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愛を語るより口づけをかわそう


WANDS「愛を語るより口づけをかわそう」

90年代のJPOP、アイドル系のバンドのトップを走っていたWANDSです。事務所主導のグループという事で、コロコロとメンバーが変わりましたね!最後は、ボーカルまで変わってしまって無茶苦茶でした!(笑)
1987年5月------------


スカイ・マンション1Fカフェ

リョーコ
「懐かしいわね^^ここでこうして珈琲飲むの」

オレ
「そうだな。ニューヨークへ行く前、よくここで打ち合わせをしてた」

リョーコ
「あの頃は、夢があったわ」

オレ
「ニューヨークのレストラン(笑)」

リョーコ
「今考えると、そんなのいつでも出来たのにムキになってたわ(笑)」

オレ
「ペントハウスもまだ実現していないけどな」

リョーコ
「そうなんだ?」

オレ
「(笑)」

オレは珈琲カップに手を伸ばした。そしてそれを口にした。新緑の季節、オープンカフェは気持ち良かった。

リョーコ
「姉があなたの子供を産んだのね^^これで父の願いも適った!そこに紗也乃さんも一緒に暮らしてるなんて、素晴らしいわ」

オレ
「色んな事があって、そんな風になった」

オレはキャメルライトを咥えて火をつけた。急にリョーコから久しぶりに連絡があった。大阪に出張すると言うと好都合だと言いこっちで会う事になった。オレはリョーコが用件を切り出すのを待った。

リョーコ
「5億・・・貸してくれない?」

オレ
「いいけど、どうした?」

リョーコ
「エステサロンを6店舗に増やして、FC展開始めたら上場だのなんだのって訳の分からない連中が入って来て・・・気が付いたらもう私のモノじゃなくなってた。取り返そうと裁判もしたんだけど、ダメだったわ。

ミナミでもう1度エステをやろうと思って・・・」

オレ
「男は?」

リョーコ
「今やその会社の社長で、若い女がいっぱいいるわ」

オレ
「リョーコは今何処に住んでる?」

リョーコ
「箕面よ」

オレ
「そっか」

オレは珈琲を飲んだ。あらためてリョーコの顔を見た。少しやつれた感じがしたが、相変わらずの美人だった。このくらいの方が色っぽいかも知れない。

オレ
「金は出してもいい。だけど他の事した方がいいんじゃないか?」

リョーコ
「他の事?何をしろって言うの?」

オレ
「そーだなーハワイでレストランとか?(笑)」

リョーコ
「30年後、引退したらそうするわ(笑)」

オレ
「そうだな(笑)オレも何していいかわからなくてな!頭が回らない」

リョーコ
「あなたでもそんなに悩む事があるの?」

オレ
「ああ。日々悩み続けているさ」

リョーコ
「元々エステを薦めたのはあなたよー(笑)」

オレ
「そうだっけ?」

リョーコ
「もうっ!(笑)でもエステなら自信あるんだー」

オレ
「じゃー今度は男を断ってやるんだな」

リョーコ
「もうとっくに断ってるわよ」

オレ
「わかった。じゃー明日1110号へ来てくれ!前田に用意させておく、なんなら物件も相談するといい」

リョーコ
「あーユーイチ。ありがとう^^愛してるわー♪」

オレ
「ああ。オレも愛してるさ^^」

リョーコは立ち上がりオレに軽くキスをしてテーブルを離れた。そして通りに停めていた赤いポルシェに乗りこんだ。サングラスをかけてこっちに手を振った後、ポルシェは走り去った。

故・松村氏のもうひとりの娘・・・一時はオレと関係したが、キョーコの腹違いの妹だとわかってからは、オレはリョーコに冷たくした。

リョーコはオレがキョーコと一緒になって松村氏の遺産を受け継ぐと思い込んで、オレを憎むようになったが、松村さんが亡くなって4年半が過ぎようやくそんな事も昔の事として話題にしなくなった。

