも喜んでくれたでしょうね」

オレ
「さー?(笑)」

ショーコ
「疲れてる?」

オレ
「そう見えるか?」

ショーコ
「うん」

オレ
「見破られないように気をつけているつもりなんだけど(笑)」

ショーコ
「無理しないで、何でも話して?」

オレ
「ああ」

ショーコは珈琲をちゃんと皿の上にカップを置きスプーンをつけて出す。ウエッジウッドのカップだろう。そうしてから、目の前でフレッシュクリームだけを入れてスプーンを使いオレの前に出してくれた。

オレ
「上品で愛情がこもっている珈琲だな^^」

ショーコ
「あらっそう?^^」

電話が鳴った。迷わずショーコはソレに出た。

ショーコ
「ムトーでございます」

「はい。少々お待ち下さいませ」

ショーコは受話器を手で押さえた。

ショーコ
「紗也乃ママからです」

オレは受話器を取った。

オレ
「はい。ムトーです」

「そーですか」

「いえ」

「じゃー降りていきます」

オレは電話を切った。大きな溜息が出た。

ショーコ
「松村さんもご一緒?」

オレ
「うん。ちょっと下まで行って来る」

ショーコ
「はい」

オレ
「すぐに上がってくるから昼飯一緒に食おう^^」

ショーコ
「うん^^」

ショーコは不安げな表情だった。オレはそのままEVを使い1Fのカフェに行った。

オレ
「おはようございます^^」

松村
「いやーいつもいつも突然ですまないね」

オレ
「いえ、それもこれが最後でしょうから(笑)」

紗也乃
「ムトーさん。。。」

オレはウエイターにアイス・ティーをオーダーした。

松村
「今朝、リョーコが家に来た。君にひどい事を言ったと言って泣いて謝ってたよ」

オレ
「そーですか」

松村
「無理を承知であらためてお願いしたい。リョーコと結婚してくれないか?」

オレ
「見返りは?」

松村
「ワシの持ってるものをすべて譲る」

オレ
「すべてとは?」

松村
「松村屋の株式の80%、個人資産だけでも300億は下るまい」

オレ
「で、その後離婚して半分づつって事ですか?」

松村
「・・・」

オレ
「150億持ってる女・・・狙われるでしょうね?その気になれば1ヶ月で丸裸にされるでしょう」

紗也乃ママ
「ムトーさん。松村は・・・」

松村
「いいんだ。紗也乃。黙っててくれ」

松村
「リョーコの性格はよく知ってるつもりだ。そうならない為に君にお願いしたいんだ。わかってくれないか?」

オレ
「さんざん人を嵌めようとしていて、よくそんな調子のいい事が言えますね?(笑)」

松村
「すべてがワシの意思ではなかったんだが・・・でも君はそれを全て防いだ。」

「どうしてこんなワカゾーがそんな力を持ってるのか?不思議でならなかった。」

「特殊なやくざなのかと思ったが、違ったようだ。君はどこかの家の守護人らしいと言うことが最近になってわかった」

「君に松村の家の守護人になって欲しいんだ」

オレ
「失敗すると分っている結婚を勧めて、あまつさえあなたの息子たちも守れと?」

松村
「後継者になった時点で松村の家を守ることにもなる。」

「結婚は・・・結果的に失敗してもそれはそれで構わん」

「ワシの代わりに見守ってもらえるのは君しかおらんのだ」

オレ
「残念ですけど、オレには無理だ。」

オレは立ち上がってEVに向かって歩き出した。

紗也乃
「待って下さい。ムトーさん」

紗也乃ママは走ってオレの前に出た。

紗也乃
「松村は本当にあとわずかの命なんです。お願いします!!!」

「どうか松村を安心させてやって下さい」

「私でよければ一生あなたの奴隷になりますから」

紗也乃ママはオレの足元に崩れて泣いていた。EVが開いた。ショーコが降りてきた。

ショーコ
「ムーさん・・・」

オレ
「・・・」

ショーコ
「あー松村さんが!!!」

