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Believe



大友康平:「Believe」

大友康平、取り上げるのは2度目か?You Tubeでも数か月おきに新しい映像が上がっているので何度かチェックする。削除とアップのいたちごっこだが、相対的には増えている。^^


1986年11月-------------

藤原神社の拝殿・・・神職が神殿に向かい一礼した。そして第13代の巫女姫の祝詞を奏上した。

神職姿のオレは宮司名代としてそれを受け取り、拝殿の前にいる巫女姿の美香の前に置いた。

そして元の席に戻った。

美香の両脇には氏子会の理事たち約30人が並んで着座していた。

巫女による神楽の奉納が行われた。笛、太鼓、巫女の持つ鈴が鳴らされ巫女たちの舞が披露された。

最後にその巫女達によってお神酒が参列者に注がれて、一斉に飲み干した。

オレ
「これにて、第13代巫女姫となられました藤原美香さんには、今後当神社の巫女姫として末永くお勤め頂きますようお願い申し上げます。」

オレは腰を使って90度の角度で礼をした。

和楽の笛の演奏によって、氏子たちが先に退出した。その後、別の出入り口からオレと美香、そして神職が退席した。

オレはそのままの姿で拝殿横の部屋に入った。

北脇
「ムトー宮司名代。お疲れ様でした。そして美香さんおめでとうございます」

オレ
「あははは^^美香おめでとう(笑)」

美香
「すごく緊張したけど、ムーさんのその姿を見て笑いそうになりました」

オレ
「なんだよ!やっぱり似合ってねーか?」

北浦
「いえいえ。藤原神社の大きな拝殿にはムトーさんぐらいの身長があった方が似合ってますよ^^」

美香
「ムーさん。お辞儀した時、上目使いで私の方を見て舌を出したでしょ

笑いを堪えるのに必死だったんですから(笑)」

オレ
「いや、腰を曲げた時に、腰の骨がポキっと大きな音を立てたから皆に聞こえたかなーと思って(笑)

これからはちゃんと準備運動しないといけないなー」

北脇
「ははは^^そうだったんですか!こっちまでは聞こえませんでしたよ(笑)」

社務所の女性スタッフがお茶を入れて持ってきてくれた。オレは熱い茶を口にした。

氏子総代の香川氏と松井が連れ立って入って来た。賀川氏は美香とオレに丁寧な挨拶をして、テーブルの前に座った。

香川
「お疲れ様でした。^^さて、この次は第15代宮司の継承式を待つばかりですな!」

北脇
「その前にムトーさんには、藤原神社宮司としての勉強を1週間行ってもらう事になりますので、どうぞよろしくお願いします」

松井
「1週間・・・ですか?」

北脇
「はい。とりあえず1週間、そして15代を継承した暁にはまたいくつかの儀式とお勉強というか修行がありますので、それはまたおいおいと^^」

オレ
「なんか・・・嫌な予感がするなー(ーー;)」

北脇
「いえいえ藤原神社は単立神社ですから神社本庁の監督を受けません。すべて藤原神社1社での慣例だけですので、ご安心下さい」

オレ
「んーーーそう?」

美香
「大丈夫ですよムーさん。私もここに居ますから安心してください^^」

松井
「神聖な儀式で、禊もして、女人禁制なのに、巫女姫さんは大丈夫なんですね?」

北浦
「その間、女性との接触はいけませんが、唯一巫女は構いません。もちろんその必要を認められた時に、口を聞く、話をする程度ですが・・・」

オレ
「あっそう。それ以外はダメなんだ?」

北浦
「はい。ダメです。それに巫女というのは処女でなければならないのですから」

松井
「じゃーさっき神楽を奉納した巫女さんたちは全員処女なんだ?^^」

北浦
「あははは^^一応そういう事になってます」

オレたちはバカバカしい事を真剣な表情で聞いていた。

香川
「さて、ムトーさん。

この間、氏子会の理事をもなさっておられた。小佐野さんが急逝された事で小佐野さんの弁護士の方からお話がありました。

ムトーさんが15代になられる事を条件に、その遺産を藤原神社に寄付するとのご遺言だそうです」

北浦
「一体どれほどの金額になるんでしょうね」

香川
「さーそこまでは聞いていませんが、相当の金額だとその弁護士さんは言ってました」

オレ
「神社に寄付されるんだったらいいんじゃないですか?何か問題がありますでしょうか?」

香川
「実は、ムトーさんが15代を継承するにあたって、他の理事たちからは異論が出ていたのは事実なんです。

もちろん13代巫女姫の誕生にあたって、ムトーさんのご尽力があって初めて出来たことだとは他の理事たちも喜んではいたのですが

それと15代宮司の継承者とはまた別の話だという意見もありました。

それが、この小佐野さんの寄付の話で・・・全員賛成となった次第です」

北浦
「ようするにムトーさんが15代宮司になる事によって、小佐野さんの莫大な遺産が藤原神社に寄贈されるという事実の前に、誰もが反対できなくなった。という訳です」

オレ
「・・・」

香川
「いえ。ムトーさん反対していたと言ってもごく少数ですしすでに氏子会では決定していた事ですから、どうぞお気になさらないで下さい」

北浦
「ムトーさんどうしました?」

オレ
「今の段階でオレが15代になれない制度上の問題はありますか?」

北浦
「すでに14代の承認を得て、署名していただいておりますから問題はありません。それに氏子会が仮に反対を決議したとしても、手続き上それで継承出来ないという訳でもありません。

ただ氏子会の賛同が望ましいと言う事です」

オレ
「そうですか。わかりました」

▼11月5日・・・赤坂「自宅」

10時・・・居間

純子
「ムーさん。ずいぶんお世話になりありがとうございました」

オレ
「ん?あー世田谷の自宅の改装が出来上がったんだ?」

純子
「はい。新しい気分で過ごせそうです」

オレ
「そう^^それは良かった」

オレは居間のソファで源が淹れた珈琲を飲んでいた。純子はオレの正面に座り同じように過ごしていた。

純子
「色んな事がありましたけど、ムトーさんと一緒に過ごせて私は楽しかった。ここを離れるのは本当に残念なんですけど」

オレ
「オレも明日から1週間、藤原神社に缶詰なんだ(笑)」

純子
「聞きました。藤原神社の宮司になる為のお勉強があるとか?」

オレ
「うん。やっかいな事を引き受けさせられて大変だ」

純子
「終わったら・・・是非世田谷の方にも来て下さいね^^」

オレ
「うん。引越し祝い持って行くよ^^」

赤坂の自宅が襲撃され、世田谷の純子の家も同様に襲撃された一連の事件・・・それらが解決して、また世田谷の自宅の改造が終わった今月、純子は3ヶ月ぶりに自宅に戻る事になった。

