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HERO


HERO:甲斐バンド1978年 
セイコーのCMソングでブレイクしてシングル180万枚。しかしTVにはほとんど出ない。もっともこの当時はTVも勝手な要求しかしなかったから、という理由もあるんでしょうけど・・・でまくった世良にはその後の批判が集中したなーw

You Tubeに当時の映像も結構上がってる!中には局からの流出素材だと思われるタイムコード入りのやつまで・・・本編用の素材だったかも知れない。

1985年12月-------------

スカイ・マンション1110号室

朝1番の新幹線に乗って新大阪に着きまっすぐここにきた。自室に入りスーツを脱いでジーンズとシャツ、それに革ジャンに着替えた。リビングに行き冷蔵庫からバドワイザーの缶を取り出した。

南側の窓に近づいて電動ブラインドを操作して開いた。窓からいっぱいに初冬の緩い陽射しが射し込んだ。

オレはバドワイザーを口にしてミナミの街を見ていた。ニューヨークはもう大きなクリスマスツリーは出現しただろうか?セントラルパークの池は凍結してるだろうか?ジェシーは元気でやってるのだろうか?ケリーやジムは・・・

NY大学を卒業して半年しか経っていない。それなのにもう遠い記憶になってしまっているのはどうしてだ?

オレは部屋を出て待ち合わせの場所に向かった。


▼14時・・・大丸別館1Fカフェ


広い店内を見渡すと理沙がすでに来ていた。軽く手を振っていた。オレも手を振りそこへ行った。そして理沙の正面に座った。

理沙
「ごめんねー忙しいのに」

オレ
「いや、東京も新規出店でバタバタしてるけどオレは特にどうという事はない」

理沙
「そう^^」

オレ
「それでもあっと言う間に12月だな!どこもかしこもクリスマス・モード全開だ」

オレは珈琲をオーダーした。窓から御堂筋が見える。すでに銀杏の葉は落ちていた。ぎんなんはもう終わったのかな?そんな光景をぼんやり眺めていた。

珈琲が運ばれてきた。理沙はそれにフレッシュ・クリームだけを入れてスプーンでステアしオレの前に出した。

理沙
「クリスマスは・・・もうここには居ないの」

オレ
「・・・」

理沙
「ユーイチ。実は・・・」

オレ
「あっ!オレ忘れ物した」

オレは立ち上がってその場を離れようとした。通り過ぎようとしたオレの手を理沙が掴んだ。

理沙
「ユーイチ。最後まで聞いて。大事な事なんだから」

オレ
「イヤだ。離せよ!」

理沙
「ユーイチ。お願いだから聞いて!」

オレ
「居なくなるんだったら・・・勝手に消えればいいだろう」

そう言ってオレは理沙の手を振りほどいてそこを出た。1階のフロアーを歩いた。オレは途中で立ち止まり振り返った。理沙は立ってこっちを見ている。

オレは上着の内ポケットからサングラスを取り出してかけた。そして理沙のところへ戻って元の席に座った。

理沙
「画家の町村さんが絵を教えてくれるって・・・」

「それで暫く葉山の町村さんの家に入ってくれないかって言われてて」

「いいかな?」

オレ
「あのジジーに蝶を見せたんだな」

理沙
「・・・」

オレ
「ジジーの後妻になる事にしたんだな?」

理沙
「・・・」

オレ
「決めたのならいいもくそもないだろう」

理沙
「ユーイチの許可が欲しいの」

オレ
「オレの許可だと?」

理沙
「いつか必ずまた・・・」

オレ
「やっぱり愛想が尽きたんだ」

理沙
「そうじゃないのはわかってるくせに」

オレは珈琲を口にした。味が無い。熱さも冷たさも感じない。オレは必死に我慢した。我慢したけど・・・

オレ
「・・・」

理沙
「NYと同じよ。ちょっと旅に出てみようと思って」

オレ
「・・・」

理沙
「ユーイチが教えてくれたのよ」

「最初から諦めずに新しい事を創めようって」

オレ
「いつなんだ」

理沙
「来週には行く予定なの」

オレ
「店は?」

理沙
「今年いっぱいで閉店する」

オレ
「会いに・・・」

理沙
「もちろんよ!あなたの事は全部言ってるわ!愛してる人だって」

オレ
「理沙・・・手をテーブルの上に」

理沙は手をテーブルの上に置いた。オレはその手を両手で包み込むように握った。

理沙
「熱いっ」

オレ
「理沙・・・愛してるよ」

理沙
「私もよ」

オレ
「・・・」

理沙
「ユーイチ。サングラスとって」

オレ
「イヤだ・・・」

理沙
「ユーイチ。愛してるわ!少し離れるだけ・・・」

「いつもことよ」

「いいわね」

オレ
「くっ」

オレはサングラスの下を手で拭った。理沙も泣いている。

理沙
「最後まで聞いてくれてありがとう」

オレ
「じゃー行く」

オレはサングラスをとってその場に置き理沙の顔を見た。奥歯を噛み締めながら我慢していた。理沙の目から大粒の涙がこぼれた。オレは立ち上がった。そして今度は振り向かずにそこを出た。