オレは振り返った。オープンカフェのテーブルの横に人が倒れていた。

紗也乃
「あーーー」

オレは紗也乃の腕を掴んだ。

オレ
「慌てるなオレが見る」

オレは走ってそこへ近づいた。ウエイターも周りを囲んだ。

オレ
「ショーコ。部屋から毛布を持って来い」

オレは松村さんをそのまま動かさないようにした。野次馬が集まってくる。紗也乃は泣いたままオレの隣にいた。

オレ
「心配ない。すぐに救急車が来る。主治医がいる病院は何処だ?」

紗也乃
「北区の三星会病院です」

ショーコが持って来た毛布をかけて救急車が到着するまでそうしていた。紗也乃は付き添って救急車に乗りオレとショーコはタクシーで北区の三星会病院に向かった。

松村さんは緊急入院することになった。

オレ
「で、連絡事項はなんだったんだ?」

ショーコ
「あっ至急連絡が欲しいと北条さんが」

オレ
「わかった」

ショーコ
「松村さん大丈夫でしょうか?」

オレはその問いには答えなかった。病院のロビーから香の家に電話した。用件だけ聞いてすぐに電話を切った。

ロビーに戻った。

紗也乃
「先生のお話だと体力が落ちている上に熱があったからだろうとおっしゃってました。今すぐには大きな問題にはならないそうですが・・・」

オレ
「そーですか」

紗也乃
「ムトーさん。ありがとうございました」

オレ
「・・・」

ショーコ
「私も付いていましょうか?」

紗也乃
「いえ。私一人で大丈夫です」

オレ
「じゃー夕方には加納にきてもらいますから、その時にママは一度家に戻ったらどうです?」

紗也乃
「・・・すみません」

オレとショーコは病院を出た。タクシーに乗りスカイ・マンションに戻った。そして部屋に入った。

オレ
「ショーコ。松村さんとの決着が着くまで、事情を説明できないんだ。それまで待ってくれるか?」

ショーコ
「私の事なんか気にしないで、あなたの思う通りにして^^」

オレ
「悪いな」

ショーコは新しい珈琲を入れた。オレは無線電話を持ち何本かの連絡をした。

オレ
「ちょっと出てくる」

ショーコ
「はい」

オレはクラウンに乗って神戸に向かった。灘区赤坂通りで香を拾って、王子動物園に行った。

オレ
「今週末あたりが満開だな^^」


「うん。でももうお花見のお客さんが席取りしてるね」

オレ
「夕方から夜桜見ながら宴会なんだろうなーいいなー(笑)」


「そうね。たくさんの人と外で飲むのユーちゃん好きだもんね」

オレ
「あははは^^オレは宴会大好きだから」

香とふたりで腕を組んで歩きながら、王子動物園内の桜通りを抜けた。遊園地前のカフェに入った。

昔ながらの食堂メニュー。オレはきつねうどんとおにぎりを頼んだ。


「なんか変な感じ(笑)」

オレ
「どーして?」


「バリっとした格好でそんなの食べるなんて」

オレ
「ははは^^本当はこんなのが好きなんだ」

オレは上着を脱いで隣の席にかけた。


「電話でも言ったけど、ほんとにびっくりした」

オレ
「うん。オレもびっくりした」


「ユーちゃん。おとーさんと何を話したの?」

オレ
「えっ?何も(笑)」


「昨日酔って帰ってきていきなりよ」

「香、気をつけて行って来い!って」

「最初何の事かわからなかった」

「NY行っていいの?って聞いたら・・・淋しそうに笑ってた」

オレ
「そっか。良かったじゃないか^^」


「ユーちゃん。どんな魔法使ったのよ?^^」

オレ
「いつも通りさ!」


「どういうこと?」

オレ
「神に祈ってた(笑)」


「もうっ(笑)」

香の親父はきっとオレとふたりっきりで会わなくても、最後には香の希望を叶えてやろうと思ってたに違いない。それまで反対していた経緯から、オレの目の前でそれをすんなりと認めたくなかっただけだろう。オレはそう思う事にした。

