<< バリー・ホワイト | main | YOUNG BLOODS >>
スティング


アリー続きでいうとやっぱりスティングが出て来ないと・・・この間まであったのに削除されてるなー(-o- )/

Every Breath You Take - Sting & The Police (STUDIO)


1986年8月--------------

▼11時・・・自由が丘「レミの部屋」

オレ
「サザンクロスの方はどう?」

レミ
「うん。好調よ!でもミルキーウエイの方が勢いがあるわ(笑)」

「それもこれもユーちゃんがプロデュースしてくれて、長井ちゃんが頑張ってくれてるおかげだわー♪」

オレ
「ははは^^この7年でしっかり男をその気にさせるのがうまくなったな」

レミ
「そんな事ないわー本当に感謝してるんだもの^^」

そう言いながらレミは冷たいウーロン茶を持ってきてくれた。

レミ
「ただ問題があるのよねー」

オレ
「何?」

レミ
「サザンクロスよりミルキーウエイに居る方が楽しいのよ」

オレ
「客がそう言ってるのか?」

レミ
「ううん。私(笑)」

オレ
「アホっ!(笑)ビジネスだろう?しっかりサザンクロスもやれ!」

レミ
「だってユーちゃんサザンよりミルキーの方が好きでしょう?」

オレ
「オレはもともとクラブなんて面白いと思ってないから」

「高い金払ってこっちがホステスを遊んでやってるようなものじゃないか?(笑)」

レミ
「あはっ^^そーよねーどっちの店でもユーちゃん人気ナンバーワンだもの」

オレ
「いくら人気があってもなー手を出せねーしなー(笑)」

レミ
「ごめんねー(笑)私で我慢してねー何でも言う事聞くからっ^^」

オレ
「ははは^^サザンのレミにそんな事言われたら、しょーがねーなー^^」

「でもサザンでもノリのいいレミの方がウケるんじゃないか?」

レミ
「ダメー(笑)銀座は銀座なのよ!ミナミのオンナは通用しないの」

「でもそういう新しい店は確かに流行るかもしれないわね」

「ブロードウエイってお店がこの間できたんだけど、結構評判になってるの」

オレ
「そう(笑)」

レミ
「やっぱり行った事あるのね?」

オレ
「ああ。ノリがよくてまるでミナミの店のようだったぜ」

レミ
「そう^^私も行って見ようと思いながら、なかなか行けてないけど」

「銀座も徐々にそんな店も増えてくるかも知れないわね」

「次にチャンスがあったら考えることにする」

オレ
「そーだな」

さすがにブロードウエイがオレの息のかかった店だとは思わなかったようだ。同業者に注目されているのならまず間違いなくこのままヒットし続けるだろうと思った。

もっともオレが関係している事を隠すつもりはなかったが、もしかしたらレミは銀座のオンナが自分ひとりだと思っているのならできるだけその時間を長くしてやる方がいいと思った。