通りの向こうからマリーが手を振っていた。オレも両手を挙げて手を振った。マリーはオレのほうへ小走りに近づきオレの正面に座った。

マリー
「朝のミナミもいいわね^^鰻谷のあたりを散歩してきた。懐かしかったわー」

オレ
「ははは^^何年ぶりだ?」

マリー
「んーーー4年とちょっとかな?」

オレ
「そう(笑)東京へ行ってから一度もこっちへは来てなかったんだ?」

マリー
「うん。来れなかった。ユーイチを裏切って東京へ行ったんだもの」

オレ
「そう言う言い方をするな(笑)オレはミナミに居なかった。マリーはいい男と新しい幸せを見つけたんだから、オレはきっと祝福してたさ!それが誰であっても」

マリー
「そうね・・・ユーイチは、去るものは追わずだものね」

ウエイターがオーダーを取りに来た。マリーはアイスティーを頼んだ。オレもついでに同じものを頼んだ。

オレ
「マリーはオレが居なくなった1年半・・・しっかりミナミでオレが戻ってくるのを苦労しながら待っててくれたじゃないか?オレはあれだけでマリーと出会えて良かったと思ったさ」

マリー
「泣かせる事ばっかり言って・・・」

オレ
「オレはそれに報いる事が出来なかったからな」

マリー
「ユーイチは優しいから・・・私とナミと3人で要るのが苦しかったんでしょう?だから、遠のいてしまった」

オレ
「そんな気持ちも・・・あったかも知れないな(笑)でも昔の事さ」

マリー
「うん。ナミも男が出来てちゃんと結婚したし・・・私もほっとしてるの」

オレ
「そうだな。それが何よりだ(笑)

で、どうする?新宿の店をそのままやるか?それともミナミでやるか?(笑)」

マリー
「ミナミは・・・思い出の街よ。たまに来てこうしてやって来て懐かしむ事にするわ

新宿で店を続ける^^」

オレ
「ここは思い出の街・・・そっか^^」

昨夜からマリーと大阪に来ていた。夜のミナミの街を二人で過ごした後、オレたちは1110号室に泊まった。マリーがここに泊まるのは初めてだった。

オレはマリーを抱きマリーのケツに突っ込んだが・・・お互いなんとなくそれが最後だとわかっていた。マリーはオレたちと過ごしたミナミを思い出の街にした。オレはこれからのマリーをただ見守るだけにしようと思った。

マリーを新大阪の駅まで送った。マリーは京都へ行き、昔の友人を訪ねると言ってひとりで新幹線に乗った。

オレはスカイマンションへ戻った。タイミング良く前田から電話が入った。金は受け取ってもらえて、すべて完了したと報告だった。明日のリョーコの件を頼みオレは1110号を出て、駐車場からベンツを出して芦屋の自宅へ帰った。


▼12時・・・芦屋「自宅」


玲子
「お蕎麦でよければ用意するけど?」

オレ
「うん。それがいい^^」

玲子
「T電機の前野さんのお孫さんその後元気?」

オレ
「えっ?あー元気そうだ^^」

玲子
「アレは一体何だったのかしら?」

オレ
「アレ・・・って?」

オレは内心ビビッた。千賀子を抱いた事がバレてるのか?何で分かったのか?めぐるましく頭は回転していた。

玲子
「横山君に聞いても「悪霊払い」だって言うし、そんな事あなたが出来るとは思えないし」

オレ
「ははは・・・そうだなf^^;)」

玲子
「ところが、裕人の学校のPTAでそんな話があったのよ」

オレ
「そんなって?」

玲子
「はい^^おまちどうさま」

テーブルの前にざるそばが盛られた蒸篭が出てきた。そして大きな出汁巻き卵。玲子はオレの正面に座り冷たいウーロン茶を入れたグラスを前に出した。

オレ
「いっただきまーす^^」

玲子
「PTA会長の娘さんが、何かの拍子に意識不明になったままで、毎夜、悪霊が取り付いて騒ぎ出すですって・・・体はどんどん衰弱していってこのままだと命も危ないって」

オレ
「ふーん」

玲子
「それがどうやら藤原神社の噂を聞いてなんとかお願いしようって事になってるそうなの」

オレ
「もしかして・・・」

玲子
「だって藤原神社って聞いてつい・・・」

オレ
「ついなんて言ったんだ?」

玲子
「私の主人が、15代藤原龍斎ですって言ってしまいました。ごめんなさい」

オレ
「ははは・・・まー別に謝るほどの事じゃないけど」

玲子
「そう?^^じゃー一度見てもらえる?」

オレ
「さっき「あなたが出来るとは思えない」って言わなかったか?」

玲子
「あはっ^^そうだった?お願い。周りの人から是非にと懇願されて断れなかったよ」

オレ
「オレが見ても良くならないかも知れないぜ?」

玲子
「これまでにも、何人ものお医者様や色んな人に見てもらって、サジを投げられているそうなの・・・だからあなたが見てもダメでも責任はないわ。もちろんそう言って遠慮したんだけど、どうしても・・・って事になったの」

