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めくれたオレンジ


東京スカパラダイスオーケストラ 「めくれたオレンジ」

田島貴男のヴォーカル♪何故か梅雨のイメージなんだよなー!個人的にはこの時期、クルマで聴くのがしっくりくる。もっとも本来はまだこの時期は梅雨じゃないんだけど、例年より2週間以上早い梅雨入りらしい。
1987年3月------------


「新一郎を許してやってくれないか?」

オレ
「誰です?それは?」


「長男だ。。。」

オレ
「私は名前も顔も知りませんが?」


「・・・」

北浦
「宮司・・・藤堂新一郎さんがムーさんを襲わせたそうなんです。その事がバレたと思って、新一郎さんは家族にも行き先を告げずに逃げているそうです」

オレ
「そうですか」


「もうあんたの邪魔はしない。好きにしてもらって結構だから」

オレ
「私は何もそんな事を望んでいません。藤堂家が権宮司を引き続いてやってもらえる事にも賛成してましたし、氏子会の皆さんにもなんら偏見を持ってませんよ」


「・・・」

オレ
「その人は何に怯えているんでしょう?」


「やくざが・・・四六時中藤堂家を監視している。

何度電話番号を変えても、色んな電話がかかってくる。地元警察ではまったく話にならない。

家族が怯えて一歩も外へ出られない」

オレ
「それと私がどう関係があるんです?」


「もう止めさせてくれ!」

オレ
「私の指示だと?」

北脇
「いえ宮司が指示したとは思っていません。しかし・・・宮司の身を心配してそうなっているのではないかと」

オレ
「次男の権宮司は何度も美香さんの部屋へ入ろうとしたらしいですね?」


「・・・」

北浦
「結果的には・・・入れて居ません」

オレ
「結果的には・・・オレは死んでないからいいじゃないか!と言いたい訳ですね?」

北浦
「すみません宮司。決してそう言う意味ではなくて・・・」

オレ
「生きているからこそ、怯える事も出来る。死ぬ事と比べたら幸せな事ですね」

北浦
「・・・」


「どうすれば・・・納得してもらるんだ?」

オレ
「何も考えずにここに来たんですか?」


「10億・・・詫び料として持ってきた」

オレ
「金か・・・」

北浦
「すでに氏子総代の重富さんから辞任届けが出ています。同様に権宮司からも・・・」

オレ
「予定通り、秋には16代を決める。もっともそれ以前に藤原神社は単立の神社としてではなく、神社本庁の監督下の下にそこから次代を派遣してもらう事になっている。」

北浦
「そっそんなっ!!!」


「なんと!!!」

オレ
「13代巫女姫はその職を止めると言っている。これからは藤原神社はごくごく普通の神社として、地域の方々に親しまれる神社として出直す!