そしてオレはレミに連れられてベッドルームに入った。

▼17時・・・六本木「Gants」

長井
「この店もLIVEがする出来るようになってるんですね^^」

オレ
「ん?ああ。色んなショーをやろうと思ってたんだけどな(笑)」

岡田
「昼間の練習にももってこいですね^^」

オレ
「そうだな(笑)」

オレはtテーブルの上のグラスを持ち、ビールを飲み干した。

長井
「この間、浜田さんに誘われました」

オレ
「そう。あいつのスタジオもきっと最新の設備だから魅力的だろう」

長井
「はい。でも・・・断りました」

オレ
「・・・」

長井
「学生時代からずっと浜田さんと一緒にやってきたんですけど・・・もういいかな?って」

岡田
「浜田さん絶対おかしいですよ!」

長井
「岡田っ」

オレ
「ショーヘーとは16の時からの付き合いなんだ。アイツとはきっとどっちかがくたばるまで続く(笑)」

「ちょっと今はうまくいってないけどな。そういう時期もあるんだ。」

「お前らにはそのとばっちりで迷惑かけてると思うけど、勘弁してやってくれ」

「頼む」

長井
「迷惑なんてそんな全然思ってないですよ」

岡田
「オレもそんな風には思ってません」

オレ
「あいつも今、何かを変えようとして、もがいてあがいているんだろう。まっ暫く見守るしかない(笑)」

長井&岡田
「はいっ」

オレ
「ところで岡田。お前はどっちやる?」

岡田
「んーーー構成次第ですけど、ドラムがない時はベースやらせてください(笑)」

長井
「こいつこの間3人でやった時の事に味をしめたみたいですよ(笑)」

オレ
「あの時、リズムも変化してたよな?」

岡田
「シンセでリズムをつくってプリセットしておくんですよ。ですから切り替えだけですぐに対応できます」

オレ
「ふむっちょっと前まではスイッチングの結線なんかで準備が大変だったのにな?」

長井
「はい。アメリカ製の安価なものが出てきてますから、面白いですよ」

オレ
「そっか(笑)じゃー暫くは岡田はベースやれ!」

岡田
「はい^^」

それからオレ達は新しい曲の打ち合わせをした。長井と岡田が作った曲。オレのキーに合わせてあるようで、明日にでもやってみようと言う事になった。

そして彼らはミルキーと皐月にそれぞれ向かった。

客もそろそろ入り出し、ここもオープン1ヶ月目でなんとかサマになってきた。オレはカウンターに移動した。すぐに責任者の田中がカウンターに入ってきた。

田中
「ジン・トニックでよろしいでしょうか?」

オレ
「うん。ありがとう^^」

田中
「はい^^」

オレ
「東京は慣れたか?」

田中
「はい。自分では標準語を話しているつもりなんですけど、まだちょっと関西風だと言われる事があります(笑)」

オレ
「あははは^^オレだってそうさ(笑)東京は地方出身者ばかりなんだから細かい事は気にするな」

田中
「はい」

目の前にジン・トニックが出された。オレはグラスを田中の方に上げて口にした。

オレ
「うん。スペシャルな味だ」

田中
「ありがとうございます^^」

「あっ松井さん。来られました」

オレは振り返った。松井がこっちに向かってくるのが見えた。オレは軽く手を上げた。

松井
「お疲れ様です^^」

オレ
「おう^^お疲れっ!」

松井はオレの隣のスツールに座った。オレはキャメル・ライトに火をつけた。

松井
「オレもジン・トニックがいい!」

田中
「はい^^」

松井
「オレ明日から出張&夏休みですけど、大丈夫ですか?」

オレ
「おう^^ゆっくりしてこい」

松井
「ムーさん。大人しくしてて下さいね?」

オレ
「ああ。お前に心配かけるような事はしない(笑)」

松井
「お願いします(笑)」

オレはジン・トニックを飲み干した。松井はニューヨークに3週間程度滞在する。田川の仕事ぶりを見るのと、向こうでゆっくりと夏休みを過ごす計画だった。

簡単に松井と打ち合わせをした後、オレは銀座へ向かった。

▼18時・・・クラブ「皐月」

オレはカウンターに座った。すぐに留美子が隣にやってきた。麻美は客席についていた。

オレ
「水割りを^^」

留美子
「もうどこかへ行ってらしたのね^^」

オレ
「うん。クラブは一番最初に行く店じゃないだろう(笑)」

留美子
「あらっそうなんだ^^じゃーバモスとかに?」

オレ
「バモスはもう少し遅い時間がいいな」

ウエイターがブランデーセットを持ってきた。留美子は手早く水割りを作ってオレの前に置いた。

留美子
「ギター弾きさん好評なんですよ^^」

オレ
「そう^^でもカラオケが嫌いなお客さんも結構いるだろう?」

留美子
「ええ。でもギター弾いてもらうとわりと皆さん歌うようになるみたいです」

オレ
「ほどほどがいいな?」

留美子
「はい^^」

麻美がやってきた。そして留美子と入れ替わるようにオレの隣に座った。

麻美
「いらっしゃい^^」

オレ
「ご機嫌で何よりだ」

麻美
「六本木ばかりで、銀座にはあまり来ていないんでしょう?」

オレ
「ははは・・・そうだな」

麻美
「吃驚しちゃった!六本木のあのお店、全部あなたのところの経営なんですって?」

オレ
「えっ?アレ?言ってなかったか?」

麻美
「はい。よく考えれば私、あなた事全然知らない。。。」

オレ
「ファッション・ブランドの方はまだ始まったばかりだからな!目の前の数字をつくために店をやってる。その程度だ」

麻美
「その程度で5店舗も?」

オレ
「人が多いから、それでもまだ足りない(笑)」

オレは水割りを飲んだ。そう言えば麻美とは、やくざ絡みで知り合ったせいか、オレの事をただのアソビ人程度にしか思っていないのかも知れない。

新しい客が入ってきた。

オレは視線を向けた。この間バモスに居た北脇氏ともうひとり・・・あの女がふたりでやってきた。

麻美
「ちょっとごめんね」

麻美は立ち上がって、北脇氏の方へ行った。やはり旧知のようだった。オレは視線を向けずにカウンターの中のシローと話していた。

後ろから声がかかった。

北脇
「ムトーさん。よろしかったらご一緒にどうでしょう?」

オレ
「いや、美人と一緒のところを邪魔したら悪いですから(笑)」

北脇
「いえいえ美香ちゃんも是非と言ってますし^^一緒に飲みましょうよ」

オレ
「はぁ〜」

オレはそれ以上断る理由を見つけられず、誘われるままにそのテーブルに付いた。

麻美
「ユーちゃん。もう北脇さんとお知り合いだったんだ?」

オレ
「この間、バモスで^^」

麻美
「じゃー美香ちゃんとも?」

美香
「ええ。コーヒーもご馳走になりました^^」

北脇
「あっ!もうそんな仲になってたんだ?知らなかったなー」

麻美
「そうですかー^^」

オレたちはブランデーの水割りだったが、美香にはどうやらノン・アルコールのカクテルが出されているようだった。オレたちは軽くグラスを合わせた。

美香はすでに麻美を読んだだろう。そしてオレとの関係も察したに違いない。北脇氏は知っているのか知らないのか?それはどうでもよかった。

美香
「私もそろそろオフィスを構えてそこで活動しようかと思って」

北脇
「まーそれで私が相談を受けたんだけど、『占い師』を辞めるそうなんだ」

麻美
「あらっ!あれだけ評判をとってたのに辞めるの?勿体無い気がするけど」

北脇
「前から薦めてたんだけど、企業のコンサルタントみたいな形にする事に決まったんだ」

オレ
「そうですか」

北脇
「まーどれだけリサーチが進んでも、最後はトップの決断ですからね」

「そのあたりを美香ちゃんがアドバイスするというスタイルでやろうと」

麻美
「美香ちゃんがやればなんか洗練された感じでいいわよね^^きっと成功するわ」

美香
「麻美ママ。ありがとう^^」

北脇
「ムトーさんはどう思われます?」

オレ
「さーオレは門外漢だからよくわかりません(笑)」

北脇
「でも、大きな組織の「相談役」をいくつかされているんでしょう?」

オレ
「・・・」

オレは水割りを飲んだ。正面に座っている北脇氏は真っ直ぐにオレを見ていた。柔和な表情だが、その目は厳しい目に見えた。美香もオレを見ている。この間で懲りたのか?オレにサーチはかけて来なかったし、催眠術も使おうとはしていない。

