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SOMEDAY


佐野元春:SOMEDAY

佐野元春といえば、日曜日。違ったw 
SOMEDAYなんでが、これは1994年の武道館ですね!珍しい^^

だけど最近はSOMEDAY=EXILEなんでしょうね?wという方はこっちをどうぞ!

何かしら佐野元春の話題が多いと思ったら・・・NHKSONGSでついこの間、やってたんですねー知らんかった。

1986年9月PART3----------------

オレは松井とふたりで品川の一心会の本部に行った。厳戒態勢の中、本部ビルに入り5階の応接室の隣、会長室に通された。松井は手前の部屋で待機させられていた。

田所
「あんた。昨日の今日でもうピンピンしてるとは・・・化け物だな?」

オレ
「あははは^^あの院長ヤブだな?間違って栄養剤の注射でもしたんじゃないか?(笑)」

田所
「オレはもう覚悟を決めてるんだ。せっかく昨日人質を帰してやったのに何でまたノコノコ出てくるんだ?

今日はもうあんた帰れないぜ!」

オレ
「たぶん昨夜から寝ないで、余計な事ばっかり考えて煮詰まってるだろうなーって思ってお見舞いに来たつもりなんだけどなー」

田所
「その自信は一体何なんだ?」

正面に座っている田所はすでに目の下に隈が出来ていて、普段のダンディーさはなかった。目つきは鋭く気持ちは高ぶっているように見えた。

オレ
「純子も無傷で帰してもらったし、オレもこの通りピンピンしてる。昨日の約束どおりなかった事にする!って直接伝えたくて来たんだけど?」

田所
「・・・そんな都合のいい話があるわけないだろう?

それで油断させておいて、ばっさりとやるつもりなんだろう?

極道の常套手段じゃないか」

オレ
「S組の本部長・・・代貸しと並んでナンバー2の位置だ。あんたの推薦していた理事候補はすべて新執行部に入れた。

それでも不満なのかな?」

田所
「正直なところ・・・その事には驚いたよ。あんたが奔走して岩崎らを説得してオレの希望をかなえてくれたって聞いた時は、いい男なんだと思ったよ」

だけど・・・あんたはその後、オレに何も協力を求めなかった。

石本会長があんたを狙って失敗したというのは聞いてる。

それで純子を手放したんだろう?

あの女が居れば・・・オレは天下をとれる。あんたを殺してでも手に入れる。そして・・・

そう決心したんだけどな」

オレ
「この事はまだS会は知らない。もっとも岩崎には石本さんを一歩も外へ出すな!と伝えた

大事な義理ごとがあるらしけど中止させて名代を出させた」

田所
「すべてお見通しという事か」

オレ
「あんたの命は誰も狙わない・・・跡目を譲って引退したらどうです?」

田所
「・・・」

オレ
「このままヤケクソになってケンカしますか?

今まで築き上げてきたものがすべてパーになりますよ

下手したら命も取られる。

あなたなら実業家としてじゅうぶん成功しますよ

まー何もいますぐ引退しろと言ってるわけではありません。

数年後でもいいです。大人しくしてて下さい。

田所
「あんた。どうしてそんなに甘いんだ?

オレはあんたを殺した張本人だぜ!

本気でそんな事言ってるのか?」

オレ
「だから死んでないって(笑)怪我人さえ出ていない。

今なら何も被害はないんだから」

田所
「・・・」

オレ
「そういう事でお願いしますね^^」

オレは立ち上がった。田所は動かなかった。オレはドアを開けた。男が5、6人居た。

オレ
「話し合いは終わった。松井。帰るぞ!」

オレは一番凶悪そうな男のところへ行った。

オレ
「悪いけど、下まで送ってくれないかな?」


「・・・なんでオレなんだよ」

オレ
「一番愛嬌のある顔してるからいいかなーって思って(笑)」


「バカにしてるのか?!」

オレ
「いや、あんたが笑ったら絶対可愛い顔だと思ってね^^今度銀座で一緒に飲もうぜ(笑)」


「コノヤロー!」

オレ
「さー行こう^^」

男は獰猛な顔でオレを睨みつけていたが・・・怒ったように先に歩いた。オレと松井はその男の後ろについてEVに乗り1階まで降りた。

そこにも男達が10人以上いた。そして表に出ると・・・警戒中の男たちが大勢居た。

オレは送ってくれた凶悪な顔の男に礼を言って名前を聞いた。


「・・・今井だ」

オレ
「じゃー今井さん。銀座のシャングリラだ。いつでも来てくれ^^」


「・・・」

オレたちは駐車場に停めていたベンツのところまで行った。松井が運転してオレは助手席に乗った。

すぐ前をさっきの今井が居た。そしてオレたちを見ていた。

松井
「ムーさん。何でいつもあんなバカな事するんですか?

一番凶悪な理性のかけらもないヤローですよ!

そんなのおちょくらなくても・・・」

オレ
「いや、あいつは本当は優しいヤツだよ(笑)」

松井
「ったく」

「それで話はついたんですか?オレは暴れるの覚悟してたんですけどね」

オレ
「ああ。無事に終わった。きっと今頃は向こうもほっとしてるさ」

松井
「オレにはさっぱりわかりませんけどね」

オレたちは南青山のクォーリーオフィスに行った。赤坂にはまだ洋子と純子それに美香が居るだろうと思ってそこを避けた。

オレ
「ただいまー^^」

四方
「あっムーさん^^おかえりなさい」

オレ
「ユーコが今度是非一緒にごはんを食べに行こうって言ってたぜ!」

四方
「それはいいですね^^」

オレ
「ユーコが奢ってくれるらしいぞ!」

四方
「えーーーユーコちゃんが?そっかもうしっかりと社会人やってお給料ももらってるんだ?」

オレ
「何しろ日航のCAだからな(笑)」

オレは大きなテーブルの前に松井とふたりで座った。四方は冷たいお茶を入れてくれた。

四方
「ムーさんはあの子と居ると、ほんと若くなりますもんね^^」

オレ
「オレはいつだって若いだろう?」

四方
「若いというより同じ年頃の男の子みたいになるじゃないですか(笑)」

オレ
「そんな事ないさ(笑)これでも結構厳しい事言ってるぜ?」

四方
「でも、可愛くて仕方がないでしょうね^^」

オレ
「ははは・・・」

松井
「ムーさん。ずっとあの子に遊んでもらってて下さい(笑)」

オレ
「なんだ?オレがユーコに遊んでもらってるのか!知らなかった(笑)」

ニューヨーク時代の事が思い出された。平和で毎日学校へ行って若い連中と一緒になって舞台をやり、mar'sBLGで紗也乃や遠山たちとメシを食う。楽しくて平穏な生活だった。