それがオレのいや15代宮司としての決定だ。

以上だ」

オレは桔梗の間を出て「はなれ」に向かった。そしてそこから自宅に入り居間に戻った。

松井&横山&前田
「お疲れ様でした」

オレ
「これですべて解決だな?」

前田
「それにしても皆驚いたでしょうね?」

松井
「ムーさんが決めた事だから(笑)」

横山
「でも小佐野さんが残してくれた資産200億は下りませんよどうなるんです?」

オレ
「さー?神社本庁が管理するんじゃないか?」

横山
「そんな・・・アレはムーさんのために遺してくれたものなのに」

前田
「横山。金に拘るな!金が必要ならオレがしっかり稼いでやるから(笑)」

松井
「ははは^^そうだ!これからは金の事は前田と関川さんにお願いしよう(笑)」

横山
「ははは・・・」

前田
「それで一体その藤堂の長男の仕業ってどうしてわかったんです?」

オレ
「ん?解説は未だだったのか?」

松井
「ええ。ムーさんも知らない事があるはずなので、戻ってからと」

オレ
「そう。じゃー教えてくれ(笑)」

松井は説明を始めた。

S会の調べでニューヨークでオレを襲った実行グループは、マフィアとは違って、その下に位置する黒人系のドラッグを扱う不良グループだった。

藤堂の長男、新一郎は友人で地元のヤクザ小西組の長男に藤原神社の後継を巡る話をした。

新一郎は次男の孝明が権宮司になり、ゆくゆくは16代を継ぐ事が藤堂家の悲願だと言った。

そして藤原神社には小佐野遺産200億が手付かずで残っている事を漏らしてしまい小西一家の長男は宮司暗殺を持ちかけた。

事がうまくいった暁には、10億の成功報酬を約束させたようだ。

そしてオレがニューヨークへ行く情報を掴み。向こうでヒットマンを金で雇い待ち受けた。

それらはすべてS会岩崎が解明した。そして、藤堂家の包囲網を形成してプレッシャーをかけ続けた。

オレ
「小西一家はどうなった?」

松井
「すでに解散させられたようです」

前田
「S会の手柄ですね(笑)」

横山
「田舎やくざと間抜けな長男が仕組んだ・・・なんだかバカバカしいですね」

松井
「単純な構図が一番怖い。でも藤原神社を取り巻く因縁はこれですべて解決しますね」

前田
「よし!じゃー今夜あたり吉原へ繰り出しましょうか?^^」

オレ
「ははは・・・すまん前田。まだ腰を使うと胸が痛いんだ」

前田
「ならじっとしてて踊ってもらえばいいじゃないですか(笑)」

松井
「アホっ!ママ達が上に居るんだぞ!今ムーさんは監禁状態なんだから」

横山
「ずっとそうしてもらえば安心なんですけどね(笑)」

前田
「んーーーじゃームーさんはここに居てもらってオレたちだけで行くか?」

オレ
「前田。そんな淋しい事言うなよなー(ーー;)」

前田
「しょーがねーなー(笑)じゃー今夜は「桜井」で飲んだくれましょうか?」

横山
「オレはフグでも食ってます(笑)」

松井
「おう^^それがいい(笑)」

こうして藤原神社の決着はついたつもりでいた。オレたちは桜井のはなれで久々に宴会をした。

翌日・・・高瀬さんと北浦氏が揃って自宅にやってきた。

洋子が彼らを居間に招き入れた。

オレ
「わざわざお越し頂いてすみません。今日にでも高瀬さんには会いに行こうと思っていたところなんです」

高瀬
「宮司・・・藤原神社が単立でなくなるって本当ですか?」

オレ
「はい。そう決めました」

高瀬
「お願いです。それだけは何とか思いとどまって下さい」

北浦
「私もお願いします。そんな事になったら何の為に・・・」

オレ
「どうして反対なんです?」

高瀬
「代々続いた藤原神社が、神社庁の監督を受けるなんて見過ごせません」

オレ
「素人のオレが考えたプランだと思いますか?」

高瀬
「・・・」

北浦
「じゃー一体誰かそんな事を」

オレ
「先代です。オレがこの間見舞いに行って少し事情を話したら・・・オレにそんな迷惑がかかっているのなら、藤原神社を神社本庁にまかせようと言いました」

高瀬
「まさか・・・そんな・・・」

北浦
「14代の龍斎さまが・・・」

オレ
「オレが現れなかったら、そうするつもりでいたようです。それ以上に、口には出しませんでしたが、早くそうしていれば・・・と後悔しているようでした」

北浦
「なんと、先代がそんな事をおっしゃっていたんですか」

高瀬
「・・・」

オレ
「ですからオレは誰にも言わずにそうする事に決めました。ただ・・・先代も高瀬家の事は気にされていて、オレにできるだけの事はして欲しいと言ってました。

高瀬さん。高瀬家が立ち行くように協力させて頂きますから・・・どうかこの事は先代の意思でもありますから、ご理解いただけませんか?

同様に北浦さん。藤原神社が単立で無くなっても藤原神社がなくなるわけではありません。それに美香ちゃんも、まだまだ若いしこれからはもっと自由に自分の思う通りに生きて行けばいい。

北浦さんだって、最初はそう思っていたはずでしょう?」

高瀬
「わかりました。では宮司、あらためてご相談に乗ってください」

オレ
「はい^^種馬以外のことなら何でもどうぞ(笑)」

北浦
「それにしても・・・」

オレ
「例大祭はもうすぐですよ!派手に騒ぎましょうよ(笑)」

北浦氏と高瀬さんは静かに帰って行った。洋子がソファの横に座った。

洋子
「結局ユーイチは、何度も命を狙われて、危ない目に会っただけなのね」

オレ
「ははは・・・なんかアホな役回りだな?」

オレは洋子が入れた珈琲カップにゆっくりと手を伸ばした。

洋子
「関西に戻るって本当?」

オレ
「親父が・・・癌でもう長くない」

洋子
「うん。聞いてる。」

オレ
「東京に行ってから危険な事ばかり続いて、もう関西の連中が納まらないんだ。全員こっちへやってくるつもりになってる」

洋子
「それで関西へ帰ることにしたの?」

オレ
「反対か?」

洋子
「・・・」

オレ
「玲子や理恵とは一緒にやっていけないか?」

洋子
「私はきっと心の狭い人間なのよ・・・

あなたがこっちに居てくれて初めて玲子さんや姉に余裕を持って対応できてるんだと思う。

私が関西に帰ったら・・・また・・・」

オレは洋子を右腕だけで軽く抱き寄せた。「また・・・」の言葉の後の意味が痛いほどわかった。

オレ
「わかった。ここに帰ってくるから」

洋子
「あーーーユーイチ。ごめんなさい」

オレ
「いや、お前の言う事は正しい」

洋子
「うわーーー」

洋子が泣いた。常に気丈に冷静にそして一途に思いを隠しながら生きている女が、オレの前で泣いた。それまで何処か苦手意識があった洋子だったが・・・ようやくオレたちは通じ合う事が出来るようになったと思った。

■3月10日・・・


「なんだその頭は?」

オレ
「酔っ払ってチンピラとケンカしてやられた(笑)」


「いい年して馬鹿がっ!(笑)」

オレ
「酔ってなけりゃー勝ってたさ」

親父は痩せ細っていたが、まだ目には光があった。まだ諦めてはいないようだった。


「裕人にプロレスごっこをしてやる約束をしててな・・・」

オレ
「そう。オレともよくやった」


「裕人はお前によく似て・・・気弱な子だからな」

オレ
「もうひとり、12月の末に子供が出来たんだ」


「何だとぉー!!!」

オレ
「男だ。「裕蔵」って言うんだ」


「裕蔵・・・」

オレ
「勝手に親父の「蔵」を使った。いいだろう(笑)」


「裕蔵・・・いい名前だ。。。」

オレ
「今度連れて来る」


「いや、こんなところに連れて来るなっ!」

オレ
「いや、連れて来る」


「裕人の弟か。ばーちゃんにも・・・」

オレ
「ああ。ばーちゃんにも抱いてもらうさ」


「そうか、裕人に裕蔵か」

オレ
「どっちにもプロレスを・・・」


「ふんっ(笑)もう帰れ!」

オレ
「ああ。また来るよ」

オレは部屋を出た。不思議にもう涙は出なかった。廊下で玲子と話していたオフクロに声をかけた。

オレ
「無理して突っ張ってた。疲れたと思うから寝かせてやって」

オフクロ
「そうね。わかった。ありがとうユーイチ」

オレ
「また来る(笑)」

オレは玲子と一緒に病棟を出た。そして中庭のベンチに座った。

オレ
「来週、キョーコたちをこっちへ呼ぼうと思う」

玲子
「あっ!裕蔵をおとーさまに会わせるんだ?」

オレ
「ああ。そうしようと思ってる」

玲子
「それは良かった。きっとおとーさま喜ぶわー^^」

オレ
「キョーコとお前で合わせてやってくれ」

玲子
「あなたは?」

オレ
「オレが居たら素直に喜ばないだろうから(笑)」

玲子
「そうね。わかったわ。おとうさまに安心してもらえるようにするわ(笑)」

オレ
「頼む」

■3月11日・・・

スカイマンション1110号室

オレは窓際に立ってミナミの街並みを眺めていた。インターフォンが鳴り玄関が開く音がした。そして香が入って来た。

オレ
「ただいま^^」


「お帰りなさい^^」

香は窓際に近づいてきた。オレは右手を広げた。香はオレに抱きついて来た。


「あっ胸痛くない?」

オレ
「大丈夫だ(笑)」


「この間は・・・ごめんね」

オレ
「ん?何かあったか?」


「皆の前で泣いて我侭言ってしまった」

オレ
「別にいいさ。皆お前の事を知ってるヤツばかりじゃないか?