オレ
「麻美はオレの女だから、オープンに話してもらって結構ですよ」

北脇
「実は・・・美香は私の姪なんです」

「そして今、非常に危険な目に会っているので、ムトーさんにご協力いただけないかと思って相談にやってきた次第です」

オレ
「無理ですね」

北脇
「えっ?」

オレ
「例えば、今困っている事を仮にオレが助ける事が出来たとしても・・・同じ事が繰り返されます」

「本人の自覚がない限りダメでしょう」

美香
「・・・帰りましょう!叔父さん」

北脇
「待ちなさい。美香!」

「ムトーさん。おっしゃる通りです」

「どうすればいいのか・・・」

オレ
「できればそういう事に早く気付いて大人しくしていればいいんでしょうけど」

「たぶん。次に怖い目に会った時が最後でしょうね」

美香
「最後ってどういう意味です?」

オレ
「さー?ご自分を占ってみたらどうです?」

美香
「・・・」

オレ
「残念ですけど、オレは力になれません」

北脇
「そうですか。。。」

先ほどまでの力強い印象が消えて、北脇氏はがっくりしたようだ。オレは冷たくその様子を見ていた。

逆に美香は険しい目つきでオレを見ていた。オレは胸や背中に圧迫感を感じた。オレはガードをはずして招き入れた。そして誘った。

美香
「きゃーーー」

北脇
「おい。美香どうしたっ!」

麻美
「まー大変っ」

正木が飛んできた。オレは冷たいお絞りを持って来るように指示した。美香は失神していた。

麻美
「救急車を・・・」

オレ
「いや必要ない」

北脇
「一体・・・」

オレ
「さー壁にゴキブリでも居たんじゃないですか?」

麻美
「ユーちゃん。うちの店にゴキブリなんか居ませんっ!」

オレ
「あははは^^改装したばかりだもんな?(笑)」

「じゃーオレは約束があるからこれで!」

「じゃーまた^^」

オレは誰に言うともなくそう声をかけて「皐月」を出た。オレはやっかいな事に巻き込まれるのはごめんだった。松井と約束したばかりだった事を思い出し、これ以上ウロウロせずに真っ直ぐに自宅へ戻った。