東京に来てからは、紛争ばかり起こしているような気がした。

電話が鳴った。四方が応対に出た。受話器を押さえた。

四方
「赤坂からです」

松井が受話器を受け取った。暫く黙って聞いているようだった。同じように受話器を押さえた。

松井
「岩崎さんが来られてるようです。桜井の方に通したと」

オレ
「・・・しょーがねーなー戻るか?」

松井は受話器を握ったまま話をしてすぐに切った。

オレ
「四方。食事の段取り決まったら連絡する^^赤坂にも来いよ!」

四方
「はい^^いってらっしゃい」

オレたちは四方に見送られて事務所を出た。ユーコの話題でオレは少し気分が晴れた。こういうギスギスした緊張感が続いてる時はユーコに会いたいとと切実に思った。

▼17時・・・赤坂、桜井「牡丹の間」

オレ
「わざわざ済まない^^」

岩崎
「いえこちらこそ突然お邪魔して申し訳ありません」

大島
「お疲れさまです。お先にいっぱいやってました^^」

オレ
「どうぞどうぞ^^」

オレと松井は岩崎らの正面に座った。すぐに紗也乃がやってきてビールの追加を持ってきた。オレたちは岩崎と大島にビールを注いでもらった。

岩崎
「昨夜は・・・騒動があったんですか?」

オレ
「いや、大したことじゃない。いつもの酔ってケンカした程度だ(笑)」

大島
「今朝になって不穏な動きがあるように感じたものですから、何か関連があるのかと思って・・・」

オレ
「あっオレが昨日会長に動かないようにお願いした件で会長怒ってるんだ?」

岩崎
「いえいえ。ムーさんが言っていたと言えば、会長は大人しく言う事聞いてくれますからオレたちは楽ですよ(笑)」

オレ
「で、オレが死んだとでも言うデマが飛んでた?」

岩崎
「・・・はい」

大島
「やっぱり何かあったんですね?」

オレ
「あるにはあったが、さっきケリをつけてきた」

岩崎
「今日、一心会の品川本部に行かれましたよね?」

オレ
「ああ」

大島
「田所本部長と揉めたんですか?」

オレ
「個人的にちょっと行き違いがあって・・・でもさっき和解してきた」

岩崎
「やはり、狙われたんですね」

オレはビールを飲飲み干した。グラスが空になった。松井が注いでくれた。

オレ
「一心会、田所の次は誰だ?」

大島
「代貸しの高崎・・・かと」

オレ
「そいつは好ましいのか?」

岩崎
「どちらかと言うと武闘派で融通が利かないタイプですから・・・好ましくありません」

オレ
「じゃー誰がいい?」

大島
「ナンバー4の比較的大人しい丸山がいいですね」

オレ
「そいつが跡目をとったら割れるか?」

岩崎
「ムーさん。何をする気です?」

オレ
「ただ準備をした方がいいと思ってるだけだ」

岩崎
「田所を・・・やる気なんですか?」

オレ
「あのさー(笑)その発想はすごく危険でしょう?そんな気があったらこんなに苦労してないよ」

大島
「じゃーなんで跡目問題を?」

オレ
「もしかしたら本部長も疲れて、健康問題とかで引退をするかも知れないでしょう?」

岩崎
「はぁ〜?あの田所が引退?」

大島
「ムーさん。それだけはあり得ません」

オレ
「まーでも準備だけはしておきましょうよ^^」

あとは雑談になって酒を飲みながら過ごした。松井は時折り話に参加する程度で見守っていた。そして1時間ほどで彼らは帰った。

オレと松井ははなれに移動した。

松井
「田所に引退の引導を渡したんですね?」

オレ
「すぐにじゃないけど、考えたらどうだ?程度だ」

松井
「彼らの口ぶりでは、そうはならないみたいな事を言ってましたね?」

オレ
「そうだな」

松井
「でも、ムーさんがそう言うからには・・・そうなるんでしょうね」

オレ
「なんでだ?」

松井
「そんな気がするだけです。1度は本部長にまでしてもらって恩義を感じてもいい相手を殺そうとするんですから・・・馬鹿なやつですね

そしてまた何もなかった事にして貰って・・・

あっ!田所は、会長も狙ってたんですか?」

オレ
「予定ではオレを先にやってから、会長をやるてはずだったんだろう

オレが死んだら、西の組が黙っていない。西の跳ね返りが会長をやった!と敵を外に作って一気に自分らが主流派となって組を押さえ込む。そして適当なところで手打ちに持って行って、トップに立つ

そんな構想だったはずだ」

松井
「じゃー会長が先にやられた場合も、ムーさんがやったと?」

オレ
「たぶんな。女、純子の問題でオレと会長は確執があって、女欲しさに会長をやったとでっちあげるつもりだったんだろう」

松井
「・・・ちょっと無理がありますけど、どさくさまぎれに言い通してケンカを始めてしまえば、関係なくなりますもんね。

そういう事で、今日急いで話をつけに行く必要があったんですね!」

オレ
「当分は大人しくしてくれるだろうと思ってるんだけどな(笑)」


▼21時・・・白金台


インターフォンを押して鍵を使って入った。玄関を上がるとすぐにキョーコは姿を現した。

キョーコ
「おかえりー^^」

オレ
「ただいまー^^」

オレはキョーコを軽く抱いてキスをした。そして一緒にリビングへ入った。オレはキョーコに珈琲を頼んだ。

上着を渡してソファに座った。

オレ
「NYコレクション。うまく行ったって連絡があったよ^^沙耶も機嫌よくやってくれてるらしい」

キョーコ
「うん。沙耶からも連絡あったわ^^楽しくやってるって」

オレ
「そう^^それは何よりだ(笑)」

珈琲のいい香がしてきた。キョーコは最近サイフォンを使い始めた。それはそれで時間的はそんなにかからない工夫をしてたてているようだ。

トレイに乗せてソファの前のテーブルにサイフォンのポッドごと持ってきた。そして目の前でカップにそそいだ。

オレ
「うわー美味しそうだなー^^」

キョーコ
「なんとなくフインキを変えてみたくて^^」

オレ
「サイフォン珈琲は、本山の「あおやま」を思いだすなー」

キョーコ
「そうね」

キョーコはフレッシュミルクとブラウンシュガーを少量入れてスプーンを使った。オレはカップを持ってさっそく口にした。

オレ
「美味い^^」

オレが飲むのを見届けてキョーコは自分のカップに同じようにミルクとシュガーを入れて飲んだ。

キョーコ
「うん。なかなかだわ(笑)」

オレ
「もしかしてコレ新しいサイフォンか?」

キョーコ
「そうよ^^これは4、5人用のサイズのモノなの^^」

オレ
「15の時だ。夏のオリエンタル・ホテルのバイトが終わった9月・・・学校へ行っても全然面白くなくなった。

それまで仲の良かった友人達がひどく幼稚に見えて、それで「あおやま」のバイト募集の張り紙を見てすぐに店に入って面接を受けた(笑)

週に3日、5時から23時までバイトする事になった」

キョーコ
「へー15の時から「あおやま」に居たんだー?」

オレ
「その時に、年齢を誤魔化した。高校生はダメだったので、予備校生と偽った。神戸大学に入れなかったから浪人してる事にした(笑)」

キョーコ
「ユーイチ。その話聞くの初めてよ」

オレ
「うん。だからあの頃の友人はオレより3つぐらい上の連中が多いんだ(笑)