昼飯を食った後、ホテルへ行った。暫くは出来ないので時間をかけて丁寧に香の体を可愛がった。

そして香を自宅まで送って行ってミナミに戻った。

▼17時・・・東洋ビル4Fオフィス

横山
「松村さん大丈夫なんでしょうか?」

オレ
「さーどうだろう何しろ年だからな」

横山
「そーですか。実は以前に松村さんの事調べたんです」

オレ
「ん?」

横山
「戦前まで小さなな繊維問屋だった「松村屋」を今の松村さんが代を継いで今の規模、年商500億の大手になったそうです。関連会社が10社以上、グループ全体で1000億企業だそうです。」

「3人の息子さんたちはそれぞれの企業の重役に納まっています」

「そして、その企業の株をすべて集約した松村興産ってのがあって、そこの会長が松村さんです」

「うわさでは松村さんの個人資産だけでも300億は下らないとか・・・」

オレ
「そんなもんとっとと処分してしまえばいいだ」

横山
「松村さんは、ムーさんに何か期待しているんでしょう?」

オレ
「オレは・・・知らない」

横山
「昨日もキョーコさんから電話があって、リョーコさんが突然来たって言ってました。どうも何かムーさんが松村さんに対して引け目があるんじゃないかと心配してました」

オレ
「リョーコはキョーコに何を?」

横山
「ムーさんとの付き合いを認めて欲しい!と言ったようですが・・・」

オレ
「何だよ!最後まで言えよ(笑)」

横山
「キョーコさんはムーさんは今でも私のオトコだからダメだって言ったそうです」

オレ
「あははは^^」

横山
「実はそれだけならオレも嬉しいんですけどね。何やらあなたも財産を狙っているの?とまで言われたそうです」

オレ
「ったく。ひとの気も知らないで勝手な事ばっかり言ってくれるよな」

横山
「でもなんかおかしいんですよねー」

松村さんはうちにファミリーに入りたいと言った。そして繁盛している店、エスポとローマリを保証金のみでうちに提供した。

そして、インポと称して「蒼い龍」を見たがった。オレは理恵の「蒼い龍」を見せた。唐突にキョーコが自分の娘だとオレに告白した。オレの事を19の時から知っていたと・・・オレは怒ったがそれを許した。

もう一人の娘であるリョーコ。彼女がオレに迫り、オレはリョーコを抱いた。リョーコの男がオレに報復に出たが、稚拙な襲撃は失敗に終わり撃退された。オレはその裏の事情を知らないまま、松村さんがニューヨークへ行きたいと言えば急遽予定を変更しそれを用意し、リョーコがニューヨークでレストランをやりたいと言えば、進行中のプランを潰してリョーコに譲った。

どうして?何故そこまで松村さんの我侭を聞くのか?誰が考えてもおかしいと思うのは当然だった。それはオレ自身よくわからないところがあったが、ジーさんの希望通りにしてきた。

そんな利害を超えた関係を最初からジーさんは裏切っていた事実を聞かれされた今、オレは正直落ち込んでいた。そんな事情を知っている横山だけは何かを感じているようだった。オレはそんな自分の考えや行動を説明できなかった。

オレはもしかしたら松村のジーさんに自分の未来をあてはめていたのかも知れない。正妻の間に3人の息子が居て、メカケの女2人がそれそれ女子が居る。息子3人には何の期待もなく、今になって娘の将来に気をもんでいる。

それはもしからしたらオレの将来かも知れない。もちろんオレならそんな無様な事はしない。しかしオレは松村さんを必要以上に歓待したのだが・・・それは見事に裏切られた。そんなやりきれない思いにオレは・・・