「お帰りなさい^^」

オレ
「ただいまっ」

オレは居間に入ったそしてダイニング・テーブルの前に座った。照明は夜用の間接照明に変わり、空調が利いてして涼しかった。

オレ
「先にシャワー浴びてくるよ」


「はい」

オレは居間から続く階段を上がり中2階を超え2階の寝室に入った。そしてそこの風呂場でシャワーを浴びた。

うだるような暑さの中、体の表層に纏わりついたモノをシャワーで洗い流した。そして着替えてから居間に降りた。


「あっすみません。ムーさん。さきほど「純子」さんとおっしゃられる方がこちらにいらしゃいました」

オレ
「あっそう」


「不在を告げると、約束をしていたわけではないので、とおっしゃられて帰られました」

オレ
「ふむ」


「六本木と銀座の店に連絡入れたのですが・・・六本木は入れ違いだったようで」

オレ
「いやいい。そんな時間に約束もなしにやってくる向こうが悪い(笑)」

「気にするな」

源は冷蔵庫からバドワイザーの缶を出して、ダイニングテーブルのオレの前に置いた。オレはそれを持ってプルトップを引いて口にした。

電話のベルが鳴った。源が受話器を取った。源はオレの方を向いて受話器を手で抑えながら言った。


「北脇さんとおっしゃられる男性です」

オレ
「・・・」

オレはバドワイザーの缶を置いて、電話機に近づき受話器をもらった。

オレ
「はい。ムトーです」

「・・・」

「じゃーどうぞ」

オレはそれだけを言って受話器を電話機に戻した。


「来客ですか?」

オレ
「うん。源、悪いがちょっと警備してくれるか?」


「はい。「さくらい」から2名呼びます」

オレ
「うん。頼む」

別に北脇や美香が来るからといって、危険があるわけでもなく、警戒する必要もなかったが、美香に源を読ませたくなかったので、源を外に出すための口実だった。

20分ほどしてチャイムが鳴った。

オレは玄関を空けて、北脇らを迎えた。そして居間に招き入れた。奥のソファを薦めてオレは用意していたコーヒーをトレーに乗せてソファの前のテーブルに置いた。

北脇
「ご立派な家ですねー^^」

オレ
「借り物ですから」

美香
「さきほどは・・・すみませんでした」

オレはコーヒーポットからコーヒーをそれぞれのカップに注いで、それを前に置いた。

北脇
「あの後、どうしても美香がムトーさんに謝りたいと申しまして、本当に厚かましくも自宅にまで押しかけてしまって、申し訳ございません」

オレ
「別に謝ってもらうほどの事じゃありませんけど・・・」

美香
「どうして私の力が及ばないんでしょうか?」

オレ
「あなたおいくつです?」

美香
「22歳です」

オレ
「オレよりずいぶん年下だ。先輩に勝てるわけないだろう(笑)」

美香
「先輩って」

北脇
「ムトーさん。美香はあなたが自分と同じ能力、いやそれ以上の能力の持ち主だと言うんです」

オレ
「人の心を探って、催眠術をかける。他にどんな事ができるんだ?」

美香
「それだけです。さっきは怒りに任せて強引に探ろうとしました」

「強引に入れた!と思ったら・・・あんなモノが」

「殺されると思いました」

オレ
「調子に乗ってチョロチョロすると大怪我をする」

美香
「はい」

北脇
「美香がこれほど素直に言う事を聞く。それだけで私は安心なんですが」

「ご協力いただけませんか?」

オレ
「あなたも我侭な人だな?」

「あなた方が何をしたいのかも話さない内から協力しろ?」

「出来ないと断ったら、その女はオレに脅しをかけようとして」

「それに負けても飽き足らずに押しかけてきてまたぞろ協力しろと」

「オレはヤクザだぞ!なんならこのまま監禁して、利用しようか?」

北脇
「・・・おっしゃる通りです。」

「つい焦ってしまって申し訳ございません」

「でも、あなたはやくざとの付き合いはあってもやくざではないと・・・」

オレ
「誰がそんな事を言ったか知らないけど、それを信じて危険なマネをしてる事に気付かないのか?」

美香
「あなたが私を利用しようとするなら、カフェで会った後すぐに何か行動したはずです。」

「それどころか私に一切の関心を示さなかった」

「私の能力など手品程度で誰にでも出来ると笑っているようでした」

オレ
「そんな事はどうでもいい」

美香
「・・・はい」

オレ
「北脇さん。あなた姪を利用して何がしたい?」

北脇
「さっきの企業相手のコンサルと言うのは名目です」

「これ以上占いなどで人目につきたくないだけです」

「ただ・・・今の危機をなんとかしたいだけです」

オレ
「最初からわかるように説明できますか?」

北脇
「わかりました」

「この美香は・・・代々続く藤村家の娘で・・・」

北脇は延々と美香の家の事から、これまでの生い立ち、そして今置かれている危機について話した。オレは黙って聞いていた。美香は時折り補足した。

オレ
「それで、そのやくざみたいな連中はどこの組か名乗りましたか?」

北脇
「いえ」

オレ
「東の組なんだな?」

北脇
「たぶん。標準語で話してましたし、訛りはないようでしたから」

オレ
「最近、接触は?」

北脇
「美香が言うには、時々離れて監視されているみたいだと」

オレ
「それでどうしろと?」

北脇
「できましたら・・・暫く美香を預かって貰って保護していただければと」

オレ
「それはダメだ」

「なんでもかんでも知りたがってすぐにサーチをかける女を傍に置けない」

「それより外国にでも行ってしまえばいいんじゃないか?」

北脇
「ご存知のように我侭な子ですから・・・外国に行っても騒動を起こしかねません」

「まだ、日本に居る方が、いえ少なくともムトーさんのように美香が太刀打ちできない人に助けてもらう方が安全だと考えます」

オレ
「・・・」

インターフォンではなくてチャイムが鳴った。オレは立ち上がり玄関に向かった。そして玄関の靴箱の上に1本残っていた懐中電灯を手にした。アメリカの警官が持っている棍棒にもなる懐中電灯だった。右手で持って肩に乗せるようして構えた。

鍵を開けた。腰を落とした。玄関ドアを勢いよく開けた。黒い影が飛び込んできた。

光るものにライトを振り下ろした。そして前蹴りを入れた。男は後ろへよろめいた。男は手を押さえていた。手応えはあった。たぶん手の骨は折れているだろう。

ガラスが割れる音がした。美香の悲鳴も聞こえた。オレはそれに気を取られたフリをして男を誘った。

男は真っ直ぐにタックルをするようにオレに突っ込んできた。オレはライトを振り下ろした。男の後頭部を直撃した。男は前のめりに倒れた。

すぐに居間に入った。ドアを閉めた。

男が3人立っていた。北脇と対峙している。北脇は棒を持って正眼に構えている。その後ろに美香が居た。オレはライトを点灯し男たちの顔にそれぞれ向けながら近づいた。

オレ
「玄関の緊急ベルを押した」

「もうすぐ調理場から応援がやってくる」

「うちの警備の連中も飛んでくる」

「手加減できなかったから玄関の男は後頭部が陥没してるかも知れない」

「早く手当てしないと・・・死ぬぞ!」

3人の内、真ん中の男が黙って破れたガラス戸から素早く外に出た。残りのふたりも警戒しながらそれに続いた。玄関で物音がしてすぐに静かになった。

その後も暫く声を出さずにそのまま沈黙が続いた。

オレ
「怪我はないですか?」

北脇
「はい。大丈夫です」

美香
「まったく気付きませんでした」

オレは照明を明るくした。そして電話をかけた。

男1
「ムーさん。どうしました?」

男2
「大丈夫ですか入りますよ?」

玄関から声をかけながら料理場の2人がやってきた。

オレ
「ああ。ここはもう大丈夫だ。それより周辺を見回ってくれないか?」

「源らが居ない」

男1
「はい」

すぐに杉下と川原は玄関を出て見回りに出たようだ。大きな声がした。オレは北脇と美香を連れて玄関を出た。右の庭に杉下らが居た。そこへ行くと・・・源、柳川、塚本の3人が倒れていた。北脇が近づいて活を入れた。源が気がついたようだ。


