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はじまりさえ歌えない


尾崎豊:「はじまりさえ歌えない」

独特のパフォーマンスのライブ。希少映像です!^^

1987年1月-------------

▼1月7日・・・神戸・灘区・水道橋筋

そんなに綺麗でもない小料理屋、引き戸を開けて入った。待ち合わせだと告げると名前を聞かれ、苗字を名乗ると笑顔で奥の座敷に案内された。一般の席と襖1枚で仕切られた小さな部屋だった。

テーブルの前に座っている男が手を上げた。

オレは半分ふてくされた態度で、靴を脱いで上がった。そして男の正面に座った。ビールメーカーが配布している小さなグラスが置かれた。男はビール瓶を持った。オレはグラスを持った。それにビールが注がれた。


「東京は忙しいのか?」

オレ
「人も店も増えてバタバタしてる」


「たまには家にも顔を出せ」

オレ
「ああ」

オレはビールを口にした。こんなグラスでビールを飲むことなんてない。そしてこの男と飲むことになるとは・・・


「百貨店の警備をしていても・・・聞こえてくるんだ」

オレ
「・・・」


「お前がとうとうやくざになったってな」

オレ
「またその話か・・・」


「今度は本物らしいな。正式に執行部の承認を得た『相談役』とは」

オレ
「そういう嫌味を言いたいだけなら、せっかくのビールがまずくなるだけだ。帰るぞ!」

オレは席を立った。そして襖を開けた。


「待て、まだ話は済んでいない」

「県警本部がお前と話がしたいと言ってる」

オレはカウンターの脇に居たさっきのおばさんに焼き鳥を注文した。そして襖を閉めて座りなおした。

オレ
「それなら東京でも芦屋でもオレの家にそう連絡してくればいいじゃないか」


「オレは頂上作戦に関わっていた。それもあってこっちに話をしてきた。向こうも一応気を使ってるわけだ」

オレ
「ふんっ!だったらオレがヤクザじゃない事はわかってるだろう。それを嫌みったらしく・・・それで人が死んだ事を忘れたのか?」


「・・・」

オレはビールを飲んだ。自分で自分のグラスにビールを注いだ。暫く沈黙が続いた。襖の向こうから声がかかり、料理が出てきた。そしてテーブルに置かれた。

オレはキャメルに火をつけた。


「とりあえず県警本部の沖田警視のところへ行け」

オレ
「嫌だと言ったら?」


「逮捕だろうな」

オレ
「容疑は?」


「エラソーな口を聞いた罪だ」

オレ
「あははは^^(笑)ジョーダンじゃないところが傑作だっ!何も知らずに自分の世界が1番だと思ってりゃいいさ」

オレは立ち上がった。そして襖を開けて、靴を履いた。男はもう声をかけて来なかった。オレは黙ってその店を出た。

無性に腹立たしかった。あの男と話をするといつもそうだ。暴れたい気分だった。

その日オレは自宅に帰らずに、三宮のサウナ行きそこで仮眠した。

翌日・・・

9時・・・兵庫県警・応接室


「どうもご足労頂きありがとうございます」

オレ
「いえ」

入ってきた男はふたり、沖田警視と名乗る男ともうひとり市岡警部・・・オレは懐かしさのあまり思わず直立不動で挨拶をしそうになったが・・・知らん顔をする事にした。そして肩書きのない名前だけが入った名刺を受け取った。オレは東京のMaggieの名刺を出した。

沖田
「実は・・・一和会、会長のヤマヒロさんがあなたに会いたがっている」

オレ
「山広組の山本広さんですか?」

沖田
「そうです。ちょうどいい機会だから会って頂いて、抗争終結について話し合っていただければと思いまして」

オレ
「オレがですか?」

市岡
「ユーイチ君。君は今やY組執行部の相談役になってしまった。

同時に東京S会の相談役も兼ねている。

君はもう暴力社会の実力者だ」

オレ
「・・・」

沖田
「こちらとしてもどんなきっかけでもいいから、早期終結を目指したいのです」

オレ
「向こうはオレと話をすれば終結に応じるとでも言ってるのですか?」

沖田
「いえ、はっきりした言質をとったわけではありませんが

どうも最初のボタンの掛け違いのところで、あなたとどうしても話をしたいと希望されるものですから

ご協力いただけませんか?」

オレ
「具体的にどうすれば?」

沖田
「市岡と一緒に先方の自宅を訪問します」

オレ
「ヤマヒロさんの自宅ですか?」

沖田
「はい。もちろん安全は我々が保障します」

オレ
「この件は・・・極秘ですか?」

沖田
「いえ。どちらかと言うと内部に広めてもらって、騒ぎを起こさないようにしてもらえるとそれに越したことはありません」

オレ
「内部と言うのはY組の執行部に知らせろと?」

沖田
「まーそれは主たる目的ではありませんので、ご自由に判断していただいて結構です」

「ただ、抗争終結の条件があるとすれば、それはあなたから提案された事は、先方はY組の決定事項と受け取られますから、そのあたりの調整はお願いします」

オレ
「オレは組内の人間ではありませんから、条件など組を代表する案件については、他の者を同席させた方がいいかと思います」

沖田
「おっしゃる意味はわかります。しかし、先方があなたひとりだけと・・・」

オレ
「オレみたいな若造がとてもじゃないけどそんな大役を引き受ける事はできませんよ」

沖田
「先ほども申しましたように、きっかけになればいいと考えてます。

ですから先方の希望通りにお願いしたいと思います」

オレ
「そうですか・・・わかりました。

では私でできる範囲の事はさせていただきます」

沖田
「ありがとうございます。連絡はこの東京の電話番号でいいですね?」

事前に余裕を持って日時の相談をしたいと思いますので、よろしくお願いします」

オレ
「はい。ではさっそく準備をしたいと思います」

オレはそう言って立ち上がった。無駄な話を一切しない沖田という人は終始穏やかな表情で話をしていた。そして隣に居た市岡さんも・・・

オレは「ではよろしく」と言って部屋を出た。市岡さんも一緒に出てきてオレと並んだ。

市岡
「相変わらずお父さんとはうまくいってないようだな」

オレ
「ええ」

市岡
「あの時の事・・・まだ拘ってるのか?」

オレ
「いえ。アレは、きっかけにしか過ぎませんから」

市岡
「そうか。この件が終わったら、1度道場で汗を流そう。ひさしぶりに『鬼武藤』を見せてくれ」

オレ
「市岡さんは、ずっとやっておられるんでしょう?かないませんよ(笑)」

市岡
「それにしても君が・・・信じられん」

オレ
「・・・」

EVに乗り1階まで一緒に歩いた。市岡さんは見送ってくれた。オレは歩きながら電話ボックスを見つけそこから数本電話した。電話を切った後、その先の喫茶店に入った。

「先方が会いたがっている」

ヤマヒロさんが何をオレに聞きたいのか?想像はついた。そして何をどう応えるべきか・・・考えた。

注文した紅茶が出てきた。オレはミルクだけを入れてそれを口にした。紅茶を飲み終える前に石井が店に入ってきた。

石井
「お疲れ様です」

「ムーさん。申し訳ありませんがすぐに本家の方へお越し頂きたいと」

オレ
「うん」

オレはテーブルに1000円札を置いてすぐに店を出た。目の前に止まっていた黒塗りのベンツに乗って、灘区篠原本町に向かった。そして警察の厳重な警備の中、隣の駐車場へ入りそこから母屋に入った。

