<< 菅内閣支持率9月 | main | Mrハーレー・ダビットソン >>
泣かないで


1984年舘ひろし「泣かないで」

上手い下手、好き、嫌い!は別にして1984年当時は結構ヒットしたようですね!
■1983年4月・・・

由紀と龍二を日本へ送って来た。帰って来るとやはり色んなところへ顔を出さなければならなかった。

自宅へ戻り新しい子供の顔を見て過ごし、横山や本橋と神戸で打合せをして香の様子を見に行った。そして金沢まで行き、間島と会いそこでも自分の子供と対面した。

まだ理沙や理恵、松井や前田の顔は見ていない。

もうひとつだけやっておかなければならない事があった。

▼18時・・・ミナミ周防町スコッチ・バンク

ユーコママ
「いきなり大学辞めて専門学校へ行く!って言い出したの」

「ユーちゃんはどう思う?」

オレ
「あらら・・・実は・・・」

オレは帰国前にユーコに話した内容をかいつまんで説明した。ユーコが子供の頃スチュワーデスになりたいと思っていた事、今回海外留学した事でそういう職業にあらたに興味を持った事などなどを・・・

ユーコママ
「そーだったの」

「でもあと2年残ってる大学を卒業してからでも遅くないんじゃないかと思うんだけど・・・」

オレ
「うん。そんなに焦る必要はないと思う」

ユーコママ
「ユーちゃん。ユーコと会って話してくれる?」

オレ
「もちろん。そのつもりです^^」

ユーコママ
「良かった。ユーちゃんがスチュワーデスになった姿を見たい!って言うから・・・なんて言うのよあの子」

オレ
「あははは^^」

ユーコ
「でも私も見てみたいわ!ユーコのスチュワーデス姿(笑)」

ユーコママもオレと同じ懸念を持っていたようだ。またNYへ行く!と言い出すんじゃないかと・・・しかしそれが自分なりに考えた末に出した新しい目標がとりあえずスチュワーデスだったことで、ずいぶん安心しているようだった。

ユーコママ
「何もかもユーちゃんのおかげだわ。ありがとう」

オレ
「いえ。元々の騒動の原因はオレですから・・・」

ユーコママ
「ううん。色々あったけどユーちゃんはいつも私たちの事を考えて一生懸命してくれたわ」

「まるで本当の家族みたいに・・・」

オレ
「あはっ!^^そんな風に言われると嬉しいです」

オレは水割りをつくった。大きなロックアイスをグラスにひとつだけ入れた。マドラーで軽く混ぜた。照明の反射で氷がキレイに見えた。

ユーコママ
「良かったら今日はうちへ泊まって?」

オレ
「えっいいんですか?」

ユーコママ
「ユーコもびっくりすると思うわ^^」

オレ
「はい^^」

オレは運転席のドアを開けてママを乗せた。ママがクルマを出すまで見送った。オレは一度スカイ・マンションの1110号室に戻って着替えた。熱い珈琲を飲みながら南側の障子を開けてミナミの街を眺めた。

▼21時・・・香露園シーサイド・マンション

オレは公園の前にクルマを停めた。そしてマンションの中に入りユーコの部屋の前まで行った。チャイムを押した。オレはドアのスコープから見えない位置に移動した。

鍵の開く音・・・ドアが開いた。ママだった。

ユーコママ
「いらっしゃい^^今ユーコお風呂に入ってしまったのよ」

オレ
「じゃー静かに上がります」

オレは大きな声を立てずにリビングに行った。TVの前に真美が居た。目が合った。オレは口に指を近づけて合図を送った。真美は口に手をあてて大げさにびっくりしていた。オレはソファに近づいた。