「あっムーさん。オレ・・・」

オレ
「大丈夫か?頭でも殴られたか?」


「いえ、きっとアレはスタンガンです。警戒はしてたんですけど、いきなりでした」

他の二人も呻き声を上げながらも気がついたようだ。オレたちはとりあえず居間に戻った。

インターフォンが鳴った。オレは受話器を取った。そして玄関を開けた。

松井
「けが人は?」

オレ
「大丈夫だ」

松井の他に1人後ろに居た。

松井
「あと二人は庭から居間の方へ回らせてます」

オレ
「入ってくれ」

居間に戻って、全員がそこへ集まった。そしていきなり襲われた事を話した。調理場の2人にも警戒するように伝えて、調理場に戻した。

松井
「じゃー周辺を見回っていたお前らをスタンガンで気絶させて庭まで運んだわけか?」

「そしてチャイムを合図に、ムーさんを誘いだして、同時に庭からガラス戸を破って押し入って来た」

オレ
「美香を誘拐するつもりだったんだろう」

松井
「訓練された連中ですね」

オレ
「たぶんな。そこらのやくざじゃない」

松井
「ムーさん。よく防ぎましたね?気付いたんですか?」

オレ
「うちの連中ならチャイムを使わないからな」

松井
「お前らは二人一組で周辺を警戒しろ」

「路上駐車している車はすべてナンバーを控えろ」

「絶対ひとりで動くな」

応援に来ていた4人はすぐに動いた。

オレ
「もう居ないだろう?」

松井
「たぶん。でも威力示唆は無駄になっても必要です」

「それからやられた3人、この家の中に誰も残っていないかチェックしろ」

源らもすぐに各部屋を調べるために動いた。

オレ
「北脇さん。その手に持ってるものは?」

北脇
「あーこれですか?特殊警棒です。ちょっと剣道をやってたもので」

オレ
「それを持ってたんですか?きっと強いんでしょうね^^」

部屋の中はオレと松井、北脇、美香の4人だった。オレは冷蔵庫へ行きバドワイザーの缶を4つ取り出した。そしてそれをダイニングテーブルの上に置いた。

オレ
「そっちはガラス片が散ってますからこっちへどうぞ」

それぞれがテーブルの前に座った。松井は立ったままだった。

松井
「明日からセキュリティーを見直します」

「この家の改装も必要でしょうね」

「そしてトレーニングも・・・」

オレ
「お前は明日から出張なんだから、気にせずに行って来い。それはオレが考えてやるから」

松井
「いいえ。オレがやります。相手が悪すぎます。出張は少し伸ばします。」

オレ
「・・・わかった」

その夜は、警備で松井が連れてきた連中が居間で仮眠した。北脇、美香には2階の寝室をそれぞれ与えた。

源らは2階の廊下に椅子を出して警備した。

オレと松井は中2階のオレの自室に布団を敷いた。

オレ
「あの女が狙われているらしい」

「暫くここで預かる事になった」

「純子と同じタイプだ。それにあいつの目を見るな催眠術をかけられる」

松井
「かけられるとどうなります?」

オレ
「あいつの質問にペラペラと答えてしまう」

松井
「とんでもないヤツですね!ムーさんも?」

オレ
「いや、オレは大丈夫だ(笑)」

松井
「それにしてもこんな風に寝るの久しぶりですね(笑)」

オレ
「何喜んでるんだ?」

松井
「いや、ピリピリして面白くなってきたなーと思って(笑)」

オレ
「バッカヤローが(笑)」

翌日、全員でレストランの方の「さくらい」で朝食を取った後、松井が連れてきた4人を帰した。源の他、柳川、塚本らを帰そうとしたが、意地になって闘志をむき出しにして警備の不始末を挽回しようと意気込んでいた。仕方ないのでそのまま母屋に待機させる事にした。

▼9時・・・桜井「はなれ」

オレ
「北脇さんは昨夜の連中をどう思いますか?」

北脇
「やっぱり格闘訓練もされたプロのように思えました」

オレ
「美香は気付かなかったのか?」

美香
「すみません。無警戒でしたから」

オレ
「警戒すれば気付いていたか?」

美香
「たぶん」

松井
「今日中に居間の方は仮の修理をさせますから」

「美香さんの引越しは業者を呼んで今日中に完了させましょう」

「うちからも警備の人間を出しますから安心して下さい」

電話が鳴った。内線だった。オレは受話器を取った。

オレ
「わかった」

「そっちへ行くからとちあえずオレの自室の方に案内してくれ」

オレは受話器を置いた。

オレ
「友人が来たのでちょっと自宅に戻ります」

松井
「じゃーここに居てもアレですから、皆さんで戻りましょう」

オレたちは桜井の正面がから出て自宅の玄関から入り、北脇氏と美香はそのまま階段を使い2階の部屋に戻った。

源と松井が居間に残った。オレは中2階の自室にノックをして入った。手前のソファの前に純子は立っていた。

オレ
「ども^^居間のガラス戸が壊れたもので(笑)」

純子
「何か騒動があったのでしょうか?」

オレ
「ええちょっと」

オレは手で純子にソファを薦めて、オレは純子の正面に座った。

オレ
「昨日もお見えになったそうですが、何か?」

純子
「実は・・・このところ何度も襲われて」

オレ
「どういう事です?」

純子
「自宅に突然・・・すぐに危険を感じて地下に隠れてやり過ごしたんですけど」

純子は話始めた。石本氏と完全に切れてから、何度か監視されている気配を感じていたが、いきなり深夜に襲われたという。本人はすぐに異常に気付いて、もしもの時に石本氏用に用意してあった地下のシェルターのようなところに逃れたという。