その間に、一緒に危機を乗り越えた仲間意識もあって、オレは何度も純子を抱き、伏龍は完全にオレのモノとなった。

同様に美香もこの家に居たが、先日の藤原神社13代巫女姫の継承を終えて、そのまま藤原の家に戻っていった。

ようやくこの家はオレと源、ふたりだけの元の家の姿に戻ることが出来そうだった。

▼11時・・・中2階自室

松井
「明日から1週間、よろしくお願いしますね^^」

横山
「女人禁制で清く正しく過ごす1週間ですね^^いいじゃないですか!」

オレ
「よしじゃー今夜はみんなで吉原に繰り出すか^^」

松井
「ははは^^いいですねー(笑)でもオレは遠慮しておきます。理恵ママにこれ以上睨まれたくありませんから」

横山
「あっオレも遠慮します^^理由はいっぱいありますので省略します(笑)」

オレ
「ちぇっこんな時、前田がなら大喜びで賛成してくれるんだけどなー」

横山
「前田さんも関西で忙殺されてなかなかこっちには来れないようですけど、電話で頻繁に連絡を取り合ってますから大丈夫です」

松井
「その代りと言うか、大阪の方を良く見てくれてるようだからオレは助かってる」

オレ
「そーだな。じゃーオレはちょっと出てくるよ^^」

横山&松井
「いってらっしゃい」

タクシーに乗って南青山のクォーリーマンションに行った。1Fのカフェから沙耶に電話を入れ1Fに着いた事を告げた。

沙耶はすぐに降りてきた。すでに出かける準備をして待っていたようだった。オレたちはカフェを出て、もう1度タクシーに乗り赤坂のホテルへ向かった。

いつものように日本庭園の中にあるテッパン屋へ入った。ワインとサーロインをそれぞれオーダーした。

オレ
「明日から1週間、質素な食事だからな!今日はしっかり食うぞ(笑)」

沙耶
「そっか。明日からなんだ?女人禁制で質素な食事とは可愛そう(笑)」

オレ
「強制的にそういう状態になるのは・・・なんか嫌だな」

沙耶
「でも、宮司になる為なんでしょう?」

オレ
「うん。まーそうだけど」

沙耶
「じゃー今日は私がしっかりとお世話するわ^^」

オレ
「あははは^^嬉しいなー(笑)」

オレたちはワインでカンパイした。

沙耶
「でもユーちゃん。1週間もしなかった事ってこれまでにある?」

オレ
「そんなのしょちゅうだよ」

沙耶
「ウソばっかり(笑)」

テッパンに乗せられた肉が運ばれてきた。すでにカットされていて箸で食べれるようになっている。オレは早速食べ始めた。

沙耶
「いよいよ来月ね^^」

オレ
「ん?」

沙耶
「キョーコちゃんの出産。予定日通りだといいなー^^」

オレ
「なんで?」

沙耶
「だって24日でしょう?クリスマス・イヴで世界中の人たちがお祝いしてくれているようでいいじゃない^^」

オレ
「ふむ。変な事聞くけど・・・沙耶は嬉しいか?」

沙耶
「あったりまえでしょう!ユーイチとキョーコちゃんの子供よ!という事は私の子供と一緒じゃない♪」

オレ
「なんで『私の子供と一緒』なんだ?」

沙耶
「私達の関係から言うとそうよ!そうじゃないって思ってるのっ!(ーー;)」

オレ
「いや、オレは男だからさーそのあたりの心理がよくわからないんだ」

沙耶
「ユーイチはキョーコちゃんと付き合って何年になる?」

オレ
「18の時からだから・・・13年か」

沙耶
「私も18の時からよ!だからもう10年よ」

オレ
「そうだな」

沙耶
「色々あったけど、私たちは3人で愛し合ってるわ^^きっとこれからもそうでしょう?

だからユーイチとキョーコちゃんの子供は私の子供でもあるわけよ

自分の本当の子供のように可愛がるの^^楽しみだなー(笑)」

オレ
「そう^^そんな風に思ってくれるとオレも嬉しいよ」

沙耶
「うん。ずっと皆で居ようね^^」

オレ
「そうだな」

食事が終わるとすぐにオレたちはホテルへチェックインした。そして部屋に入って、濃厚なセックスをした。言葉通り沙耶はオレのためにするセックスをしてくれた。オレは甘えて、沙耶の穴で何度も放出した。

沙耶も理恵と同様に子供が出来ないという。

それ故に沙耶の「自分の本当の子供のように可愛がる」と言った言葉にオレは理恵の気持ちを見る事が出来たと思った。




▼11月6日・・・

9時・・・川越市「藤原神社」

北浦
「まず裏の井戸で素っ裸になって、禊を行ってもらいます。

そして、この狩衣に着替えていただいてから奥の部屋で講義を受けてもらいます

講師は土岐社務長と神職の大見さんのおふたりが担当致しますので、よろしくお願いします」

土岐
「藤原神社、社務長をさせていただいております土岐でございます」

大見
「20年近くこの藤原神社で神職をさせていただいております大見と申します」

オレ
「ムトーです。どうぞよろしくお願いします」

土岐氏はすでに60を超えているだろう。15代の継承式が終わったら引退する予定になっていた。そして神職の大見氏はまだ40を少し過ぎたばかりで、まだまだこれから頑張ってもらいたい人材のように見えた。