オレ
「気付かれないように驚かせてやろうと思って(笑)」

真美
「うんうん^^じゃーそっちのテーブルの向こうに座って?見えないから」

オレ
「オッケー(笑)」

オレは真美の言う位置へ移動した。風呂場から出て来てリビングに入るとちょうどここは死角になっていてすぐには気付かない場所だった。

ママは冷蔵庫からビールを出してくれた。それを真美が注いでくれた。オレは真美と小さな声で話し合った。暫くすると風呂場から音がした。

真美
「もうすぐよ^^」

オレ
「うん」

人の気配がした。

真美
「あっおねーちゃん。。。」

ユーコ
「何よ真美!あなたも早く入りなさい」

オレ
「ぎゃははは^^」

ユーコは頭にタオルを巻いて素っ裸でリビングへやってきた。ユーコはオレの馬鹿笑いに仰天して振り返った。

ユーコ
「あーーーユーちゃん!」

「どーして?」

「あー」

ユーコはオレを認めて驚愕の表情の中に歓喜の混じった顔つきでオレの方へ近づいて来ようとした。

ユーコママ
「ユーコ。あなた裸でウロウロしないのっ!(笑)」

ユーコ
「きゃーーー恥ずかしい^^」

オレ
「あははは^^」

ユーコは自室へ入るとすぐにTシャツと半パンに着替えてリビングに戻ってきた。オレは立ち上がった。ユーコと抱擁を交わした。風呂上りのいい匂いがした。

ユーコ
「もうっユーちゃん。びっくりしたー(笑)」

オレ
「ははは^^オレもびっくりしたよ!いきなり裸で現れて(笑)」

ユーコ
「だってー^^」

真美
「でもなんかユーちゃん大笑いしてたし、慣れてるみたいだったよ」

ユーコ
「真美!あなたは余計な事言わないの」

オレ
「いやー全然慣れてないよ^^でもオネーちゃんの裸キレイだったなー^^」

真美
「あっそう(笑)」

そういいながら真美はテーブルを離れた。ママはグラスをオレの前に置いた。ユーコがビールを注いでくれた。

ユーコ
「ユーちゃん。もしかしてママと会ってた?」

オレ
「うん(笑)」

ユーコ
「やっぱり(笑)ママちょっと酔ってるみたいだったしご機嫌だったからなんか変だなーって思ってたのよ」

ユーコママ
「あなたの事相談してたのよ」

ユーコ
「ふーん」

きっとどんな話をしていたのか察しはついたはずだった。オレは本題に入ろうと思った。

オレ
「大学卒業してないといい航空会社に入れないぞ!」

ユーコ
「じゃーどうしたらいい?」

オレ
「大学に行きながら、夕方から専門学校にも行く!ちゃんと大学を卒業する」

ユーコ
「んーーーわかった。そうする」

ユーコママ
「あはっ!ユーちゃんが言ってくれたら、こんな素直に・・・(笑)」

ユーコ
「その替わり・・・私もお願いがあるっ!」

オレ
「ん?何?」

ユーコ
「夏休みにNYに遊びに行く!」

オレ
「オッケー待ってるよ(笑)」

ユーコ
「やったー♪」

ユーコママ
「ユーちゃんだって夏休みはこっちへ帰ってくる予定とかあるでしょう?ユーコの我侭ばかりに合わせてられないでしょうに・・・」

オレ
「8月の終わりに1週間ぐらい帰国しますけど、それまではmar'sClubの連中も来ますから大丈夫です」

ユーコ
「そっかーまたユーちゃんのコーハイ達がやってくるんだー楽しくなりそうね^^」

真美
「オネーちゃんいいなー」

風呂上りの真美はまだ髪が乾いていなかった。そしてユーコの隣に座った。

真美
「ねーユーちゃん。私今バイトしてるんだよ」

オレ
「へーそうなんだ。真美ちゃんはえらいなー^^」

真美
「それで航空チケット買うから・・・私も行っていい?」

ユーコ
「ダメよ!真美まで来たらママひとりで淋しいでしょ」

ユーコママ
「・・・」

オレ
「真美ちゃんもおいで^^ママもお盆の休みに来ればいい」

真美
「やったー♪」

ユーコママ
「ユーちゃん。ほんとにいいの?ふたりも行って?」

オレ
「だからママも」

ユーコママ
「私は・・・」

ユーコ
「私もちゃんとバイトするから、ママも行こうよー^^」

ユーコママ
「じゃー1年に1度の贅沢しちゃおうか?(笑)」

オレはビールを飲み干した。ほのぼのとする空間に居て楽しかった。そしてユーコが素直に日本にて勉強する決心をしてくれた事にユーコのママ同様嬉しく安堵した。

ユーコ
「ユーちゃん。ヒロミが突然ジュリアード音楽院に行きたい!って言い出したの」

オレ
「何だって!!!」

ユーコ
「私もびっくりしちゃって・・・」

オレ
「ヒロミのパパとママはなんて言ってるんだ?」

ユーコ
「ヒロミのママは反対してて、パパは・・・仕方ないなーって言ってるそうよ」

オレ
「ったく。あのオヤジは・・・」

ユーコママ
「それは一体何?」

ユーコはNYにある世界的に有名な音楽学校であるジュリアード音楽院の事を簡単に説明した。リンカーンセンター内の敷地に建つビルにそれがあるのだが・・・

ユーコママ
「そう。ヒロミちゃんピアノ上手だものね」

オレ
「でもあそこは世界中から才能のあるヤツばかりが集まってくるところだから・・・」

ユーコ
「ヒロミは・・・高3の時、全国コンクールで3位になってるのよ」

オレ
「なっ何だと!ほんとか!」

ユーコ
「高校の時の先生は、東京芸大を受けさせようとしたんだけど、私たちと一緒がいいって言って上に上がったの」

オレ
「・・・」

ユーコ
「ユーちゃん。どうする?」

オレ
「どうしたらいい?」

ユーコ
「朝から晩までピアノ弾いてるみたい。きっとヒロミならジュリアードに入ると思う」

オレ
「だから?」

ユーコ
「大事な親友だし・・・」

ユーコはそう言ってオレを正面から真剣な表情で見た。ユーコの葛藤はよくわかっていた。ヒロミがジュリアードへ入学すると当然近くに居るオレとの接触が多くなる。その事を心配しながらも、ヒロミがピアノをやるのであれば、親友として応援したいと思っている気持ちもよく伝わってきた。同時に、これまでそれを黙っていたヒロミの覚悟のほども感じているようだった。

オレ
「わかった。じゃーヒロミの家に電話してパパを呼んでくれる?」

ユーコ
「うん」

真美
「ユーちゃん。ヒロミちゃんはもしかしてユーちゃんの事好きなんじゃなーい?」

オレ
「真美はオレの事嫌いか?」

真美
「嫌いなわけないじゃん!大好きよっ!」

オレ
「ヒロミちゃんも同じだよ(笑)」

真美
「んーーーなんかちょっと違う気がするけどなー(笑)」

ユーコママ
「真美ちゃん。余計な事聞かないの(笑)」

ユーコ
「ヒロミちゃんのおとーさん」

オレはユーコが持っている受話器を受けて話した。

オレ
「ども^^ムトーです」

「いえこちらこそ」

「はい。えっ今からですか?」

「はい。わかりました」

「はい^^」

オレは受話器を戻した。

オレ
「今から良かったら皆で家に来てくれないか?って言ってた」

ユーコママ
「みんなで?って私や真美も?」

オレ
「ええ、みんなで^^」

女3人、急におでかけする事になって着替えやなんやかんやで時間がかかった。そしてオレたちはママの運転するクルマで芦屋のヒロミの家まで行った。

急な夜の訪問だったが、ヒロミの家族とは昨年の12月にNYで家族同士で交流した事もありすっかり仲良くなっていた。

オレたちは応接室ではなくて広いリビングの方へ通された。オレはヒロミのオヤジと冗談を言い合いながらソファに座った。

パパ
「実は、ヒロミがNYのジュリアード音楽院に留学したいと言い出して、どうしたものかと」

ヒロミ
「ムトーさん。私8ヶ月間ニューヨークで過ごしてすごく勉強になりました。同じ年の外国の人たちが、自分の将来の夢に向かってすごく必死で勉強している姿を見て・・・私ももう1度自分の夢を持ちたいと思いました」