それからはホテルを泊まり歩きながら、短い時間自宅に戻る生活が1週間続いていると言った。

オレ
「石本氏には相談したんですか?」

純子
「いえ。もう関わりを絶ちたいと思ってますから」

オレ
「それでも月に1度は会議に立ち会っているのでしょう?」

純子
「はい。でもそれ以外は一切会っていませんし」

オレ
「で、オレにどうしろと?」

純子
「・・・」

オレ
「端的に希望を言って下さい。出来る。出来ないの判断をしますから」

純子
「何をどうしたらいいか。相談できる相手があなたしか居なくて」

オレ
「どうして電話をして来ないのですか?」

純子
「もしかしたら電話は誰かに聞かれているかも知れないので」

オレ
「・・・」

普通はそんな事考えない。考えるという事はこれまでにもそういう事が行われている事を知っている。もしかしたら以前にここを石本氏の指示で盗聴していたのかも知れない。

オレ
「自宅はどちらですか?」

純子
「世田谷です」

オレ
「そこには他に誰が?」

純子
「通いのお手伝いさんがひとり居たんですけど、今は危険だと思って来てもらっていません」

オレ
「わかりました。それじゃー暫くここへ引っ越してくればいい」

純子
「えっ!ここって、この家にですか?」

オレ
「はい」

純子
「そんなご迷惑・・・いいんでしょうか?本当に」

オレ
「とりあえず明日にでも移ってもらえるように準備します」

純子
「すみません。ありがとうございます」

純子は深々と頭を下げた。オレはメモに「今夜はどこのホテル?部屋番号は?」と書いた。純子はオレに声を出さずに伝えた。オレは頷いた。そして一緒に階下に降りた。

オレは源と柳川に純子をベンツに乗せて送らせた。

オレは自室で何本かの電話をした。松井がすぐに入って来た。

オレ
「純子も狙われているようだ」

「明日こっちへ引っ越してこさせる」

松井
「一体何が始まってるでしょうね?」

オレ
「さーさっぱりわからない・・・」

オレ
「正田を呼んだ。どうも盗聴されているようだから家中を調べる」

「その後、桜井も調べさせる」

「岩崎も来る。女の誘拐を依頼された組がないかどうか調べさせる」

「石井にも・・・」

松井
「やくざでしょうか?」

オレ
「ヤクザも使った事があるみたいだ。」

ドアがノックされた。松井が警戒した。柳川が声をかけドアを開けた。後ろに北脇氏と美香が居た。

北脇
「こんな時になんなですが、私は一度戻ろうとかと」

オレ
「あっすみません気がつかなくて、北脇さんはもうお引取り下さい」

「北脇さんひとりなら狙われる心配はないでしょうし、美香さんはうちでお預かりしますから」

北脇
「ありがとうございます。ではとりあえず戻らせて貰います。後で連絡を入れますので」

オレ
「柳川。北脇さんをタクシーを止めれるところまでお送りして」

北脇
「いえ大丈夫ですから」

オレ
「いいえ。訓練も兼ねてますから(笑)」

北脇氏は礼を言って家を出た。美香は残った。

オレ
「美香。誘拐なんて簡単にできるもんじゃない。心配するな(笑)」

美香
「はい(笑)全然心配してません」

オレ
「そう(笑)」

その後、続々と人がやってきた。横山が心配顔で入って来た。オレは簡単に事情を説明した。松村財団の所属となった調査部の正田とその部下が探知機のようなモノを3台持ち込んで、家中を調べ始めた。

電話の受話器から5つ、照明器具の中から3つの盗聴器が見つかった。何れも新しいモノだという。ついでに「はなれ」も調べてもらったがここにも受話器から1つ、照明器具から2つ出てきた。

事件の起きた後に路上駐車していた車のナンバーを正田に渡して調べてもらう事にした。

応急修理のため大工がやってきた。源がそれに対応した。

前田が来て松井と一緒に改装プランを相談していた。彼らの居る居間のダイニングテープルに近づいた。

前田
「一応想定できる改装はすべてやる事にすると、通常の工程を倍の人数で処理させても1ヶ月はかかります。」

オレ
「一体何をやる気だ?(笑)」

松井
「窓は全面防弾以上の処理をします。その為には建物の外壁の強度補強からやり直します」

オレ
「防弾以上と言うのは?」

松井
「小型の榴弾が打ち込まれても大丈夫な強度です」

オレ
「ははは・・・」

松井
「警察か自衛隊関連だとすると、閃光弾か催涙弾を使われてたら、確実に攫われていたでしょう」

前田
「景観やデザインは崩しませんから」

松井
「当然、「はなれ」とそれに続く通路もやり直します」

前田
「塀際も外からの進入は不可能にします」

オレ
「でもオレが狙われた訳じゃないんだけどな?」

松井&前田
「同じです!!!」

オレ
「あっそう。。。」

▼12時・・・「はなれ」

オレ
「それにしても盗聴器があんなに出てくるとは思わなかったな」

松井
「比較的新しいものだと言ってましたから・・・ムーさんまで狙われてるって事ですよね!」」

前田
「とんでもないな。源らに探知機の使い方を覚えさせてそれこそ毎月でもチェックさせた方がいいですよ」

横山
「それにしても何のために?」

美香
「ムトーさんは敵が多いんですか?」

オレ
「んーこの間までは多かったけど、表向きは居なくなったはずなんだけどな」

廊下から声がかかった。仲居頭の春さんともうひとりがビールと昼飯を運んできた。そしてテーブルに並べた。

松井がビールを持ってオレに注いだ。美香に注ごうとしたが美香はグラスを持たなかった。

美香
「今の人・・・おかしい!!!そのビール飲まないで!」

オレ
「えっ?」

松井
「どういう意味です?」

前田
「何か問題でも?」

美香
「今の人もう1度ここへ呼んで下さい」

横山
「電話で呼びましょう」

そう言って横山は受話器をとりコークをひとつ注文して春さんに持ってくるようにお願いしていた。

美香
「ビールも食事も手をつけないで下さい」

オレ
「飲んでも食べてもダメだってさ(ーー;)」

廊下から声がかかり春さんがやってきた。

横山
「すみません。カンパイしようとしたらビールがダメな人が居て(笑)待ってたんですよ」


「そうですか」

美香
「春さん・・・ですか?」

美香の目が青く光ったように見えた。


「はい」

美香
「ちょっとこちらへ入ってきてください」


「はい」

春さんはテーブルの前まできた。

美香
「ビールかお料理に何か入ってます?何か入れましたか?」


「はい。これを入れました」

美香
「それは何ですか?」


「知りません」

美香
「何に入れましたか?」


「栓を開けたビールに入れました」

美香
「誰がそれを渡して入れるように言いました?」


「料理長の片岡さんに頼まれました」

美香
「他に片岡さんに頼まれたことは?」


「ありません」

美香
「そうですか。ありがとうございました」


「はい」

そう言って春は出て行った。

松井
「その紙袋に入っていたものをビールに入れたというのか?」

前田
「あの仲居はなんでそんな事をぺらぺらとしゃべるんだ?」

横山
「料理長の片岡を呼びましょう」

オレ
「・・・」

同じように横山は料理長を呼んだ。オレはビールを隠すように言った。廊下から片岡の声が聞こえた。横山が中へ入るように言った。心なしか片岡料理長は緊張しているようだった。

美香
「片岡さん・・・ですか?」

片岡が美香の方を向いた。そして美香の目が青く光った。また同じような事を聞いた。

美香
「誰に薬を入れるように頼まれたのですか?」

片岡
「いつもの男に・・・」

美香
「その薬は飲んだら死ぬんですか?」

片岡
「眠るだけです」

美香
「連絡はしましたか?」

片岡
「確認してからですから後でします」

美香
「じゃーここから電話してください」

「もうみんな眠ったと」

片岡
「はい」

片岡は受話器を掴み0番発信で外線電話を使った。そして「確認しました」とだけ伝えて電話を切った。

美香
「じゃーもう結構です」

片岡
「はい」

片岡ははなれを出て行った。

美香
「やってきますよ敵が」

オレ
「多くて4人だろう。玄関から当たり前の顔して入ってくるぞ」

「美香はここで眠ったふりをする」

「オレは入って来た先頭のやつを速攻で倒す」

「それを合図にお前らは桔梗の間に居て後ろから襲え!」

「源にも来るように言え」

すぐに松井と前田、横山は動いた。オレは特殊警棒を握って入り口の脇に立った。5分もしない内に廊下から足音が聞こえた。「はなれ」の戸が開いた。その瞬間オレは脇から特殊警棒を振るった。