オレ
「そうか・・・」

玲子
「いい?」

オレ
「仕方ないな」

玲子
「良かったー(笑)実はもうすぐご両親がこちらに来られるの」

オレ
「なっ何だー?!もう手配してしまってるのか?」

玲子
「うん^^きっとユーちゃんは困ってる人を見捨てないと思って」

オレ
「ははは・・・」

オレは昼食の蕎麦を食べ終わると、何本か電話をかけた。そしていくつかの用意をした。

玄関のインターフォンが鳴り玲子が対応した。玲子は玄関に行き来客を招き入れた。そして玲子は戻ってきた。

玲子
「応接室に入ってもらったわ」

オレ
「じゃー行くか」

玲子
「はい」

オレと玲子は応接室に入った。来客は立ち上がり、玲子が紹介してくれた。オレたちはソファに座った。

すぐにお手伝いの今西さんが珈琲を持って入ってきた。テーブルに置かれ今西さんは部屋を出た。

オレ
「玲子から大体の事は聞いたんですけど、今現在はどんな状態なんでしょうか?」


「はい。ずっと意識は戻らないまま・・・夜の12時を過ぎると急に起き出して意味不明の言葉を叫んで、暴れ出すんです。」

オレ
「それは毎日ですか?」


「それまでは3、4日に1度程度だったんですが、このところ毎日のように・・・」


「このままでは里奈は死んでしまいます。どうか助けて下さい。私たち何でもしますから・・・どうか、どうかお願いします」

目の前でその夫婦は頭を下げた。

オレ
「わかりました。私で間に合うかどうかわかりませんが、精一杯やってみます。
とりあえず今夜、その病院に行ってその現象を確認します。私と助手の2名で伺いますので、受け入れ態勢をとってもらえますか?」


「はい。何卒よろしくお願いします」

玲子はその夫婦を励ましながら明るく応援した。彼らは少し安堵したようだったが、これまでも同様の経験をしながら失敗を重ねているだけに、その表情はイマイチ晴れなかった。そして用意の為に戻って行った。

オレと玲子はリビングの方へ行った。

玲子
「他人事とは思えないわ。もしうちの子がそんな事になったらと思うと」

オレ
「そーだな」

玲子
「どう?うまく行きそう?」

オレ
「話だけじゃ何もわからないないさ」

玲子
「そう。そうよね。。。」

オレ
「玲子・・・秘密を守れるか?」

玲子
「何?何の?守れるに決まってるでしょ!」

オレ
「香をここへ呼んだ。香を助手として連れて行く」

玲子
「そう。それが何か?」

オレ
「香も・・・美香や純子と同じ能力を持っている」

玲子
「そっそうなのっ!香ちゃんが・・・そう。そうだったの」

オレ
「誰にも言わないでくれ」

玲子
「わかったわ。その能力を使ってやるのね?ふむっ」

玲子はオレが何も出来ないと思っているようだ。そして前回の「悪霊払い」も美香がそれを行い。オレがただ前に出ていただけ!そんな風に思ったのだろう。オレはそれでいいと思った。(笑)


▼23時・・・東灘「甲南病院」


玲子の運転するベンツにオレと香と本橋が乗り込んだ。そして病院に入った。深夜の病院。ロビーの明かりをつけてもらい玲子と本橋はここで待機する事になった。オレと香が向井夫妻の案内で病室へ行った。

すでに消灯の時間で入院病棟の中は静かで薄暗かった。向井氏がドアを開けて、オレたちは中へ入った。


「里奈・・・です」

オレはベッドに近づいてそこで寝ている少女を見た。小学5年生と聞いていたが、すでに痩せ細っていてその表情も暗かった。健康であれば、可愛い子だろうと想像できた。

隣で香もその子を見ていた。

オレたちは用意された折りたたみ椅子に座った。香は小さな声で向井さんの奥さんと話をしていた。


「こんな風になったきっかけは何かわかりますか?」


「祖父の家の・・・「開かずの間」で倒れて、それからなんです」


「開かずの間?それは何処にあるんでしょうか?」


「芦屋の三条町です。私の実家なんです。あんなところにどうして入ったのか・・・きっと祟りです。。。」


「大丈夫です。ムトーが、いえ藤原龍斎がきっと里奈ちゃんを助けてくれます」


「どうぞよろしくお願いします」

オレはサングラスをかけた。そして腕を組み目を閉じた。意識はこの部屋に集中させていた。

突然「ドンっ」という大きな音、いや衝撃と共に部屋全体に異常が起きた。部屋の壁、床、天井、人それら見えるものすべてがグニャリと曲がり空間そのものが変化したように感じた。