ユーイチが死んじゃう!イヤ!!!って大騒ぎしたんだろう?」


「うわっ!それはずいぶん古い話じゃない(笑)」

オレ
「イヤー嫌わないでー!って店でも大声で泣いたし」


「いやーねー(笑)そんな昔の事ばかり覚えてるのー?」

オレ
「今でこそお前は優等生だけど、あの頃は本当に手のかかるやっかいなヤツだった(笑)」


「そうだったわね^^」

オレ
「香は、それでいいんだ」


「うん。ありがとう」

オレは大きなテーブルの前に座った。香はキッチンへ行き珈琲を淹れる用意をしていた。壁にはMellow BeachとSPEAK EASYのネオン管が点燈していた。キッチンの横のピンボール・ゲームは電源が入っていなかった。

オレ
「おかーさんの調子はどう?」


「うん。うまく病気と付き合ってるから大丈夫よ」

オレ
「病気と付き合う・・・か」


「それより、おとうさんどうだった?」

オレ
「ああ。エラソーな口利いてつっぱてたよ」


「そう。頻繁にお見舞いしてあげてね?」

オレ
「そーだな」

香は珈琲を持ってきた。そしてフレッシュミルクを入れスプーンを使いオレの前に置いた。

オレ
「明日。連れて帰ろう」


「えっ?」

オレ
「あんなところで死なせなくない。実家に連れて帰る。

裕人とプロレスをしたがってるんだ。

オレが代わりに裕人とプロレスをやってるところを見せてやる」


「そっか。松村さんのように・・・最後まで皆と暮らすんだ」

オレ
「すっかり忘れてたよ」

オレは受話器をとって電話をかけまくった。そして、その準備を大急ぎでする事にした。


「手伝うわよ^^何でも言って?」

人の事ならわかっていたのに、自分の事となるとすっかり忘れていた。終末医療・・・オレはそうする準備をした。

▼3月12日・・・

オレは医者を説得してようやく親父を病院から連れ出す事に成功した。車椅子に乗せ、専用の車を借り、岡本の自宅へ運び込んだ。

そして2階の奥の部屋、仏壇のあるオレが長い間入ったことにない部屋に親父を寝かせた。

日当たりはいい部屋だった。

オレはこの部屋が嫌いだった。仏壇のある部屋。ママがこんな仏壇に入っているわけがない。。。長い間オレはそう思っていた。

オレは複雑な心境で、その部屋に居た。


「お前もこの部屋は久しぶりだろう?」

オレ
「ああ。中学になってからは・・・入ってないからな」


「線香でもあげろ」

オレ
「嫌だ」

オレはその部屋を出た。オフクロが声をかけてきたがオレは無視した。そして1階の居間に降りた。

オレ
「すまなかったな^^ありがとう」


「ううん。ご挨拶できて良かったわ」

本橋
「うん。きっとおとーさんもこの方が・・・」

インターフォンが鳴った。オレは玄関に行った。玲子が裕人と裕美を連れて来ていた。そして居間に入った。

玲子
「香さん。ごめんなさいね。お手伝いしてもらってありがとう^^」


「いいえ。何も大した事できてませんから(笑)」

本橋
「お邪魔してます^^」

オレ
「まだ先は長い。これからが大変だけど・・・なんとか頑張ろう」

玲子
「大丈夫かなー?私出来るかなー?」

オレ
「大丈夫だ。オレたちは経験済みだから」


「私たちもできるだけ協力しますから何でも言いつけて下さい」

本橋
「私も同じく経験済みですから^^」

点滴ひとつするにも日本では医療行為とみなされて病院外では禁止されている。オレは芦屋の広田の親父に頼んで、点滴セットと点滴を入手してもらっていた。
神鋼病院からいくつかの薬と痛み止めのモルヒネを少しもらっていた。

さっそく玲子は裕人と裕美を連れて2階へ上がって行った。

オレ
「最悪の場合は、広田さんにお願いしてある」


「ヒロミちゃんのパパよね?芦屋で病院をしている」

本橋
「そっかーヒロミちゃんのパパお医者さんだったんだ」

オレ
「今回はすっかりお世話になってしまった。でもあの親父の白衣姿見て思わず笑ってしまったよ(笑)」


「あはっ!私も最初に見た時はびっくりしちゃったけど(笑)」

本橋
「うん。でも楽しくていい人よね(笑)」

オレ
「ああ。なんかあったら夜中でも遠慮なく電話してくれって言ってた」

暫くして玲子と子供達が降りてきた。初めてみる香や本橋たちに最初は遠慮気味だった裕人や裕美は、彼女らに相手になってもらってすぐにはしゃぎ始めた。

オフクロはすし屋で出前をとった。オレたちは昼飯がわりにそれを食った。そして香と本橋はミナミに帰って行った。

オフクロ
「大丈夫かしら?」

オレ
「ああ。これでいいんだ。本人も喜んでるだろう?」

オフクロ
「一時帰宅だと言ってあるけど・・・」

オレ
「今週末には、キョーコが裕蔵を連れて来ることになってる」

玲子
「うわーそれはいいわー^^」

オフクロ
「ユーイチ。玲子さんの前で・・・」

玲子
「おかーさまいいんですよ!キョーコちゃんは私もずいぶん前から知っていますし、ユーイチとは私より古い付き合いですから」

オフクロ
「・・・まったくこの子は」

オレ
「今はそんな事どうでもいいんだ(笑)で親父はもう眠ってるのか?」

オフクロ
「裕人の顔見て喜んでたわ^^」

玲子
「2日に一度ぐらいは連れて来ますから^^」

オレは裕人と裕美を連れて近くの公園に行った。そこは、オレがガキの頃から親しんでいた公園だった。

公園の中は新しい遊具に変わり、花壇も出来てすっかり綺麗に整備されていた。

裕人と裕美はそこで遊んでいた。オレはベンチに座ってキャメルライトに火を付けて、子供らを見ていた。

公園の前の道を若い連中が何人も通り過ぎる。甲南大学の連中だろう。オレはキャメルを指で弾き飛ばした。そして裕人と裕美を連れて戻った。

オレは2階の自分の部屋に入った。19の時に家を出た時のままの部屋・・・オレはベッドに転がった。

壁には色あせたポスターがパネルになって掛けてあった。オレは起き上がって机の横のプレイヤーの電源を入れた。その下のキャビネットの扉を開いて何枚かのレコードを探った。