オレ
「自分の夢?」

ヒロミ
「はい。ピアノを真剣にやりたいと思います。」

オレ
「何故またニューヨークなんだ?日本でもピアノを勉強するチャンスはいくらでもあるだろう?」

ヒロミ
「はい。私よりももっと上手な人たちの集まる中で勉強したいと思って」

オレ
「ジュリアード音楽院以外にもコロンビア大学の隣にマンハッタン音楽学校もあるだろう?」

ヒロミ
「ソリストを目指すならマンハッタンのシラー先生よりジュリアードのベックラー先生に学びたいと思って」

オレ
「ジュリアードの演劇科へ行ってる連中も知ってるけど、あそこのピアノ専科はハンパじゃないぞ!入るのも難関だけど、入ってからがまた大変だぞ!」

ヒロミ
「はい。覚悟はできてます」

オレ
「世界中から才能のある特別なヤツらが集まってくるところだけど・・・甘えずに今度は1番を目指せるか?」

ヒロミ
「はい。頑張ります」

オレ
「途中で泣いて投げ出すんじゃないのか?」

ヒロミ
「いいえ。絶対1番になって見せます!」

オレ
「・・・わかった」

「あっ!すみません。別にオレが決める事じゃないのに(笑)」

パパ
「いやーーーものすごい緊張感のあるやりとりで驚いた^^」

ヒロミママ
「本当に、まるで怖い試験官のようで・・・でも安心しました」

「ムトーさん。ヒロミをどうかよろしくお願いします」

オレ
「えっ?いんですか?」

ヒロミ
「パパ、ママ。ありがとう」

ユーコ
「良かったねヒロミ^^」

パパ
「でもまだ合格するかどうかわからないしな(笑)」

ママ
「あなた何を言ってるんですか!ヒロミは絶対合格します!」

パパ
「あれ?お前はさっきまで反対してたじゃないか?」

ママ
「ヒロミが1番を目指す!って言ってるんですよ!応援するのは当たり前じゃないですか!」

パパ
「ははは・・・そーか(笑)」

それから前祝だと言う事でビールでカンパイをした。いつの間にか宴会になり、オレはユーコにねだられて、コミカルなパントマイムを披露させられた。爆笑の渦の中オレはご機嫌だった。そしてつい飲みすぎた。

パパ
「ユーちゃん。今日は家へ泊まっていってくれよ!」

ユーコママ
「あっ!すみません。うちでもう着替えも用意してますので今日は・・・」

パパ
「そっかーそれは残念だなーじゃー今度は是非朝まで飲もう^^」

オレはクルマに乗せられてママの運転でユーコ達のマンションに戻った。ユーコは酔い覚ましに珈琲を入れてくれた。

真美
「あー危なかった(笑)もう少しでユーちゃんを取られるところだった」

ユーコママ
「真美ちゃん。人聞きの悪い事言わないの(笑)」

ユーコ
「うん。ママがすぐに言ってくれなかったらユーちゃんヒロミの家に泊まらされてたはずよ」

ユーコママ
「そりゃーユーちゃんはうちの大事なお客様だもの^^」

真美
「そーよねー^^」

ユーコ
「どしたの?ユーちゃん」

オレ
「いや。オレもヒロミにエラソーな事言った以上頑張らないと!と思ってね(笑)」

真美
「でもユーちゃんが話したら何でもうまくいっちゃうね^^」

ユーコ
「それを「ムトーマジック」って言うのよ!有名なのよ」

真美
「ムトーマジックかーそうなんだーカッコイイなー^^」

ユーコ
「ふんっ^^当然よ!」

ユーコママ
「ユーコもあんな風にユーちゃんに厳しく言ってもらってるんだ?」

ユーコ
「私はいい子だから厳しくされたことなんかないもーんっ」

ユーコママ
「そーなの?ユーちゃん」

オレ
「ユーコにそんな厳しい事言ったらビービー泣かれて後が大変ですから(笑)」

真美
「あははは^^デキが悪い子ほどかわいい!ってやつなんだ(笑)」

ユーコ
「真美っ!あなたは余計なことばっかり言わないのっ!」

オレ
「ははは・・・」

そしてオレはこの日、ユーコの部屋で眠った。皆が部屋に戻った頃、ユーコはやってきた。裸になってオレの隣に潜り込んできた。そして何度も声を殺してユーコはいき続けた。オレの名を呼びオレにしがみ付いて泣いた。

翌日朝食をごちそうになって、オレはひとりでミナミに戻った。

スカイ・マンションの1110号で松井と前田、そして石井の3人で打合せをした。夕方から理恵と食事をしてその夜はずっと理恵と過ごした。

翌日は理沙と一緒に丹波の立杭焼きを見に行き有馬で一泊した。

一通り大阪で過ごした後東京へ向かった。そしてキョーコと沙耶に会い一緒に外で食事をした。

キョーコ
「もう明日帰るの?」

オレ
「その予定だけど何?」

沙耶
「明日休みだから、裕子と3人でディズニー・ランド行こう!って言ってたの」

オレ
「えっLAまで行くのか?!」

キョーコ
「ううん。東京にディズニーランドが出来たのよ^^」

オレ
「えーーー本当かよ?」

沙耶
「浦安だけどね!今月オープンしたばかりなの^^ユーイチも一緒に行こうよー(笑)」

オレ
「ディズニーランドが日本に・・・ははは^^」

オレは知らなかった。そしてどうしても行きたくなった。翌日、キョーコと沙耶、そして裕子を連れて4人で浦安のディズニーランドへ行った。

一体何をしていたのか?それこそひとつのアトラクションを楽しむのに延々と待ち1日かけて3つ楽しむのが精一杯だった。。。

それでも一緒に過ごす時間は楽しかった。そしてその夜の便で成田からNYへ向かった。

4月28日・・・

▼16時・・・mar'sOffice

遠山
「今回は、備前だけじゃなくて色んな土を探してきました」

オレ
「そう^^面白い事できそう?」

遠山
「ええ」

紗也乃
「教室の方も人気だし、ショップの方の売れ行きもいいし、これからが楽しみだわ^^」

オレ
「じゃーそろそろ本格的にやりましょうか?」

遠山
「本格的って?」

オレ
「エンちゃん。『登り窯』欲しくない?(笑)」

遠山
「それは・・・」

オレ
「場所はこの島、ロング・アイランドの東あたりで・・・」

遠山
「ムーさん。本気ですかっ!」

オレ
「欲しかったんでしょ?(笑)」

遠山
「はいっ!でも相当費用が・・・」

オレ
「それはなんとかこっちで考えます」

紗也乃
「その『登り窯』があれば本格的な創作活動ができるのね」

オレ
「うん。電気炉とは全く違う次元のモノができる(笑)」

遠山
「いやー嬉しいなー^^ムーさんがそこまで考えていてくれたとは(笑)」

オレ
「環境整備がオレの仕事だから^^」

以前に菊水亭の3人組と船を出して釣りに行ったことのあるサーフォークのどこかに「創作拠点」を作ろうと思っていた。これからの季節、海と自然に囲まれた場所も週末の別荘として利用したいと思っていた。

遠山は最初からわかっていたはずだった。電気炉で自分の目指す創作活動ができるわけがない事を・・・しかし、日本での色んな限界を感じていたのも事実で、ショーコに誘われてNYへは遊びのつもりで来ていた。