オレは早速裏の井戸のところへ案内された。専門職として働いている巫女の高瀬に案内された。

高瀬
「ここになります。そのポンプを手で押して頂くと、水が汲み上げられます。

オレ
「ねー今日は朝から冷え込みがきつくない?」

高瀬
「はい。今朝はは寒かったですね」

オレ
「きっと水。冷たいだろうなー(笑)」

高瀬
「井戸の水は意外と冷たくないんですよ!大気の温度の影響を受けにくいそうですから」

オレ
「ははは・・・そう」

オレは覚悟を決めて素っ裸になった。そして井戸の前に行った。きっとオレのケツは高瀬に見られているだろう。

女人禁制と言いながら若い高瀬は一応巫女なので、オレと接触してもいいらしい。それもこんな風に説明を含めた案内をするのは必要と思われる時の規定範囲となってるようだ。

オレは井戸の上についている手押しポンプを何度か押した。ポンプの前のパイプから水が勢い良く出た。

オレ
「高瀬さーん。水は頭から被るの?」

高瀬
「はい」

オレ
「何杯ぐらい被ればいいかなー?」

高瀬
「あっ言い忘れていましたが、7度お願いします。

そこに木桶が7つ用意されていますので、よろしければ先にそれに水を入れて、順番に頭から被っていただければよろしいと思います」

オレ
「あっそう。。。7度ね」

オレは言われた通りに先に木桶に7杯分の水を汲んだ。すでに体のあちこちに水が跳ねて、その度にドキっとする冷たさを覚えていた。

オレは覚悟を決めた。

横に並べた木桶の前で蹲踞した。そして木桶を両手で持った。

オレ
「ひとーーーつ!」

オレは両手で持った木桶を頭の上でひっくり返した。頭から首筋に流れる時にその冷たさに飛び上がりそうになった。

そしてその次の木桶を持った。

オレ
「ふたーーーつ!」

オレは声を出しながら気合を入れた。

そして3つ目、4つ目・・・最後の木桶を持った。

オレ
「ななーーーつ!」

すでに冷たさは感じていなかった。この調子なら何杯でも大丈夫だと思った。オレは立ち上がって振り向いた。

オレ
「ははは^^どんなもんだ(笑)」

高瀬
「あっ!」

オレ
「ん?あー小さくなるどころか大きくなってしまった(笑)あははは^^」

オレは高瀬の居る方に近づいた。

高橋
「・・・」

オレ
「タオルがあればいいなーと思って^^」

高橋
「あっはい。どうぞコレを」

高橋は手に持っていたタオルをオレに渡した。そしてオレはそれで体を拭いた。
髪をタオルで拭くが長髪ですぐには乾かない。高瀬がそれを新しいタオルを用意して手伝った。

オレは櫛を手渡されてそれを使い、髪を後ろで束ねた。高瀬は巫女がそうするようにオレの髪を後ろで括った。

そして用意されていた褌をつけ、白の狩衣を纏った。

オレ
「なんかゆったりしすぎてて、スースーする感じだな?」

高瀬
「慣れると楽ですよ」

オレ
「もしかして、さっきの禊は巫女さんたちもするの?」

高瀬
「はい。例祭のある時などは・・・」

オレ
「やっぱり素っ裸だよな^^」

高瀬
「いえ。下衣をつけたまま行います」

オレ
「あっそう。。。」

高瀬
「残念そうですね?」

オレ
「ははは・・・」

それからオレは部屋に戻った。最初は日本の神社に関する一般的な講義が始まった。

2時間びっしりと休憩なしに行われ、12時になり昼食のための休憩となった。彼らは立ち去り、オレひとりだけがその部屋に残された。小さく声がかかり、さっきの高瀬が入って来た。

お膳をオレの前に置いた。

白いご飯。お汁。何か野菜のお浸し。

オレ
「これは一の膳?」

高瀬
「申し訳ございませんが、それだけです」

オレ
「やっぱりお替りも無しだよな?」

高瀬
「はい」

オレ
「そう^^ありがとう」

オレは諦めて行儀良くそれを食った。いつもの食べ方ではなく、良く噛んでそれを食った。あっという間だったが・・・

そして午後の授業、また2時間ほど続けて行われた。その後、15分程度の休憩があった。熱いお茶が1杯出た。この時は3人でそれを飲んだ。

休憩が終わるとまた講義が始まった。

時計はないが、時間の感覚はわかる。夕方、たぶん4時過ぎだろう。

土岐
「と言う事で本日はこれまでです。

明日は7時から始めますので、よろしくお願いします」

オレ
「ありがとうございました」

彼らは必要以外の事は話さないようにしているようだった。特に冷たいわけじゃないだろう。それが儀式のように彼らはそうしているに違いない。

廊下から声がかかり、襖が開いた。そして高瀬がお膳を持って入って来た。そしてオレの前に置いた。

オレ
「夕食ですか?」

高瀬
「はい」

オレ
「昼食と同じように見えますけど?」

高瀬
「はい」

オレ
「食事が終わったら・・・風呂ですか?」

高瀬
「お風呂はありません。朝に禊を行ってますから」

オレ
「もしかして、アレは毎日行うのかなー?」

高瀬
「はい。毎日行って頂きます」

オレ
「わかりました(笑)」

オレは膳をあらためて見てみた。野菜のお浸しの種類が違っているようだった。違いはそれしか見当たらなかった。

オレはゆっくりと時間をかけてそれを食ったつもりだったが・・・やっぱりあっと言う間だった。

これが1週間続くと思うとぞっとした。

高瀬が入ってきて、お膳を片付けた。その時に押入れの夜具を説明してくれた。布団だけは普通の布団が使えるようだった。オレはすっかり囚人の気分になっていたので、それにはほっとした。

外出は禁止。

部屋には数冊の本が置いてあった。本でも読んで眠くなったら布団を敷いて寝ろという事らしかった。

オレは先に布団を敷いて、衣装を衣文掛けにかけて、白い下衣に着替えた。持ってきたボストンバックを引き寄せた。底部のジッパーを開き特警を出した。それを枕の下に入れた。

そしてもうひとつ、竹刀袋に入った木刀を取り出した。実践用に選んだ木刀に金属製の鍔を差し込み取り付けた。布団の上に座ってゆっくりと木刀を上下に素振りを繰り返した。右手での片手打ち、左手での片手打ちを繰り返す。