カッコイイ先輩がいっぱい居て、きれいな年上の女性が居て、毎日が楽しかったよ」

キョーコ
「そう^^年上の女性の憧れはその頃からあったのね?(笑)」

オレ
「そうかも知れない」

「その頃のオレは学校へも行かずに、ギターの練習とバイクとバイトだった。

あの頃の常連さんは・・・多彩な人達だった。

バイオリン職人、カメラマン、建築設計のおっさん。声楽家、ホンダの整備員、ふらふらしてる主婦、一番多かったのが甲南大学の学生だったな」

キョーコ
「本山が元気な街だった頃よね」

オレ
「ああ。確かに元気だったな。

その年のクリスマス・イヴだ。もちろんオレは仕事で「あおやま」に入っていた。そしたら閉店する30分前に、常連のトモコさんが来てクリスマス・ケーキを差し入れてくれた。

マスターはお礼にシャンパンを出して、みんなでそれを飲んで食った。

キレイな人でオレはドキドキしてた。カーペンターズの曲ばかりがかかって、店を閉める時オレは最後に出てシャッターを閉めたんだ。

そしたら、トモコさんが「寒いよーユーイチ♪」ってオレの腕に抱きつくようにしてくっついてきた。オレは慌てて腕を払って来ていたジャンパーを脱いでトモコさんに渡したら・・・皆に笑われた(笑)

あの時から、女性の匂いに敏感になったんだと思う」

キョーコ
「なんだかすっごい純情な男の子の話ね^^いいなーそんな思い出があって(笑)」

オレ
「何言ってんだ(笑)キョーコはいつもモテモテだっただろう?」

キョーコ
「んーーーそうかな?(笑)」

オレ
「あんな店が出来ないかなーっていつも思うんだけどな」

「未だにつくれないままだ」

キョーコ
「そう?それはユーイチがすぐにソレを超えちゃったからよ」

「ステキな先輩達をすぐに追い越しちゃって、ユーイチはディスコで自分の世界をつくりあげてたわ。同時にバンド仲間もサークルになって増えてたし」

オレ
「そうなのかなー?

何処かの街で、マスターが居てたまにママも手伝って、色んな年齢層の常連客が居て、色恋の話があって、たまに事件もあって、のほほんとした喫茶店が欲しいよ(笑)」

キョーコ
「そんなのユーイチが居ればすぐに出来るわ(笑)」

オレ
「そうか」

キョーコ
「ほんとは怒ってたんだけどなー」

「ユーイチ。疲れてるのね」

オレ
「えっ!?あーご無沙汰だったしな。ごめん。」

キョーコ
「今日は、許してあげるわ^^おいでっ!」

キョーコは両手を広げている。オレはそこに上体を近づけた。キョーコはオレを優しく抱いた。キョーコの匂いをいっぱい嗅いだ。いい匂いでオレは安心した。オレも腕を回してキョーコを抱いた。

キョーコ
「今夜は、ユーイチは私の子供よ^^」

オレ
「ははは・・・」

キョーコ
「なに照れてるのよー(笑)「うん」って言いなさい^^」

オレ
「うん」

オレはキョーコと一緒に風呂に入り、キョーコのおなかがだんだん大きくなっていくとのを見て不思議な気持ちになった。そしてキョーコに体を洗ってもらって・・・

ベッドに抱き合い、ちょっとだけ入れて緩いセックスをした。おなかに気をつけながらオレはキョーコを抱いて眠った。

大きな安心感とともにオレはよく眠れた。


▼10月3日・・・


北脇
「遅いな・・・いつまで待たせる気だ」

美香
「すみません。ムトーさん」

オレ
「いやいい。気にしないでいいよ。(笑)」

すでに30分以上待たされている。もしかしたらここは時間をそんな風に使うところなのかも知れないと思った。

声がかかり襖が開いた。

女がふたりと男がひとり入って来た。


「お待たせいたしました」

「ちょうど来客がありまして、美樹さんがお相手しておりましたもので」

北脇
「そうですか。ご紹介させていただきます。こちらは今、美香さんがお世話になっているところの社長さんです」

オレ
「初めまして!ムトーと申します」


「そうですか。美香さんがお世話に?それはありがとうございます」

「わたしくし藤原芳江と申します」

「こちらは藤原美樹です。美香さんの妹になります」


「美樹と申します」

芳江
「そしてこちらは氏子総代の香川さんです」


「香川と申します。このあたりで材木商を営んでおります」

北脇
「香川さんもお元気そうでなりよりです。ひさしぶりに会えて嬉しいです」

「宮司の龍斎様は?」

芳江
「あいにく風邪をこじらせて臥せっておりまして・・・」

北脇
「そうですか、それはいけませんな。どうぞお気をつけて下さい」

芳江
「さて、今日はどのようなご用件でしょうか?」

北脇
「はい。そろそろ例大祭に向けて、色々と準備がおありでしょうし、それに向けていくつかの事に決着をつけなければならないと思ってやってまいりました。

秋の例大祭にはちゃんと巫女姫も出席して氏子の方々にもお披露目をしないといけないと思いましてね」

芳江
「ええ。そうですね」

「秋の例大祭に向けて、事務局長以下全員が今準備に追われているところです。そして巫女姫お披露目にも氏子総代の香川さんにご協力いただいて準備万端整えております」

北脇
「さて、それはちょっとおかしいですな?」

「巫女本人の美香さんに何も連絡がないと言うのは解せません。」

芳江
「先ほども申しました通り、龍斎様が風邪で臥せっておりまして、事務局長との連絡がまだのようですが・・・13代の巫女は美樹になる事が決まりました」

北脇
「何ですとっ!ちょっと待って下さいっ!

正当な巫女姫の継承者は、この美香さんです。代々そういう決まりになっておりますし、その能力も十分以上に知らしめられています」

「今回はその事を確認するとともに、13代となる事をお知らせさせていただこうと思ってやってまいりました」

芳江
「北脇さん。この事はもうすでに龍斎様もお認めになり、氏子総代の香川さんの同意もいただいております。今更変更はありません。

それに美香さんはそれがお嫌で藤原を出奔されたのでしょう?」

美香
「私はここに居て大きな危険を感じたので一時身を隠した次第です」

芳江
「大きな危険ですか?この藤原神社に?不思議ですね?ここには何も危険な事は起きておりませんし、起きるはずもございません。

美香さんの思い違いではないでしょうか?」

北脇
「ここを出てから色んな事があり、ようやくその危険が去ったので戻ってきたんです」

この美香さんが命を狙われて、それをムトーさんが助けて下さったのです」

芳江
「そうですか。しかしながら先ほども申しました通り、すでに13代の事は正式に決まった事ですのでどうしようもありません。

北脇
「香川さん。香川さんは、美香さんのお力をご存知ですよね?その他の理事たちもご存知の方がたくさんおられるのに、どうしてまだ時間があるのに早々とお決めになったのでしょう?」

香川
「ふむ。13代を決めてすぐに宮司後継者を決めないといけない事態に陥ってるという状況なんだ。そういう事情なんですよ」

北脇
「13代の巫女はこれまでの慣例や資格からいっても美香さん以外に居ないのは明白です!