男の顔面にヒットした。


ぐわぁぁぁ」

そのまま脳天を叩いて蹴り飛ばした。後方で同じような騒ぎになっていた。男達のうめき声ばかりが聞こえた。

美香は部屋の隅に移動していた。

やってきた男は3人。大きなスーツケースを持っていた。松井と前田がガムテープを使ってその男たちの手と足を巻いた。そして部屋の中に入れた。オレは美香を奥の部屋に入れた。

松井
「表を見てきます。源ついて来い」

前田
「帯刀さんに電話を入れて応援を呼びます」

横山
「厨房を見てきます」

オレは男たちを見た。やくざじゃないのは明白だった。口にもガムテープが貼られていた。

前田
「帯刀さんたちは、すぐに10人ほどでやってきます」

「男3人を運ぶ車の手配も頼みました」

松井が戻ってきた。

松井
「表にパネルバンが1台止まっていましたが近づくと急発進して逃げられました。ナンバーは控えてあります」

横山も戻ってきた。

横山
「片岡料理長が居ません」

「春さんは居ましたので連れてきました」

オレ
「とりあえずこいつらを移動させよう。それまで玄関の外に見張りを」

横山
「すでに柳川と塚本が警戒してます」

オレは奥の部屋に行った。

オレ
「美香。お前は横山と一緒にホテルへ行って居ろ」

美香
「ダメです。捕まえた人たちから尋問しないと」

「私しかできません」

オレ
「・・・危険だからダメだ」

美香
「いいえ。暴力を使わずに聞きだせるのは私だけですから」

オレ
「・・・」

美香
「あなたと一緒なら私は安心ですから」

オレ
「わかった」

オレは前の部屋に戻った。

オレ
「帯刀らが来たらすぐにこいつらを引っ張り出してここから出よう」

「オレと美香、松井と源と柳川の5人でベンツで移動する」

「横山と柳川は桜井で待機だ。昨日の4人を応援に呼べ」

「帯刀の応援の半分はここに待機させろ」

「源。移動電話を持ってろ」

「以上だ」

20分もかからずに帯刀らは来た。

帯刀
「ムーさん。大丈夫ですかっ!」

「こいつらですか」

オレ
「すぐに運び出そう」

「何処か連れ込めるところはあるか?」

帯刀
「港の倉庫があります」

「そこへとりあえず運び込んで吐かせましょう」

オレ
「オレたちも同行する」

帯刀
「わかりました」

駐車場の脇に2トンのパネルバンを置かれていた。帯刀らは男たちをひとりひとりブルーシートで巻くようにして隠してパネルバンの荷台に積み込んだ。

外へ出ると源がすでにベンツを回していた。オレたちはそれに乗って帯刀らが乗るセドリックの後を付いて走った。

▼14時・・・東京湾「倉庫」

車ごと入れる大きな倉庫だった。男をひとりだけ車から降ろして椅子に座らせた。

帯刀
「お前らどこの組のものだ?」


「うぅー」

帯刀
「さっさ言わんかこらっーーー」

帯刀は男のほほをビンタで殴った。

オレ
「帯刀・・・いい。オレがやる」

帯刀
「いえムーさんは手出ししないで下さい」

オレ
「大丈夫だ。手荒な事はしない」

「ホースないか?水が出る。なければバケツに水を」

すぐに水が入ったバケツが用意された。オレは美香に近づいた。そして小さく言った。

オレ
「オレが男の顔に水をかける。すぐに目を開けて頭を振るだろう。そのタイミングで目を見て術をかけろ」

美香
「はい」

オレはバケツの水を男の顔に思い切り投げかけた。男は予想通りの反応をした。
美香が正面から男を見ていた。

美香
「この人の質問に答えてね」

オレ
「名前は?」


「糸川・・・照夫」

オレ
「職業は?」


「公務員」

オレ
「どんな仕事だ?」


「警察官」

オレ
「所属は?」


「警視庁第3機動隊、特務課」

オレ
「階級は?」


「巡査長」

オレ
「今回の仕事はなんだ?」


「荷物を運ぶ」

オレ
「荷物とは?」


「対象を」

オレ
「対象とは?」


「若い女」

オレ
「名前は?」


「知らない」

オレ
「リーダーは誰だ?」


「中野巡査部長」

オレ
「どこへ連れて行くんだ?」


「知らない」

オレ
「予想は?」


「巣鴨の技研かと」

オレ
「ありがとう」

オレは松井にそいつにもう1度目と口にガムテープを巻かせて次の男ともうひとりの男に同じように質問した。そしてパネルバンの後ろに乗せた。

帯刀
「警察だったんだこいつら・・・」

オレ
「やっかいな事になった」

帯刀
「それにしても・・・よくペラペラと」

オレ
「ちょっとした催眠術だ(笑)」

帯刀
「催眠術?そうですか・・・」

松井
「どうします?」

オレ
「さっき聞いた連絡先に電話を入れて・・・話をつけるしかないだろう」

前田
「相手は、警察ですよ!それも相当むちゃをする。危険ですよ」

帯刀
「極道より始末が悪い」

オレ
「それでも、交渉するしかないだろう」


▼1週間後・・・


ブランコに乗っている白人の子供が落ちて泣いた。ブロンドの母親らしき女が笑いながら子供に近づいて抱き上げた。

うだるような暑さの中、オレはテーブルの前に居る男2人と向き合っていた。

男1
「どうしても協力していただけませんか?」

オレ
「最初からそう言えば少しは考えたのに」

男2
「手違いはお詫びします」

オレ
「あんたらは自分の上司以外に人に謝った事なんかないんだろう(笑)」

オレはバドワイザーの缶を口にした。

オレ
「協力はしない。2度と手を出すな!」

男2
「ご協力いただけたら・・・ムトーさんの立場は尊重させていただきます」

オレ
「意味がわからない」

男2
「あなたは神戸のY組の相談役で、東京S会でも相談役ですよね?」

「このままではあなたはやくざとして認定されます」

オレ