これからは毎朝の体操代わりに素振りと実践用のトレーニングをしようと思っていた。

照明を消し布団に入った。静かだった。建物内に人がいるのかどうかも定かでないぐらい静かだった。オレはすぐに眠った。

目が覚めた。

怒声が聞こえた。オレは布団の横に置いてあった木刀を握った。ゆっくりと起き上がった。玄関付近で争う音が聞こえた。

オレは廊下側の引き戸を強く開いた。そしてゆっくりと廊下に出た。騒がしい玄関の方に出た。

松井と柳田が居た。こっちに背を向けていたが特警を構えているようだ。対峙するように男が3人。長い日本刀を持った男が真ん中に一人、残りの2人は匕首を持っていた。

玄関の向こうにも男が居た。

オレ
「怪我はないか?松井」

松井
「ありません。外にもうひとり合計4人居ます」

オレ
「振り向かなくていいぞ!後ろは大丈夫だ。オレも木刀を持ってる」

半身に構えながら特警を持っている柳田は、オレの声を聞きながら少しスペースを作った。

松井
「気をつけて下さい。日本刀持ってるヤツやりますよ!」

オレ
「大丈夫だ(笑)全員生け捕りにしてやる」

「柳田。少し下がってろ」

男たちはオレ達の様子を見ていた。突っ込んで目的を果たすか?外に出て逃げるか?迷っているようだった。

オレは木刀を片手で下段に持ち前に出た。

日本刀を正眼に構えていた男が反応した。段差のある上がり間口に片足をかけた。牽制するように日本刀を前に出して上がろうとした。

その瞬間、「バシッ!」という音が隣から聞こえた。日本刀の男が呻いて顔面を手で押さえた。

オレはその機を逃さず間合いを一気に詰めた。下から切り上げ、日本刀を弾き小手を叩きそのまま突きを決めた。

伸びきったオレの体を狙うように、右隣の男が予想通り突っ込もうとした。オレは木刀を引きながら、そいつの横面を切るように打った。

日本刀の男は喉を押さえて床に転げ周り、匕首の男は倒れていた。

外に出ようとした左側の男も悲鳴を上げて顔を押さえた。松井が飛びつくようにして特警を振るい頭を叩いた。それで終わった。

松井は外に出た。オレと柳田は警戒しながら日本刀と匕首を拾った。

オレ
「柳田。それはなんだ?」

柳田
「はいスリングショット!パチンコです」

ソレは子供の頃遊びで使ったゴムの真ん中に小石を挟んで飛ばすものだった。両脇の男たちが声を上げて顔を押さえたのは、それが命中したからだとわかった。

柳田
「狩猟用に使う強力なタイプです。パチンコの玉をこの距離で使いましたから、相当のダメージのはずです」

オレ
「うん。助かったよ(笑)ありがとう」

松井はトランシーバーを使い。外にいる警備の連中を集めた。倒れている3人に後ろ手に手錠をかけさせた。警備チームの4ナンバーのワンボックスに運ばせた。

松井
「外に居た男ひとりも、警備の連中がすでに確保しました」

オレ
「そう。こっちの怪我人は?」

松井
「ありません。オレと柳田は日本刀の男に切られましたが大丈夫でした」

オレ
「そのジャンパーか?」

松井
「はい。ケブラーと特殊繊維で防刃性も完全でした^^」

オレ
「柳田は?」

柳田
「はい。ふとももを掠った程度でなんともありません。普通のズボンだったら危なかったと思いますけど(笑)」

オレ
「ははは^^相手は驚いただろうなー(笑)」

周りの連中も笑った。少し緊張感がとれたようだった。

松井
「あいつら一応新生会病院に運び込んで手当てさせます」

オレ
「オレも行く」

松井
「・・・わかりました」

オレは部屋に戻りスーツに着替えた。女が声をかけて入って来た。

美香
「ムーさん。大丈夫?」

オレ
「お前は知っていたのか?」

美香
「はい。松井さんから警備に入る事を事前に知らされてました」

オレ
「ふんっ!オレだけ知らないままか。

まーいい。狙いはオレだから美香は大丈夫だ。警備を1班残していくから安心して部屋に居ろ」

美香
「私も行くわ。ここに居ても不安で眠れないし」

オレ
「・・・じゃー来い」

オレは美香を連れて外に出た。ベンツが回されていた。そしてベンツに乗り込んで新生会病院に向かった。

▼22時・・・新生会病院「院長室」

豊島
「頭を怪我していた2人は顔面骨折もあった。全身打撲のひとりは大したことないが・・・

喉をやられたやつは危なかった。手当てが遅ければ死んでいたかも知れない。

手も骨折をしてたな」

松井
「あいつらは日本刀と匕首でムーさんを殺そうとしたんですよ!生きてるだけマシでしょう」

豊島
「・・・」

オレ
「お世話になりました」

豊島
「・・・いや。大したことありません」

松井
「ムーさん。元気な3人だけ連れて行きますか?」

豊島
「私は当直室に居ますので・・・」

そう言って豊島は部屋を出て行った。ドアの外に警備が2人。部屋の中にはオレと松井と美香の3人だけになった。

美香
「ここで何か聞く?」

オレ
「えっ?」

美香
「この間みたいに術をかけるわ」

オレ
「・・・」

松井
「そうしていただけると手っ取り早いのですが・・・」

オレ
「悪いけど、美香。そうしてくれるか?」

美香
「任せて^^」

松井は警備に指示して男3人を連れてくるように言った。

オレ
「それにしても、警備の連中の装備も大げさだったな?」

松井
「拳銃に対抗するにはもう少し研究が必要ですけど、今回は出番がありませんでした。

用意したのは、ボウガン、クロスボウです。これが5台。それにスリングショットこれは全員持たせてました」

オレ
「柳田が使ったやつだな?オレの後ろに隠れてそれをセットして、再び隣に現れた瞬間撃ちやがった(笑)アレがなかったら日本刀持ってたやつ!きっと剣道の有段者だったから手強かったはずだ」

ドアがノックされ声がかかった。松井がドアを開けた。後ろ手に手錠をかけられたままの男2人が引き出されていた。

オレ
「ひとりをそっちの部屋へ」

オレは院長室の手前の部屋に松井と美香の3人で移動した。松井は男をテーブルの前の椅子に座らせた。そして口に張られているガムテープを剥がした。

松井は美香の方を見た。そして男がしているアイマスクをはずした。


「うっ」

美香
「こっちをみなさい!

いい?この人の聞くことに正直に答えるのよ!

わかったら返事をして」


「・・・ああ」

オレ
「藤原神社へきた理由は?」


「男を・・・殺しに」

オレ
「何人で来た?」


「4人で」

オレ
「仕事が終わったらどこへ連絡する事になっていた」


「本部だ」

オレ
「お前らはどこの組織だ?」


「大日本国政会だ」

オレ
「本部は何処だ?」


「八王子」

オレ
「誰の指示で襲った?」


「王都さんだ」

オレ
「そいつは本部で連絡を待ってるのか?」


「王都さんは一緒に来た」

オレ
「日本刀を持っていた人か?」


「そうだ」

オレ
「殺す相手の名前は?」


「知らない」

オレ
「じゃーお前は王都の指示で一緒に来て、男を殺す事だけしか知らされてないのか?」


「そうだ」

オレ
「お前の名前は?フルネームで答えろ」


「桂、圭吾」

オレは本部の電話番号を聞いたが男は覚えていないようだった。松井に変わってもらいもうひとりの男の尋問をさせた。連絡先を先に聞いた。男は電話番号を答えた。尋問を切り上げた。それ以上必要なかった。

警備の連中にそいつらを喉をやられた男の個室に連れて行かせた。

オレ
「美香。ありがとう」

美香
「いいえ。これぐらい何でもないわ」

オレは受話器をとり大日本国政会本部に電話した。数回コールされた後、男が出た。


「はい」

オレ
「桂です。連絡遅くなりました」


「おう!でどうだった」

オレ
「ええそれが・・・」


「はっきりしろ!殺ったのかどうなんだ」

オレ
「死んだかどうかはわかりません」


「ちっ!王都はどうした?王都と代われ!」

オレ
「あのーあなたの名前はなんでしたっけ?」


「バカヤロー何寝言言ってたんだ!さっさと・・・」

「お前、本当に桂か?」

オレ
「ええ。頭を殴られてちょっと失神してたもので、名前教えてください」


「一旦電話を切って、もう1度王都に連絡させろ」

男はそう言って電話を切った。

オレはすぐに赤坂のS会本部に電話した。そして大日本国政会の電話番号を言って、今そこに居る男の名前を調べてもらうように言った。10分後にかけ直すと言って電話を切った。

オレ
「ところで松井。お前わかってたのか?オレが襲われる事を」

松井
「何かひっかかるモノを感じていたんですけど、北脇さんと話してわかりました。

ムーさんはわかってたんでしょ?」

オレ
「なんとなくな。杞憂に終わってくれればいいと思ってたんだが」

美香
「ムーさんはどうして襲われる事がわかったの?」

松井
「北脇さんが言ってました。

この間、小佐野さんの遺産はムーさんが15代を継ぐ事が条件で藤原神社へ寄付される。と言う話を総代がした時・・・ムーさんは変な事を聞いたと

15代を継承できない事務的な手続きはあるか?と

きっとこの時、ムーさんは予測したんでしょうね。自分が15代を継承する前に殺されたら小佐野さんの遺産は、藤原神社に入らない。

そうなるとその遺産はどうなるのか?