渡辺
「さっき定例会が終わって帰ろうとしたところだった」

オレ
「先に連絡入れようかどうか迷ったんですけど、県警が何を言ってくるのかわからなかったもので・・・」

渡辺
「うむ。逆に良かったかも知れない。代行と本部長とオレの3人だけで話をする方がスムーズに事が運びそうだしな」

待つほどもなく中西代行と岸本本部長は居間に入ってきた。オレは立ち上がった。

オレ
「すみません。お忙しい時にお手間をとらせまして」

代行
「いやなんの!相談役ともやはり顔を合わせて話をしておかないと」

オレ
「先日の伊藤忠の件、お騒がせして申し訳ありませんでした」

代行
「うむ。その事はもういい」

本部長
「ムトー遠慮せずに定例会にもぜひ顔を出してくれよ」

オレ
「はい」

男がお茶を運んできた。オレは男に礼を言った。そしてその蓋を開けて口をつけた。

オレ
「兵庫県警の沖田警視に呼ばれて先ほど面談してきました」

オレはさっきの話を要約して伝えた。

渡辺
「なんでヤマヒロはお前に会いたがっているんだ?」

オレ
「さー?警察も首を傾げていました」

代行
「手打ちの話に進展するのか?」

オレ
「どんな話になるのか何もわかっていないようです」

本部長
「じゃー個人的な話だけで終わることもあるわけだな?」

オレ
「はい。ただ、警察はそのまま和解の話ができるようなら、条件面の提示をしろ!と言ってきています」

渡辺
「ふむ。お前一人だけと会うというのが絶対条件なんだな?」

オレ
「はい」

本部長
「ムトーはこの間、I会と会津会の両頭が向こうに提示した内容を知ってるな?」

オレ
「ええ大体は聞いてます」

本部長
「代行、頭、その線でどうでしょうか?」

代行
「同じ条件ならこっちは問題ないだろう。どうかな?頭」

渡辺
「一和会の解散。ヤマヒロがこっちへ来て侘びを入れる。そしてヤマヒロ組は解散してヤマヒロは引退する」

「大きくはこの3つなんだムトー」

オレ
「その変わりこっちはヤマヒロさんに手を出さない。という事ですか?」

渡辺
「・・・そうだ」

オレ
「とりあえず解散は一和会とヤマヒロ組だけでいいんですね?」

渡辺
「ああ。それでいい」

オレ
「じゃーもし手打ちの条件の話ができるようでしたらそう伝えます」

渡辺
「うむ」

代行
「よろしく頼む。相談役」

本部長
「うん。よろしく頼む。相談役」

オレ
「はい。なんとか道筋がつくように努力します」

それから、少し雑談をして組内部の問題点をオレに聞かせるようにゴローちゃんが代行や本部長と確認するように話した。

そして来たときと同じように代行と本部長が先に席を立った。オレとゴローちゃんは駐車場へ行き一緒に車に乗り込んだ。

▼花隈「涼風閣」

渡辺
「ムトーメシ食ってないだろう?ここで食って行け」

オレ
「はい^^」

正面にゴローちゃんが座った。珍しく石井が遠ざけられた。

渡辺
「梅木はオレの代わりに義理がけで広島に行ってるんだ」

オレ
「そーですか^^まー今度またゆっくり会います」

渡辺
「うん。」

廊下から声がかかった。そしてビールと昼飯がテーブルに出された。オレがビールを持とうとすると先にゴローちゃんがそれを持った。オレは仕方なくグラスを持ってビールを注いでもらい同じようにゴローちゃんのグラスにもビールを注いだ。

オレたちは軽くグラスを合わせてからオレはビールを飲んだ。

渡辺
「遠慮せずに箸をつけてくれ^^」

オレ
「はい(笑)」

渡辺
「で、先方の話の中身については、予想がついているのか?」

オレ
「たぶん。4代目の跡目争いの時に・・・オレが何かしら動いたと思っているんでしょう。

それに対する恨み言でもオレに言うつもりじゃないですかね?」

渡辺
「今更の話だが・・・覚悟を決めているんなら、そういう事情も知りたいと思うかも知れんな」

オレ
「さっきの話ですけど、やっぱり武さんは引きませんか?」

渡辺
「ああ。実兄で先代・・・本人も頭ではわかっているんだけど・・・なかなか」

それは向こうも同じで、ヤマヒロが決断しても本部長の加茂田が納得しないだろう」

オレ
「じゃー両者は刀折れ矢が尽きるまで止めないと言う事ですか?」

渡辺
「大勢はそう見てる」

オレはビールを飲んだ。4代目だった竹中さんの実弟で現在竹中組2代目を注いだ武さん。何が何でもヤマヒロを殺るまでは、抗争は終わらないと強硬姿勢を崩さなかった。

渡辺
「この間I会の立浪総長からお前の事で問い合わせがあったぞ。I会と何かあったのか?」

オレ
「あそこの系列とちょっと揉めて、すでに当事者間では話はついていたんですけど・・・立浪総長がわざわざ会って頭を下げてくれました。

オレも3代目、4代目、文子おばさんが生前お世話になったお礼をいいました」

渡辺
「それだけか?その後、かかって来た電話では立浪総長ご機嫌だったぞ!」

オレ
「ははは^^たぶん伊勢崎町で飲んだ後じゃないですか?飲み友達になれ!って言われましたから(笑)」

ゴローちゃんは珍しくビールを飲んでいた。

渡辺
「ふむ。なームトーオレとお前は色々あったが、もう15年になる」

オレ
「そーですね^^」

渡辺
「オレは5代目になれるか?」

オレ
「当たり前じゃないですか!」

渡辺
「お前・・・小佐野さんの遺産を受け継いだそうじゃないか?」

オレ
「アレはオレじゃなくて、藤原神社が受けた寄付です」

渡辺
「そこのトップは宮司で、お前が就任したんだろう?」

オレ
「はい」

渡辺
「うちの相談役、S会の相談役、そしてI会の総長とも懇意になり、小佐野氏のダークな遺産も受け継いだ。やっぱりお前・・・3代目が出来なかった事をやろうとしてるんじゃないのか?」

オレ
「えっ?」

渡辺
「日本の・・・ドン」

オレ
「あははは^^それはない(笑)