吉田拓郎のLPをとりそれをかけた。壁に吊り下げているスピーカーからそれが流れ始めた。


祭りのあとの淋しさがーいやでもやってくるのならー

  祭りのあとの淋しさはー♪たとえば女でまぎらわしー♪

   もう帰ろう もう帰ってしまおう♪

    寝静まったー街を抜けてー♪

オレはすぐにレコードをA面に変えて「春だったね」を聞いた。哀しげな歌は大嫌いだった。

オレは階下に降りた。

オレ
「そろそろ行こうか?」

オフクロ
「裕美が寝ちゃったから風邪引かないように気をつけて」

玲子
「はい。おかーさま何かあったらすぐに電話下さいね」

オレは玲子が運転するベンツの後部座席に裕美を抱いたまま乗った。裕人はオレの隣に座ったが、クルマが動き出すといつの間にか眠ってしまった。そして家に着き、玲子が裕美を抱きオレは裕人を抱いて家に入った。

オレ
「急にバタバタとして悪かったな」

玲子
「ううん。すごくいいと思う」

オレ
「そーかな。周りは大変だけど・・・香や本橋も協力してくれるから」

玲子
「うん。それよりもおとーさますごく喜んでたわよ!おなたが家に連れて帰ってくれたって・・・」

オレ
「ふんっオレの前では憎まれ口ばかりのくせに」

玲子
「きっと父と息子って、そんなものなのよ」

オレ
「オレはそんな関係嫌だぞ!裕人とは、先輩と後輩の関係で居たい」

玲子
「そう(笑)あなたと横山君のような関係?」

オレ
「あいつはオレの事をとっくに先輩だとは思ってない!最近はやたらと口うるさいし」

玲子
「あははは^^すごくいい後輩よ^^」

オレ
「(笑)」

週末。キョーコと裕子、裕蔵、そして沙耶がやってきた。オレは彼女らを芦屋の自宅に招き、あらためて玲子に紹介した。そして岡本の実家に全員で行って、裕子と裕蔵を引き合わせた。

親父は勘違いして裕子の名前を聞いただけでオレの子供だと思ったようで、裕子にも執拗に言葉をかけていた。

裕子は頭のいい子で、それに疑問を持たずに笑顔で対応していた。親父は裕蔵を抱き・・・喜んだ。

親父の笑顔を見るのは・・・何時以来だろう?思い出せないぐらい前だった。その笑顔に死期が近い事を感じた。

■3月30日・・・

満開の桜が岡本を覆って、春がやってきた。その日の午後・・・親父は逝った。自宅に戻った事で死期を早めたかも知れなかったが、誰もそんな事を問題にしなかった。

オレはもう泣かなかった。

通夜、告別式には・・・親父の古い友人や遠い親戚が集まった。オレは喪主となりその対応をした。

そして親父の遺骨を自宅に持って帰った時には、月が替わっていた。

■4月7日・・・芦屋「自宅」

オレ
「お疲れさん。ありがとう」

玲子
「私は全然大丈夫よ!ユーイチは・・・大丈夫?」

オレ
「ああ。もう少し時間があれば・・・いや同じだな」

玲子
「ユーイチは、親孝行出来たと思うわ」

オレ
「・・・」

玲子
「東京へ戻る?」

オレ
「うん。ミナミへ寄ってから行く」

玲子
「そう。私もこれからは頻繁に赤坂に『裕蔵』の顔見に行くからね!」

オレ
「ああ。よろしく頼むよ^^」

松井が迎えに来ていた。オレはそのクルマに乗りミナミに行った。香と本橋に礼を言い。理恵のマンションに寄って同じように礼を言った。そして松井と一緒に新幹線で東京に戻った。