オレは心斎橋を歩いた。

結局何処にも行けずに1110号室に戻った。

リビングに入ると本橋が居た。

本橋
「あっムーさん^^」

オレ
「おう」

オレはそのままシャワールームに行き顔を洗った。冷たい水で何度も顔を洗った。少しシャキっとした。そしてリビングに戻った。

大きなテーブルの前に座った。

オレ
「新しい店の広告戦略か?」

本橋
「はい。さっき横山君と打合せをしておおまかなところを決めたばかりです」

オレ
「そう。ステーキハウスはしっかり本橋の仕事になってるな」

本橋
「おかげさまで^^ありがとうございます」

本橋は珈琲を入れてオレの前に置いてくれた。そしてフレッシュミルクを入れた。

本橋
「どうかしました?」

オレ
「ん?ちょっと風邪を引いたみたいでぼぉーとしてた(笑)」

本橋はオレのおでこに無造作に手をあてた。

本橋
「あっ熱いっ」

「大変。ムーさん。すごい熱だわ」

「すぐに下の馬渕内科で注射でも打ってもらいましょう」

オレ
「いや、いい。大丈夫だ。ちょっとじっとしてれば治る」

本橋
「ダメですってこんなに熱があるのに(-o- )」

オレ
「この熱は・・・違うんだ」

オレはコーヒーカップを持ってそれに口を付けた。本橋と目を合わさなかった。

オレ
「じゃーオレ帰るわ」

本橋
「ムーさん。ちょっと待って下さい!どーしたんですか一体」

オレ
「・・・」

オレは革ジャンのポケットからキャメル・ライトを出して火をつけた。胸がいっぱいで声を出しづらかった。オレは話題を変えた。

オレ
「香・・・どうしてる」

本橋
「私もその事でお話をしようと思ってたところです」

オレ
「・・・」

本橋
「できたらすぐにでも会ってもらいたいと」

オレ
「じゃー行こう」

本橋
「えっあーはい!」

オレは自室にお戻り、新しいサングラスを出してかけた。そして本橋と一緒に地下駐車場へ降りてベンツに乗り神戸に向けて走った。車内から本橋が香の家に電話をかけた。

山手幹線、王子動物園に行く手前のロイヤルホストにオレたちは入った。

すでに香は来ていた。オレは香の正面に座った。オレの隣に本橋が座った。

オレ
「ちょっと痩せたか?」


「うん。ダイエットのし過ぎかも^^」

オレ
「そう」


「ユーちゃん。。。どうしたのよ!!!」

オレ
「ん?」


「何がそんなに?」

「大丈夫よ」

「ユーちゃん。大丈夫だから」

「落ち着いて、私が居るわ」

「だから」

「私が居る」

「安心して」

オレはサングラスをかけたまま窓の外を見ていた。隠せない心は全部香に見透かされて、大きな哀しみの正体を知られ、オレは香に慰められていた。オレの手は香にしっかりと握られていた。

本橋
「ムーさん。。。やっぱりおかしいどうしたんですか!」


「百合ちゃん。連れて来てありがとう」

「私より、ユーちゃんを今ひとりにしたら何するかわからないわ」

「暫く私が居るから・・・」

本橋
「ムーさんに一体何があったの?」


「ものすごく、哀しい事があった・・・」

オレ
「ん?なんだお前ら大げさなんだよ(笑)」

オレは香の手を振り払い目の前の珈琲カップを手にして口をつけた。まだフレッシュも入っていなかった。香はもう一方のオレの手を包んだ。本橋は珈琲にフレッシュを入れた。

本橋
「じゃー香、後はお願いね」


「うん。連絡入れるから」

本橋
「じゃームーさん。私先に出ますから」

オレ
「ああ」

オレは生返事をしながら外の景色を見ていた。そして香に手をとられて慰められていた。本橋は席を立って店を出た。


「ユーちゃん。何処か行こう」

オレ
「・・・」


「私にも今ユーちゃんがすごく必要なの」

オレ
「ああ」

オレたちはクルマに乗って表六甲を抜けて有馬へ走った。そして有馬のコテージ風の旅館に入った。

香は黙ってオレの上着を脱がせてくれた。オレはベッドに腰をかけてじっとしていた。香はオレの前にきてオレのネクタイをはずしてシャツを脱がせた。オレは立ち上がった。香はオレのスラックスを脱がせた。そして靴下までも・・・オレは下着だけになっていた。

香は少し離れて・・・オレの前で服を脱ぎ始めた。オレはそれを見ていた。オレの前で素っ裸になりオレに近づいた。オレは両手を出して香を受け止めた。

オレは香を抱きしめてベッドの中に入れた。香の背中を撫でながら抱き合い脚を絡ませた。


「あーユーちゃん。愛してる」

オレ
「香・・・」

オレは香の乳に顔を埋めた。香の手はオレの頭を持ってオレを撫でていた。オレは香の股間を弄った。草むらの下は熱く潤いオレの指は香のオンナの穴に入っていた。


「あーーー」

オレは自分の下着を取り去って、そのまま香の体に乗った。香の穴に突きたてるように責めた。


「うぁーーー」

オレのモノは半分ぐらいしか入っていなかった。そしてそのまま抱き会いながらお互いが少し腰を使いながら動いた。

オレ
「あー香ぃー」

「うっあーあーーあーーー」

オレは香の中で放出してしまった。ぜんぜん我慢できないまま香の中で・・・


「あーユーちゃん。」

香はそのままの姿勢でオレのモノを咥えたまま小さく腰を使っていた。オレは香の体から降りながらそのまま横抱きにして離れないように脚をからませていた。

香はオレにキスをして顔を擦りつけた。


「ユーちゃんが私の子供みたいに思えるわ」

「私もうダメでどうしようもなかったのに・・・今すごく安心してる」

「ユーちゃん。私の言う事聞いてね」

オレ
「ああ」


「本当にすごい熱よ」

「風邪?インフルエンザ?」

「ユーちゃん眠って」

オレは眠かった。そして眠った。蒼い蝶が乱舞している夢を見た。あの蝶はオレの蝶だったのに飛んで逃げていってしまった。そして他の人間がそれを捕まえて持って行ってしまった。