でも・・・もしそれがあるとすればY組のトップこそがそれに相応しい。

それは・・・ゴローちゃんだ!^^」

渡辺
「そっか」

オレ
「オレは・・・男同士の約束を破った事はないんだ(笑)」

渡辺
「変なヤツだな(笑)」


▼17時・・・岡本実家


オレは小さな門扉についているインターフォンを押した。


「はい」

オレ
「オレ・・・ユーイチ」


「ユーイチ!ちょっと待って!」

玄関が開いて、オフクロが出てきた。オレは家の中に入った。応接室の隣、食堂と6畳の和室が一緒なった居間・・・今見るとこんなに狭かったか?と思う家だった。

オレは和室のテーブルの前に座った。


「いきなり帰って来るなんて吃驚するじゃない!何かあったの?」

オレ
「別に何もないさ。近くまで来たから寄ってみただけさ」


「珈琲でいいの?」

オレ
「いや、熱いお茶を」

お袋はキッチンの方へ行った。この部屋にある家具のひとつひとつが小さく見えた。昔はもっと大きかったと思ったが・・・この家はオレが3歳の時に、当時新築だった建売りを買った。そしてオレは19の夏までこの家に居た。


「芦屋の家には帰ってるの?」

オレ
「ああ。たまに帰ってるよ」


「遠くなったから、行く機会がめっきり減ったけど、玲子さんは裕人や裕美を連れて時々来てくれるわ」

オレ
「そう」

オレはオフクロが淹れた熱い日本茶を口にした。オフクロは親戚の話を止め処もなく話始めた。オレにとっては甥や姪にあたるそういう親戚がたくさんいたが・・・家を出てからはほとんど付き合いがなかった。


「そう言えば、玲子さんから聞いたけど、あんた東京で神主さんになったんだって?」

オレ
「ああ。どうしてもって事で引き受けさせられた」


「そう(笑)少しはこれでおとうさんも安心してくれるといいんだけどねー」

オレ
「親父には言ってないのか?」


「まだ言ってない。もう少し状況がわかってからの方がいいと思ってね」

オレ
「そっか。じゃー行くよ!」


「芦屋へ帰るのかい?」

オレ
「いや。大阪でまだ用事が残ってるから・・・」


「そう。裕人や裕美にいっぱい持って帰ってもらいたいものがあったんだけど」

オレ
「今度あいつらが来た時に直接渡してやれば?きっとその方が喜ぶから」


「そう。そうね。そうする^^」

オレは立ち上がり、かけてあるコートを手にとり玄関に向かった。靴を履いて外に出た。すでに外は真っ暗だったが・・・オフクロは門の外の道まで見送りに出ていた。角を曲がる時、ちらっと見るとまだそこに立って居た。

オレは懐かしい道を駅の方へ向かって歩いた。

▼20時・・・ミナミ「菊水亭」

オレは女将さんの案内で「はなれ」へ続く廊下を歩いた。入り口の前で女将さんは声をかけた。

女将
「ムトーさまがお見えになりました」

オレは女将さんに礼を言って、ドアを開けてはなれに入った。

理恵
「お帰りぃーユーちゃん♪

寒かったでしょう?おこたに入ってあったかいわよ^^」

オレは手に持っていたコートを理恵に渡した。理恵はそれを衣文かけにかけて、奥の和室の方に行った。

オレ
「悪かったな!急に^^」

理恵
「こんな急の事ならいつでも大歓迎よ!」

オレの隣に理恵が座った。すぐに廊下から声がかかり仲居さんが酒の用意を持って入って来た。

理恵はビールを持ち、オレはグラスを持った。そしてビールが注がれた。オレは同じように理恵にビールを注いだ。軽くグラスを合わせてオレは半分ほど飲んだ。

オレ
「急に寒くなったな^^寒がりの理恵は大変だろう?」

理恵
「うん。でもあったかくしてるから大丈夫よ^^」

オレ
「そう^^ここでメシ食ったら理恵の部屋に行こうか?」

理恵
「えー私の部屋に?この間も来たじゃない?」

オレ
「ははは・・・理恵はこっちの方がいいか?なら今夜はここでゆっくりしよう」

理恵
「うん。部屋はちょっと散らかってるから(笑)」

料理が運ばれてきた。オレは腹が減っていたが、酒を飲み始めたらあまり食べない。ビールは最初だけで、いつの間にか日本酒に代わっていた。

オレ
「久しぶりに親の居る実家に帰った。(笑)」

理恵
「そう。ユーちゃん一人っ子でしょう?もっとちゃんと顔出すようにしないと」

オレ
「親父と仲が悪くてな!なかなかそうもいかない」

理恵
「私なんか早くに両親失くしちゃったからお元気にしてらっしゃるんだったらそれだけでいいと思うけどな?」

オレ
「今のオフクロは・・・本当の母親じゃないんだ」

理恵
「えっ?」

オレ
「オレが小学校の2年生の時・・・母親は白血病で死んだんだ」

理恵
「まーそんな・・・」

オレ
「原爆がヒロシマに落ちた次の日に、母親の母親、おばーちゃんと市内に入って父親を探したらしくて、きっとそのせいだろうって言われてた」

理恵
「ユーちゃん。そんな小さな時に哀しい思いをしてたのね」

オレ
「・・・」

オレは熱燗をぐい飲みで飲んでいた。

オレ
「1年も経たないうちに新しいオフクロがやってきた(笑)

自分の子供のように育ててくれたさ。オレも結構馴染んてたし

小学校の3年生なのにもう「オフクロ」って呼んでた」

理恵
「それまでは本当のおかーさんの事、なんて呼んでたの?」

オレ
「ママ(笑)」

理恵
「そう」

理恵はオレに酒を注いだ。オレはあまり味わう事もなくそれを飲んだ。

オレ
「親父の友人の家族と小さい頃隣同士で、家族づきあいをしていた。

その後、うちが引越したあとも親父のオフクロ。オレのおばーちゃんがそこに住んだんだ。

オレは毎週のように泊まりに行って、土手さんって言う家だったんだけど、そこに泊まっていた。

6歳年上と8歳年上の兄貴が居て、オレを可愛がってくれた。オレは中学生になるまで休みの日はそこに行ってた。

その家庭の親父さんも警察官だったから・・・警察官は誰も、いつもオレに優しかった。

警察はともだちだったんだけどなー」

理恵
「何かあったの?」

オレ
「その警察に呼ばれた。

Y組の抗争を終結するために・・・一方の敵のトップと会う事になった。

もっとも向こうがオレを指名してきたらしいが、警察の警護の元に先方の家に行く事になった」

理恵
「そんな・・・ユーちゃんがどうしてそんな事をしなくちゃいけないのよ!」

オレ
「向こうがオレと話をしたがってるらしい。どんな話なのかはわからないけどな」

理恵
「ダメよ!いくら警察が警護をするにしても、そんなところへユーちゃんが出て行けばそれこそ、今度はユーちゃんが狙われるかも知れない」

オレ
「それを依頼してきた県警のトップの横に・・・親父の後輩が居たよ

オレに剣道の手ほどきをしてくれた人だった。」

オレは酒を飲み続けた。理恵は酌をした。

オレ
「ママは・・・クリスチャンだった。よく教会にも行った。

それなのに・・・願を聞いてくれなかった。だからオレは教会が嫌いになり、神を信じなくなった(笑)