■4月8日・・・赤坂「自宅」

ほぼ一ヶ月ぶりの東京だった。すでに桜は散っていた。告別式には東京の連中も多くがやって来てくれた。

洋子
「お帰りなさい」

オレ
「おう^^」

オレは洋子と軽く抱擁を交わして居間に入った。

横山
「お疲れ様でした」

オレ
「いや、オレにはいい休養になったよ」

松井
「怪我もほぼ治って、そういう意味では良かったですね」

オレ
「親が死ぬのは・・・順番だからな。それより、例大祭はどうだった?」

横山
「盛況でしたよ^^源がビデオに撮ってますからまた見ておいて下さい。

氏子会も一気にこっちへ傾いて、今になってなんとか15代に引き続きやって欲しいと署名運動までしてる始末です。

どうします?」

オレ
「どうもこうもない。もう遅い(笑)」

松井
「そこを何とか・・・ってまた今日ぐらい北浦さんがやってきますよ(笑)」

オレ
「北浦さんか(笑)」

松井
「何か?」

オレ
「いや」

横山
「藤堂家も再度お詫びに来たいと言ってますけど?」

オレ
「すでに監視は解いているんだろう?」

松井
「はい。長男も戻ってるようです」

横山
「藤堂本人は息子2人を連れてお詫びしたいと・・・」

オレ
「あんな暑苦しい顔、見たくもない」

松井
「オレは長男を見たら・・・きっと撃ちたくなりますよ」

オレ
「オレもだ(笑)防弾ベスト着せて、南部をぶち込んでやろうか?」

松井
「あははは^^ソレいいですねー(笑)」

横山
「ははは・・・本当にやりそうですね(笑)」

洋子
「ユーイチさん。冗談でもそんな危ない事言わないで下さい」

オレ
「はいはい」

松井
「すみません。。。」

横山
「うん。冗談でもよくありませんね」

オレ
「あははは^^(笑)と言う事で洋子。薬くれないか?」

洋子
「はい。頭痛ですか?」

オレ
「また持病が再発したのかも知れない」

横山
「千日前事件の後もそうでしたね」

松井
「うん。あの後、数年は薬を手放せなかったからなー」

オレ
「じゃーちょっと2階で寝るわ」

オレは薬を飲んで2階に上がった。そしてスーツを脱いでベッドに入った。暫くすると洋子が入って来た。

オレ
「裸になって入って来てくれ」

洋子
「でも・・・」

オレ
「源が居るから大丈夫だ」

洋子
「はい^^」

オレは洋子が服を脱ぐのを見ていた。下着をとり素っ裸になってベッドに入ってきた。オレは洋子を右腕で横抱きにした。

洋子
「生意気な事言ってごめん」

オレ
「何言ってんだ。お前はお前のスタイルを変える事はない。気にせずに思った事を思った通りに言えばいい(笑)」

洋子
「松井さんや横山さんにも気を使わせてしまったし」

オレ
「アホ。あいつらはそんな事を気にするか!(笑)気にしてたらオレの傍に居られないだろう(笑)」

洋子
「そう?^^でもちょっとだけ反省する」

オレ
「じゃーちょっと苛めてやろう」

洋子
「あはっ^^」

オレは洋子の体を苛めるようにセックスをした。荒っぽく洋子の体を責めた。洋子は声を上げて反応した。洋子はそんな風にされると・・・喜ぶ。泣きながら何度も洋子はいった。そしてオレはまどろんだ。

▼18時・・・六本木「Maggie」

オレ
「東京には慣れたか?」

田川
「はい^^ムーさんがシスコに行ってた頃、オレは一時東京に居ましたから」

オレ
「そう言えばそんな事言ってたな」

田川
「久しぶりに新参者の気分で、何を見ても新鮮で楽しいですよ^^」

滝口がカウンターに入りジン・トニックを2つつくりオレ達の前に置いた。

滝口
「田川さんが来られて、みんな緊張してますよ^^」

オレ
「ん?なんでだ?」

滝口
「いやーミナミ時代は、田川さんがオレたち世代の筆頭でしたから」

田川
「ははは・・・別にそんな事今更関係ないさ(笑)オレは東京へ来たばかりの新参だからよろしく頼むよ」

オレ
「ほう^^そうだったんだ(笑)」

滝口
「あっ!斉藤さんが来られました」

オレは振り向いた。斉藤と女優の余が二人でこっちにやってきた。オレはカウンターのスツールから降りた。

オレ
「よう^^」

斉藤
「ご愁傷さまだったな」

オレ
「ははは^^そうだ初対面だったな?ニューヨーク・マーズの責任者の田川だ。
こっちは、Maggieの責任者でmar'sの元メンバーの斉藤だ」

田川
「どうも^^ご無沙汰してます。初対面ではありません。Mellow Beachでmar'sのLIVEが結構ありましたし、斉藤さんや浜田さんとは何度も飲んだ事もありましたから」

斉藤
「あっ!Mellow Beachのマネージャーだった田川君か!^^」

オレ
「こちらは女優の余さんだ^^」


「初めまして^^ムトーさんには色々とお世話になってます」

田川
「田川誠一と申します。どうぞよろしくお願いします^^」

オレたちはテーブルの方へ移動した。

そして、ウエイターがブランデーのセットを用意した。


「それにしてもムーさんのところのスタッフの方たちは皆さん身長があって、それこそ俳優さんのような方たちばかりですね?」

斉藤
「バンドやってた時から、そんな風になってたからなー(笑)」

田川
「スタッフ募集の広告に身長175センチ以上!って書かれてあったんですよ(笑)」


「まーそうなんだ!(笑)」

田川はドリンクのリクエストを聞き素早く水割りを4つ作った。そしてオレたちはグラスを合わせてカンパイした。

オレ
「派手な傷痕になっちまっただろう?」

斉藤
「ん?あーその頭の横か?」


「全然気になりませんよ^^」

オレ
「こんなに短髪にしたのは初めてかも知れない(笑)」

田川
「前髪がちょっと落ちたフインキはゾクっとするほどセクシーだって聞いてますよ」

オレ
「誰だそんなデマで笑ってるのは(笑)」


「ほんとっ!すごくいいわ^^」

斉藤
「何をしても褒めてもらえるんだからいいじゃないかヒロ!(笑)」

オレ
「ははは・・・」


「ムトーさんは、ニューヨーク大学の演劇学科を出てらっしゃるんでしょう?それも吃驚しました!」

斉藤
「ヒロ!大内さんらと一緒に舞台やれよ」

オレ
「もう出来ないよ(笑)左腕の怪我が思ったよりやっかりでな、その手術をまたやるんだ。元に戻るのに結構時間がかかりそうなんだ」

田川
「ムーさん。オレちょっと上の店を見てきます。」

オレ
「ん?そっか」

田川
「斉藤さん。余さん。すみません先に失礼したします」

斉藤
「おう^^また今度ゆっくりな」


「また合いましょう^^」

田川は席を立って、店を出て行った。オレはブランデーの水割りを口にした。


「でも、なんとか私たちの劇団に関わっていただけませんか?」

斉藤
「うん。演出なんかどうだ?お前元々ショーの舞監とかもやってたじゃないか」


「そうなんだ?大内はご存知の通り大学は農学部でしたから、専門の教育を受けていません。そういう意味でもムトーさんが参加してくれたら、もっと大きな広がりが出ると思うんです。