オレが備前の「胡麻」や「火襷」をやりたい!と言うと必ず、それは無理です。という応えが帰ってきていた。遠山自身が最初から割り切ってここに居る事がオレは面白くなかった。

そして遠山は自前の「窯」を持てる事によりこれからは本気で腰を落ち着けてやるだろうと思った。

夕食までにまだ時間があるので、オレはバイクに乗ってニューヨーク大学内のフィットネス・ジムに行った。軽い上半身の筋力アップと、股割り・・・パント・マイムではそのコミカルな表現で評価が高かったが、同級生の若い連中でバレエ経験者はみんな体が柔らかい。オレはそいつらに負けたくなかった。しっかりと股割が出来るようになるまでこのトレーニングは続けようと思っていた。

夕食は5階の3LDKの部屋に変更していた。

オレと遠山、そして沙耶ママと3人で夕食をとった。2日に1度のペースで紗也乃ママが作ってくれる。松村さんが亡くなってから、ママは自主的にそうしてくれていた。

紗也乃
「ユーちゃん。パーラーへよく行ってるの?」

オレ
「えっ?誰がそんな事を?あー三浦だな(笑)」

紗也乃
「智子ちゃん。ムーさんが構ってくれないって落ち込んでいたわよ」

オレ
「ちゃんと仕事は教えてるし、この間は学校の友人達と一緒に映画にも行ったけど?」

紗也乃
「そう(笑)わかっててそうしてるのね」

オレ
「さー何の事でしょう?(笑)」

紗也乃ママはブランデーセットを用意した。オレは最近ほとんど家の中では飲まないようにしていたが・・・紗也乃ママともゆっくり話をする機会もなかったことからオレは酒を飲むことにした。

三浦智子はこっちへ来た当時からすでに英語力も高く、ギャラクシーでホステスを経験していたので、ほとんど問題なく「ヤマシロ」のマネージャーが勤まっていた。

紗也乃
「ユーちゃんはきっと人の考えてる事がわかるんでしょう?」

オレ
「ははは・・・まさか香じゃあるまいし」

紗也乃
「さっきの『登り窯』だって遠山さんの最大の悩みだったじゃない?それをあっさりと見抜いて解決したじゃない」

オレ
「『登り窯』は陶芸をやろうと思ったら必須だから」

紗也乃
「でもタイミングが良すぎる(笑)智子ちゃんも切望してNYへ来たのよ!」

オレ
「三浦もNYを満喫すればいい(笑)」

オレは紗也乃ママが作った水割りを口にした。

紗也乃
「前に・・・ショーコちゃんや香ちゃんから聞いたんだけど、ユーちゃんは口説かないのね?」

「というか彼女らの方から強引に迫ってそういう関係になったって言ってたわ(笑)」

「やっぱり女嫌いは本当だったんだ?」

オレ
「オレが女にしてやれる事なんて何もないから(笑)」

紗也乃
「どーして?それこそ関わりある女性をすべて助けてあげてるじゃない?」

オレ
「一番大事な事が出来ないから、その程度の事で誤魔化してる」

紗也乃
「どういう事かしら?」

オレ
「ひとりの女の望む普通の事をかなえてやれない」

紗也乃
「んーーーでもそれは・・・」

オレ
「それにオレやっぱり我侭だし(笑)そのくせやせ我慢は得意なんだ」

オレは水割りを飲み干した。そして話題を変えた。

オレ
「さっきのサーフォークの話だけど、別荘をつくろうと思ってる。週末に自然環境の中で暮らせるように^^」

「ここばっかりだとママも飽きてくるだろう?」

「今年の夏はそんなところで過ごそう^^」

紗也乃
「やっぱりユーちゃん。見抜いてるんだ」

「そして、そんな風に優しい」

「でも逆効果よ^^」

オレ
「・・・」

紗也乃
「ここはニューヨークよ」

「私はmar's mamaよ」

「ゲストが来てもあなたは私に気を使わないで」

「私に優しいことを言ってくれる前に・・・抱いて」

オレ
「ははは・・・」

紗也乃はオレに抱き付いてキスをしてきた。紗也乃の舌がオレの舌に絡みついた。オレの舌を強く、緩く吸った。

紗也乃
「今日は一緒にお風呂入ろうね?」

オレ
「ああ」

オレはもう抵抗できなかった。オレのモノは痛いぐらい怒張していたし、このところのストイックな生活でこういう精神的な攻撃にすっかり弱くなっていた。

そしてこの日、初めて紗也乃を抱いた。

5月の中旬過ぎに間島が旅行社のツアーでNYへやってきた。日本でのゴールデン・ウィークが終わりようやく時間を作ることが出来たようだった。もちろん裕美は置いてきていた。