理事会を開いてもらって下さい」

香川
「すでに理事会は終わって・・・美樹さんにと」

北脇
「私も理事のひとりですが、理事会開催の連絡は受けておりませんよ」

香川
「そんなバカな!あたなは今回は出席できないと言う事で連絡があったと聞いてます」

北脇
「どなたからそんなデタラメな事が?」

私は異議を申し立てますから、そのように処理していただきます

この事だけは譲れません」

香川
「わかりました。それはそれで調べてみましょう。不備があったのなら北脇さんの異議は認められるでしょう」

芳江
「・・・次の来客がありますので、今日はこの辺で失礼させていただきます」

「美樹さん。ご準備をお願いします」

「皆様、それでは失礼させていただきます」

そう言って藤原芳江は立ち上がった。物静かにずっとひとつの視点を動かさずに前を向いていた美樹はゆっくりと立ち上がり藤原芳江の後をついていった。そして氏子総代の香川氏は少し間を置いてから立ち上がり出て行こうとした。廊下に出る前にこっちに向き直り、小さく頷くように顎を引いてもう1度前を向いて出て行った。

北脇
「今の話で大体の事情はおわかりになったと思いますが・・・」

美香
「やはり父の具合は悪いのでしょうか?」

オレ
「15代を早急に決めなければならない事態とは何です?」

北脇
「健康問題は以前からありましたが・・・さて?、急ぎ調べてみましょう」

廊下から声がかかった。


「お部屋のご用意ができておりますので、ご案内させていただきます」

北脇
「じゃー行きましょう」

北脇氏が先に立った。オレは先に美香を立たせてから一番後ろから付いて行った。

長い廊下をいくつか曲がり、案内された部屋は境内の西側にあたる日当たりのいい部屋だった。北脇氏は二部屋続きになっているその部屋を簡単に確認して手前の部屋のテーブルの前に座った。

オレたちも座布団を使ってそこに座った。

北脇
「来客用の部屋がいくつかありますが、その内のひとつです」

「美香さんはご自分の部屋があります。よろしければ後でご一緒にそこも見ていただけますか?」

美香
「今どうなってるか先に見に行ってきます」

北脇
「うん。そうだな^^」

美香は立ち上がって部屋を出て行った。

北脇
「心配していた通り・・・最悪の状況になってます」

オレ
「じゃー諦めてとっとと帰りましょう(笑)」

北脇
「なっなんて事を!諦めたりしませんよ!

ムトーさんそんなつれない事を言わないで下さいよ

なんとか美香の力になって下さい。お願いします」

オレ
「協力のしようがないじゃないですか?」

「巫女の資格だの、氏子総代、理事、宮司後継者、これまでの通例やら美香と美樹の関係など・・・知らない事ばかりで判断のしようがないですよ」

北脇
「もちろんご説明させていただきます」

オレ
「その前に、さっきの藤原芳江という人は?」

北脇
「はい。藤原神社14代宮司藤原龍斎氏の奥さんで、美樹さんの母親です」

オレ
「じゃー美香は?」

北脇
「実は今の芳江さんの前に死別した奥さんがいらっしゃいまして・・・その時の娘が美香さんです。言い方は変ですが腹違いの姉妹です。もちろん美香さんが姉です」

「後先になって申し訳ないと思ってますが、まずは現状認識が先だと思いましたもので・・・」

北脇氏は話始めた。それは藤原神社の歴史から始まり、延々と続く巫女の役割とその力のあり方にまで及び、いつまで経っても終わらないのではないかと思われた。


美香・・・
「ムーさん。助けてあっ・・・」

オレ・・・
「おい美香!」

オレ
「美香が襲われた!美香の部屋は?」

オレは立ち上がった。北脇氏の動きも素早かった。すぐに廊下に出てオレは美香の居る方向を探り、そっちに向かった。北脇氏はそっちではない!と言ったがオレは自分の勘をたよりに走った。

竹林の向こうに人影を認めてオレは裸足で全力疾走した。足の裏が痛いが構っていられなかった。

ライトバンが停まっている。その車の前にサングラスをしている男が一人たっていた。竹林の傍の小路から男がふたり女を抱えてやってきた。オレはそこに走り寄った。

男達はオレに気付いた。女を降ろして車の方を見た。車からひとり降りてこっちにやってくる。女を降ろした男のひとりがオレの方を見ている。車からやってくる男と合流してオレを排除するつもりらしい。

オレは腰のベルトに付けていた特殊警棒を抜き出した。ボタンを押して振り出せば60センチの警棒になるモノだった。

右手にそれを握りしめて先に女がいる男の方へ走った。男は身構えた。オレは男に近づきその直前で特殊警棒を振り出した。男は意表を突かれ驚いたようだった。オレはそれを正面から振り下ろした。