どうか是非」

オレ
「そうだ。スポンサーはどうなった?アキラ」

斉藤
「ああ。バッチリだった。すんなり2000万出してくれるようだ」

オレ
「ほう^^さすがアキラだなー(笑)いや驚いたよ!」


「斉藤さんは、ヒロさんの仕込みだって言ってましたけど?」

斉藤
「ははは^^つい飲んだくれた時にしゃべっちまった(笑)」

オレ
「あらら・・・(笑)」

小林と理子と絵梨が入って来るのが見えた。小林は目ざとくオレたちを見つけた。理子がこっちを見て小さく手を振った。

オレ
「じゃー時々稽古は見学させてもらいます」


「はい^^よろしくお願いしますセンパイ♪」

斉藤
「うん。それがいい(笑)」

オレ
「じゃーちょっと待ち合わせのお客さんが来たので、これで^^」

オレはそう言って小林たちの席に向かった。別に待ち合わせでも何でもなかった。ただの偶然だったが・・・斉藤と余をふたりにしようと思った。

オレ
「いらっしゃいませ^^」

小林
「ムーさん。お久しぶりです^^」

理子
「怪我なさって聞きましたけど・・・大丈夫ですか?」

絵梨
「大変な災難に会われたそうで、心配してました」

オレ
「あはっ^^この通りピンピンしてます(笑)もっともこんなところに剃り込みが出来てしまいましたけど」

オレは小林に腕を引っ張られて席についた。ウエイターがオーダーを取りに来た。彼女らはアルコールが少量のカクテルを頼んだ。オレはさっきの続きで水割りを頼んだ。

オレ
「こうして見てると絵梨ちゃんミセスには見えないな^^」

絵梨
「ありがとうございまーす^^でもこういう所へ来るの久しぶりなんです」

理子
「新婚生活を謳歌してると思って誘ってなかったんですけど・・・どうも退屈しているようなので(笑)」

小林
「私も退屈しまくってたから、いっぱい浮気しちゃった」

オレ
「へー^^浮気ですか(笑)」

小林
「何よ!私がモテないって言いたいわけ?」

理子
「あはっ^^聡美。ずいぶん強気ねー(笑)」

絵梨
「この間まで構ってもらえないってメソメソしてたのに(笑)」

小林
「どうしてそうなのかなー友達甲斐ないなーもっと応援してよ!」

オレ
「あははは^^知っての通り騒動に巻き込まれたからな。心配やらお騒がせやらで、迷惑かけっぱなしで・・・申し訳ない。」

オレは軽く頭を下げた。

小林
「そっそんな風に素直に言われたら、怒れないじゃない。(ーー;)」

理子
「うん。ヒロさん。なんか素直で可愛い^^」

絵梨
「髪、短くなってほんといい感じよ^^」

オレ
「あはっ^^そう?^^

絵梨ちゃん。退屈してるのならひとりでもおいでよ!理子も彼氏が居ない時はここで遊んで行けば?」

小林
「ヒロさん。私はどうすればいいのかなー?」

オレ
「ははは・・・小林は、そうだ。おとーさんどうしてる?」

小林
「もうっ!おとーさんはおとーさんで今は関係ないでしょ!!!」

オレ
「いや、ちょっと相談したいこともあるから電話しようかと思ってたところなんだ」

小林
「じゃーそれは明日にして、今日は私に付き合って下さいっ!!!」

オレ
「ははは・・・しょーがねーなー(^。^;)」

それから理子と絵梨は気を利かせたのか先に店を出た。斉藤と余も河岸を変えるつもりか、ほぼ同時に店を出て行った。

小林
「あっおとうさま。ご愁傷様でした」

オレ
「ん?あーほんとは病院で延命治療を続けていれば、もう少し長く生きる事ができたかも知れないんだけどな。家に連れて帰って・・・」

小林
「ヒロさんの判断なんでしょう?きっとそれで良かったんだと思うわ」

オレ
「そう。ありがとう」

オレはブランデーを飲んだ。小林はオレの腕を掴むようにくっつて来て、何処かへ行こうと小さな声で言った。

オレ
「その手を少し離してくれないか?撃たれたところなんだ」

小林
「あーごめんなさい!!!」

小林は慌てて飛び退くように手を離した。

オレ
「あははは^^そんなに驚くことはない。まだリハビリ中で思うように動かないんだ」

小林
「ヒロさん。可哀そうに・・・」

オレは小林を連れて店を出ようとしたら、すぐに田川が現れた。オレは仕方なく小林に田川を紹介した。そして赤坂プリンスに泊まる事を田川に告げて、解放してもらった。そして小林とゆるいセックスをしながら、色んな事を話して朝まで一緒に過ごした。

■4月10日・・・赤坂桜井「桔梗の間」

松井
「ムトーは体調が優れないので、会うことは出来ません。示談の話はこちらの顧問弁護士の山村さんとお話下さい」

藤堂
「そうですか。。。」

北浦
「もう会って頂けないのでしょうか?」

山村
「示談という事で伺っておりますので、そちらで何かご提案がありましたらおっしゃって下さい」

藤堂
「30億。用意させて頂きました。どうかこれを納めて頂いて・・・終わりにしてください」

山村
「それは、ムトー氏個人に対する慰謝料と考えていいのですね?」

藤堂
「・・・はい」

山村
「ムトー氏を殺そうとして、藤堂信一郎さんが小西組の小西邦夫氏に依頼した件のお詫び、それによってムトー氏が銃撃を受けた事に対する謝罪費用として理解してよろしいですか?」