摩天楼の夜景が見えるレストランに間島を誘った。

オレ
「ミナミの夜景とはスケールが違うだろう^^」

間島
「ほんとすっごい^^摩天楼って言葉はよく使うけど見るのは初めてよ」

オレ
「落ち込んでいる時にこの上の展望台に来てこの景色を見ると元気が出てくる」

間島
「ムーさんでも落ち込む時あるんだ?」

オレ
「そのムーさんって言うのなんとかならないか?(笑)」

間島
「えっ?おかしい?」

オレ
「まーな(笑)」

間島
「ムーさんだって「まじまー」って未だにそう呼ぶじゃない?(笑)」

オレ
「あははは^^オレはいいんだよ」

間島
「我侭なんだから(笑)」

ワゴンにシャンパンクーラーを載せてウエイターが運んできた。勢いよく大きな音と共に栓を飛ばした。オレと間島のグラスにそれを注いだ。

オレたちは軽くグラスを合わせてカンパイをした。

間島
「ニューヨーク大学の演劇学科卒業して・・・役者になるの?」

オレ
「いや(笑)シャレで一度ぐらいはやってもいいと思ってるけど、基本的にはデレクションの方だな」

「それより何より『演劇』は実社会でのコミュニケーションに役に立つ!と言うのがオレの持論なんだ」

間島
「へーそうなんだ^^」

オレ
「オレは日本に居れば体もでかくて声もでかい。黙ってても通用したが、アメリカじゃーダメだ。しっかりと個人のパフォーマンスを示さなければ誰も見向きもしない」」

「同級生は18歳で、体はオレよりでかいのがゴロゴロいるし、声量もあり身体能力も高い」

「オレは1から発声練習から始めて、学校のフィットネス・ジムへ通って、今必死で股割りやってる(笑)」

「今度同級生とブレイク・ダンスのチームをつくるんだ^^」

間島
「この間まで自分より若い人が嫌いだったのに?(笑)」

オレ
「ははは^^オレ自身が年食ったせいだろうな!若いヤツには負けたくない」

間島
「(笑)」

料理が運ばれてきた。ここのメニューは熟知している。オレは適当にオードブルとメインディッシュを間島の分までオーダーしていた。

オレ
「今月でようやく1年生が終わった。専門課程はオレがクラスでトップだった(笑)」

間島
「へーそうなんだ(笑)芸大時代は4年間とも1年生だったのにね」

オレ
「まだ正式じゃないんだけど・・・たぶん「飛び級」できる(笑)」

間島
「えっ!どういう事?」

オレ
「9月からは3年生になるんだよ^^」

間島
「うっそーすごいじゃない!^^」

オレ
「あははは^^体ひとつで通用させて見せる」

あと数日で飛び級の決定が出るはずだった。思えば、オレの18から22歳までは、それこそミナミで今の仕事の基礎を作っていた時代だった。あの時にはボーっと学生をやる気持ちになれなかった。常に何かを追いかけて、焦っていて全部自分ひとりでやろうとしていた。

今だからこそしっかりとやる気になって真面目に授業に出ていられる。そしてそれはきっとアメリカだからだ。

間島はオレの話を聞きたがった。

オレ
「去年の夏に芸大mar'sClubの学生を6人招待した」

間島
「うん^^」

オレ
「なかなか見所のあるヤツらだった(笑)これからは世界で通用する表現者を目指さないとダメだ」

間島
「そう^^」

オレ
「まず手始めは「陶芸」だ」

間島
「世界で通用する日本の芸術は「陶芸」なんでしょ?」

オレ
「そーだ(笑)特にアメリカは新しい国で伝統文化がない!それだけに新しい陶芸を受け入れる余地が大きい。こっちで評判になれば自然とヨーロッパでも通用するだろう」

間島
「あなたがやるの?」

オレ
「オレはシャレでやってるだけだ。明日紹介するけど、「遠山」ってのが居るんだ。そいつをこっちでデビューさせる^^」

摩天楼の夜景を見ながら普段ならもっとロマンティックな話が合う場所なのに、オレは間島に乗せられて色んな事を話した。

間島
「mar'sJournal毎月届くのよ^^あなたのコラム毎回楽しみにしてるの」

オレ
「ははは^^駄文なんだがな」

間島
「学生にも評判よ!面白いし、ニューヨーク大学の授業の事なんてすごくいい情報だって芸大の教授にも読まれてるらしいわ」

オレ
「芸大ももっとこっちの学校と連携をとればいいのにな!(笑)」

「まっでも学校に肩入れするのは後回しで、まずはmar'sClubの学生を支援する」

「今年の夏は去年の倍の12人ぐらい招待しようと思ってる」

間島
「費用は全部mar'sCompanyが持つんでしょ?大丈夫なの?」

オレ
「ああ。大丈夫だ」

オレは松村財団の話は誰にもしていなかった。松村興産の後継者となり同時にそれまで松村基金として留学生への援助を行う予定だったが、昨年すでに財団法人の申請をしていた。それが認可されれば大々的に実施しようと思っていた。

そしてその夜はツアーの宿泊先であるホテルで間島と過ごした。

翌日は一般的なニューヨーク観光をしてmar'sBLGを見せた。そして「ヤマシロ」で食事をした。

ブロード・ウエイのミュージカルにブルーノートでのジャズライブ、そして夜はオレとずっと過ごした。

こんなに長い時間一緒に過ごしたのはオレも間島も始めての経験だった。そして間島はふたりの時は、ムーさんと呼ばなくなった。

帰国前夜・・・ホテルのベッド

間島
「夏には帰ってくるの?」

オレ
「うん。そのつもりだ」

間島
「絶対。来てっ!」

間島はオレの体に被さるように上になった。そしてオレを顔を凝視していた。

オレ
「ん?どした?」

間島
「やっとあなたの女になれた気がする」

オレ
「へっ?」

間島
「あなたが帰国した時は必ず私のところに来て」

オレ
「ああ。もちろんだ^^約束する」

間島
「でも・・・あー帰りたくない」

オレ
「ははは・・・」

間島そう言ってオレのモノを自分の股間にあてがい咥えた。これまでそれは要求した時にしかしなかったが・・・間島は自分で動いて快楽を求めた。そしてすぐに間島は悩ましい声を上げていった。

オレは間島の体を脇に降ろしてうつ伏せにした。腰を持った。間島は四つ這いの姿勢をとった。オレは後ろから挿入した。一気に責め立ててた。そして2度いかせた後、オレは間島の穴の中へ放出した。

■6月・・・mar'sOffice

田川
「昨日ようやく目標の売り上げをクリアしました^^」

オレ
「そっか^^それは良かったな!」

田川
「日本人の団体が来たのでフロックみたいまものですけど、この調子で続いてくれればいいんですけどね」

オレ
「うん」

今月初めにオープンした。「マンガク2」は田川が責任者としてホールに出て、カウンターの中には片平とボブが入っていた。ボブはアイルランド系のニューヨーカーで「マンガク1」のオープン当初から居た。勘のいいヤツで包丁捌きもよく、とりあえずスシ職人として通用している。