もしそうなった場合、通常の手続きになれば法定相続人に分配される。

法定相続人の中に藤原神社へ寄付される事をなんとしても阻止したいと考える人間がいればどうするか?・・・もしかしたらムーさんを殺そうとするやつが出てくるかもしれない」

美香
「そんな・・・」

松井
「人、ひとり殺すリスクを負ってでも手に入れたい。莫大な財産なんでしょう」

美香
「じゃームーさんは、襲われる事がわかっていてひとりで藤原神社へ来たんですか?」

オレはそれには答えずにS会本部に電話を入れた。

オレ
「そうですか。わかりました。

いえ、大丈夫です。

これからそこへ向かいます。

はい。ありがとうございました」

オレ
「美香。お前はもう藤原神社へ戻れ!警備を1班つけるから」

美香
「嫌よ!まだ危ない事が残ってるんでしょ」

オレ
「もう危なくない。後は話し合いだけだから」

美香
「私もついて行く!」

オレ
「ダメだ」

美香
「私は危険を察知できるっ!あなたに知らせる事ができるわ」

オレ
「・・・わかった」

もう危険なところに入っているから、それは必要ない。オレはそれを口にせずに美香を連れて行くことにした。




重傷の日本刀の男は手術の際の麻酔で眠っている。残りの男3人を先にワンボックスに乗せるように指示をした。

オレは当直室の豊島院長に声をかけあらためて礼を言った。

そして新生会病院を後にして八王子の大日本国政会の本部に向かった。ビルの前で車を停めた。そして電話を入れた。

オレ
「大日本国政会さんですね!ムトーと申します。大山さんと代って貰えますか?」

「ムトーです。今本部ビルの前に居るんですが、お話をしたいと思いまして」

「・・・」

「報復に来たわけではありません。あくまでも話し合いです」

「はい。ふたりでそこに行きますから騒がないようにしてください」

「ええ。今すぐです」

オレは松井と二人で本部のある2階へ階段を使い上がって行った。インターフォンを押して名前を告げるとドアが開いた。

オレは達は中へ入った。衝立の向こうには男が10人ほど居た。ボディーチェックをされた。特警を預けた。彼らはいずれも戦闘服姿で頭を丸刈りにしていた。

大柄な太った男がオレたちをソファに座るように言った。

▼1時・・・大日本国政会本部


「大日本国政会の大山です」

オレ
「ムトーです」


「S会の相談役のムトーさんですか・・・」

オレ
「そうです。神戸のY組の相談役もしてます」


「さっきS会の方から電話があって・・・初めて知りました」

オレ
「依頼者を教えて下さい。オレを殺すように依頼した相手を」


「・・・ムトーさんだとは知りませんでした」

オレ
「はい。それは電話でも聞きました。依頼者を教えてくれたら、今回の事は忘れますから」


「忘れる?」

オレ
「そうです。オレはこの通りピンピンしてますし、おたくの人たちにも怪我をさせてしまいました。依頼者さえ教えていただければ、今回の事はなかった事にします。」


「・・・」

男は凶悪そうな顔つきでオレを正面から見た。


「なかった事になれば・・・S会さんともケンカにならないという事ですか?」

オレ
「当然です。私は依頼者と会って話し合いで解決しようと思ってます。大山さんはこの件から手を引いて下さい」


「・・・断ったら?」

オレ
「そこをなんとかお願いできませんでしょうか?」

睨み合いが続いた。相手がオレのいう事を信用するか?オレの正体を知らなかったと言うのはたぶんウソだ。何処の誰がやったかわからなければおいしい仕事だとでも思ったのか?


「うちの者・・・4人はどうなる」

オレ
「ひとりは入院してますが、残りの3人は骨折程度ですので連れてきてます。当然そちらにお返しします」


「うちは横浜のI会の系列なんだが・・・そっちにも圧力をかけるつもりかい?」

オレ
「いえ。大山さんと私だけの話にするつもりですから、こんな時間にやって来た次第です」


「・・・」

オレ
「約束は守ります」


「・・・わかった」

「依頼者は・・・国際興業の専務、松岡一郎」

オレ
「本人から直接ですか?」


「最初は秘書と名乗る男が・・・最終的には本人と会い確認した」

オレ
「松岡一郎、本人と会い、11月5日に藤原神社に泊っている男を殺す依頼を受けたわけですね?」


「・・・そうだ」

オレ
「松岡一郎氏の自宅の住所と電話番号を教えて下さい」

男は立っている戦闘服の男に何かを指示した。男は小さな名刺のようなモノを見ながら、メモをしてそれをオレに渡した。オレはそれを受け取り、確かめた。

オレ
「ありがとうございました。じゃーこれで失礼します。

怪我人3人は車から降ろします。手当てはしてますからたぶん心配はないでしょう。

入院してる人もあらためて連絡させてもらいますから」


「あんた。年はいくつなんだ?」

オレ
「もう30を超えてしまいました」


「うちの倅と同じとは・・・」

オレは松井とふたりで国政会本部を出た。急遽集合をかけられたのか、20人近い男たちが小さな本部前に集まっていた。

オレはそれ以上何も話さずにビルを出た。そしてベンツに乗り込んだ。

松井
「どうします?」

オレ
「成城の松岡の家に行く」

松井
「・・・はい」

美香
「私もついて行く」

オレは車を出させた。そして成城へ向かった。

▼2時・・・成城

松井
「ちょっと見てきます」

松井はそう言ってベンツを降りた。そして目的の家を確認して戻ってきた。

松井
「表札は『松岡』になってます」

オレ
「じゃーさっきの電話で話したとおりの段取りで行こう」

松井
「はい」

オレと松井は松岡の家の前でベンツを降りた。運転手の源と警備の柳川に美香の安全を最優先にするように指示をして車の中で待機させた。

松井がインターフォンを押した。


「はい」

松井
「さきほどお電話させていただきました大日本国政会の松井です」


「・・・暫くお待ち下さい」

5分ほど待たされた。玄関が開きスーツを着た男が出てきた。そして門の鍵を開けて中に招き入れられた。

オレと松井は家に入った。ボディーチェックをされた。そして応接室と思われる部屋に通された。

ここでも暫く待たされた。

ドアがノックされてさっきの男が先に入ってきた。オレたちは立ち上がって礼をした。そしてその後ろに恰幅のいい50代の脂ぎった男が続いた。先にその男がソファに座った。そして細身の男が座った。

それを見届けてオレたちも正面のソファに座った。


「わざわざ家にまでやってきてどんな問題が発生したと言うんだ?

何故、会長の大山が来ない?ったく何時だと思ってるんだ」

松井
「申し訳ございません。

大山は念のために東京を離れているものですから、明日には戻ってきますので・・・

それから問題と言うのは・・・実は・・・」

オレ
「私から説明しましょう。

松岡さん。私、もう少しで殺されるところでしたよ」

男2
「あなた。副会長の坂下さんとか言いましたよね?