藤堂
「・・・」

山村
「金額が大きいですし、しっかりした理由を明確にしないと、後で恐喝だのなんだのと問題になっても困りますから。

きちっと文書にして示談が成立した事を証明する事が必要です」

藤堂
「これですべてを終わりにしてくれ!」

山村
「では、先ほど申し上げた内容を書面にしたものがこれです。

簡単なものですから、読んで頂いて書名捺印して頂ければ結構です」

北浦
「わかった。。。」

オレはヘッドフォンをはずして、その場に置いた。桜井のはなれの奥の部屋。2階では源たちが録音しているはずだった。オレは麩を開けて前の部屋のテーブルに付いた。

紗也乃
「白金台の家、そろそろ完成しそうよ^^」

オレ
「そっか^^新しい家がとうとう出来るのか」

紗也乃
「裕蔵もよく笑ってすくすく育ってるわ」

オレ
「元気ならそれでいい(笑)」

廊下から声がかかった。松井が山村氏と北浦氏を案内してきた。オレは立ち上がった。そしてテーブルの前に案内した。

オレ
「お疲れ様でした」

山村
「いえ。向こうはほとんど言い分もなく、ただ事務的に話は進みましたから(笑)」

オレ
「久しぶりに会うのに下らない話ですみません」

山村
「あははは^^風の噂でご活躍は聞いてましたから(笑)」

オレ
「相変わらず、騒動ばかりで(笑)」

山村
「それでは、後はこの書類にムトーさんの署名捺印をして頂ければ、こちらで藤堂氏に返送しておきます」

オレ
「はい」

オレはその場でその書類にサインをした。もう1枚同じものに同様にした。そして2通とも山村弁護士に預けた。

山村
「これで民事レベルの示談は成立した事になりますが、いいですね?」

オレ
「はい。結構です」

山村
「では、私はこれで^^」

オレ
「わざわざ大阪から来ていただいてありがとうございました」

山村
「今度またミナミで飲みましょう(笑)」

オレ
「はい^^」

オレは人目をはばかってそこで挨拶を済ませて別れた。松井が駐車場まで見送った。紗也乃が熱いお茶を入れて黙って下がった。松井が戻ってきて頷いた。

北浦
「これで解決という事で・・・ありがとうございました」

松井
「民事はこれで解決ですけどね(笑)」

北浦
「他に何か?」

松井
「たぶん藤堂家の長男は・・・収監されるでしょう」

北浦
「なっなんと」

松井
「ニューヨークで襲撃犯が逮捕されました。殺人の依頼を受けた事を白状して、小西邦夫が国際手配されています」

北浦
「それでどうなります?」

松井
「小西が捕まれば・・・ニューヨーク警察が身柄を拘束して調べるでしょうね?」

北浦
「そうなると・・・小西は藤堂信一郎から殺人を請け負ったと言えば・・・」

松井
「藤堂信一郎氏は殺人未遂の共同正犯として逮捕されるでしょう」

北浦
「否認して争う事になるわけですか?」

松井
「それか・・・藤堂信一郎氏は一生逃げ回るか?もっともアメリカには凶悪犯罪の時効はありませんから難しいと思いますけどね」

北浦
「すでに、小西は逮捕されているのでしょうか?」

松井
「さーそこまでは知りません(笑)」

北浦
「じゃー藤堂家は30億の支払いですべてが終わったと思っているけど、ニューヨーク警察からは逃れられないと言う事になるのですか?」

松井
「そっちは刑事事件ですからね。もうこっちが関知できることではありませんから」

北浦
「そんな・・・なんとかなりませんか?ムーさん」

松井
「今度は殺人依頼の口を塞ぐ為に・・・小西を探して殺しますか?」

北浦
「・・・」

オレ
「オレはもう関係ない」

オレはキャメルライトを上着から出して火をつけた。そして北浦氏を見ていた。

北浦
「ムーさん。本当は、宮司を辞めるつもりはないんでしょう?」

オレ
「何故そう思うんです?」

北浦
「小佐野氏の遺産・・・200億ですよ?それをみすみす棒に振るんですか?」

オレ
「それは藤原神社へ寄付されたものですよ!私個人が自由にできるお金ではありません」

北浦
「便宜上、税法上の事を考えて小佐野さんはムトーさん個人に残すより藤原神社という単立の宗教法人に残されたわけで、実質そこのトップの15代宮司が自由に使えるわけですから・・・」

オレ
「それで北浦さんは藤堂家に権宮司職を渡して、いずれは16代宮司を継承させる約束をしたわけですか?」

北浦
「・・・」

オレ
「オレが15代を継ぐまではオレに協力する形をとり、それで小佐野氏の遺産が入った段階で、藤堂家に譲り渡して・・・小佐野氏の遺産の半分程度を得る密約をしたんですね?」

北浦
「藤堂はこうなったらいくらでも譲歩して金を出します。いくら出せば、手打ちに出来ますか?」

オレ
「手打ちか・・・」

北浦
「藤堂観光・・・1社丸ごと譲り渡すよう交渉します。それでアメリカの警察の件、押さえてもらえませんか?」

オレ
「それで北浦さんはどうするつもりですか?」

北浦
「これからは・・・本業で大人しくしますよ」

オレ
「いつからそんな風に狙ってたんです?」

北浦
「さーいつからだったか・・・この桜井を手に入れた時に前野さんから、桜井の事を聞いたのが始まりだった。そして「銀座のムトー」この名前にS会が手も足も出ないどころか、あなたに協力している。

若いのに凄腕なんだと思って、美香の事を相談に来たら、ここで襲われました。

それからのあなたの動きは神がかり的だった。正直なところ敵に回したくないと思いましたよ。美香の事もありましたから・・・だけど普段のあなたは、隙だらけだった。

そして小佐野氏の遺産があれほどとは思っても見ませんでした。

あなたを15代からはずすには・・・抹殺するしかない。藤堂と組めば、私はあの神社の社務長として実質的な運営権を握れる。16代に藤堂の次男をつける事によって、藤堂の家の後ろ盾も使える。

200億の賭けでしたよ!ことごとく失敗しましたけどね・・・」

松井
「金の為にムーさんを狙った関係者・・・許せないな!」

北浦
「あんたらだってそれは同じじゃないか!ヤクザを使って伊藤忠や、政治家から金を脅し取って荒稼ぎしている。」

松井
「うちのファミリーは金を受け取っていませんよ!すべて関係実行グループに渡っています」

北浦
「バカな!(笑)それじゃ結局ヤクザにしてやられた訳ですか?」

オレ
「どうしてそういう考え方になるんだ・・・」

松井
「北浦さん。小佐野さんの遺産。本当はムーさん個人に贈られていたんですよ」

北浦
「そんなウソを今更・・・」

松井
「ムーさんはその受け取りを拒みました。そして小佐野さんの奥さんに任せると言ったら、小佐野さんの奥さんは、故人の意思を尊重して藤原神社に寄付すると言ったんです。

ただそこでも間違いが起こって、小佐野さんの奥さんの弟さんが妄執に走ってしまいましたけどね」

北浦
「何故そんな事を?じゃー最初からあんたは金は要らなかったと言うのか!!!」

オレ
「受け取る理由がない金は受け取れないじゃないですか?金が必要なら普通にビジネスをして稼げばいい。ヤクザが動いて出てきた金は、ヤクザのしのぎにすればいい。」

北浦
「何故、小佐野の遺産を15代の宮司に贈る事を条件にした偽の遺書を作らせたんだ?」

オレ
「別に作らせたわけじゃない。口裏を合わせただけだ。ただちょっと騒動を起こしたかった」

北浦
「あんたは最初からオレを疑っていたと言う訳か?」

オレ
「あなたに限らず、藤原を取り巻く色んな膿を出し切る必要があった。それだけです」

北浦
「この後、藤堂の家はどうするつもりなんだ?」

オレ
「どうもしません。さっき示談が成立したんですから・・・あとは司法の手で適正に裁かれるんじゃないですか?」

北浦
「これ以上の話し合いは無駄と言う事か」

松井
「藤堂氏とは私が話し合いますよ」

北浦
「どういう条件で?」

松井
「殺人依頼は・・・北浦氏が小西氏に依頼した。そう言う筋書きでどうだ?と」

北浦
「バカな!そんなデッチあげが!」

松井
「元々小西に持ちかけて、藤堂氏の長男を引っ張り込ませたのは北浦さんでしょう?ムーさんのニューヨーク行きを知っている人間は非常に限られてたし

藤堂は、あなたに罪を着せる為なら、小西に10億渡してでもそう証言させる事に全力を尽くすでしょうね?