オレはそれを返して欲しかったが・・・オレの蝶だと言えなかった。何故自分のだと言えなかったのか?それがわからずに一人で泣いていた。

夢の中でいっぱい泣いていた。

何度か目が醒めた。喉が渇き水を何回も飲みその間にまた眠った。

話し声で目が醒めた。

オレ
「ん?本橋?どした^^」

本橋
「あっムーさん。」

香が近づいてきた。オレのおでこに手をあてた。


「熱はないようね^^」

本橋
「あの時やっぱり内科へ連れていくべきだったなー」

オレ
「ははは^^今何時だ?」


「17時よ^^丸1日経ってるけど」

オレは丸1日そこで香と寝ていたようだ。香はオレの看病をしてずっと傍に居たらしい。そして本橋は心配してやってきた。

オレはベッドから降りた。浴衣の前がはだけている。本橋がすぐに顔を横に向けた。

オレ
「ん?あーオレの元気なモノを見られた?(笑)」

本橋
「見てません(笑)」

オレ
「香は笑ってるぞ!」


「だって(笑)」

オレ
「あははは^^」

オレはちゃんと自分のモノを隠した。

オレ
「猛烈に腹減った。ここを出てメシ食いに行こう」

「本橋。三宮のステーキハウスに行くぞ」

本橋
「あっはい」

オレたちはそこを出てオレが先に走り、本橋が後ろから自分のクルマで付いて来た。六甲山を抜け三宮の方へ行き、北野の駐車場へクルマを停めてそこから3人で歩いた。

▼18時・・・北野「重むら」

テーブル席につきビールとワイン。そしてフィレとサーロインを適当にオーダーした。

ビールで軽くカンパイした。

オレ
「それにしても本当に風邪をひくなんて・・・何年ぶりだろう?(笑)」


「タフなユーちゃんだからこれまで病気なんかしたことないのにね(笑)」

本橋
「一応東京と大阪には連絡を入れておきました。鬼の霍乱と言う事で^^」

オレ
「あははは^^じゃーゆっくり出来るな」

オレたちはしっかりと肉を食った。香はそれでも残した。オレは香の分も食った。本橋は自分の仕事とも絡んでいるため他のメニューも見ていたが、特に意見はないようだった。

オレ
「さてと香、本橋、世話になったな^^ありがとう」

「で、香りは凹んでたんじゃなかったか?」


「ユーちゃん。私、離婚する事に決めた」

オレ
「・・・そう」


「できたらNYみたいに百合ちゃんと一緒に働けたらいいなーと思って」

本橋
「ミナミかキタのステーキハウスで一緒にと思ってるんですが?」

オレ
「それは全然問題ないと思うけど・・・両親には?」


「ちゃんと話をします。たぶん理解して貰えると思う」

「もちろんユーちゃんのところで働く事も」

「それだと納得してもらえる」

オレ
「ふむ」


「それで、ひとり暮らししようと思ってるんだけど・・・」

オレ
「えっ?お前がか?そりゃーダメだ。というか出来ないだろう(笑)」

本橋
「あのー私が週の内、半分ぐらい泊めてもらおうかと^^」


「実家には週に2度ほど顔を出すから、百合ちゃんにそうして貰えると私も嬉しいし」

オレ
「それはダメだ。本橋は旦那が居るのにそんな事頼めないよ」

本橋
「あっ!その事でしたら大丈夫です^^」

「うちの旦那、来年の3月まで日本に戻ってきませんから(笑)」

オレ
「え?」

本橋
「ロンドンに単身赴任するってこの間言ったと思いますけど?(笑)」

オレ
「あっ!そっか(笑)」

「じゃー悪いけど本橋とりあえず頼めるかなー?」

本橋
「はい^^私も楽しく過ごせそうで嬉しいです」

オレ
「じゃーどこかに部屋を確保するけど、さて何処がいいかなー?」

本橋
「職住接近と言う事で、ミナミにもキタにも近いところがいいんじゃないかと(笑)」

オレ
「ふむ。じゃースカイマンションの何処かでいいか?」


「私は何処でもいいけど、ユーちゃん困らない?」

オレ
「何かあっても誰かが店からすぐにやって来れるし、オレはその方が安心だ」

本橋
「なんか私も楽しみになってきました^^」


「良かったー^^」

オレ
「よしっ!じゃーそれで早速手配する!」

香&本橋
「はぁ〜い」

オレたちは食事を終えて、店を出た。本橋は自分のクルマで帰宅した。オレは香を送って行こうとしたが・・・香はもう帰りたくないと言った。すでに暫くは帰らないと連絡を入れていると言う。オレは仕方なくそのまま高速に乗って香をミナミへ連れて行った。