男は後ろに飛んで避けた。

オレはそのまま女を確保しているもうひとりの男の腕に手首を捻って特殊警棒を叩きつけた。男の腕の骨が折れる感触が伝わってきた。

男の悲鳴とともに女の体が地面に横たわった。

オレの攻撃をかわした男が横から飛び掛ってきた。オレは特殊警棒を両手で持ち。その男の面を狙った。

男は腕で防いでいたが、その男の腕の骨も同様に嫌な感触を伝えて折れた。


「ぐぁーーー」

男の悲鳴。オレはそのまますぐに切り替えして男の胴を叩いた。


「ぐはっ」

男は崩れ落ちた。こっちにやって来る男との間合いが近づいた。あと3歩入ってくればオレの間合いだった。

後ろから声がした。

北脇
「大丈夫ですかーーー美香さーーーん」

大きな声だった。連続してそう叫びながら北脇氏は近づいてくる。オレは男と見合って居た。


「殺すぞ!」

オレ
「こいつらの一人は確保する」

「あのおっさんもああ見えて剣道4段だ」

「チャカでも出さない限り、二人を殺す事なんてできないさ(笑)」

車の前に居た男が・・・拳銃を取り出してこっちへ向けた。そして近づいて来た。最初に腕を叩いた男が素早く戻っていった。

対峙していた男がオレの間合いに入った。オレは少し下がった。拳銃を持った男が近づいてくる。

オレは北脇氏に美香の確保を頼んでその反対方向に少しづつ動いた。拳銃はオレを狙っている。

リボルバー恐らくS&Wの38口径だろう。

対峙していた男はオレが倒した男を引っ張り上げて車に戻ろうとしていた。

拳銃を持った男はオレと7、8メートルの距離を置いて立ち止まった。


「・・・」

何かを言いたそうに見えたが拳銃を持った男は何も言わずゆっくりと後ずさりするように車に戻っていった。オレはそれを見ていた。

男たちは車に乗り込むとそのまま走り去っていった。

北脇
「美香!おいしっかりしろ美香」

オレは美香の方に近づいた。首筋に赤く腫れたところがあった。オレは美香の脈をとった。顔に耳を近づけた。

オレ
「睡眠剤を打たれた。暫く起きないな」

オレは周囲を見渡した。竹林が風で揺れ騒がしかった。オレは特殊警棒のラッチを押して小さくして腰のベルトに戻した。

北脇
「あっソレいいですね(笑)すぐに仕舞えるラッチ式のやつですね?」

オレ
「ははは^^仕舞うのに地面を叩くのはかっこ悪いでしょう(笑)」

北脇
「はい。いつもそう思います」

オレ
「行きましょう」

オレは美香をひとりで担いでさっきの部屋まで戻った。他に人が居るのかどうかわからなかったが、騒ぎには気付いていないようだった。さっきの部屋に戻り奥の部屋をみた。壁際の襖を開けると、そこには夜具が収納されていた。

オレはそれを取り出して美香を寝かせた。

すぐに北脇氏は大げさに大声を出して、襲われた事を知らせるために廊下を動き回っていた。

北脇氏の大きな声と共に、さっきの藤原芳江がやってきた。

芳江
「こっこれは大変。美香さんは大丈夫なんでしょうか?」

オレ
「わかりません。タクシーを呼んでください。病院に連れて行きます」

芳江は一緒についてきた女に指示を出した。

北脇
「到着したその日に襲われた。

この日に私達が来るのを知っていたようですね

そして美香をさらおうとした。相手はプロの連中だった。拳銃まで持っていた。

一体どういう事か説明してください」

芳江
「まーなんて怖い。すぐに警察に電話して来てもらいましょう」

北脇
「・・・」

オレ
「どうしました?警察に来てもらった方がいいでしょう?」

北脇
「ここの警察署長は・・・藤原の氏子なんですよ」

芳江
「すぐに警察とお医者さまに来ていただきます」

オレ
「事情聴取に時間をとられます。その間、美香さんと離れなければならないし

医者に一服盛られるかも知れませんから結構です」

芳江
「そんな事あるわけありません!」

芳江は冷たい視線でオレの方を見た。

オレ
「やり方が荒っぽ過ぎるな・・・」

オレは立ち上がって芳江の方に近づいた。芳江の目はオレを睨みつけていた。

オレ
「真相を突き止めるまで、オレはここに居ます」

芳江
「・・・」

オレ
「協力していただけますね?」

芳江
「出来る限りの事はしますわ」

オレ
「じゃーお世話になります」

「ところで宮司さんはどちらに?」

芳江
「・・・大事をとって入院しております」

オレ
「どちらの病院へ?」

芳江
「懇意にしていただいる東京の病院です」

オレ
「北脇さん。後でそこへお見舞いに行きましょう」

芳江
「いえ。それはご遠慮願います。龍斎さまは何事も気に病む人なので、これ以上心配をかけたくありませんから」

オレ
「コレ以上の心配?何か他に心配事があって臥せっていらしゃるのでしょうか?」

芳江
「とにかく、接見禁止になっておりますからご遠慮ください」

オレ
「そうですか。わかりました。お大事にして下さい」

芳江
「・・・」

「それでは、失礼いたします」

芳江は部屋を出て行った。オレはテーブルの前に座った。

オレ
「飲まない方がいい」

北脇
「えっ?」

北脇はさっき芳江と一緒に来た女が持ってきたお茶を飲もうとしたのでオレはそれを止めさせた。

北脇
「まさか・・・」

オレ
「オレなら強力な下剤を入れる(笑)」

北脇
「ははは・・・下剤ですか(笑)」

オレ
「相手の体力を消耗させてウロウロしにくくさせる」

北脇
「なるほど・・・じゃここで出されるモノすべて手がつけられませんね」

オレ
「さっきの氏子総代と会いましょうよ」

北脇
「あっ!すぐに連絡とってみます」

オレ
「いや、タクシーに乗ってからにしましょう」

北脇
「わかりました」

オレ
「とりあえず美香さんを病院へ連れて行きます」

北脇
「はい」

オレ達はタクシーに乗り駅前の病院へ行った。オレは美香を運び込んで医者に事情を説明した。

高齢の医師は興味もなさそうに間の抜けた質問を繰り返すだけだった。オレは諦めてそこを出た。再びタクシーに乗り込んだ。薬局の前で待ってもらって向進薬の入った市販の薬を買った。

タクシーを駅前のビジネスホテルの前に停めてもらって、オレはそのホテルへチェックインした。続き部屋のツインを3つとった。

ホテルのフロントに説明して、「貧血を起こした嫁を部屋で寝かせる」と言ってオレと北脇氏が美香の両脇を抱えるようにして部屋に入った。そしてベッドで寝かせた。

オレは東京へ電話を入れた。

北脇
「氏子総代の香川さんに連絡しようと思いますが・・・」

オレ
「出来たらここへ来てもらえませんか?」

北脇
「わかりました。それでお願いしてみます」

オレは北脇氏の電話が終わるのを待った。美香の脈を確認したが変化はない。ただ眠っているだけのようだった。

オレ
「藤原神社の氏子ってどれくらい居るんです?」

北脇
「代々続いてますから、この土地の有力者はほとんど・・・」

オレ
「そんなに昔から人気があったんですか?(笑)」

北脇
「何しろ才者の「巫女」が居ますから、もっともそれは隔世遺伝のようで、1世代空くんですけどね」

オレ
「それは美香が子供を産んでもその子には受け継がれず、その子供の子供にしか受け継がれないと言うことですか?」

北脇
「はい。ただ稀に受け継がれる事もあるようですけど、ここ2、3代は隔世でしたね」

オレ
「さっきの美樹さんは?」

北脇
「普通の人です・・・」

オレ
「じゃー能力を持ったおばーさんは?」

北脇
「2年前に亡くなりました」

オレ
「ふむ。そこから跡目問題が発生したんですね」

北脇
「すべてはあの芳江夫人の画策です」

オレ
「そーですか」

「オレは跡目問題には関知しませんが・・・襲撃した連中と依頼主には落し前をつけてもらいます(笑)」

北脇
「結果的には同じになってくれると嬉しいんですけどね」

北脇氏はまた藤原神社の事を話始めた。オレは時間つぶしもあってそれを時折質問しながら聞いていた。

巫女の相談は、美香が銀座でやっていた占いと同レベルのものだった。相手の将来に対する不安、或いは問題を聞く。良い方向も悪い方向も無難に答えるだけなのだが、そこに相手の心を読んで、過去の事を言い当てたりした。相談者は驚いて、巫女が示すアドバイスを信じる。