宴会の時に言う「神に感謝」なんてうそっぱちだ。神なんて酒を飲む前の挨拶程度にしか思ってない。

面をつけて竹刀を持つ時、相手にすべての憎しみや怒りをぶつけた。本来武道は精神修養なのに、オレの場合は逆だった。

普段は大人しい子供なのに、面をつけると人が変わると言われた。いつの間にか道場では『鬼武藤』と呼ばれるようになってた(笑)」

理恵
「鬼武藤・・・ぴったりだわ」

オレ
「ははは^^こんなに優しいのにか?」

理恵
「うん(笑)」

そしてオレは酔っ払って・・・理恵を裸にしたのはいいが、そのまま抱いて一緒に眠ってしまった。

▼1月15日・・・


「わざわざ呼びつけてすまないな!」

オレ
「いえ。ご無沙汰しております」


「うん。本家ではほとんど会う事もなかったけど・・・あの時の事はよく覚えてるよ」

オレ
「はぁ〜」


「お嬢の友達のあんたが、チンピラと間違えてうちの者が半殺しにしてしまった。(笑)本家につれて帰って医者に来てもらって大変な騒ぎだったな。

それからどのくらい居た?」

オレ
「あははは^^1ヶ月ぐらい泊めてもらって、気が向いたら行儀見習いの真似事をしてました」


「そうだったか(笑)」

オレの正面に山広さん。オレの隣には兵庫県警の市岡さんが居た。オレは出された珈琲にフレッシュミルクだけを入れて飲んだ。


「竹中を何故薦めたんだ?」

オレ
「私は竹中さんを薦めた訳ではありません。
山広4代目、竹中若頭・・・そうなるものと思ってました。それで15、6年続くんだろうなーと

台所でメシを食ってたんですよ・・・そしらた竹中さんが入って来て、おばさんが竹中さんのメシの用意をして、竹中さんも食い始めた。あの人、オレより旨そうにメシ食うんですよね(笑)

出されたものは米粒ひとつ残さずキレイに食べて、皿洗いも上手だった。

何度か、そんな事があって、仏間で焼香してた時に・・・おばさんが入って来て、オレは「世代交代しましょう」って言いました。

ただそれだけです」


「要するに一緒にメシ食った竹中が4代目になるのを望んだ。そしてあの女に薦めてその通りになったと言う訳か?

それでお前は竹中の舎弟で納得したのか?もっと大きなモノを約束させたんじゃないのか?」

オレ
「杯を受けないのなら舎弟になれ!って言われて、それも断りましたから・・・結局は曖昧な「舎弟みたいな者」という事になりました。

オレはあくまでもシロートですから」


「それが今や、執行部にも一目もニ目もおかれる『相談役』になり、S会の石本会長とも5分の兄弟だって言うじゃねーかどういう事だ?」

オレ
「なりゆきでそうなっただけで、他意はありません」


「・・・」

山広さんはタバコに火をつけた。オレはコービーを飲み干した。


「この間I会の立浪総長と会った時に・・・お前の話になった。えらく気に入っておられた。

東京じゃお前、何度も襲撃されて、命を狙われっぱなしらしいな?

その度に切り抜けたどころか、自分を殺そうとした相手を全部許してやってるそうじゃないか?(笑)」

オレ
「さーそうでしたっけ?」


「・・・」

山広さんは細い目でオレを見ていた。隣に居る市岡さんは一言も発していない。


「手打ちの前に・・・

先にそっちから、抗争の終結宣言を出してもらう。

それを確認した翌日、こっちも終結宣言を出す」

オレ
「Y組と一和会の抗争が終結したと、それぞれの組が発表する訳ですね?」


「お互いいう事を聞かない連中も出てくるだろう」

オレ
「加茂田さん・・・ですか?」


「そっちは武が居るだろう(笑)その後、手打ちにする。。。」

オレ
「そこまでの覚悟が出来ていらっしゃるのに・・・何故オレを?」


「ふんっ!後はお前の好きにすりゃーいいじゃねーか(笑)」

オレ
「・・・ありがとうございます」


「いつか・・・オレにも銀座を奢ってくれ!」

オレ
「はい^^」

オレと市岡さんは、東灘区の山広邸を出た。厳重な警察の警備の中を、乗ってきた覆面パトカーに再び乗り込んで県警本部に戻った。

オレはひとりで応接室に通された。かなり待たされた。そして沖田警視がひとりで入って来た。


「お疲れ様でした^^市岡から聞きました。終結宣言を双方が出し、その後手打ちという段取りが決まったそうですね」

オレ
「一応・・・」


「いやー大きな進展ですよ!どうかこれ以上、抗争が起きないように内部で調整をお願いします」

オレ
「はぁ〜そうなるようには努力します」


「うむ。ありがとう」

沖田警視は手を出した。オレはその手を握り握手した。そして部屋を出た。隣の部屋から市岡さんが出てきた。

市岡
「悪いがもう少し付き合ってくれ」

オレ
「はい」

オレは市岡さんと県警本部を出て、また車に乗って東へ走った。本家へそのまま行くのか?と思ったが、同じ灘区の王子公園の北にある。道場の前で車は停まった。

オレ
「えっ?もしかして・・・」

市岡
「うん。ちょっと汗を流そう(笑)」

オレ
「えーーー(笑)」

小学生時代から中学の1年の時まで通った剣道場だった。ロッカールームで洗い立ての新しい紺の袴と同色の上着を渡された。オレはそれに着替えた。そして防具を借り受け、オレは竹刀を何本か手に持ち、自分に合うものを選んだ。

道場に入ると、市岡さんは指導者に声をかけた。それまで10数人が練習をしていたが・・・道場の両端に寄り面をとり正座した。

市岡
「昔のスタイルでやるぞ!」

オレ
「なんでもアリですね(笑)」

道場正面に相対して座った。オレは防具をつけた。そして正座して頭に手ぬぐいを巻き、面をつけた。そして小手をはめて竹刀を持った。

中央に出て蹲踞して竹刀を構えた。

そして立ち上がり距離をとった。すでに始まっている。オレは正眼に構えたまま・・・摺り足で間合いを詰めた。すべての意識を面の向こうに居る敵に向けた。体中が熱くなっていく、そして頭の中は逆に冷たく冴えてきた。脳の奥から、メラメラと闘志の火が燃え上がる。