インターフォンが鳴った。三浦が受話器をとり対応した。

三浦
「大阪芸大の「みなもと」さんって方がムーさんに面会したいと」

オレ
「みなもと?さー誰だろう?まーいいや通して」

三浦
「はい」

三浦は男を招き入れて、大きなテーブルの前に案内した。オレと田川は自分のデスクからそっちに移動した。男は立ち上がってオレに礼をした。


「ご無沙汰しております。源です」

オレ
「んーーー悪い(笑)誰だっけ?」


「はい^^ムーさんが卒業の時に1年だったので、あまり接触はありませんでしたが、mar'sに居てベースをやってました」

オレ
「そう(笑)オレは卒業してなくて4年で中退したんだ」


「あっはい。すみません」

オレ
「まーいい。どうぞ座って」


「はい。ありがとうございます」

三浦が新しい珈琲を男の前に置いた。オレと田川には冷たいウーロン茶を持って来てくれた。

オレ
「それで?」


「mar'sJournalを読んで、どうしてもムーさんのところに弟子入りしたくてやってきました」

オレ
「弟子入り?なんだそりゃー?」


「なんでもやりますからお願いしますっ!」

そいつはテーブルに顔がつくほど頭を下げた。オレはそれを見ていた。なかなか顔を上げない。暫くそうして放っておいた。オレは田川の方をみた。田川は笑っていた。

田川
「みなもと君、顔を上げて」


「はい・・・」

オレ
「うちのマネージャーの田川だ」

そいつは立ち上がって、田川の方に向き直りまた頭を下げて挨拶した。田川は男に座るように言った。

田川
「mar'sJournalを見たのならわかってると思うけど、ムーさんは学生だ。弟子なんかとれる立場じゃない」


「はい。承知してます」

田川
「じゃー何をする気なんだ?」


「なんでもやりますから、ここに置いて下さいっ!」

田川
「プロフィール持ってたら見せてくれ」


「えーーーと履歴書みたいなものなら・・・」

男はそう言って大きなバックパックの中からファイルを取り出した。そしてそれを田川に渡した。田川はそれを一瞥してオレに渡した。オレはそれを開いて見た。

田川は、いつコッチにきたのか?英語は話せるか?ビザの種類は?などなど鮨屋のスタッフ面接の時に聞く一通りの事を質問していた。オレは男の履歴と身上書みたいなものを見ていた。

田川は一通りの質問を終え黙っていた。暫く沈黙が続いていた。

オレ
「そこにギターがあるから1曲歌え(笑)」


「えっ?あのーオレ音痴で歌は・・・」

オレ
「mar'sに居たんだろう?」


「はい」

男は立ち上がってアンプの隅に立てかけてあるアコギを持って下手な歌を歌い始めた。オレは笑いながら田川の顔をみた。

田川
「オッケーよくわかった。もういい。ごくろうさん」

男はギターを置いて、元の席に戻って来た。

田川
「3日間。ここで過ごせばいい。その後の事はそれからムーさんと相談して決める。それでいいか?」


「えっあっ!はい」

田川
「じゃー部屋に案内する」

田川は立ち上がった。男も立ちあがりオレに「失礼しますっ!」と言って田川の後に続いてOfficeを出た。

オレはウーロン茶を口にした。プロフィール・ファイルを三浦に見せた。

三浦
「今月だけで3人目ですね・・・どうします?」

オレ
「田川が決めるだろう」

三浦
「それにしてもムーさんの弟子!って言うのは初めてですね(笑)」

オレ
「あははは^^今月号のmar'sJournalに書いてもらう事にした」

三浦
「何をですか?」

オレ
「いきなりやってきても居候は出来ない!と(笑)」

三浦
「それでなくなればいいですけどね(笑)

店の方にもよく「雇って欲しい」と言ってやってくる日本人の若いやつらが来る。大抵は観光ピザで入国して、表に出ない皿洗いなどを希望するのだが、うちは一切受け入れていなかった。

バイトが必要な時は、学校に募集案内を持っていく。学生ビザであっても学校が許可した留学生であれば週に20時間程度の労働は認められていた。

そういうルールをしっかりと守らないと、次に日本から呼ぶ連中の職業ビザが下り難くなる。従って不法就労者はうちの店には一切いない。

日本領事館の担当者も不法就労問題には頭を痛めているようだったが、実際にはそいういう連中の面倒も見ているようだった。

三浦
「里中チーフが帰られた後、新たにふたりいらっしゃる予定ですよね」

オレ
「そーらしいな」

三浦
「厨房が4人・・・あと一人入れて、次の店出しましょうよ^^」

オレ
「それは「ヤマシロ2」をやれ!って事か?」

三浦
「はい」

オレ
「責任者は誰が?」

三浦
「私がやります。ヤマシロは田川さんに見ていただきます」

オレ
「ずいぶんやる気満々なんだな?(笑)」

三浦
「仕事で実績つくらないとムーさんは認めてくれないんでしょう?」

オレ
「じゃー田川と相談してみて」

三浦
「了解です^^じゃーこのまま田川さんと店にでます」

オレ
「おう^^よろしく頼む!」

田川が降りて来て三浦に引っ張られるようにOfficeを出た。菊水亭の3人のスタッフのうちチーフの里中さんが帰国することになった。セカンドの松浦さんが後を継ぐ形でチーフに昇進する。里中さんと入れ替わる形で人員は補充されるのだが、もうひとりセカンド級が来れば「ヤマシロ2」を出店できる!と三浦は考えているようだった。菊水亭、山城さんに相談してみようと思った。

オレ自身はあまり関心がなかったが・・・現状ではどの店も相当の利益を上げているが、このビルの経費まで賄えているわけではない。mar'sCompanyが日本のムトー商会から支援を受けなくてもやっていけるようにするには、最低でも5店舗以上必要だった。

入り口のドアが開いて紗也乃ママと居候の市橋が買い物から戻って来た。

紗也乃
「ただいまっ!^^」

市橋
「ただいま戻りました」

オレ
「おかえりー^^」

二人とも両手いっぱいの荷物をキッチンの方へ運んだ。そして大きなテーブルの方へやってきた。

オレ
「後で紹介するけど、またひとり今日からの居候が増えたんだけど」

紗也乃
「そう^^大丈夫よ今日はメンチ・カツで明日はハンバーグのつもりでたくさん買ってあるから^^」

オレ
「市橋、先に5階へ上がってそいつの様子を見てきてくれ」

市橋
「はい^^」

紗也乃
「今度もやっぱり芸大OBの人?」

オレ
「そうみたい(笑)」

紗也乃
「そう言えば、もうすぐヒロミちゃんも来るんでしょう?」

オレ
「うん。一応ジュリアードの面接とピアノのテストの為にやって来るんだけど・・・」

紗也乃
「きっとヒロミちゃんなら合格するわ^^」

オレ
「それはそれでまたやっかいな事になるんだけどな(笑)」

紗也乃
「あの子は礼儀正しいし、しっかりした子だから大丈夫でしょう?それにこっちにも1年近く居たし心配ないわ」

オレ
「まーそーなんだけど何しろ若いから(笑)」

紗也乃
「そう?学校の女の子たちはヒロミちゃんより若いけど、うまくいってるじゃない?」

オレ
「彼女らは確かに未だ未成年で若いけど、やっぱり独立心が高くてしっかりしてるから(笑)」

紗也乃
「ジェシーちゃんって言ったかしら?キレイな子じゃない^^もうデートしたの?」

オレ
「学校の友達とはデートしない(笑)それにもう休みに入ってるから実家に帰ってるしね」

紗也乃
「そうなんだ。もったいない気もするけど?(笑)」

オレ
「ははは・・・」

いつの頃からか授業に出るとジェシーはよく声をかけてくるようになった。仲のいい数人とカフェでお茶を飲み、ボランティアも一緒にやったりするようになった。中南米系とユダヤ系のハーフで、目がくりくりとして整った顔立ちの子だった。ここにも何度か来ていた。