信じて努力した結果、5割の確立で思うようになると、益々その巫女の言葉を信じるようになる。

藤原神社はそうして、氏子を増やして地元以外にも多くの支持者を獲得していったのだろう。

能力のない美樹でも、その神秘性を演出するだけでとりあえずは誤魔化せるのだと北脇氏は言った。それが藤原神社の力だと・・・

オレはまったく興味がなかった。

ベッドの脇の電話が鳴った。オレは受話器を取った。フロントからだった。電話を替わってもらって松井に部屋番号を伝えた。

北脇
「松井さんが来られたんですか!そりゃー心強い」

オレ
「オレひとりで騒動を起こしたらまた怒られてしまうから(笑)」

ドアがノックされた。オレは松井と源を部屋の中に入れた。北脇氏は松井らに礼を言いながらすぐにこれまでの経緯を話し始めた。その間、源は部屋をチェックし始めた。機器を使って無線盗聴も調べたようだが、異常はないようだった。

松井
「拳銃まで持ってるとは・・・やっかいですね」

「警備を赤坂に待機させてますから1班呼びます」

「源。このホテルに来るように!ベストを持ってこさせろ余分に4人分だ」


「はい」

源はホテルの電話を使わずにキャリーホンを使った。

オレ
「襲った連中は・・・美香に首筋に睡眠剤を打ち込んだ」

「連中は4人。現場のふたりは特警で叩いてあるから、ダメージが残っている」

「たぶん相手は訓練されたヤクザだ。」

松井
「連中の車はどうです?」

オレ
「すでに車種とナンバーは正田に電話で伝えて調べてもらってる」

松井
「帯刀さんところにも待機してもらいましょうか?」

オレ
「いや、今回はうちだけでやる」

松井
「わかりました」

北脇
「さっきの警備の1班と言うのは?」

松井がオレの顔をみた。オレは頷いた。

松井
「1班5人編成で、3班まですぐに動員できます」

北脇
「そうですか。警備チームですか」

オレ
「源。腹減った。マグドでなんか買ってきてくれないか?」


「わかりました^^」

源が戻ってくるまでの間、これからの予定を話会った。そしてオレたちはハンバーガーで遅めの昼食代わりにした。

▼16時・・・

ホテルのフロントから電話があった。北脇氏がフロントに降りて行って香川氏を隣の部屋に案内した。オレと松井はその部屋に行き、源は残って美香の番をした。

オレは松井を紹介し、北脇氏は香川氏を紹介した。そして襲撃された事を香川氏に説明した。

香川
「そっそんな事があったとは・・・」

北脇
「もはや猶予はありません。このままでは藤原神社は悪意の手に染まってしまいます」

香川
「わかった。誰が黒幕かは今は問うまい。

氏子会、理事会を緊急招集して、再度巫女姫の事を再考するよう手続きをとってみる。

それよりも美香さんの安全をどう保障するかが肝心だ。それは北脇さんとムトーさんにお願いしてもいいんだろうか?」

オレ
「私は藤原神社には関心がありません。ただ美香さんの安全の確保と襲撃者の確認をするまでは、居座るつもりです」

香川
「どうかよろしくお願いいたします。私としても出来る限りの協力はさせていただきます」

オレ
「ところで、新生会病院の関係者は氏子会に居ませんか?」

北脇
「新生会病院って、ムトーさん。さっきの芳江さんのお兄さんが院長をやっておられますよ!その病院が何か?」

オレ
「へっ!なんだ。そうだったのか」

オレは詳しい話をその場ではしなかった。松井も気付いていたがその場では黙っていた。オレは他にもいくつか質問した。今後も頻繁に連絡を取り合う事にして香川氏は帰っていった。