サングラスをはずした。

「ぐぎゃあああああ」

オレたちは一斉にベッドの方を見た。少女がベッドの上で寝たまま悲鳴を上げながら暴れ出した。少女は上半身を起こして尚も咆哮を上げるように叫んでいた。

形相が一変していた。悪意の塊のような醜い顔・・・オレはベッドに近づいた。

少女
「寄るなああああ!!!殺すぞおおおお!!!祟ってやるぞおおおお!!!」

オレは体の正面にチリチリと痛みに似た痒みに襲われた。全神経を集中しその少女を見ていた。


「きゃーーーー」

オレは香の方を見た。香は崩れるようにその場に倒れた。

オレ・・・
「香どうした?」

純子・・・
「ユーちゃん気をつけて・・・あーーー」

オレ・・・
「香!香!返事をしろ!」

オレはベッドの方を見ていた。

少女
「ぎぎぎぎぃー邪魔するヤツは食うぞおおおお」

少女はふっとそのままベッドに倒れて大人しくなった。オレはベッドに近づき少女を覗き込んだ。表情は元に戻っていた。

母親が泣きながら少女に覆いかぶさった。少女の名前を呼んでいた。父親はただ呆然とつっ立っていた。

オレは香のところへ行った。手首を持ち香の顔に自分の顔を近づけた。脈もあり息もしている問題ない。気絶しているようだった。

その頃になってドアがノックされ医者と看護婦が入って来た。

医者
「いつもの発作ですか?」


「はい。。。」

医者はベッドに近づいた。そして少女の脈をとりまぶたを指で開いてみた。

医者
「いつもより短いようですね」


「はい」

医者
「そちらの方は?」

オレ
「ひとり、倒れました。」

オレは香の体を持ち上げてソファに横たわるようにした。医者は香の様子を見た。オレはまだ全神経をこの部屋の中のモノに向けていた。

医者
「特に異常はありませんが・・・念のために明日にでも検査を」

オレ
「・・・よろしくお願いします」

医者と看護婦は病室を出て行った。

オレ
「いつもあんな表情で騒ぐのですか?」


「いえ。あんな顔は初めてです。。。里奈があんな・・・」


「里奈。一体どうしたって言うんだ!!!」

父親はしゃがみこんで呻いた。

ドアがノックされて看護婦が数人やってきた。ストレッチャーを入れて香を乗せようとしていた。オレはソファに近づき香を抱え上げてストレッチャーに乗せた。そして隣の病室に運びそこのベッドに寝かせた。