確かにキスはいっぱいしたくなるタイプだったが、彼女はクラスでも1番人気だった。

市橋が降りて来て、紗也乃と夕食の準備を始めた。オレは1階に降りて遠山と話をしながら、ロクロを回した。ロクロを足で回しながら茶碗を作る。出来るだけ薄く形を整える。それだけに精神を集中する。30分。納得がいくモノは簡単に出来ない。遠山に見せる前にオレはそれを破砕機に入れた。そしてバイクに乗ってフィットネス・ジムへ行った。

夕食の時に今日やってきた「みなもと」を紹介した。

同じmar'sClubに居た連中なので、先輩後輩の関係は存在する。懐かしさと共にそういう話になりがちだったが・・・市橋から聞いているのか?夕食の時はその話をしなかった。それよりも街のイベントの話など共通の話題になる話が多かった。そして紗也乃ママは若い彼らと食事をしながら話すのを楽しんでいた。

彼らは5階の3LDKの部屋にふたりづつ入っている。だけど、もしかしたら夏のmar'sの研修ツアーの前には居なくなるかも知れなかった。

▼6月17日・・・

ヒロミ
「こんにちわー^^」

オレ
「うん^^よく来た(笑)ひとりで大丈夫だったか?」

ヒロミ
「空港からここまでぐらいへっちゃらです。イエローキャブの運転手にちょっと遠回りさせられましたけど(笑)」

紗也乃
「いらっしゃい^^ヒロミちゃん。また会えて嬉しいわ」

ヒロミ
「紗也乃ママ^^私も会いたかったです」

コロンビア大学のALIを修了して帰国してから2ヶ月が経っていた。3日後のジュリアードのテストを控えヒロミはとうとうやってきた。

オレ
「さっそくだけど紹介するよ」

「ブライアンとメアリーだ!どちらもジュリアードのピアノ科の学生だ」

ヒロミ
「はじめましてヒロミです!どうぞよろしく^^」

ブライアン
「やーよろしく^^」

メアリー
「是非ジュリアードへ来てね^^」

彼らはヒロミに自分達が入学した時のテストや面接のフインキなどを教えていくつかのアドバイスをした。そしてジュリアードがどんな環境でどんなレッスンが行われているか面白おかしく紹介していた。

そして1時間ほど居て彼らは帰っていった。

ヒロミ
「ムトーさん。ありがとうございます」

オレ
「まー少しフインキが分れば緊張もとれるだろうと思ってね^^偶然にも学校の仲間に知り合いが居て紹介してもらった」

紗也乃
「今の人たちもピアニストを目指しているの?」

オレ
「うん。あれでピアノを弾くとそれこそすごい連中なんだ(笑)」

ヒロミ
「なんかワクワクしてきた^^」

オレ
「ははは^^いい傾向だ(笑)じゃー荷物を部屋に入れよう」

ヒロミ
「はい」

オレは5階の1LDKの部屋に案内した。そこはショーコが使っていた部屋だった。ショーコが居なくなってからはまだ誰も使っていなかった。

オレ
「それから一息入れたら、タイムズ・スクウェアの楽器店へ行く」

ヒロミ
「はい」

オレ
「今日から3日間、ピアノ練習が出来るように部屋を借りているから」

ヒロミ
「うわーそーなんですか!ありがとうございます」

オレ
「まー落ち着け!って言っても無理だろし、それならピアノ弾いてる方がいいだろうと思って」

ヒロミ
「はいっ!」

オレたちはバスに乗ってタイムズ・スクウェアの大きな楽器店へ行った。オレ自身ここで何本かのギターを買ったし、隣接するレコード店にもよく来ていた。そしてピアノレッスン場へ案内してもらった。

スタンレイの大きなグランド・ピアノ。ヒロミは躊躇する事なくそれを開き、楽譜を取り出して引き始めた。

ショパン。オレはそれを聞いていた。弾き終ってオレは大きな拍手をして近寄った。

オレ
「イケる!ヒロミ。お前なら間違いなく合格だ。自信を持っていいぞ!」

ヒロミ
「ムトーさん」

ヒロミは泣き出しそうな顔をしていた。オレは笑ってそこを出た。終わったら電話してくるように言った。

そしてヒロミは20日の日にジュリアード音楽院のテストを受けて、翌日帰国した。合否は直接日本へ知らされる事になっていた。合格すれば、そのまま日本の大学を中退してこっちへやって来る。不合格なら、そのまま現在通っている大学でピアノを続ける。という予定だった。

7月に入り、サーフォークで探していた手頃な物件がようやく見つかった。家自体は何でも良かったのだが、周辺環境に拘ったせいでなかなか思うようなところがなかったのだが、湖の前で少し勾配があり海にも近い別荘向きの環境があった。オレは迷わずそこに決めた。

家よりも土地の広さを確保して、そこに「登り窯」をつくる計画だった。そしてすぐにその工事を始めた。遠山と居候たちは毎日のようにそこへ行き、自分達でできるところは自分達でやっているようだった。

そして日本からも来客があった。

7月10日・・・mar'sOffice

学校のフィットネス・ジムで汗をかいて戻ってくると横山達が居た。

オレ
「よう^^よく来たな!」

浜田
「おう^^ようやく来る事ができたよ(笑)」

刈谷
「ご無沙汰してまーす^^」

長井
「オレも暫くやっかいになります(笑)」

横山
「やっぱりNYはいいわ^^」

オレは大きなテーブルの前に座った。三浦が冷たいウーロン茶を持ってきてくれた。

紗也乃ママ
「さっき皆さんをあらためて紹介していただいたわ^^」

オレ
「そーいや皆、芸大だな?(笑)」

横山
「浜田さん先に言っておいた方がいいですよ」

オレ
「ん?なんかあるのか?」

浜田
「ムトー実は・・・オレたち結婚したんだ」

オレ
「おお^^そっか!やっとかー(笑)いやーそりゃー良かった♪」

刈谷
「ありがとうございます^^」

浜田
「一応籍を入れたんだ。で、今回は新婚旅行代わりと言うことで^^」

オレ
「うんうん^^そっか!結婚式は?」

浜田
「12月にお前帰国するんだろう?その時にしようかと思って」

オレ
「おいまさかオレの予定に合わせてるのか?」

刈谷
「いえ、ちょうどその頃の方が都合がいい事もあって」

オレ
「そっかじゃー12月の結婚式は盛大にやろうぜ!!!」

浜田と刈谷は5泊7日の旅行社のパック・ツアーで来ていた。横山と長井はこっちで手配した割安の航空チケットでやってきていた。そしてその日は全員で「ヤマシロ」でメシを食い。恒例の摩天楼の夜景を見に行った。