オレ
「とりゃーーーー!!!!!」

気合一身、オレは飛び込むように間合いを詰めて、面を打ちに行った。敵の竹刀がそれを受け止めて、すぐに胴を払いに来る。オレは右ひじを引き、竹刀の持ち手の方でブロックした。

そして竹刀を押し込むように小手を打ちに行ったが、体を寄せて防がれた。オレは腰を落として、一気に体ごと押し吹っ飛ばそうしたが、逆に相手に後ろへ飛ばれて逃げられた。

再度、正眼で構え距離をとった。


「せいやーーーー!!!!!」

裂帛の気合と共に、小手を取りに来た竹刀をオレは受けたと同時に体を開いて右に上体を捻った。オレの首の横に竹刀飛んできた。そして体をぶつけられバランスを崩した。その気を逃さずに敵は竹刀を叩き込んで来た。オレは竹刀で受けた。そしてオレは突き飛ばされてふっとんだ。


「どうした?足腰が弱くなってるな」

オレ
「・・・」

オレは道場の板の間に座りこんでいた。立ち上がって竹刀を構えた。体内の温度は上がっている。真っ赤な闘志が燃えて蒼に変化するように脳内が充満した。

オレ
「しゃーーーー!!!!」

オレは飛び込んで小手、面を息を停めて打ち続けた。どれも浅くほとんど相手の竹刀で防がれていた。オレは押し続けた。1分が限界だった。息を吐く瞬間、思った通り敵の必殺の気が送られた。

刹那、オレはそれに合わせて渾身の突きを見舞った。掠っただけでかわされた。


「よしっ!ここまでだ!」

オレは肩で息をしながら中央に出て、蹲踞の姿勢で竹刀を仕舞った。そして下がって正座をして面を取った。

オレ
「ふぅー」

周りを見た。注目されているのがわかった。市岡さんが近づいてきた。

市岡
「風呂へ入ろう^^」

オレ
「はい^^」

道場の横手にある10人ぐらいが一度に入れる浴場に行った。オレは素っ裸になり頭に巻いていた手ぬぐいだけで、風呂に入った。かけ湯をして飛び込むように入った。

オレ
「くぅーーーー」

飛び上がりたくなるほど、熱かった。しかしコレが風呂だった。市岡さんも同じように唸りながら入っていた。

市岡
「ユーイチ。足腰を鍛えたら、お前まだまだやれるぞ(笑)」

オレ
「あははは^^当間流の後継者は育っているんでしょう?」

市岡
「ああ。ひとり居る」

オレ
「ひとり居りゃーいいじゃないですか」

市岡
「お前ほどの才はないがな」

オレ
「実は、川越の藤原神社の宮司になったんですよ」

市岡
「あー?お前が、宮司だと?」

オレ
「ええ。そこに道場をつくって、藤原流を習おうと思ってます」

市岡
「おお^^あの藤原流の藤原神社か!」

オレ
「廃れまくってますけどね(笑)古武道をまたちょっとやろうと思って」

市岡
「そーか!ユーイチ。宮司でも何でもいいから・・・」

市岡さんはそれ以上言葉にしなかった。オレは風呂を上がり頭を洗ってから出た。ロッカールームで着替えて、市岡さんが送ろうとするのを断って、オレはひとりで歩いた。

途中でタクシーを拾って、元町花隈の「涼風閣」へ向かった。

▼17時・・・

渡辺
「抗争終結・・・宣言か」

梅木
「こっちが出した翌日に向こうも出すわけですね?それで世間や警察に対しては、もう抗争が終わったと知らしめる」

石井
「それでも言う事を聞かずに抗争を続ける組は・・・」

オレ
「当然、処分の対象になる」

梅木
「竹中組・・・もですか?」

オレ
「Y組に居る以上、執行部で決定して世間に発表した事を守れない場合は、何処の誰であっても処分は下される」

渡辺
「・・・そうだな」

オレ
「それで、執行部はまとまりますか?」

渡辺
「根回しはする」

オレ
「じゃー明後日の執行部会議の席で今日の件を報告がてら、決めてしまいましょう」

渡辺
「うむ。。。わかった」

「じゃーオレは先に出る。ムトーゆっくりしていってくれ」

オレ
「はい^^」

ゴローちゃんは立ち上がった。石井と梅木も立ったのでオレも釣られて立ち上がった。

石井と梅木は同じようにゴローちゃんについて部屋を出て行った。オレは新しいビールの栓を開けて、自分のグラスにビールを注いだ。

すぐに梅木と石井は戻ってきた。

オレ
「いいのか?二人とも居て?」

石井
「ええ。ムーさん。どうぞ向こうの席へ移ってください」

オレはさっきまでゴローちゃんが居た上座に座らされた。そして正面に石井と梅木が座った。

オレは彼らにビールを注いだ。

梅木
「ムーさんにも色々と細かい事情を把握してもらう必要もありますし、久しぶりですから^^」

オレ
「そうだな^^」

梅木
「それにしても抗争終結宣言!名案ですね^^さすがムーさんだ」

石井
「うん。これで一気に収束に向かう」

オレ
「実は・・・オレのプランじゃない。向こうが提案してきたんだ」

梅木
「えっ!山広さんの提案って・・・そんな」

石井
「なんでそれをムーさんに?」

オレ
「さー?知らない」

梅木
「山広さんがムーさんに・・・手柄を」

オレ
「その代わり・・・」

石井&梅木
「・・・」

オレ
「銀座を奢る事を約束させらた(笑)」

石井&梅木
「あははははは^^(笑)」

オレはビールを飲んだ。

オレ
「話に出なかったけど、伊藤忠の件は組内ではちゃんと収まったのかな?」

石井
「はい。和解金10億・・・渡辺さんと話し合って全額上納しました」

梅木
「ちょっと気を使いすぎの気もしますけど、あくまでもその件はヤマケンのシノギとしてムーさんは関係ない。という事にしました」

オレ
「うん。それでいい(笑)」

石井
「そこまで気を使ってもらって、すみませんでした」

オレ
「ヤマケン内部ではどう?」

石井
「ヤマケン組内と言う事ですか?何も問題はありませんけど?」

梅木
「何か心配ごとでも?」

オレ
「いや、ただなんとなく気になっただけだ(笑)」

▼1月16日・・・芦屋「自宅」

オレ
「ひさびさにオヤジに会った」

玲子
「そう^^おとーさま喜んでたでしょう?」

オレ
「いつもと同じさ。嫌味を言われて説教じみた事をいうのが背一杯で、オレは腹をたててやっぱり2度と会わない。。。そう思っただけさ(笑)