横山
「どうしたんですかムーさん」

オレ
「キョーコが・・・急にリョーコにだけはとられたくない!って蒼い目をしてオレを脅した(笑)」

横山
「うわっ!どーすんですか?ムーさん」

オレ
「ははは・・・オレがキョーコに逆らえると思うか?」

横山
「いいえ。思いません(笑)」

オレ
「(笑)」

松村さんへの対応を疑問に思っている横山に対して説明できないまま、最後はキョーコの話を冗談ですませた。松村さんへのイラだたしい思いとは別に、オレは横山に三星会病院に行ってもらった。そしてそろそろショーコも行っている頃だろう。

▼18時・・・ギャラクシー・オフィス

佐和子
「もうそろそろ来られると思います」

オレ
「そっか」

理恵
「ユーちゃん。分ってると思うけどキレないでね^^」

オレ
「オレはそんな簡単に怒ったりしないよ(笑)」

佐和子
「でも一応ムトーが怒ってます!って伝えてありますから」

オレ
「はいはい^^」

ドアがノックされた。松井が声をかけて入って来た。

松井
「佐竹さまが来られました」

オレ
「オッケーオレが先に特室で待つよ!二人だけで話すから」

松井
「了解です」

オレは通路へ出て特別室へ入った。ソファの手前で立って待っていた。暫くすると表の扉が開いた。松井が先に入り、後に続いて佐竹署長が入ってきた。

オレ
「センパイわざわざお呼び立てして申し訳ありません^^」

オレは軽く頭を下げて迎えた。佐竹さんは固い表情のままソファに座った。オレもそのまま席についた。

オレ
「この間のコンペ!センパイ3位入賞したそうですね^^いやーオレも見たかったなー」

佐竹
「たまたま常連の強者の欠席が多かったし、調子も良かったからな^^ムトー君が来ていればきっとまた優勝を持って行ってたさ(笑)」

松井が少し大きめのグラスに入った生ビールをふたつオレたちの前に置いて部屋を出た。

佐竹
「ムトー君には色々世話になりながら、誤解されてる部分もあって申し訳ないく思ってる」

オレ
「いえ、ボクもバタバタしていたせいで、近くに居てもらってるセンパイなのに不義理ばっかりですみませんでした」

佐竹
「今日も佐和子ママに怒られてしまった(笑)」

オレ
「すみませんねーついゴルフ場での癖が出て、センパイのカイシャでも無遠慮な事しでかしまして」

「実は来週、ニューヨークへ行ってしまうんでそれまでに是非センパイにお願いがあって」

佐竹
「ニューヨークで新しい店をやるんだろう?行きっぱなしじゃないだろう?」

オレ
「まーそうなんですけど、松村さんと一緒なんですよ」

佐竹
「松村さん?」

オレ
「ええ。佐竹さんにオレを逮捕するようにお願いしたジーさんですよ」

佐竹
「ははは^^アレはジーさんじゃなくて息子の方だ。それに単なるシャレだよ(笑)ボクがいや、警察がムトー君を逮捕する理由がないじゃないか」

オレ
「兵庫県警あたりでは、頂上作戦に力が入ってるようで、ボクまで要注意人物にも指定されてしまってるようなんです。このままだとヤクザだと思われてしまいそうで・・・それもあってニューヨークへ行くんですけどね」

佐竹
「ふむ」

オレ
「ボクの居ない間、やっぱりここが心配で・・・前回の事もありますし」

佐竹
「・・・」

オレ
「この店は松井が居ますから、佐竹さんにも頻繁に遊びに来てもらえると助かるんですが?」

佐竹
「わかった。ボクでいいならちょくちょく顔を出すようにするよ」

オレ
「ありがとうございます^^」

佐竹
「ところでムトー君、今の内閣委員長の誰だったかな?」

オレ
「石井一さんですか?」

佐竹
「そうそうその石井さんと親しいのかな?」

オレ
「私設秘書の連中がボクの地元のセンパイばかりで、時々政治献金をさせられたりする程度です^^」

佐竹
「そう。実はここだけの話なんだけど、2年後の府会に出ようかと思ってるんだ」

オレ
「佐竹さんがですか?そりゃーすごい!その時は是非応援させてください」

佐竹
「うん。ありがとう^^まだ秘密なんでくれぐれも・・・」

オレ
「はい」

オレたちはビールでカンパイをした。佐竹さんの腰巾着だった2課の係長を政治力を使って移動させたのをどうやら調べ上げたようだ。そして選挙に出ることまで秘密だと言いながらオレに話した。もう警察には魅力を感じていないと言うことの表れで、それはその力を行使してまで争うことはない。と宣言しているように思えた。