▼21時・・・スカイマンション1110号室



「懐かしい^^またこんな風にデザインを変えたんだ」

オレは冷蔵庫からバドワイザーとコーラの缶を取り出した。そして南側の窓際に行った。

オレ
「こっちへ^^」

オレはスイッチを押して窓の電動ブラインドを操作して大きく開いた。壁一面とも思える窓はその足元から広がり、ミナミの街を一望できた。

香を後ろから抱くようにして夜のミナミの街を見ていた。


「何度目だろうこの光景」

オレ
「初めてお前がここに来たのは、79年のクリスマスだ」

「香は「なんか落ちそう^^」と言った(笑)」


「うわーそんな事、覚えてるんだー?」

オレ
「そりゃーそうさ。あの時は、お前と一緒に過ごす部屋まで借りたんだから」


「あーユーちゃん」

香は向き直ってオレに抱きついてきた。

オレ
「それからオレは行方不明になって、1年半後に戻ってきたらお前は壊れてた」

「その時もここへ連れてきた」

「そして、お前を治そうとしたら・・・オレはお前の男に刺されて死にかけた」

「するとお前は余計に酷くなってしまった(笑)」


「ユーちゃん。。。」

オレ
「ニューヨークへ連れて行ってようやく香は自立することができるようになった」

「そして帰国して・・・結婚した」

「これでうまくやっていけるものだと思っていたのに・・・」

「また戻ってきた(笑)」


「うん。ごめんね」

「でも不思議・・・昨日まで私もう壊れそうでどうしようもなかったのに」

「ユーちゃんが現れて」

「その瞬間、ものすごく大きな哀しみでユーちゃんがのた打ち回るように心の中で暴れてるのみたら・・・私、どうしてか強くなれたの」

「この人を私が守らないと・・・私が絶対この苦しみから解放してあげる」

「私にしか出来ない!って、そう思ったら自分のことが全然平気になった」

「あんな激しくて怖いユーちゃん知ってるのは・・・私だけよ」

オレ
「そっか。自分が壊れかけてたのに?治ったのか?」


「うん。もう私は絶対壊れない。それどころか・・・」

「安心してユーちゃんと居れる」

オレ
「そう?」


「だって、私もう自分に怯えなくていいんだもん」

「自分より怖くて恐ろしい怪物が居るの知ったんだもん」

「ユーちゃん。やっぱりすごい」

オレ
「そっか。香りには知られてしまったか・・・」

オレの中には獰猛なヤツが居る。大きな哀しみや怒りの感情が湧き上がるとそいつは目を覚ます。そして大暴れしようとする。亡き母親との小さい頃の約束・・・「決して怒ってはいけない。我慢するの!」オレはいつもそれを思い出していた。

香はオレの首に手を回していた。香りはオレにキスをした。香の心が大きな安心感で、温まっているのをオレは感じた。そして自室でオレは香ときついセックスをした。香は狂ったように歓喜の声を上げ、何度もオレの名を呼んでは何度もいった。激しいセックスだった。


▼翌朝・・・


香と一緒に1Fのカフェで朝食を摂った後、ファミリー不動産に顔を出した。そしてここのマンションの売り情報と賃貸情報を聞いた。10階の2LDKの空きがひとつあるという事なのでさっそくそこを押えた。オレたちは1110号で待った。