そのあなたが何故殺されそうになったんです?」

オレ
「あなたは?」

男2
「秘書の兼子です。そんな事より・・・」

オレ
「兼子さん松岡さん。あんたら殺そうとした相手の顔も知らないんですか?」

兼子
「何だ?おっお前、まさか・・・」

松岡
「誰だお前は・・・」

オレ
「お前らが殺そうとしたムトーだ」

兼子
「うっ」

松岡
「何だと!」

オレ
「今日は、あなたらの顔を見に来ただけです」

松岡
「どういう事だ?」

オレ
「深い意味はありません(笑)では御機嫌よう」

松岡
「まっ待て!どうしようと言うんだっ!」

オレ
「(笑)」

オレは立ち上がった。松井も続いた。そしてオレたちは松岡邸を出た。ベンツはさっきの位置に止まっていた。助手席のドアが開き柳川が出てきた。オレたちはそのままベンツに乗り込んだ。

オレ
「悪いが藤原神社まで送ってくれ(笑)」

松井
「はい」

オレ
「あっその前に何処かファミレスへ行ってメシ食わせてくれ」

松井
「メシですか?」

美香
「そーよね。アレじゃーおなか減るわよね(笑)」



▼6時・・・

高瀬
「ムトーさん。起きて下さい。ムトーさんっ!」

オレ
「んーーーあー誰?」

高瀬
「高瀬です。起きて着替えて下さい」

オレ
「ふぁ〜〜〜いっ」

高瀬
「すぐに朝食をお持ちしますから」

オレ
「はいはい」

オレは布団を上げて押入れに仕舞った。木刀も押入れに仕舞った。特警は褌の中に隠した。そして廊下に出てトイレに行ってから顔を洗った。昨日にも増して冷え込んでいて水は冷たかった。昨日の朝の禊を思い出すと身震いした。

部屋に戻り衣文掛けにかけていた白の狩衣に着替えた。

床に座ると同時に声がかかり、高瀬が膳を持って入って来た。オレはそれを覗きこんだ。昨日となんら代わり映えしないメニューだった。

オレは高瀬に礼を言った。高瀬は微笑んで部屋を出て行った。

オレはあっと言う間にそれを食った。そしてすぐに裏の井戸へ行った。井戸の釣瓶の脇に特警を隠した。素っ裸になって井戸の水をポンプで汲み上げ、木桶に入れていった。

オレ
「高瀬さーん。桶がひとつ足りないんだけど?」

高瀬
「今日は6つでいいんです」

オレ
「ん?もしかして毎日、桶の数が減っていくの?」

高瀬
「はい」

オレ
「ははは・・・そっか。それは楽しみ・・・でもないか」

オレは木桶を両手で持ち頭から井戸の水を被った。思わず声を上げそうになるぐらい冷たかった。。。

順番に被っていった。6つ目が終わる頃には昨日と同じように体がカッカしてあまり寒さは感じなかった。

オレは新しい褌と狩衣に着替えて部屋に戻った。7時。時間ぴったりに大見さんと土岐さんはやってきた。退屈な講習が始まった。

9時・・・15分の休憩。熱いお茶が出された。そしてまたすぐに講習が始まった。

12時・・・ようやく昼食になった。オレはひとりでそれを瞬間的に食べた。廊下から声がかかり松井が入って来た。

オレ
「よく許可が下りたな?(笑)」

松井
「はい。お昼の休憩時間だけ特別に許してもらいました。

岩崎さんから連絡がありました。

どうやら松岡が、つてを探して大日本国政会の上部団体であるI会に泣きついたそうです。

それでI会からS会の石本会長に連絡が入り、I会の総裁がムーさんに会いたいと言ってるそうなんです」

オレ
「そう。この研修が終わるまで動けないと言ってくれ!その後ならいつでもいいから」

松井
「わかりました」

オレ
「S会の岩崎には事情を話したか?」

松井
「詳細は言わずに、ただ揉めているとだけ・・・」

オレ
「それでいい。それより松井。なんか食うものないか?」

松井
「入り口でチェックされました。差し入れはダメです!って言われて・・・」

オレ
「あっそう。。。」

松井
「ムーさん。そんな哀しそうな顔しないで下さいよ(笑)」

オレ
「ははは・・・」

そして午後の講習が始まった。

▼11月12日・・・

深川、料亭

玄関で名前を告げた。女将に案内され1階の廊下の奥に行った。女将が声をかけて襖を開けた。オレは部屋に入った。

すでに男がひとり立って待っていた。オレを認めると、上座の方を薦めた。オレは薦められるままにテーブルの向こう側の席に着いた。正面に男が座った。


「わざわざお呼びだてして申し訳けありません。私、横浜I会の立浪太源と申します」

オレ
「初めまして・・・ムトー。ムトーユーイチと申します」

オレは軽く頭を下げた。別の形で会ったのならもう少し礼を尽くした挨拶をしなければならない相手だったが・・・今はコレが精一杯だった。


「この度はムトーさんには、うちの大山が大変な事をしでかしまして、誠に申し訳ございませんでした。」

男はテーブルに額が着くかと思うほど頭を下げた。

オレ
「大山さんとはすでに話し合いが済んで、その後もご協力いただきましから・・・もうそれ以上は」


「ありがとうございます」

そう言って男は頭を上げてオレを見た。穏やかそうな表情の中に意思の強そうな目が正面からオレを捉えていた。

オレは何も考えなかった。ただ無になって相手の視線を普通に受け止めていた。


「小佐野さんとは、親しくさせていただいておりました。その関係で、松岡はうちの者を知っていたようで・・・下部組織の国政会に依頼したようです。

大山の責任、そして松岡も含めてすべて私の不徳の致すところです。

どうか、ムトーさんの存分になさって下さい。」

オレ
「はぁ〜」

男はまだオレを見つめている。

オレ
「存分と言われましても、先ほど申しました通り、国政会さんとはすでに話は終わってますから、後は松岡さんと話をするだけなんですが・・・」


「話をするだけですか?」

オレ
「はい」


「あなたを殺そうとした相手ですよ」

オレ
「何故私を殺す必要があったのか?どんな妥協点があるのか?ちゃんと話合わなければ解決しません」


「なるほど、おっしゃる通りですな」

オレ
「その前に・・・私は大山さんに、この件は私と大山さんとふたりだけの話で終わらせると約束しました。

大山さんは上部団体のI会に圧力をかけるのか?と私に問いました。

私は約束を守ると言ったのですが・・・こうして立浪総長の知るところとなってしまいました。

どうしてでしょう?」


「松岡から、助けて欲しいと相談を受けてこうして出てまいった次第です。それ以上にムトーさんに会ってみたいと前から思っていたものですから・・・」

オレ
「こういう機会でなければ・・・大先輩である立浪総長には日ごろお世話になっているお礼を申し上げて、礼を尽くさなければならない立場なのですが、申し訳ございません」