「協力すれば?」

男2
「もちろんこれまで通り一般市民として・・・」

オレ
「アホか(笑)ここは日本だけど、日本じゃない。

ヤクザや一般市民が使える場所じゃない。

何ならここでとことんやりあうか?」

男2
「我々の組織相手にですか?」

オレ
「ははは^^あなた方は組織のごく1部のグループだ」

「それも絶対に表に出ない」

「そんな組織潰すのは簡単だ」

「厚生省の大臣と警察庁長官に指示を出してもらえばそれで潰れる」

「それも徹底的にやってもらう」

「時間が経てば復活するような甘いもんじゃない」

「そして、今日からあなた方はオレの監視対象だ」

男2
「我々がそんな脅しに乗ると思ってるのですか?」

オレ
「我々?あんたとあんた。たったふたりだ。厚生省や警視庁は関係ない」

「なんなら今すぐにでも、あんたの上司やこのプロジェクトの事をペラペラとここでしゃべらせようか?」

「あの3人は訓練を受けていたはずだろう?」

「でも、なんの抵抗もなくしゃべったよ」

「自分でも気が付かないうちにな」

男1
「・・・わかりました」

「とりあえず今日のところは・・・」

オレ
「ダメだ」

「わかってないな?」

「何故1週間も時間を置いたと思う?」

「すでに手は打ってるんだ」

「ここで約束しないと・・・」

男2
「どうします?」

オレは美香を呼んだ。声を出さずに・・・ブロンドの女がオレの隣に立った。オレは足元のバケツを持って立ち上がった。男達は警戒した。オレはバケツの水を勢いよくかけた。

男1
「なっ何をする」

男2
「ただの水じゃないか(笑)」

美香はサングラスを取った。

美香
「この人の言う通りにするのよ」

オレ
「ここは暑いから部屋に入ろう」

オレたちは一戸建てのきれいな芝生のある家に入った。男たちは無言で黙ってついてきた。ソファに座らせた。

それから3時間・・・オレは詳細をすべて聞きだして隣の部屋のオープンリールレコーダーに録音した。途中3度のテープ交換をした。

オレ
「オレが手を3度叩いたら今聞かれたことはすべて忘れて目を覚ませ」

「お前らは眠っていたんだ」

「いいな」

オレは手を3度叩いた。

男1
「なっ何だここは?」

男2
「水をかけられた」

オレ
「もうほとんど乾いたでしょう?」

男1
「いつの間に・・・」

男2
「こんな時間になってる」

「何をした?」

「オレたちに何をした」

男1
「ブロンドの女が居た」

男2
「まさか・・・」

オレはキャメル・ライトに火をつけた。

オレ
「もうあなた達に用はない(笑)」

「お疲れ様」

男2
「キサマ!!!」

オレ
「G4&G5プロジェクトだと?」

「その前に3人居た被験者は・・・殺してしまったんだな」

男1
「うっ・・・」

男2
「何?」

オレ
「本名、早田、健一郎。横浜だそうだな?」

男2
「お前・・・」

オレ
「お前らふたりでなんとかするんだ」

「出来なければ、全部バラス」

「いいな?」

男1
「君が話さない保障は?」

オレ
「そんなものはない。別に取引でもなんでもないんだから」

「ただ、あなた方の良心に期待してるだけだ」

「以上だ。どうぞお引取り下さい」

「上司から連絡を入れるように伝えてください」

男1
「・・・」

男2
「・・・」

オレは立ち上がった。そして家の出口のドアを上げた。

オレ
「少し涼しくなってる」

男たちは立ち上がり出て行った。オレを睨みつける気力もないのかオレと目を合わせようともせずに出て行った。

オレは電話機のところへ行き。電話をかけた。英語で話をして礼を言った。

後ろの部屋から源と美香が出てきた。


「この盗聴器どうしましょう?」

オレ
「そこのテーブルの上にでも置いとこう(笑)」

美香
「怒ってないかしら?司令官?」

オレ
「さー?今度のパーティーで謝っておくよ^^」


「でもオレ初めてですよ厚木基地にこんな普通の家があるなんて」

美香
「在日アメリカ軍だから、そりゃー住む家もあるわよ」


「まるでひとつの街だ(笑)」

オレ
「さてと、オレたちももう赤坂に帰ろう」

オレたちは荷物をベンツに積み込んで、1週間暮らした家を出て行った。ゲートで許可証を見せて、一般道に出て赤坂に向かった。


Next Story>>>>>
<<<<<Back Story



━…━…━…━…━…━…━
 My History Index
━…━…━…━…━…━…━
| My History | 15:23 | comments(0) | trackbacks(0) | ↑PAGE TOP









http://kaizin.jugem.cc/trackback/1440
CONTROL
PROFILE
━…━…━…━…━
My History Index
━…━…━…━…━

メールフォーム

クリックで救える命がある。

RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
SELECTED ENTRIES
RECENT COMMENTS
  • 迷子のフクロウ保護
    kina
  • ポール ライブ イン オオサカ
    pio
  • 宇野くん元気そうだ!
    るーく
  • 宇野くん元気そうだ!
    みく
  • キーボード
    るーく
  • キーボード
    みく
  • キーボード
    みく
  • キーボード
    るーく
  • キーボード
    みく
  • 週刊朝日
    るーく
RECENT TRACKBACK
CATEGORIES
ARCHIVES

このページの先頭へ