香は珈琲を入れた。オレはいくつかの電話をした。

オレ
「山村弁護士に頼んだからこのまま離婚手続きでいいな?」


「はい。お願いします」

オレ
「引越し屋と一緒に行って身の回りのモノだけをまとめて1050号に運んでしまおう」


「百合ちゃんにも来てもらっていい?」

オレ
「ひとつ約束してくれないか?」


「何?」

オレ
「本橋とレズったりして、オレを要らないなんて言わないでくれよ(笑)」


「そっそんな事あるわけ無いでしょ!!!」

オレ
「絶対?」


「ないっ!(笑)」

オレ
「それだけが心配なんだよなー」


「アホっ^^」

オレたちは10階の部屋を確認して、そのまま鍵を受け取った。香は本橋と連絡を取り合って早速引越しの準備を進めた。そしてオレは東京に戻った。


▼12月12日・・・クォーリー7Fオフィス


小林
「お疲れ様です。大丈夫ですか?」

オレ
「えっ?」

小林
「大阪出張中にインフルエンザで大変だったとか」

オレ
「あーそれか、すっかり治った。ははは・・・」

小林は珈琲をオレの前に置いてくれた。そしてフレッシュをあらためて入れてくれて前に置いた。

オレ
「ありがとう^^」

小林
「いいえ^^」

斉藤
「ムトーお前風邪なんかひいた事ないんだって?」

オレ
「誰かが鬼の霍乱だって言ってたらしいじゃないか(笑)」

横山
「さー誰でしょうねー?(笑)」

「ところで、ムーさん。「桜井」の改装日程をちょっと見て欲しいんですけど」

オレ
「じゃーそっちでやろう」

斉藤
「ムトーオレは打ち合わせで先に出るけど連絡は入れる」

オレ
「おう^^今夜は付き合えよ!飲みに行こう」

オレと横山は先に応接室に入った。

横山
「南側の通りに面した所を新しい創作日本料理の店舗に改装します」

「平面図で言うとここですね」

「そして西側の旧自宅ですが、これも最終的には店舗にしてはどうかと」

オレ
「最終的にとは?」

横山
「賃貸に出すと後々面倒かと思って、できればムーさんが誰かと住むのが一番いいんですけどね」

オレ
「誰と?」

横山
「オレに聞かないで下さいよ(笑)」

オレ
「ふむ」

横山
「何です?」

オレ
「いや、何でもない(笑)キョーコにでも相談してみるよ」

横山
「はい^^そうして下さい」

誰かと住む・・・その瞬間、何故か理沙の顔が浮かんだ。入れ替わるように香が戻ってきて、その哀しみを癒してくれたはずなのに、オレはまた大きな喪失感に襲われた。

オレは立ち上がってそこを出た。そして自分の部屋に戻った。


▼19時・・・六本木「Maggie」


オレ
「なんでこんなにこの店は流行ってるんだ?」

滝口
「さー?オープンしてからずっとこの調子ですから^^」

オレ
「コレじゃーオレたちが遊べない」

滝口
「はい。すでに手は打ってますので、1月中にはもう1軒できますからご辛抱下さい(笑)」

オレはジン・トニックを飲み干した。横山と斉藤が現れたがすでに満員状態でテーブル席は空きがなかった。

オレ
「仕方ない。銀座にでも行ってくる(笑)」

滝口
「はい。お気をつけて^^」

オレたち3人は銀座のクラブ「シャングリラ」へ行った。ここもほぼ満席状態に近かったが、なんとか入ることが出来た。

オレ
「これじゃーここも使えないな」

横山
「そーですね(笑)」

斉藤
「使えないとは?」

横山
「これだけ客が入ってしまったら、自分たちが遊べないって意味です」

斉藤
「あーそういう事か(笑)でも流行ってる事はいい事じゃないか?」

オレ
「70から80%程度でないと、自由が利かなくてオレたちに限らず客も面白くない」

斉藤
「ふむ。そう言われればそうだが・・・ここは自分の店みたいなものなんだろう?」

洋子がやってきた。オレたちは一般のホステスが席につくのを断っていた。席が狭い事もあるが、一般の客を優先させるために断った。

洋子
「すみません。せっかくきて頂いたのに」

洋子は申し訳なさそうにそう言ってオレの隣に座った。

オレ
「すぐにもう1軒つくろう^^特別室のある店を」

横山
「あっそうれいいですね!」

斉藤
「この間行ったミナミのギャラクシーみたいにか?」

オレ
「うん。自分達専用の部屋だ(笑)」

洋子
「ムーさん。私がやっていいんですか?」

オレ
「ミナミのノリの店!できるか?」

洋子
「銀座でそれをやるんですか?」

オレ
「ああ。気取ってる店ばかりじゃ面白くない」

洋子
「わかりました(笑)」

オレたちは店を出た。階段を上がりきると怒声が聞こえてきた。振り返るとビルの1階の奥のほうで酔っ払いが騒いでいるようだった。

関西弁が聞こえた。銀座の表通りのビルで関西弁の怒声・・・オレはふと興味を持ってそっちに近づいた。

横山
「ムーさん。行きましょう」

横山に腕を引っ張られた。男が数人がかりで関西弁の男を連れ出してオレたちに迫っていた。


「こらっダボ離さんかいっ!」

「本部でも何処で行ったらー」

「後でどないなっても知らんからなー!」

男2
「やかましいだよ!大人しく付いて来い」

男3
「コンクリ詰めにして東京湾だな」

男4
「さっさと歩けよこらっ」

連れ出そうとした男がオレにぶつかった。

男4
「邪魔なんだよ!おめーらーおらっどけよ!!!」

オレ
「生ごみがエラソーに銀座をうろつくんじゃねーよ!」

オレはイライラしていた。年はオレと同じくらいか?行儀を知らないチンピラにむらむらと怒気がわきあがってきた。

男4
「なんだとー酔っ払いがー間違えてると怪我するぞ!」

オレ
「あははは^^ゴミのくせに口だけは達者だなー(笑)」

男4
「お前!オレ達にケンカ売ってんのかー?」

男1
「おい。こっちが先だそんなのに構わずこいつを先に連れて行くんだ」

男4
「さっさとどかねーか!こらー」

オレは少し動いた。そしてヘラヘラ笑っていた。

オレ
「くっせー生ゴムはさっさと消えろ^^」

男4
「このヤローなめやがってカンベンできねーな」

その男は掴んでいた男の手を離してオレの方へ近づいてきた。オレは瞬間よそ見をしたフリをして男に前蹴りを入れた。前に出てこようとした男にカウンターを決めるように下腹部にケリが入った。そしてそのまま膝を曲げて右旋回で男のコメカミに回し蹴りを入れた。2段蹴りがキレイに決まって男はそのまま左側の壁に靠れて崩れるように倒れた。

他の男らは咄嗟に何が起こったのかわからないようだったが、オレがそうしたのだけは理解したようで、捕まえてた男を放して戦闘態勢に入った。

残り二人・・・

オレ
「おい追いかけなくていいのか?アイツ逃げていくぞ」

男3
「コノヤローのんびりふざけた事いいやがって!」

男2
「お前・・・ただではすまなくなったぞ!」

オレ
「お前らこそのんびりするな!」

「ほらっ!そいつ口から泡吹いてるぜ」

「舌を巻き込んでるかも知れない。」

「危ないぞ!下手したら窒息死するぞ!」

男らは倒れている仲間を覗き込むようにした。オレもその男を覘き込んでるフリをしていた。

2歩前に出た。男2が顔を上げた。オレはそいつの頭の髪を掴んで膝蹴りを一発。これはコメカミに決まり、反対の脚でもう一発膝蹴りを顔面に入れた。どちらも手応えがあった。手を離すと男2は崩れ落ちた。男3に近づいた。

男3は殴りかかってきた。合気の「取り」の練習のような入り方だった。オレは半身に体を入れて相手の腕をとり、そのまま左に流しながら倒した。そして鼻を狙って突きを入れた。鼻の根元がズレて折れたようだ。