「いやムトーさん失礼しました。個人的は話はこの件が収まってからにしようと思っていましたのに、私の方こそ申し訳ない。

本題に戻って、それで松岡をどうするおつもりでしょうか?」

オレ
「はい。一番知りたいのは、理由です。何故私を殺す必要があったのか?松岡氏の口からそれを聞きたい。

逆に教えて頂きたいのですが、立浪総長は私が松岡氏をどうすればいいとお考えでしょうか?ご助言いただければありがたいのですが・・・」


「わかりました。松岡本人を連れて来ましょう。

その上で私の希望を聞いていただけるとしたら・・・松岡の命の保障だけはお願いしたいと思ってます」

オレ
「私が松岡氏を殺す?あり得ないですよ」


「そうでしょうな。いや失礼な事を言ってしまいましたが、これで松岡も怯えなくてすむでしょう。それだけです」

オレ
「それから、松岡氏には私がひとりで松岡さんの家に伺うとお伝え頂ければ幸いです」


「わかりました。そう伝えましょう」

オレ
「それと、先ほどの約束・・・国政会にはお咎めなしと言う事でお願いしたいのですが?」


「・・・わかりました。ありがとうございます。

他に何かありませんか?」

オレ
「はい。もうひとつだけ・・・」


「何でしょう?」

立浪総長はしっかりと目を見開き、オレを刺すような目で見ていた。

オレ
「実は・・・緊張して喉が渇いたのでビールを飲ませて頂ければと」


「・・・あははははは^^(笑)これは失礼した。」

「あはははは(笑)」

「ビールを飲ませろだと!あはははは(笑)」

立浪総長は、ゲラか?と思うほど笑い続けた。そして手を叩いて人を呼んだ。男が麩の向こうから現れた。立浪総長は笑いながらビールを持ってくるように指示した。

オレ
「ははは・・・すみません^^」


「いやー傑作だ(笑)あはははは^^」

廊下の向こうから声がかかり、女将が酒の用意を持って入ったきた。すぐにテーブルの上にビールと料理が並べられた。

男はまだ時折り笑いながらビールを持った。オレはグラスを持ちビールを注いでもらった。そしてオレは男に同じようにビールを注いだ。


「それでは、一件落着という事で」

オレ
「はい。ありがとうございます」

オレたちはグラスを合わせた。そしてオレは一気に喉を鳴らしてグラスのビールを飲み干した。男はオレの様子を見ていた。そしてすぐにまたビールを注いだ。


「あははは(笑)」

「思い出しても面白い(笑)こんな面白いとは^^」

オレ
「立浪総長・・・笑い過ぎですよ^^」


「おお^^そうか!笑い過ぎか?あはははは(笑)」

人前で、こんなにバカ笑いできる人、オレはこの人とは馬が合いそうだと思った。


「なームトー君。今度是非横浜に来てくれんか?一緒に飲みに行こう」

オレ
「あはっ!^^いいですねー総長の奢りですかー?」


「おうおう^^ワシが奢る(笑)奢るよ!あはははは(笑)」

オレはビールを飲んだ。そして総長のグラスにビールを注いだ。総長は新しいビールをオレに注いだ。


「3代目に可愛がられ、影若になり・・・4代目には舎弟。

S会の石本さんとは5分の兄弟。

今や西と東の相談役。

それがこんなに面白しれーヤツとは(笑)」

オレは座布団をはずして、少し後ろに下がって姿勢を正した。

オレ
「立浪総長・・・3代目、4代目、そして文子おばさんまで、生前は大変お世話になり、また今回のY組の抗争に対して大変なご心配をおかけしておきながら・・・失礼の数々誠に申し訳ございません」

オレは手を付いてお礼とお詫びをした。


「あームトー君。すまん。せっかく楽しい酒を飲んでたのに・・・いやーそれはまた今度にしよう。

さーさー手を上げて席についてくれ!」

オレ
「はい」

オレは元の席に戻った。総長はまたビールをオレに勧めた。オレはグラスのビールを飲み干して新しいビールを注いでもらった。


「なームトー君。ワシの飲み友達になってくれんか?」

オレ
「はぁ〜」


「銀座のムトーと呼ばれてるらしいじゃねーか!ワシが東京へ来た時は銀座へ連れてってくれるか?」

オレ
「ははは・・・そん時はオレが奢りますよ^^」


「あははは(笑)そうか、銀座を奢ってくれるか?あははは^^」

オレ
「その分、横浜に行った時は、倍ほど飲ませてもらいます!」


「おうおう^^横浜なら任せてくれっ!ワシの奢りだ!あはははは(笑)」

結局、最後はどうでもいい話をして笑いながら、オレはさんざんビールを飲まされた。そしてその日は横浜へ行く約束をして別れた。

■11月21日・・・

▼10時・・・

オレはインターフォンを押して鍵を使って入った。

キョーコ
「お帰りぃ^^」

オレ
「ただいま^^」

キョーコと軽く抱擁を交わした後、オレはリビングに入りソファに座った。キョーコは大きなお腹でキッチンへ行った。

キョーコ
「ユーイチ。昨日あなたがずっと笑ってるから、私も可笑しくってお祓いの途中でつい我慢しきれなくなったわ(笑)」

オレ
「あははは^^何故かみんな不思議そうにオレを見てるから、つい何か愛想をしたくなってな(笑)」

キョーコ
「沙耶は大きな声で笑い出すし、ちょっと恥ずかしかった」

オレ
「アイツはどうしようもないな(笑)」

キョーコは珈琲を持ってオレの隣に座った。そしてフレッシュを入れスプーンを使いオレの前に置いた。

キョーコ
「本当に神主さんになっちゃったのね^^」

オレ
「ああ。自分でも信じられないけどな。神の奉仕者だそうだ」

キョーコ
「ふーん^^なんとなく似合ってるような気がするわよ」

オレ
「そう?そんな事言ってくれるのはキョーコだけだ」

昨日の15代継承式はこの間の美香の13代と同じように氏子会の理事達の前で行われた。もっとも14代は相変わらず歩けない状態で、神職のひとりが名代となって執り行われた。

その後、初仕事としてキョーコの安産祈願をキョーコ、沙耶、亀井さんの3人を拝殿に招き入れて、祈願の祝詞とともにお祓いをした。

続いて玲子と裕人と裕美、そしてヨーコと裕也にも家内安全と商売繁盛の祈願。

間島と間島の母、そして裕美。

理恵と香と本橋。

洋子と純子とレミ。

紗也乃と四方。

麻美と美咲。

小林聡美とその両親。

神崎優子と真美と母親

銀座同盟の面々

そして、社を代表して斉藤、松井、横山、前田、関川らが参加した。

順次同様の祝詞を上げてお祓いをした。その後、川越市内のホテルで簡単なパーティーを開いた。オレは藤原神社宮司として正装で色違いの衣装に着替えて出た。

パーティーには地元の氏子で有力者たちも集まった。オレはスピーチを行い。ひとりひとりに挨拶して回ったが・・・女たちが笑顔でそれぞれ紹介し合っている様子を見てオレは憂鬱になった。