浜田と刈谷はホテルに戻り、横山と長居はmar'sBLGにオレたちと共に戻った。

▼22時・・・mar'sOffice

オレ
「お前らはいつまでこっちに居る?」

横山
「相変わらず不動産部門が忙しくてオレは1週間ぐらいが限界です」

長井
「オレは一応8月の末ぐらいまで居させてください^^」

横山
「長井、お前はいいなーオレももう少し長く居たいよ」

長井
「何言ってんだ。オレは1年も我慢してたんだぞー(笑)」

紗也乃
「まだまだ居るんでしょう?こっちに来たがってる人」

長井
「ええ。同じ学年で今はPlayer'sの所属ですけど、佐伯、岡田、鹿島・・・その下にまだ5人ほど」

オレ
「ははは^^みんな元気でやってるか?」

長井
「ええ。mar'sJournal読んでみんなイライラしてます(笑)」

オレ
「何で?」

長井
「だって、オレたちはmar'sClubの一期生とその下は二期生じゃないですか!直接ムーさんと関わりがあるのに、まだmar'sNYを知らないなんておかしいっ!って飲むとその話題ですよ(笑)」

横山
「まーそれはそーだな(笑)ムーさん。9月から少しづつ送り込んでもいいですか?」

オレ
「あー適当に決めてくれ(笑)」

オレたちは久しぶりに飲んだ。仕事帰りの田川、岩崎、そして三浦も混じって宴会になった。田川や岩崎はミナミの近況を横山から聞いて安心し、横山は「マンガク2」が順調な事や「ヤマシロ2」の出店計画がある事などを聞いて喜んでいた。

浜田と刈谷は新婚旅行という事もあり、オレはあまり構わない方がいいと思っていたのだが・・・2日目にはもうmar'sOfficeへ来て紗也乃や居候たちと仲良く遊んでいた。

そして夕食を共にして、その後はオレと浜田、長井で久しぶりに歌い飲みまた騒いだ。結局浜田と刈谷は泊まって行った。

翌日、授業から帰ってくるとまだ浜田と刈谷は居た。

16時・・・mar'sOffice

オレ
「ん?もしかして二日酔いでグロッキーだったのか?(笑)」

浜田
「いや、ちょっとムトーに相談があって・・・」

オレ
「ん?何処か案内しようか?」

浜田
「いや、そーじゃなくて」

刈谷
「すみませんムーさん。私から説明させてください」

オレ
「うん。何?」

刈谷
「私を暫くここへ置いてください。お願いします」

オレ
「あー?どういう事だ?お前ら新婚旅行を兼ねてNYに来たんだろう?」

浜田
「こいつがどーしても残りたいと言うから」

刈谷
「それはあなたがジャンケンに負けたからでしょ!」

オレ
「ちょっと待て、ちゃんとわかるように説明してくれ」

紗也乃はすでに事情を知っているのかクスクスと笑いながらオレに冷たいお茶を出してくれた。

刈谷
「ムーさん。本橋と会う度に本橋はmar'sNYの事ばかり話すんです。私は最初あまり興味はなかったんですけど・・・こっちへ来て始めてわかりました。本橋の言ってた事が」

「この街はとってもエキサイティングで色んな表情を持っていて、芸術や音楽が溢れていてとても面白い街です」

「それだけじゃなくてNYmar'sここはほんと楽しそうで、ここでなら私もやっていけると思って、8月の末ぐらいまで置いてもらえませんか?」

オレ
「ははは・・・オレは構わないけどショーヘーお前はどうなんだ?」

浜田
「うん。こいつが8月の末で日本へ帰った後、入れ替わりにオレが来る。12月まで今度はオレが居候しようと思って」

オレ
「なんだー?お前ら結婚したんだろう?なんでバラバラに生活するんだよ」

刈谷
「それぞれが自由にNY暮らしを体験する為です。それに私がじゃんけんで勝って先に・・・でもこの人の方が長いのでずるいなーとは思うんですけど」

浜田
「ヒロ。すまんがそれでよろしく頼む(笑)」

オレ
「じゃー予定としてはショーヘーだけが先に帰って、刈谷と長井が8月いっぱいまで居るんだな?9月になると入れ替わりで今度はショーヘーがやってきて12月まで居る。そして帰国して・・・結婚式か?」

「という事らしいので、紗也乃ママ!よろしくお願いします(笑)」

浜田&刈谷
「よろしくお願いします^^」

紗也乃ママ
「はい^^お任せ下さい(笑)」

そしてその日、ヒロミから電話があった。ジュリアード音楽学院に合格した!との事だった。ヒロミオヤジまでが電話口に出て礼を言っていた。そして8月にまた家族でこっちに来るようだ。

こうしてまた騒がしくて、熱いニューヨークの夏が始まろうとしていた。


Nest Story>>>>>
<<<<<Back Story


━…━…━…━…━…━…━
 My History Index
━…━…━…━…━…━…━
| My History | 12:19 | comments(0) | trackbacks(0) | ↑PAGE TOP









http://kaizin.jugem.cc/trackback/1406
CONTROL
PROFILE
━…━…━…━…━
My History Index
━…━…━…━…━

メールフォーム

クリックで救える命がある。

RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
SELECTED ENTRIES
RECENT COMMENTS
  • 迷子のフクロウ保護
    kina
  • ポール ライブ イン オオサカ
    pio
  • 宇野くん元気そうだ!
    るーく
  • 宇野くん元気そうだ!
    みく
  • キーボード
    るーく
  • キーボード
    みく
  • キーボード
    みく
  • キーボード
    るーく
  • キーボード
    みく
  • 週刊朝日
    るーく
RECENT TRACKBACK
CATEGORIES
ARCHIVES

このページの先頭へ