もっとも実家には顔を出してオフクロとも会ってきたけどな」

玲子
「男同士でそんなものじゃないの?^^おかーさまとも久しぶりだったでしょう。生まれ育った家がすぐ近くにあるんだからもっと頻繁に行けばいいのに」

オレ
「生まれ育った街があるからいいさ(笑)」

オレは珈琲を飲んだ。オレはこの家にはまだ馴染みが薄いが、玲子や子供らにはきっとここが自分達の家だという思いがすでにあるのだろう。

玲子
「もう宮司の仕事はいいの?^^」

オレ
「ああ。細かい神事はいくつかあるけど、オレは関知しない。神職たちだけでなんとかやれるし(笑)」

玲子
「でも、あの衣装。すっかり似合ってたわ」

オレ
「そうかー?(笑)」

正面のソファーに座っていた玲子がオレの隣にきた。そしてオレの首に両手を回して抱きついてきた。オレは玲子にキスをした。

玲子
「あの姿。凛々しくて昔からそんな風に振舞っていたような気がしたわ。そしてあなたがどんどん遠くへ行ってしまいそうで・・・」

オレ
「遠くへなんか行かないさ。オレは何時だって、一瞬で玲子の中に帰ってくるから^^」

玲子
「うん。こうしているとそう思えるわ」

オレ
「ははは・・・」

オレは玲子と一緒に寝室へ行き、今年初めてのセックスをした。正月に玲子は藤原神社に子供達をつれてやってきたが、ほんの1時間ぐらい一緒に居ただけで、オレは次々とやってくる参拝客の祈念に忙殺されて、玲子とセックスをする時間もなかった。

もっともそれは玲子に限った事ではなく、在京のママたちも同様だった。大阪に居る理恵や香はそれを察してか、オレが帰阪するのを待っていた。

オレは玲子と昼飯を食ってから新神戸から新幹線で東京に戻った。

▼16時・・・白金台「キョーコの部屋」

インターフォンを鳴らして鍵を使って入った。すぐにキョーコが表れた。

キョーコ
「お帰りなさい^^」

オレ
「ただいまー(笑)」

オレはキョーコと軽く抱擁を交わして、リビングに入った。キョーコに引っ張られるように子供部屋に入った。ベビーベッドに赤ん坊が寝ている。「ゆうぞう」だった。生まれた時より少しは人間らしい顔になっているようだった。

オレ
「問題ないか?」

キョーコ
「うん。ずっと寝てて手間のかからない子よ^^」

オレ
「キョーコは?」

キョーコ
「もうすっかり大丈夫^^お腹がすっきりしてせいせいしたわ(笑)」

オレ
「あははは^^そっか(笑)」

オレたちはリビングの方へ行った。オレはソファに座りキョーコは珈琲を入れてくれた。

オレ
「沙耶は?」

キョーコ
「今日は今年初めての仕事に行ったわ」

オレ
「そっか。あいつにも世話になったな」

キョーコ
「うん。もっぱら裕子と遊んでいてくれたので、私は楽だったのよ」

オレは珈琲を口にした。

キョーコ
「お正月にユーイチが藤原神社行ってる間に皆さんゆうぞうの顔を見に来てくれたのよ!」

オレ
「皆さん?」

キョーコ
「玲子ママに理恵ママ、洋子ママに純子ママ、そして麻美ママとレミママ。それから紗也乃ママと四方さん」

オレ
「うわっ全部きたのか(笑)それは大変だっただろう」

キョーコ
「皆さんすごく喜んでくれて大変だったけど嬉しかった。それに紗也乃さんなんか去年から3日1度来てくれてるのよ^^」

オレ
「紗也乃が・・・そう。結果的に松村さんの希望が適って、紗也乃ママも喜んでるんだろうな」

キョーコ
「うん。そう言ってた」

オレは珈琲カップに手を伸ばして珈琲を飲んだ。松村さんの娘だったキョーコ。そしてリョーコ。そのどちらかと結婚して、子供をつくる。それが松村さんの希望だった。

オレ
「実は提案があるんだけどな?」

キョーコ
「何かしら?」

オレ
「このあたりで家を建てようと思うんだが・・・紗也乃も一緒にいいかな?」

キョーコ
「ユーイチはそうして欲しい?」

オレ
「できれば・・・」

キョーコ
「わかったわ^^言う事聞いてあげる」

オレ
「ほんとにいいのか?」

キョーコ
「いいわよ(笑)どうせ沙耶もずっと居る気みたいだし、紗也乃さんとだったらうまくやっていけそうだし」

オレ
「あははは^^そっか!じゃーさっそく紗也乃に話すよ」

キョーコ
「その代わり・・・かまってねっ♪」

オレ
「おう^^」

オレはキョーコを寝室に誘い。ひさしぶりにきつーいセックスをした。そして赤坂に戻った。

▼18時・・・赤坂「自宅」

北浦
「藤堂が、やくざが15代を継ぐ事は認められないと・・・氏子会などに文書を送りつけています」

オレ
「あははは^^なかなかやるじゃないか(笑)」

松井
「重富総代もちょっとそれに便乗しているようです。本当かどうかは知りませんが、氏子の動揺が激しいとか・・・」

横山
「何かこちらも手を打つ必要がありそうですね」

北浦
「それで、重富総代が和解案を示しているですが・・・」

松井
「どんな案です?」

北浦
「15代は不在が多いので、権宮司を常駐させるようにしようと!そして藤堂家の次男の孝雄さんを、その任にあたらせるようにしたらどうかと」

松井
「それで美香さんをテゴメにして妊娠でもさせるか、前後してムーさんを狙おうとでも考えてるんでしょう?」

北浦
「まさかそこまでは・・・」

横山
「2度ある事は3度ある!っていいますし、その可能性は高いですね」

オレ
「高瀬家はどういってます?」

北浦
「何もまだ聞いていません」

松井
「高瀬家が気になるんですか?」

オレ
「あの家を味方につけないと、正攻法では負ける」

北浦
「なるほど・・・ではさっそく」

オレ
「いや、高瀬家にはオレが話をつける」

北浦
「・・・」

横山
「高瀬家を味方につけてからは、どうします?」

オレ
「どうすればいい?(笑)」

横山
「怪文書に対してカウンターを出しましょう。週刊誌による藤堂家のスキャンダルを露出させます。

その上で氏子会を開いて、こちらの誤解を解く説明をします。

それでも異議がある人達がまだ居るようなら、氏子会を1度解散する。

そして新しい氏子会をつくって氏子会理事と総代を再度決める」

松井
「それで行きましょう(笑)」

北浦
「それはしかし・・・」

オレ
「じゃーどうしましょう?」

北浦
「週刊誌が出る前に私が交渉して、藤堂さんには引いてもらいます」

横山
「氏子会の解散は?」

北浦
「それも今回はなしと言う事で・・・みなそれぞれ何かしら藤堂家からの仕事を請け負っているところが多いので・・・」

オレ
「わかりました。じゃーそれでお願いします」

北浦
「はい。ありがとうございます。さっそく調整を図ってみます」

そう言って北浦氏は帰って行った。佐和子は黙って聞いていた。そして新しい珈琲を入れて、そのポットを持ってソファの方に来た。

佐和子
「お疲れさま^^」

オレ
「ふむ(笑)」

佐和子は新しい珈琲をオレのカップに注いだ。そして松井や横山のカップにも・・・

横山
「ムーさん。甘くないですか?明らかに重富氏は造反してますよ!このまま総代を続けさせるのはどうかと・・・」

松井
「オレもそう思います。禍根を残す事になると思います。また・・・狙われないとも限りません!」

オレ
「お前らが心配してくれるのは、ありがたいと思う。

でも良く考えてくれ・・・元々神社というのは、地元に根付いてるものだ。そこのトップになったからって、これまでの人たちが気に入らないからと切り捨てていいわけじゃないだろう?