オレ
「おい^^走るぞ(笑)」

オレは横山と斉藤に声をかけてそこから走り去った。そして途中でタクシーを拾って乗り込んだ。

オレ
「あははは^^」

横山
「ムーさん。ケガはありませんか?」

斉藤
「ムトーお前いい年をして何をするんだバカがっ!」

オレ
「運転手さん。そこでいいや停めて!」

「もう1軒行こうぜ^^」

斉藤
「ったくー」

オレは久々に暴れてご機嫌だった。横山は呆れて何も言わず、斉藤は怒っていた。それでも新しい店に入ったのは良かったのだが・・・気取った店で面白くない。ホステスも退屈なオンナ達だった。オレは興ざめした。

銀座の女・・・そんなものはクソだ!見てろオレがバカウケする店を作ってやるから、オレは完全にミナミのオトコになっていた


▼翌日13時・・・新富町「洋子の部屋」


洋子
「暫く来ないほうがいいわ」

オレ
「んーなんで?」

洋子
「昨夜・・・上でケンカしたでしょ」

オレ
「あーアレか(笑)生ごみを掃除しただけだ」

洋子
「このあたりの地回りなのよ!すぐに店にやってきて探してたわ」

オレ
「なんだ?シャングリラに来たのか?」

洋子
「たぶん周辺にも、だから暫くは来ないほうが」

オレ
「それは心配かけたな!スマン^^」

オレは洋子がつくってくれた関西風のザル蕎麦を2杯食った。

オレ
「ご馳走様^^」

洋子
「今朝・・・姉に電話しました」

オレ
「新規出店の事でか?」

洋子
「いえ。大阪で何かあったのかなーって思って」

「理沙さんの事聞きました」

「東京ではしっかりユーイチさんのお世話をするように!って言われました」

オレはキャメル・ライトに火をつけた。

オレ
「理恵は他に何か言ってたか?(笑)」

洋子
「ちょっと荒れるかも知れないからって」

オレ
「大げさなんだよ理恵は(笑)それに大した事じゃない。いつもの事だ」

洋子は灰皿をオレの前に置いた。

洋子
「いつも理沙さんが羨ましかったわ^^」

オレ
「ん?」

洋子
「すごくあなたに愛されてたから」

オレ
「洋子・・・お前はもう「昇竜の女」だ」

「その昇竜はオレだ」

「オレは・・・お前の言う事を聞く」

「昔の事はもういい。これからはお前の時代だ」

洋子
「はいっ^^」

もうぐずぐずするのはヤメだ。これからは自分の欲望を剥き出しにして演じてやるさ!オレはアクターなんだから・・・


▼17時・・・南青山クォーリーマンション7Fオフィス


オレ
「ただいまー」

小林
「お疲れ様です^^松井さんがいらっしゃってます」

オレ
「ん?」

小林
「横山さんと応接室の方で」

オレは応接室にノックをして入った。

松井
「お邪魔してます^^」

オレ
「おう^^」

オレは松井の正面、横山の隣に座った。

横山
「じゃーステーキ・ハウスの方のマニュアルはそれでお願いします」

「じゃーオレは打ち合わせに出てきます^^」

オレ
「ん?そっか」

横山は応接室を出て行った。入れ替わりに小林がお茶を持って入って来た。オレは小林に礼を言った。

オレ
「ステーキ・ハウス急ぎか?」

松井
「えー仕入れの件もありましたし」

オレ
「そう」

松井
「暴れたんですって?」

オレ
「ちょっとした遊びだ^^ゴミ掃除だ(笑)」

松井
「暫く居ますよ」

オレ
「ダメだ」

松井
「残念ですが・・・聞けません」

オレ
「ただのケンカだよ心配ない(笑)」

松井
「いえ(笑)」

オレ
「ったく。勝手にしろっ!」

松井
「はい^^」

オレは冷たいウーロン茶を飲んだ。そしてキャメル・ライトに火をつけた。

オレ
「ブチのめしたのは「S会」だ。洋子のところへさっそく来たらしい」

「この間石井に紹介してもらったのは「K会」だ」

「別のルートで「S会」を紹介してもらおうと思ってる」

「ちょうどいい(笑)」

松井
「わかりました。こっちの事情を石井さんにでも聞いておきます」

オレ
「もう部屋は段取りしてもらったのか?」

松井
「はい(笑)ここの503号です」

オレ
「隣には・・・沙耶が居る」

松井
「了解です」

理恵の手配なのはわかっていたが、ソレ以上に松井はオレがちょっと凶暴になっている事に気づいているかも知れない。もっとも東京の危険性もわかってのことだろうが・・・

ノックの音がして小林が入ってきた。

小林
「沙耶さまがいらっしゃいました」

オレ
「あっそう」

オレと松井は応接室を出た。

松井
「お久しぶりです^^」

沙耶
「あー松井さん。ご無沙汰してます。こっちでまたお世話になってまーす^^」

松井
「私も503号室に今日から住む事になりましたので、どうぞよろしくお願いします」

沙耶
「あっ隣に入るんだ?松井さんが隣だと安心できて嬉しい^^」

オレ
「ははは・・・じゃー打ち合わせするか?あっち行こう」

沙耶
「はぁ〜い」

オレと沙耶は事務所を出て自室に入った。そしてリビングのソファに座った。」

沙耶
「良かったらごはん行かない?奢ったげるからっ^^」

オレ
「ふむ^^奢ってくれるのなら行こうかなー?」

沙耶
「うん。行こう^^」

オレ
「何を食べる?」

沙耶
「赤坂にお店を見つけたの^^ステーキ・ハウスよ」

オレ
「そう。赤坂か(笑)それは仕事としても知っておく必要があるな?」

沙耶
「そーでしょう?^^このところ美味しいお肉のお店を友達とかに聞いて調べてるのよ」

オレ
「それはありがたいなー^^」

沙耶
「へへへ^^」

オレは奔放に振舞う沙耶が好きだった。こいつが変に遠慮したりするのを見たくない。そして沙耶は自分が少し我侭に振舞って、オレが嬉しそうに対応するのを知っているようだった。