松井
「またぞろあのおっさんですか」

オレはホテルの電話を使って一心会本部に電話した。そして田所会長を呼んで貰った。そして今回の事件の事を問いただした。

オレ
「そうですか。じゃー田所さんは一切関わって居ないと言うんですね?」

「じゃー協力してもらえますか?」

「すぐに新生会病院に行って院長を押さえて下さい。オレも向かいますから」

「それじゃーよろしく」

オレは電話を切った。

北脇
「一体どういう事です?」

オレ
「詳しい事情は話せませんが、すでに大方の関係者はわかりましたから、そっちを片付けます。」

松井
「田所。本当に関係ないんでしょうか?」

オレ
「さー?会えばわかるだろう(笑)」

松井
「危険です!」

オレ
「お前が居るから安心だ(笑)さて、美香をそろそろ起こすか?」

オレは部屋を出て隣の部屋に行った。オレはノックをして声をかけた。源がチェーンをかけたままドアを開けた。

松井
「大丈夫だ。開けてくれ^^」

源はドアを開けた。オレたちは中に入った。オレは美香のベッドに近づいて、美香の体を揺り動かした。

オレ
「おい美香起きろ!お前寝すぎだぞ!夜眠れなくなるぞ!」

美香
「んーーーん。あームーさん」

オレ
「頭痛くないか?どうだ?」

美香
「大丈夫。アレ?ここは?あーーー私っ!」

オレ
「そう。お前は襲われて誘拐されるところだったが・・・オレたちが阻止した」

「怖かったな」

美香
「怖いと思う暇もなく何かされて・・・悔しい!今度あったら術かけてやるんだから」

オレは源が買ってきたペットボトルのお茶を美香に渡した。美香はそれを受け取って勢いよく飲んだ。

部屋の電話が鳴った。松井が対応した。

松井
「警備1班が到着しました」

オレ
「よし。出発しよう」

オレたちは部屋を出た。ベンツと警備チームのワゴン車の2台で新生会病院に向かった。


▼18時・・・新生会病院「院長室」


田所
「じゃー豊島。お前が三島に依頼をかけたのか?」

豊島
「・・・以前からの約束だった」

田所
「状況が変わったのはわかっていて、勝手に・・・」

「ムトーさん。申し訳ない。三島がオレの手を離れて動いているようだ」

「すぐに三島はこっちで押さえる手配をかける。少し時間を貰えないか?」

オレ
「院長・・・そいつらの治療をしたな?男ふたり腕の骨を折ってただろう?」

豊島
「・・・」

田所
「素直に聞かれた事に答えたほうがいいぞ豊島」

豊島
「ああ。治療したよ!ひとりはアバラも2本折れていた」

オレ
「で、藤原宮司はどの部屋に入院してるんだ?」

豊島
「503号室だ」

オレ
「何をした?」

豊島
「何も?風邪だと言って点滴を打っている程度だ。もっとも以前からかなり体調は悪いがな」

オレ
「松井。北脇さんと美香を連れて503号に行ってみてくれ。様子がおかしいようだとすぐに連絡してくれ」

松井
「いえ。オレはここを離れられませんから源に行かせます」

オレ
「しょーがねーなー」

田所
「ムトーさん。電話をかけていいかな?三島確保の指示を出す」

オレ
「どうぞ」

松井は院長室を出た。田所は電話をかけている。

豊島
「あんた。スーパーマンだったんだな」

オレ
「まじめな顔をして言う事じゃないだろう?」

豊島
「染色体がひとつ多いスーパーマン。それも能力の高い事例は初めて見たよ」

オレ
「そんな事はどうでもいい。さて、美香を誘拐してどうするつもりだったんだ?」

豊島
「13代の継承式典が終わる例大祭まで大人しくしていてもらう予定だった」

オレ
「それで?」

豊島
「13代さえ決まってしまえば、もう必要ないから解放するつもりだった」

オレ
「違うだろう?あんたは美香を三島に引き渡す条件を出した。三島はそれでやくざとしてのし上がるつもりでいた。

そうか!お前がそれを吹き込んで三島を唆したんだな」

豊島
「・・・あんた。あんたも読めるのか!」

オレが読めるわけがない。ただ推理しただけだったが、図星を刺されて豊島はそう思い込んだ。

オレ
「美香に尋問させるのはかわいそうだからな。藤原芳江、あんたの妹にもオレが聞く」

豊島
「待ってくれ。あんたの条件を聞こう」

オレ
「オレは別に藤原神社がどうなろうと関係ない。

オレを狙ったやつを処分するだけだ。

美香がオレのところに居るのを承知であんたは美香を攫おうとした。

いくら怒らないオレでも一度はお前に殺されて、尚且つこんな舐めたマネをされた。

条件もくそもない(笑)」

豊島
「・・・アレは脅されて」

田所
「ムトーさん。オレもけじめはつけます」

オレは意識を集中したが・・・危険は感じなかった。

田所
「この問題が片付いたら・・・オレは引退する。跡目問題はムトーさんに一任します」

オレ
「わかった」

「院長。あんたは?」

豊島
「もうあんたには逆らえない・・・言うとおりにしよう」

オレ
「いいだろう。。。改めて命令する!それまでは大人しくしてろ!」

「田所さん。三島の確保の動員をかけたんですか?」

田所
「とりあえずヤツの立ち寄りそうなところをチェックさせてます。

それとこのあたりの組に一帯の宿を当たらせてます」

オレ
「確保したら連絡下さい・・・藤原神社へ」

「じゃーよろしくお願いします」

「院長。503号室に行きましょう」

オレと松井は豊島院長を連れて503号室に行った。部屋の前に源が居た。オレは頷いた。源がノックをしてドアを開けた。オレたちは部屋に入った。

そこには豊島の妹の藤原芳江が居た。そしてベッドから半身を起こした藤原宮司が居た。そして北脇と美香・・・特に緊張した様子はなかった。

北脇
「藤原宮司。ご紹介します。これまで美香さんが大変お世話になっていた。ムトーさんです」

オレ
「ムトーと申します。特にお世話した覚えはありません(笑)」

藤原
「私がふがいないせいで色々と皆様にご迷惑をおかけして申し訳ございません」

「13代の事は美香と美樹が話し合った上でもう1度白紙に戻して考え直したいと思ってます」

「どうかよろしくお願いします」

オレ
「そうですか!それは良かった」

オレは芳江の方を見た。同じようにオレに頭を下げていたが、オレと視線が合った時、また冷たい表情でオレを見ていた。オレはまだ何かあると思った。

オレ
「じゃーお大事にして下さい。オレたちはこれで失礼します」

オレたちは病室を出た。北脇氏と美香も付いてきた。オレは豊島院長に後で連絡すると行って病院を出た。駐車場へ向かう前に警備の4人が周囲を警戒した。

駐車場で待っていたのか田所がボディーガードを1人つけてこっちにやってきた。

田所
「私はとりあえず品川の本部に戻ります。何かわかりましたらすぐに連絡を入れますので・・・」

オレ
「はい。どうぞよろしく」

田所は車に戻って品川に戻って行った。オレ達は車に乗った。

松井
「ホテルに戻りますか?」

オレ
「いや、藤原神社に行こう」

北脇
「じゃー美香ちゃん。美樹ちゃんとすぐに話し合えばいい」

美香
「はい。そうします」

オレたちは藤原神社に向かった。

▼20時・・・藤原神社「神殿」

オレ
「それじゃー美香、ふたりだけで話し合えばいい。

警戒は怠るな!危険を察知したら知らせろ

オレと松井、北脇氏はこの神殿の隣の部屋に居る」

美香
「はい。もう油断はしませんから大丈夫です」

先に美香が入り、暫くして美樹がやってきて神殿の中に入った。それを見届けてオレたちは隣の部屋で待機した。

オレ
「敵が起死回生を図るとしたら・・・どうする?」

松井
「もう美香さんを殺す!しかないでしょう」

オレ
「誰が?」

松井
「・・・」

北脇
「たぶん美樹さんは13代をやりたいと思っていないでしょう。能力のないものがそれを行うつらさはわかっていると思いますから

しかし、芳江さんはそうは思っていない。

たとえ13代を美香さんが継承しても・・・美香さんが亡くなればまた美樹さんと言うことになりますね」

松井
「という事は、その可能性をなくさない限り危険は消えないじゃないですか?」

北脇
「そうですね」

オレ
「宮司と言うのはこの神社の主ですか?」

北脇
「それはもうその通りです」

オレ
「宮司の後継者の候補は?」

北脇
「たぶんまだでしょう。13代が決まって、その人の結婚相手が次期宮司になりますから」

オレ
「ふむ」

北脇
「あーそれがいい!」

「美香さんとムーさんが結婚して、ムーさんが宮司になる!そうすれば誰も手が出せません」

オレ
「何言ってるんですか?オレは結婚はできないし、宮司になる気もない」

北脇
「いえ。結婚はここで藤原神社で結婚式を挙げるだけです

特に戸籍上の事は関係ありません。

そして宮司になるのも現在の宮司の推薦があれば問題ないでしょう」

松井
「じゃームーさんが藤原神社の宮司をやるって事ですか?(笑)」

北脇
「そうです。実際の神事は他の神職がやればいい

もっとも多少は勉強が必要ですけど(笑)」

オレ
「そうか。藤原芳江はオレたちがそれを狙ってると思ってるんだ?

だからなんとしても排除しようと必死になっているんだ」

松井
「じゃー今度はムーさんをまた狙ってきますね」

オレ
「だとすると、三島らが居るのは・・・藤原芳江の家だな」

松井
「強襲をかけますか?」

オレ
「いや、相手は銃を持ってる」

松井
「じゃー田所に押さえ込ませます!」

オレ
「待て」

松井
「ダメです。ムーさん!絶対にダメです!」

オレ
「未だ何も言ってないじゃないか」

松井
「ムーさんが囮になって三島を誘い出すつもりでしょ!

自分でケリをつけようと思ってるでしょ!