そこまでの責任を持ってオレ自身あそこで一生宮司だけをやるつもりもないんだから・・・それにただ反対派を一掃しただけで、これからの繁栄は望めないだろう?」

横山
「・・・まーそう言われればそうですけど」

松井
「妥協を続けるって事ですか?」

オレ
「いや、反対派の人たちに15代の宮司になって良かった!と思わせる事に集中しよう」

横山
「例えば・・・どんな事を?」

オレ
「そーだなー?この間から議題になってる「春の例大祭」を派手にぶち上げよう!
奉納相撲や薪能。それにジャニーズ事務所のコンサートとか!一大イベントを行おう。もちろん無料解放だ^^」

松井
「ははは^^そりゃー大変だ」

横山
「地元の人々は確かに喜んでくれるでしょうね^^」

松井
「うん。氏子会にも若い連中だけの青年会をつくって支持を広げましょう」

横山
「そっか。藤原神社を軸に地域活性化を図れば、自然と評価は高まりますね」

オレ
「じゃーそう言う事でよろしく^^オレは佐和子とちょっと出てくる」

松井&横山
「いってらっしゃい^^」

オレは佐和子と歩いて赤坂プリンスの日本庭園にある「てっぱん焼き」の店に入った。そしてフィレとロース。それにシャンパンをオーダーした。

オレ
「せっかく赤坂に居てくれたのに騒動ばかりで悪かったな^^」

佐和子
「ううん。楽しかったわー^^こんな充実した日々はニューヨーク以来よ」

オレ
「ははは・・・今度はパリでそんな風に過ごそう^^」

佐和子
「うん。楽しみにしてるわ」

佐和子は明日、パリに向かう。ジョエルの製作の指揮をとれるのは、佐和子をおいて他に居ない。夏前まではパリに滞在する事になる。

ウエイターがシャンパン持って来た。オレは銘柄だけを確認して、ウエイターは勢い良く栓を飛ばした。そしてそれぞれのグラスにそれを注いだ。

オレたちは軽くグラスを合わせてカンパイした。

佐和子
「それにしても、あなたはずいぶん成長したわね?」

オレ
「ん?何が?」

佐和子
「性急に事を進めようとしている彼らに対して、ちゃんと大人の対応が出来てたわ(笑)」

オレ
「ほーそうですか?(笑)」

佐和子
「なぁ〜に?私が言うとおかしい?」

オレ
「いや、きっと佐和子も大人になってるんだなーと思っただけさ」

佐和子
「あら。私はあなたより年上よ^^当然じゃない」

オレ
「そっか(笑)そうだったな^^」

佐和子
「さっきまで可愛かったのに、今はまるであなたの方が兄か父親のようね」

オレ
「(笑)」

オレたちは旨い肉を食って、それから銀座に出かけて買い物に付き合った。そして夕方に自宅に戻り、桜井のレストランの方で食事をしてから自宅に戻りふたりだけで過ごした。

翌日・・・佐和子はパリへ発った。

▼12時・・・桜井「はなれ」

オレは昼食を「はなれ」で紗也乃と共に摂っていた。

紗也乃
「佐和子さん無事にパリへ発ったのね」

オレ
「ああ。夏まで戻ってこない」

紗也乃
「淋しいわね」

オレ
「ははは・・・」

紗也乃
「この後はどうするの?」

オレ
「どうするとは?」

紗也乃
「誰が赤坂の本家に入るのか?注目の的よ」

オレ
「当分はひとりさ(笑)」

紗也乃
「どうして?やっぱり誰か居ないと不便でしょう?」

オレ
「ここには紗也乃も居るじゃないか」

紗也乃
「ここはそうだけど、自宅は自宅よ」

オレ
「オレはその自宅で寝るのは週に1度もないんだけどなー?」

紗也乃
「やっぱりダメ?」

オレ
「ああ。ダメだ」

紗也乃
「そう。。。」

紗也乃の考えは分かっていた。キョーコを自宅に入れて欲しいんだ。そうしたら毎日のように、ゆうぞうに会える。オレはわざと紗也乃の考えを否定してみせた。やはり落胆しているようだった。

オレ
「実は、お願いがあるんだ」

紗也乃
「何?」

オレ
「白金台で家を建てようと思ってる」

紗也乃
「・・・そうなんだ?(笑)」

オレ
「紗也乃も一緒に住んでくれないかな?」

紗也乃
「えっ!」

オレ
「すでにキョーコはそのつもりで喜んでいる」

紗也乃
「そんなっ!^^」

オレ
「紗也乃がこっちへ仕事へ来る時に、キョーコが車で送って来て、昼間は赤坂で過ごしてもいいし・・・先にキョーコが帰っても、紗也乃が夜帰る時は、源が送っていくから、問題ない。」

紗也乃
「うわーそーなんだー^^ユーちゃんは本当にそれでいいの?」

オレ
「ああ。そうしてくれるとオレも安心だ」

紗也乃
「ユーちゃん。ありがとう。。。」

オレ
「あははは^^」

オレたちは奥の部屋に行き、あわただしくセックスをした。そして久々に一緒に風呂に入った。

紗也乃は元々サンタモニカで刈谷と一緒に暮らして、刈谷にオレの子供を産ませようとしていた。

そうする事がオレの負担を少なくする事だと思っていたし、子供ができれば男が居なくてもなんとかやっていけるという考えがあったのだろう。

キョーコがゆうぞうを産んだ事で、キョーコの本当の父親だった松村氏の血が受け継がれた事になる。もっともそれは先に生まれていた裕子もそうなんだが、松村氏はオレを後継者とした事で、キョーコとの間に子供をつくる事を望んだ。それも男子を・・・

松村氏の内縁だった紗也乃にしてみれば、今回の出来事はその夢がかない大いに喜んだ。そしてその願望は・・・近くでゆうぞうの成長を見ていたい。出来れば、それを実感したいと思っているのは明白だった。