オレは事務所に顔を出し、先に上がることを伝えて沙耶と一緒にメシを食いに行った。

沙耶が案内してくれた赤坂のステーキ・ハウスは確かに旨かった。素材の肉が良くて誰が焼いても美味しいステーキになるだろう。しかし、それ以外のモノは見るべきものがなかった。

だけど、そんな事は沙耶にはこれっぽっちも言わない。ただ旨い店を教えてもらってオレは喜んだ。そしてすぐにマンションに帰って来て、沙耶の部屋に入った。

部屋に入るなり沙耶はオレに抱き付いてキスをしてきた。

沙耶
「ユーちゃん。私この頃変なの」

オレ
「どした?」

沙耶
「ユーちゃんと一緒に居るとすぐ甘えてくっつきたくなるの^^」

オレ
「そういう時もあるさ(笑)」

沙耶
「最近ユーちゃんまた優しいし^^」

オレは沙耶をソファに連れて行った。そして一緒に並んで座った。すぐに沙耶はオレの首に腕を回してきた。

オレ
「オレはいつだって優しいだろう?」

沙耶
「んーすごく冷たい時も結構あるもんっ」

オレ
「そっかー?(笑)」

沙耶
「でも、ふたりっきりの時に優しかったらいい^^」

沙耶に軽くキスをした。そしてその顔に自分の顔を擦りつけた。

オレ
「上から見ると、お乳が半分も見えてるじゃないか」

沙耶
「触りたい?」

オレ
「触りたくてたまらない(笑)」

沙耶
「ふたりの時は遠慮しないでー^^」

オレ
「ははは^^」

オレは沙耶の服の上から乳を揉んだ。

沙耶
「あー優しいユーちゃん好きよー」

オレは沙耶を抱いていた。オレはお前が可愛くて仕方がない・・・12の時からセックス・ドールとして仕込まれた沙耶。天性のモノもあるのだろう。普通の男では相手に出来ない。そしてある程度セックスが出来る男も、勝てない。それがわかった時、男は自信を失くす。そして偏向したセックスに走る。

沙耶はそれがイヤなのだ。

普通のセックスで時に自分を満足させてくれればそんなにきついセックスを求めていない。それを理解できる男が居ない。それが沙耶の不幸だった。

そしてそれをオレが理解している事を沙耶は知っている。理屈じゃなくてそれがわかっているから、何度も戻ってくる。そしてもうオレと似たタイプを探す事を諦めたのだろう。

この頃特に沙耶は子供っぽく振る舞いたがる。甘えたがる。まるでセックスをせずに一緒に過ごしたあの頃のように・・・

沙耶
「ユーちゃん。来週のブライダル・ショーは?」

オレ
「ん?」

沙耶
「大阪ロイヤルの恒例のヤツよユーちゃんが専属やってたやつ」

オレ
「あーアレか?松尾ブライダル。そうか来週かー」

沙耶
「私はまた出るの!ユーちゃんはもう関係してないの?」

オレ
「うん。演出ももうやってないしな」

沙耶
「ユーちゃんも出ればいいのに^^」

オレ
「あははは^^アレはもうダメだよ!でも、見に行こうかな?」

沙耶
「ほんとにー?^^大阪で一緒に過ごせる?」

オレ
「そーだな」

沙耶
「うわー嬉しい^^ユーちゃんの歌も聞けるかなー?」

オレ
「Maggieへ行けばバンドが入ってるから歌える」

沙耶
「うん。久しぶりにユーちゃんがギター弾いて歌ってるところみたいー♪」

オレ
「(笑)」

オレは沙耶に手を取られてベッドルームに入った。オレは素っ裸の沙耶の体を眺めて、性器にキスをした。沙耶の耳元で沙耶が好きなやり方を聞いた。最初は言わなかったが・・・股間を指で責めながら、ゆっくりと聞き出してその通りしてやった。

緩いセックスだったが、沙耶は安心して眠った。


▼12月15日・・・帝国ホテル「中華料理店」


ロビーで待っているとジョンがアメリカ領事館の友人「ジョン」がやってきた。オレたちは軽く抱擁を交わしたながら英語で話した。

オレ
「わざわざありがとう^^急な依頼をして」

ジョン
「いやお安い御用だよ^^」

「先に言っとくがあくまでもただ「紹介」するだけだ」

「そこから先の事はボクは関知しないよ」

オレ
「もちろんだ。ジョンに迷惑をかけるような事はない」

ジョン
「じゃー行こうか」

オレ
「うん」

オレたちは2階に上がり、ホテルのボーイの案内で「中華料理店」に入った。そして今度はそこの黒服に案内されて「個室」に入った。すでにその部屋には先客が居た。

ジョン
「ミスター石本^^ご無沙汰していまーす」


「やーどうも^^お久しぶりです」

ジョン
「こちらは私の友人のムトー氏です」

オレ
「始めましてムトーと申しますよろしく」

オレたちは席に座った。石本と言う男が呼び鈴を鳴らすとドア開いて男が顔を出した。そして石本氏は頷いた。暫くすると、ウエイターがやってきて、ビールと紹興酒を運んできた。ドアが開いた時にちらっとさっきの男が見えた。どうやらボディーガードらしい。