佐竹
「じゃー今日はこの辺で^^ニューヨーク是非頑張って成功させてくれ」

オレ
「はい^^ありがとうございました」

オレは佐竹さんと店内を通り、EVまで見送った。佐竹さんは佐和子と理恵に冗談を言われながらも機嫌よく帰って行った。

オレは特室に戻った。

理恵
「松村さんがユーちゃんを逮捕させようとしたってどういう事?」

オレ
「ん?今日その事を詳しく聞こうと思ったら松村さんが倒れて入院した」

理恵
「まーそんな事」

佐和子
「ムーさん。松村さんと対立してるんですか?」

オレ
「いや、たぶん何かのテストのつもりなんだろう(笑)」

理恵
「ニューヨークはどうなるのかしら?」

オレ
「予定通りだよ^^心配ない。佐竹さんもこれで大丈夫だ」

松井
「まー警察に目を付けられるような事もありませんし、ムーさんが居ない間、油断せずにやりますから安心して下さい」

オレ
「うん。頼んだ^^」

オレはギャラクシーを出た。松井がついてきた。

オレ
「ん?」

松井
「いやーつい癖で^^」

オレ
「この間の大槻の事、他に何か聞いてるか?」

松井
「ええ。大槻をそそのかしたヤツが居たようで、K芸能がそいつにも脅しを2度ほど入れたそうです」」

オレ
「2度・・・念が入ってるな(笑)」

松井
「その時は高坂も大したことないと思ったのか後で知りました」

オレ
「ふむ」

松井
「さっきの話を聞いてすぐに高坂に詳しい事を聞く段取りをしました」

オレ
「わかった」

オレは通りでタクシーを拾った。松井に見送られて三星会病院へ行った。病室へ入るとショーコが居た。松村さんは目覚めていた。オレはショーコに席を外してもらった。オレは折りたたみのイスに座った。