そうなれば藤堂の長男は助かり、あなたが替わりに殺人未遂の共同正犯と言う事になりますね」

北浦
「そんなデタラメが通用すると思ってるのか!」

松井
「藤堂氏はその為なら金をばら撒いてあらゆる手を打ってくるでしょう」

北浦
「・・・」

松井
「銀座でのんびりなんかしてられませんね」

北浦
「どうしろと言うんだ?」

松井
「早い事国外に逃げた方がいいですね。国内はやくざがすぐに探し出しますから」

北浦
「すでに・・・小西も確保してるのか?」

松井
「どちらにしてももうあなたに居場所はありません」

北浦
「・・・」

オレ
「松井。外まで送って差し上げろ」

松井
「はい」

松井は立ち上がった。北浦氏はまだ座ったままだった。

北浦
「なんとか・・・なんとかならないか?ムトーさん」

オレ
「藤堂氏との話し合い如何だな?」

松井は北浦氏と部屋を出て行った。暫くすると、今度は松井と藤堂氏が部屋に入って来た。

藤堂
「ムトーさん。本当に申し訳ない」

松井
「さっきの北浦氏との会話は2階でモニターして聞いて頂きました」

藤堂
「ムトーさん。さっき北浦が言った。藤堂観光・・・譲渡させて頂きますから、なんとか新一郎を助けてもらえませんか?」

オレ
「松井・・・どうすればいい?」

藤堂の視線が松井に向き、松井に深く頭を下げた。

松井
「ムーさん。それで勘弁してやって下さい。」

オレ
「お前がそう言うんならしょうーがねーな!じゃー藤堂さん。これかもよろしくお願いしますよ」

藤堂
「あームトーさん。松井さん。ありがとうございます」

再び藤堂は頭を下げた。親バカの姿を見るようでオレは呆れたが・・・今回の芝居はそれでいいと思った。

松井は藤堂を立たせて部屋を出て行った。オレは通路を使って自宅に戻った。自室から居間に降りた。純子と横山が居た。オレはソファに座った。純子が立ち上がってキッチンへ行った。

横山
「ムーさん。一体何がどうなっているんです?」

オレ
「ふむ」

横山
「それにしても北浦さんが黒幕だったとは・・・驚きました」

オレ
「後味が悪いな」

純子が珈琲ポットとカップを持ってきて、その場でカップに珈琲を注いだ。そしてフレッシュミルクを入れスプーンを使った。

純子
「美香ちゃんは何も知らないんでしょう?」

オレ
「ああ。知る必要はない」

純子
「でもきっと気付くわ」

ドアがノックされ松井が戻ってきた。純子はキッチンへ立った。

松井
「明日、譲渡書類を作成します。その時に今後この件について一切の異議がない事を念書にして欲しいと言っていました。」

オレ
「そう」

横山
「藤堂観光ってどの程度の企業なんです?それにそんなモノを今更貰っても仕方ないでしょう?」

オレ
「美香と美樹、それに美穂で仲良く分ければいい」

横山
「あっそういう事ですか!」

松井
「うちはさっきの30億ですね」

横山
「でも藤原神社に200億残したままで引くわけでしょう?」

松井
「横山。さっきの話を聞いてなかったのか?」

横山
「聞いてましたよ!受け取る理由のない金は受け取らないって・・・」

松井
「受け取らないまま・・・松岡の件であんな事になったから小佐野さんの奥さんはやっぱりムーさんが受け取らないと困った事になるといって、ムーさんに渡してしまったんだ」

横山
「えっ?じゃー藤原神社にはまだ入っていないんですか?」

松井
「弁護士が預かってるそうだ。それはあくまでもムーさんが受取人になってるらしい。オレもつい最近教えてもらったんだけどな」

横山
「あははは^^じゃー200億はうちへ入ってくるんだ!(笑)」

松井
「ムーさんは松岡に命も狙われたし・・・受け取る正当な理由になるだろう?ねームーさん。(笑)」

横山
「じゃー藤堂信一郎や北浦さんは、どっちにしても金を手に入れる事はできなかったんだ?」

オレ
「さてと、後は事後処理だけだな」

純子
「美香ちゃんには、私から話しましょうか?」

オレ
「悪いが、そうしてくれるか?」

純子
「はい。出来るだけ傷つかないように話します」

オレ
「うん」

いつの間にか純子はオレ達のかなり際どいトップシークレットの話に混じるようになっていた。S会会長の元女、そして一時はオレと石本会長が対立した時には、敵になっていたはずが・・・オレが狙われている事をオレに教え、それから石本会長と和解出来た後、伏龍を起こす依頼を受けていた。オレはそれを放置して純子との接触を断って居た。

それが北浦氏と美香が赤坂の自宅にやって来たその時、自宅が襲撃された。時を同じくして純子も何度も危険を感じて、オレのところへ相談にやってきた。

それから美香と純子を赤坂の自宅に置いて安全の確保に努めた。そして第2、第3と次々と敵が変化しながらも狙われ続け居る内に、いつの間にか近い存在になっていた。

やくざ絡みの話、オレが襲われて怪我をしても心配はするが動じない。そして何より異能だった。危険を察知する事が出来たし、オレとハートでコミュニケーションする事も可能で・・・危ない状況の時の女手は純子がぴったりだった。

そしてそれはいつの間にか横山や松井にも認められる存在になっていた。


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