「まっどうぞ^^」

ジョン
「どうも^^」

オレ
「ありがとうございます」

石本氏はビールをオレ達に注いだ。オレはもう一本のビールを持って石本氏に注いだ。そして3人でカンパイした。

オレは改めて自己紹介した。純粋な日本人である事、ニューヨークから最近こっちへ帰って来て店をやっている事、ファッション関係の仕事にも携わっている事などなど・・・

石本
「ニューヨークですか^^一度、摩天楼というやつを見たいと思ってるんですよ」

オレ
「ええ。絶景ですよ!是非ニューヨークへ行って見て下さい」

「いい芝居もたくさんやってますし」

ジョン
「ムトー氏は向こうの美術界でも評判で、備前焼のプロデュースもやっておられる」

オレ
「いえ。大したことありません」

ジョン
「ザザビーズで100万ドルの作品を出品して話題になりました」

石本
「そーですか^^是非それも見てみたいものです」

オレたちはどうでもいい雑談をしていた。そしておもむろにジョンは石本氏にこれからまだ仕事が残っていると行って先にその部屋を出た。オレと石本氏だけがその場に残った。

オレ
「ジョンも忙しい人だなー昼食ぐらいゆっくりすればいいのに」

石本
「まったくだ^^」

オレは紹興酒を相手に注いだ。

石本
「あんたは若いのにあの人と友人とは、やはり仕事関係かな?」

オレ
「ええ。ニューヨークで色々お世話になりました」

石本
「ところで、いくつだ?」

オレ
「30になったばかりです」

石本
「うちのせがれより若いのかーいやー驚いた(笑)」

オレ
「すみません」

石本
「いや、謝る事じゃない。若いうちから伸びる人は伸びる」

石本
「元々東京かな?」

オレ
「いえ、ずっと関西です」

石本
「ほーその割には関西なまりがないな。で、どこ?」

オレ
「神戸です」

石本
「ほー神戸ですかー」

オレは紹興酒を口にした。

石本
「我々の業界もアレですけど、神戸は大変ですよ」

オレ
「そーみたいですね」

石本
「まっこっちで何かあったらいつでも連絡して下さい」

オレ
「はい。ありがとうございます」

石本
「じゃーまた今度ゆっくり^^」

オレ
「はい。今日はわざわざお時間をとって頂きありがとうございました」

石井
「うん。それじゃー失礼するよ」

オレは席を立った。そしてドアを開けようとしたら、先に自動ドアのように扉が開かれた。男がふたり立っていた。オレは石本氏をそこで見送った。

もう1度、個室に入った。そして上着のポケットからキャメル・ライトを取り出して火をつけた。さっきもらった名刺を取り出して改めててみた。

「S会」総裁 石本健二」大きな名刺にはそれだけが書かれていた。そして本部の住所と電話番号・・・


▼14時・・・クォーリーマンション7Fオフィス


小林
「お客様がお見えになりました」

オレ
「応接室へ」

オレは先に応接室に入り立って待った。人声が聞こえドアが開き小林が案内した。

オレ
「いらっしゃいませ」

町村
「お邪魔する」

オレ
「どうぞ」

オレはソファの方へ手を向けた。ジーさんは座った。オレも座った。もうひとり若い男が居た。オレはそっちにも掛けるように言ったが大きな荷物を手に黙って立っていた。

小林が珈琲を3つ持って来た。誰も何も言わなかった。ジーさんはぼーとした表情でオレを見ていた。

オレはジーさんが話を始めるまで知らん顔をしていた。

町村
「ようやく出来たので持って来た」

ジーさんが体の向きを変えた。立っていた若いヤツが大きな荷物の梱包を解き始めた。ガサガサと結構時間がかかった。そして1枚の絵をオレの方に向けた。

町村
「これを君に預かってもらおうと思ってな」

オレ
「・・・」

町村
「どうかな?」

オレ
「いつまでですか?」

町村
「また蝶が舞うまで」

オレ
「そーですか」

町村
「いいかな?」

オレ
「わかりました」

町村
「じゃー失礼する」

絵はそのまま壁際に置かれた。そしてジーさんと若い男は応接室を出た。オレはドアの前まで送った。それ以上会話は無かった。

オレはもう1度応接室に入り、絵を見ていた。理沙の肖像画だった。小林が入って来た。テーブルの上のモノを片付け始めた。

小林
「その絵は・・・」

オレ
「預かっただけだ」

小林
「町村・・・画伯の絵ですね」

オレ
「蝶の女」

小林
「いいですね」

オレは振り返って小林を見た。

小林
「女性の憂いが伝わってきそうで」

「すみません。生意気な事言って^^」

オレ
「憂いか?」

小林
「はい。私にはそう思えます」

オレ
「・・・」

オレはその絵を包みなおして710号の自分の部屋に持っていった。寝室の向こうの使っていない部屋にそれを置いた。まだ整理がついていないダンボール箱などが半分以上を占めている。そこに置いた。

オレはその部屋を出た。冷蔵庫からバドの缶を取り出して窓際に立った。部屋全体を見渡したが、あの絵が落ち着くところはここにはなさそうだ。


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