キョーコ
「それにしても昨日はたくさん集まったわねー?」

オレ
「氏子の理事以外の有力者も来ていたそうだから・・・一度に全部は無理みたいだったがな」

キョーコ
「ユーイチの関係する女性があんなにたくさん居るとは・・・もう吃驚よ!」

オレ
「そうだな。呆れただろう?」

キョーコ
「うん。(笑)でも皆さん私のお腹を見て、ご挨拶しに来てくれたのよー^^すごく嬉しかったわ」

オレ
「そう」

キョーコ
「玲子さんもそうだけど、理恵さんもすごいわねー^^まるでユーイチのおかーさまみたいな気がしたわ」

オレ
「ははは・・・」

キョーコ
「でも、楽しかったわ^^」

オレ
「そう。ありがとう」

オレはキョーコを抱き寄せてキスをした。オレはキョーコの舌に自分の舌を絡めてキョーコの舌を強く吸った。2度目のキスはキョーコが舌を使った。

一緒に早めの昼食を摂った後、オレは赤坂に戻った。

▼12時・・・赤坂、桜井「桔梗の間」

松井
「すでに松岡は出国しました。」

オレ
「そう」

前田
「本当にこの程度の処分でいいんですか?」

横山
「国際航業タイ支店、支店長。いいじゃないですか(笑)」

松井
「専務から降格して、平の部長職、社員は誰も居ないひとりだけの支店。家族は残して単身赴任。体のいい国外退去処分です」

関川
「甘いなームトーは(笑)

国政会の大山も処分なしなんだろう?ヤツはムトーだと知って請け負ったんだろう?きっちりとケジメはとっとかないと・・・」

オレ
「いや、咎めない約束で依頼主を教えてもらったから約束は守る。横浜のI会の立浪総長にもお願いしてあるから」

前田
「そうだ。そのI会の立浪総長とはどうなったんですか?神戸の本家とも昔から親戚づきあいしてるし、関東をS会と2分する大組織のドンですよね?」

オレ
「特にどうと言う事はない。向こうの希望は松岡の命の保障だけだった。その後は機嫌よく飲んで結局、飲み友達にさせられてしまったけどな(笑)」

松井
「飲み友達・・・ですか?」

前田
「ははは・・・またやっかいですねー(笑)」

横山
「その内、兄弟とか相談役とかやらされるんじゃーないですかー(ーー;)」

関川
「結果的にコレで日本のヤクザの3大組織と太い関係が出来てしまった(笑)もう敵なしだ」

オレ
「あの総長とは結構ウマが合うんだ(笑)まー一番付き合いやすい相手だ」

前田
「石井さんには、どう伝えましょう?」

オレ
「きっとあいつの事だから、もうすぐこっちへやってくるだろう。その時にオレから説明するよ」

前田
「はい。じゃーお願いします」

松井
「まっ!今日からは、15代、藤原龍斎宮司ですから益々神様のご加護がありますよ(笑)」

関川
「あはははは^^昨日のあの格好(笑)」

前田
「いやー似合ってましたよー(笑)」

横山
「こんどはあのスタイルでLIVEやりましょう(笑)」

オレ
「ははは・・・」

ここでも昼食を一緒に食った。そして前田と関川は関西に戻って行った。

▼14時・・・赤坂「自宅」

北脇
「いやーお疲れ様でした^^これでひと安心です」

オレ
「はい。なんとか大役をこなせてほっとしてます^^」

北脇
「それにしても・・・事件の方はどうだったんでしょうか?」

オレ
「ご心配をおかけしました。申し訳ありません」」

北脇
「結局のところは、小佐野さんの遺産を巡るトラブルだったんですよね?」

オレ
「そーですね。松井。説明してあげて・・・」

松井
「はい」

「ムーさんを襲わせたのは・・・国際興業の元専務、松岡一郎です。小佐野さんの奥さんの実家、元伯爵家の方の次男で奥さんの弟にあたります。

小佐野さんには、お子様がいません。従って奥様だけに一部の財産を譲って、そのほとんどは藤原神社への寄付となっているようです。

これは亡くなる直前に変更されたようです。

本来であれば、ムーさん個人に譲ろうとされたようですが、相続税及び所得税などを考慮して、宗教法人藤原神社へ寄付と言う形にするのが、望ましいだろうと考えた結果だそうで、それ以外の理由はないそうです。

ところが、ムーさんが死亡した場合や藤原神社の15代にならなかった場合の事は想定していなかったらしく、その場合は法定相続人が相続する事になるようなんです。

そしてそこに目をつけたのが、今回の黒幕・・・松岡でした。

現在、国際興業の社長は飯田さんと言って、小佐野氏の片腕と呼ばれていた人らしいですが、これに反発する松岡はなんとしても実権を握りたかった。

遺産を奥さんが得る事によって、国際興業の株を取得し自分が社長になる事を望んだようです。

それが、ムーさんを狙った理由でした」

北脇
「藤原神社の15代のムトーさんというところに隙があったというわけか・・・」

オレ
「結果的に松岡の欲に目がくらんだ今回の事件だったが、小佐野さんの奥さんは知らなかったそうだ。オレにお詫びしたいと言ってるそうです」

北脇
「昨日で15代に正式に決まったわけですし、本日すでに宗教法人の届出にも変更をすませてありますので、もう大丈夫ですね」

松井
「はい。書類上の手続きが終わった今日、小佐野さんの顧問弁護士の事務所へ伺う事になってます」

オレ
「とりあえずそこへ行ってきますので、その後の事は帰ってからと言う事で」

北脇
「はい行ってらっしゃいませ^^」

▼15時・・・


「これがお預かりしているムトーさん宛ての遺書です」

オレ
「はい」


「それから、こちらが藤原神社に寄付される目録となります」

オレ
「どうも」


「特に何かご質問とかはありませんか?」

オレ
「私宛の遺書を拝見した後で、またお目にかかれればと思ってますので、出来ましたらその時に」


「はい。わかりました。いつでも連絡下さい」

オレ
「ではこれで・・・」

オレと松井は立ち上がり、再度その弁護士に礼を言って、弁護士事務所を後にした。オレたちはタクシーに乗り自宅に戻った。

オレは北脇さんと松井を居間に残して、贈与財産の目論を渡した。

そして中2階の自室にひとりで入り、小佐野氏からの手紙の封を開けた。丁寧な文面で龍を見せたお礼の言葉があり、そして藤原神社に対する思い入れが書かれていた。その後に、軽井沢の別荘に行くようにという指示があった。それ以外は特になかった。最後にすべて思うように自由に運営してくれたらいいと言い残していた。

オレは再度読み返して封筒に仕舞った。

オレは窓の外を眺めながら・・・これからの事を考えた。


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