オレ
「どうですか?ご気分は?」

松村
「うん。すっかり大丈夫だ。面倒ばかりかけてスマンな」

オレ
「いえ、大した事ありません」

松村
「ずいぶん前から知ってたのかね?」

オレ
「さーなんの事でしょう?」

松村
「今更とぼけなくてもいいだろう。ワシの病気の事だ」

オレ
「発覚した翌日ぐらいじゃないですか」

松村
「紗也乃は何を君に頼んだ?」

オレ
「優しくして欲しいって(笑)」

松村
「それだけか?」

オレ
「ええ、だから優しくしてるでしょ?」

ジーさんもやはり知っていたのか。もっとも紗也乃ママはその他にも色んな事をオレに頼んだが、その時点で受け入れられるものはなかった。

松村
「うちのバカ息子どもはどうでもいい。キョーコはワシがあらためてお願いしなくても大丈夫だろう?だからリョーコの事だけなんだ・・・」

「どうやら内部でも裏で次の争いがあるようで、ワシの事が漏れていたようだ。もっともそれらはすでに一掃したが・・・」

「それとユーちゃん。君は色んな意味でまだ危うい。ワシの後継者となって君の持つその力をプラスの方へ使うんだ」

オレ
「松村さん。オレはあなたを尊敬できるセンパイだと思っていた」

「オレのプライバシーに土足で入り込んでくる。それは許しがたい敵対行為だ」

「でもそれらを全部含んで・・・許してきた」

「その覚悟の上で聞いて下さい」

「松村さん、今すぐ全部ケリをつけて下さい」

「あなたの思うように財産をすべて分けてしまえばいいじゃないですか!そうでないと誰が後継者になっても揉めますよ」

「そんな火種を残すより今すべてを公にして、あなたが他の者たちを納得させればいい」

「オレが財産狙いであなたに近づいていると思われて、罠に嵌められるのは真っ平です」

「そういう決着がつけれないのであれば、これで終わりです。NYへは連れて行きません」

オレは部屋を出た。廊下で横山とショーコ、そして紗也乃ママが待っていた。紗也乃ママが病室に入るのを見届けてオレたち3人は病院を出てミナミへ戻った。

▼21時・・・鮨処「満楽」

威勢のいい声がかかり、オレたちはテーブル席に座った。田川がまだカウンターに居た。ここでも特に注文をしなくても適当に出てくるようになった。常連になった証拠か?

横山
「それにしても心配ですね」

ショーコ
「数日間様子を見るそうよ!その間、紗也乃さんが付き添うそうだから、私も今日のように交代するつもりです」

オレ
「いや、松村さんには息子が3人も居るしリョーコだって居る。放って置けばいい」

横山
「どうしたんです?何かありました?」

オレ
「財産や後継者問題をオレの関係のないところで今すぐ解決しろ!でないとニューヨークへは連れて行かないし、これで縁を切ると言ってきた」

横山
「えーーー!!!そんな事言ったんですか?」

ショーコ
「あはっ!それはすごい(笑)」

オレ
「死ぬまで影響力を行使しようというせこい考えをするから人を信じられなくなるんだ」

「そんなものはとっとと分け与えて引退してしまえばいいんだ」

「そしたらオレたちとも笑って付き合える。そうじゃないか?」

横山
「いや、まーそれは・・・そうですけど」

ショーコ
「あははは^^ムーさんらしくていいじゃないですか」

オレ
「だってオレは関係ないのに一番大きな被害を受けてるんだ。それぐらい言わせてもらっても罰は当たらないさ」

横山
「関係ないって、ムーさんうまく行けばムーさんが後継者ですよ」

「年商500億、関連会社10数社の会社の大株主ですよ!個人資産300億が・・・」

ショーコ
「横山君。ムーさんがそんなもの欲しがると思ってるの?」

横山
「いや思ってはいませんけど(笑)ムーさんの他に居ないわけですし」

オレ
「居なけりゃ、精算してどこかに寄付でもすりゃーいいさ(笑)」

横山
「ははは・・・そーですね。。。」

長井と佐伯が演奏を始めた。客のリクエストをこなした後、オレと3人のユニットで3曲やった。学生時代の仲間、後輩に混じって歌を歌う。これほど楽しいことはない。嫌な事がすべて忘れられる。オレは気持ちよかった。

そして、店を出た。

横山は東洋ビルへ戻り、ヤツ専用のカプセルで寝る。オレとショーコはスカイ・マンションの1110号に戻った。そしてショーコの部屋でショーコを抱いて寝た。

もうこれ以上預かり物はごめんなんだよ!オレの苛立ちは治まらなかった。


Next Story>>>>>
<<<<<Back Story


━…━…━…━…━…━…━
 My History Index
━…━…━…━…━…━…━
| My History | 16:14 | comments(0) | trackbacks(0) | ↑PAGE TOP









http://kaizin.jugem.cc/trackback/1393
CONTROL
PROFILE
━…━…━…━…━
My History Index
━…━…━…━…━

メールフォーム

クリックで救える命がある。

RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
SELECTED ENTRIES
RECENT COMMENTS
  • 迷子のフクロウ保護
    kina
  • ポール ライブ イン オオサカ
    pio
  • 宇野くん元気そうだ!
    るーく
  • 宇野くん元気そうだ!
    みく
  • キーボード
    るーく
  • キーボード
    みく
  • キーボード
    みく
  • キーボード
    るーく
  • キーボード
    みく
  • 週刊朝日
    るーく
RECENT TRACKBACK
CATEGORIES
ARCHIVES

このページの先頭へ