拳銃持って追い詰められている相手とやりあうのはダメです」

オレ
「もう遅いかも知れないぞ(笑)」

松井
「・・・」

北脇
「もしかして、今から連中が襲ってくるって事ですか?」

「藤原芳江が、私達がここに居ることを確認して三島に伝えたと?」

「でも三島はやくざでしょう?今更そんな何の利益にもならない事をしないのでは?」

オレ
「三島はこのまだだと行き場がない。だけど、オレを殺せば組織ぐるみのケンカになって、自分が生き延びれる可能性が高まる」

松井はすでにトランシーバーで警備の連中に注意を呼びかけていた。

松井
「防弾ベストをとってきます」

北脇
「ムーさん。あなたがあえて危険な事をしなくてもいいんじゃないですかね?」

オレ
「今更何を(笑)だからオレは最初から関わらないって言ったじゃないですか」

北脇
「まーそうですけど、じゃームーさんのガードは私が」

オレ
「あははは^^」

神殿の方のドアが開いた。オレたちは部屋を出た。美香と美樹が一緒に出てきた。美樹はオレたちに礼をしてそのまま廊下の奥に消えた。

美香ともう1度部屋に入った。松井が戻ってきていた。

美香
「やはり美樹は芳江さん。美樹のおかーさんに言われて巫女をやってただけで、本人は望んでいない。との事でした。

そして13代は私にお願いしたいと・・・」

北脇
「じゃーこれで決まったな」

美香
「でも・・・」

北脇
「他に何か問題があるのかな?」

美香
「おかーさんはどうなるのか?と心配していました」

北脇
「美樹は芳恵さんが何をしたのか知ってるのか?」

美香
「どうもうすうすは感じているようでした」

北脇
「ふむ。とりあえず目の前の驚異を取り除くためにも何か処置を考える必要はあるだろう。だけどこのまま藤原神社には残れないな」

「今までは事務方を含めて一手に芳江さんが管理してたが、それも早急に改めなければならないだろう」

オレ
「昼間の部屋に移動しようか?」

北脇
「あそこはまずいでしょう?」

オレ
「どうして?」

北脇
「あの部屋へ案内されたのは、裏の竹林から一番侵入しやすい部屋だからですよ!要するに誘拐しやすい部屋を準備していたと言うことです」

オレ
「だったらもう1度戻れば、同じ経路で入ってくるしかないな!その方がこっちも対応しやすいじゃないか(笑)」

松井
「出来ればもうこのままホテルへ入った方が安全なんですけどね」

オレ
「敵は4人、多くて5人だ。内、負傷者が2人で片腕が折れてるから使い物にならないだろう」

「なんとか三島を捕まえたいな」

松井
「拳銃を持ってるのに?」

オレ
「こっちは何があった?」

松井
「防弾ベストに特殊警棒、大型マグライト、スタンガン、手錠、その程度です」

オレ
「それだけあればいい(笑)夜だからな10メートルも離れると当たらない」

オレたちはスーツの下にケブラー製の防弾ベストをつけた。思ったより薄く動きやすそうだった。そして一旦玄関へ戻りそれぞれの靴を持って最初の部屋に戻った。松井はトランシーバーで外の警備の連中を同様に部屋の周囲へ移動させる指示を出した。

オレ
「悪いが美香お前はここに居てくれ」

美香
「はい。警戒してます。たぶん誰かが近づいて来たらわかると思います」

「あっ車が停まった」

「松林の向こうです」

「2人降りて来ました」

オレ
「じゃー行く!」

オレは手早く靴を履き窓から外へ出た。庭を抜けて正面から松林に入った。松井はトランシーバーを使いながらオレの側面に居た。

オレ
「源。お前はオレの後ろに居ろ。絶対にオレより前に出るな」


「はい」

夜になって風がきつくなってきた。松林が煩いぐらいざわついている。低気圧が近づいているせいか雨になるかも知れなかった。

松林の向こうの街灯の灯り、そしてオレたちが出てきた部屋の灯り、その少しの空間だけが明るく、松林の中は暗かった。

少々の物音は松林を抜ける風の音にかき消される。

黒い影が動くのが見えた。オレは停まった。そしてしゃがんだ。小さな声でオレは源に指示を出した。

オレ
「源。右に少し移動して離れてろ」


「はい」

男達の影が近づいてくる。オレは立ち上がった。竹の密度が濃い。オレは声をかけた。

オレ
「よー三島。懲りずにまたやってきたのかー?(笑)」


「・・・」

彼らも立ち止まり一瞬しゃがんだがオレの声を聞いて距離感がわかったのか立ち上がった。

三島
「お前をやるまでは何度でもやってくるさ」

オレ
「三島。現状認識は出来てるよな?」

「このあたり一帯を地元の須藤組がお前らを探し回ってる」

「すでに田所に連絡してあるからここにすぐに集結する」

「お前の逃げ場はない」

三島
「逃げる気なんかないさ。お前さえ殺ってしまえば、田所会長の気も変わる」

オレ
「お前知ってるだろう?オレが死なないの(笑)それに拳銃持ってるお前とオレがまともにやりあうと思うのか?」

三島
「もう逃がさないさ」

オレ
「アホっ!逃げたのはお前らじゃないか!あの時、殺れなかったお前の負けさ」

三島
「うるさい!!!」

拳銃の引き金が引かれて銃声がした。オレは話をしながら移動していた。弾は近くに飛んできた気配はない。

オレ
「さてと、これで警察にも通報できるな(笑)うちの警備チームが取り囲み始めたぞ」

三島はもう話をせずにこっちへ突っ込んできた。オレは源と横に走った。竹藪の中で鬼ごっこをしているようだった。

敵は術中に嵌った。焦って急いで追って来たら負けだ。周辺の警戒が出来ないまま側面や後方から攻められて取り押させられる。

拳銃の音が1発・・・オレは竹を持ちながら勢いよく左に方向転換してまた走った。そして3発目の銃声。当たらない。向こうも走りこっちも走っている。当たるわけがない。焦りで冷静さを失っているようだった。

男の悲鳴が聞こえた。4発目の発射音、乱闘が起きている。5発目の音、オレは今度はそこへ走った。

オレ
「オレだ。大丈夫か?」

オレは息を切らしながら大きな声を上げた。

松井
「撃たれましたが、大丈夫です!」

柳川
「拳銃取り上げました」

オレ
「こいつらの怪我は?」

塚本
「スタンガンを使いました。暫く動けないでしょう」

残りの連中が集まってきた。

松井
「そこにこいつらが乗ってきた車があるはずだ。注意して近づいて点検しろ」

後から来たふたりが動いて車を見に行った。柳川は倒れている男ふたりに後手に手錠をかけた。

緑川が車を点検して戻ってきた。

緑川
「無人でキーはついたままでした」

松井
「よし。こいつらをその車に押し込めろ!」

「柳川と塚本でその車を駐車場へ移動させろ」

「残りの者は駐車場へ行って待機だ」

男一人に対して二人で両脇を抱えて引きずりながら車に運んで行った。

オレ
「オレたちも部屋に戻ってから駐車場へ行こう」

オレたちは松林を抜けて、さっきの部屋の窓の前に着いた。北脇氏が居た。美香はすでに靴を履いて部屋に居た。オレは窓から美香を抱きかかえて外に出した。そして全員で駐車場へ行きそれぞれの車に乗り込んだ。


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