オレはキョーコが素直に賛成してくれるとは正直思わなかったが・・・キョーコなりに色んな事を考えて、それがいいと結論付けたのだろう。

そして、それは沙耶にしても同じだった。

新しい家でキョーコ、裕子、ゆうぞう。そして沙耶と紗也乃。彼女らが居れば間違いなく楽しい家になる。それはオレも楽しみな事だった。

▼19時・・・新宿

オレは古ぼけたビルの地下へ降りていった。そこの扉を開けて入ると、換気の良くなさい酒とタバコの匂いが混じった空気が感じられた。

サングラスをはずして皮ジャンの内ポケットに入れた。そして店内を見渡した。斉藤がこっちを見て手を振っていた。オレはそこへ近づいた。

斉藤
「紹介する。高校時代からの友人。ムトーだ」

「こっちは大内さんと余さん。プロの俳優さんだ」

オレ
「ども^^ムトーです」

大内
「大内です。どうぞよろしく!^^」


「初めまして^^余 紀美子と申します。よろしくお願いします」

オレたちは席についた。すでに彼らは飲んでいた。斉藤がオレのオーダーを大きな声で頼んだ。

斉藤
「アキラ。お前、こういうところもよく来るのか?」

斉藤
「ああ。東京はオレの方が圧倒的に長いからな(笑)ここは70年代の匂いがぷんぷんする酒場だ。

大内さんだが、六中出身なんだ」

オレ
「へーそうだったんですか!^^裸で中間体操やったり、パンツ一丁で便所掃除したりしてたんですねー?」

大内
「うわー詳しいなー(笑)ムトーさんもあの周辺ですか?」

オレ
「ええ。自宅は東灘区です」


「私も東灘に1年ほど住んでたんですよ^^」

オレ
「ほー^^それはそれはこの新宿で神戸に関係のある人ばかりが一緒に飲むなんて縁があるなー(笑)」

斉藤
「ヒロ。先に用件なんだが・・・gantsを昼間使わせてもらえないか?と言う事なんだ。

大内さんと余さんが中心になって昨年劇団を立ち上げたんだが・・・都内の練習場所がなかなか用意できなくて、それでgantsならステージも音響照明も整っているので、どうかと」

オレ
「営業に支障がないならいいんじゃないか?」

斉藤
「という事で、大内さん余さんオッケーが出ましたよ(笑)」

大内
「いやーそんなに快く引き受けて下さってありがとうございます^^」


「本当にいいんですかー?^^」

オレ
「ええ。昼間は使ってないようですし問題ないと思います(笑)」

斉藤
「なんならヒロ。お前も混ぜてもらえよ(笑)」

大内
「うん。ムトーさん。是非^^最初店に入って来た時に感じました。ものすごい素材だと」


「ええ。私も感じましたよ!プロだって」

オレ
「あははは^^そんなに煽てられても(笑)」

オレは斉藤の顔を見た。斉藤は笑って首を振った。何も余計な事は言っていないようだった。

大内
「ムトーさんはずっと音楽をやってたんでしょう?」

オレ
「ええ。まー」

斉藤
「実は、占部の紹介で知り合ったんだ」

オレ
「なんだそうだったのか!」


「占部さってキンタさんの本名ですよね?」

斉藤
「ええ。学生時代の仲間です」


「じゃーもしかして占部さんが言ってた伝説の男って・・・」

斉藤
「ははは・・・コイツです!」

大内
「なるほど、そうでしたか^^」


「やっぱり」

オレ
「入試の時に試験管を罵倒して出て行った話か?(笑)」

斉藤
「ははは・・・まーそんなところだ(笑)」

大内
「ムトーさん。伝説に終わらせないで、今からオレたちと劇団やって役者やりましょうよ!ムトーさんなら絶対成功します!私が保証します!」


「うん。是非私たちの仲間になってください。お願いします」

オレはまた斉藤の顔を見た。斉藤はさっきと同じように首を振った。オレは何も言っていない。そう応えていた。

オレ
「ははは・・・で、そんな芝居やってるんです?」

それから大内は自分が演出をやりながら、自分が思う芝居の夢を話し始めた。それはどこか日本的でアンダーグランドから脱して、日本の劇場芸術を一般的にもっと受け入れられるようなものにして、活動の場を広げようと言うものだった。

オレはバーボンのロックを飲みながら時折相槌を打ち聞いていた。

オレ
「それで、一般公開はいつぐらいの予定です?」

大内
「正直なところ・・・見通しがまだ立っていません」


「今日ようやく練習場所が決まったところですから(笑)」

オレ
「でも一月も練習すれば、すぐに発表の用意が必要になってくるでしょう?」

斉藤
「まー予算の事もあるしな!そのあたりのプロデュースはまだなんだ」

オレ
「アキラ。じゃーお前がプロデュースしろよ(笑)」

斉藤
「おいおい^^」

オレ
「この間お前言ってたじゃないか!T電機の広報に顔が利くって(笑)2000万ぐらいならすぐにひっぱってきてやる!とか」

斉藤
「ヒロっ!そんなお前・・・」

オレは隣に座る斉藤に顔を向けてウインクした。

斉藤
「しょーがねーなー(笑)2000万だな?わかったよひっぱってくるよ」

オレ
「よしっ!決まった(笑)これで本番のケツを決めて練習に取り組めるだろう?」

大内
「そんな・・・本当ですか?」


「なんだか、信じられない話になってきたようですけど」

オレ
「こいつは昔からホラ吹きなところがありますけど、約束は必ず果たすヤツなんですよ!大丈夫ですよ」

斉藤
「ははは・・・オレはホラ吹きか?(笑)」

オレ
「じゃー大内さん。ソレ用の企画書を書いてもらえますか?」

大内
「あっはいっ!^^斉藤さん。よろしくお願いします」


「斉藤さん。本当にありがとうございます^^」

オレ
「いやー良かったねー(笑)」

それから河岸を変えてオレたちは飲んだ。大内はオレより1つ上、余はオレより1つ下。共に同世代と言う事もあり意気投合した。彼らの話を聞いていると、とっくにオレが忘れていたものを思い出させてくれた。

プロの俳優になる。それはそう難しい事ではない。だが、そこで単純にタレントのように売れる事だけを目指すのは少し違う。

そして自分達で演技の幅を広げようと思うと、色んな演出を経て自分達の芝居を作って行く!という活動になる。それが劇団立ち上げの動機になっているようだった。

オレはまだ自分の事を話さなかった。話すと自分の演出論をぶつ事になる。それはそれで良かったのだが・・・もう少し様子を見る事にした。

斉藤はちょっとしたきっかけをオレに与えた。オレはそれに乗った。これまでと違った人間関係の中でおれ自身がうまくやっていけるかどうか?自分自身それを楽しめるか?すぐに答えが出るだろうと思った。



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