オレ
「明日の朝、その「開かずの間」を見せてください」


「はい。。。」

オレ
「私は隣の病室に朝まで居ますから」

そう言ってオレは部屋を出た。そしてEVに乗り1階の入院病棟のロビーに行った。

玲子
「大きな声が聞こえたけど・・・」

本橋
「香ちゃんは?」

オレ
「香が倒れた。大丈夫だ気を失ってるだけだ」

玲子
「そんな・・・それでどうしたらいい?」

オレ
「予定通り明日、美香たちが来る。そしたら向井さんの祖父の家に行く」

玲子
「あっ!開かずの間に行くのね?そこに原因が?」

オレ
「行ってみればわかるだろう。今夜はオレはここに居る。二人とも先に帰ってくれ!何かあったら電話する」

本橋
「私も残ります」

オレ
「ダメだ。玲子と一緒に居てくれ」

本橋
「・・・わかりました」

オレは病室に戻り、向井さんといくつかの打ち合わせをした。そして隣の部屋に入った。香は眠っている。だけど意識はそこにはないだろう。

オレは椅子に座りサングラスをかけ、腕を組んで目を閉じた。意識を集中させて香と里奈の周辺を探っていた。朝までそうしていたが、特に変化は感じられなかった。


▼9時・・・芦屋「自宅」


横山
「お疲れ様です」

オレ
「うん」

玲子
「香ちゃん大丈夫かしら?」

オレ
「ああ。問題ない」

オレが病院から戻って来ると、この日、朝1番の飛行機で横山、美香、高瀬がやってきた。すでに美香と高瀬は緋袴と白衣に着替えていた。

オレ
「この後、三条町の向井さんの祖父の家に行く」

美香
「はい。それでは龍斎宮司。ご用意を」

オレ
「玲子。庭の井戸って使えたかなー?」

玲子
「ええ。ポンプで汲み上げれば水は使えるけど?」

オレ
「じゃー行こう^^」

高瀬
「はい」

オレはリビングからテラスに出てそのまま庭を歩いて井戸のところまで行った。そして井戸のポンプを確かめた。横山が木桶をひとつ持ってきた。

横山
「これでいいですか?」

オレ
「うん。ありがとう(笑)」

オレはその場で素っ裸になった。テラスのところに玲子、本橋、そして美香が居た。こっちを見ていた。オレは素っ裸のまま手を振ってやった。

そして手押しポンプを何度か押した。勢いよく水が出て木桶に溢れた。

オレは声を出した。

オレ
「ひとーーーつっ!

そして木桶を持って頭からその水を被った。冷たい井戸水だった。金玉が縮みあがるほど冷たかった。

そしてまたポンプを使った。木桶に水が入った。

オレ
「ふたーーーつっ!」

オレはそれを7度繰り返した。その頃には冷たさも感じなくなり、体の中も外も熱くなっていた。

オレは向き直って立った。高瀬がタオルで体を拭いた。高瀬はしゃがんでオレの下半身を拭いた。顔の前にオレの屹立したモノがある。それが顔に当たるのも気にせずにオレに褌をつけた。

オレはテラスに戻り居間に入った。

玲子
「ユーちゃん」

オレ
「神事の前の禊さ^^」

本橋
「すごい湯気が出てますよ」

オレ
「もう寒くも何ともない(笑)」

オレは褌ひとつでダイニング・テーブルの前に座った。高瀬はオレの髪をタオルで拭いた。櫛を使いオレの髪をオールバックにして後ろで束ねて結んだ。

オレは立ち上がって両手を広げた。高瀬は持ってきていた宮司の正装衣装をオレに着せた。オレはただ何もせず立っていた。玲子と本橋がずっとこっちを見ていた。

オレ
「烏帽子は後にしよう。車に乗るから」

高瀬
「はい」

オレ
「神刀は?」

美香
「はい。こちらに・・・」

オレ
「うん。じゃー行くぞ!」

美香&高瀬
「はいっ!」


▼10時・・・三条町「向井家」


玲子かが運転するベンツに乗り三条町の向井家に行った。家の前で助手席の横山が車を降りて大きな門に近づいた。暫く待つと門が内側に開いた。横山が車内に戻るのを待って車はその中に入った。大きな屋敷の玄関前の車止めにベンツは停車した。

横山が降りて玄関前に居る男に近づいた。男は横山に丁寧に礼をした。横山が後部座席のドアを開けた。

オレたちは車から降りた。オレは烏帽子をつけ顎紐をした。美香から神刀を受け取り腰に差した。

玲子はもうひとりの男にベンツのキーを渡した。オレたちは家の中に招き入れられた。

大きな広間のような和室。真ん中に広い和テーブルが置かれていた。オレはテーブルの前に行った。そして神刀を腰からはずしてその場に座った。オレの後ろに美香と高瀬が座った。

玲子と横山は隣に座った。

待つほどもなく初老の痩身の男が入って来て、オレの正面に座った。


「向井 宗玄と申します。

この度は、孫の里奈の為にわざわざおいで頂きありがとうございます」

男は深々と礼をした。

オレ
「藤原神社の龍斎と申します」

オレは烏帽子を被っているので、軽く顎を引いた程度の礼をした。

玲子
「家内の玲子と申します。向井逸美さんとは、子供の小学校でご一緒させていただいております。」


「よろしくお願いします」

オレはその男を静かに見据えていた。男も同じようにオレを見ていた。少しの時間沈黙が続いた。


「それではさっそくですが、はなれの「開かずの間」にご案内します」

玲子
「はい」

男が立ち上がった。オレは左手で神刀を持ち立ち上がった。そして再び腰に差した。男の後に続きオレが先頭に立った。廊下は庭に面していて、庭は広く手入れが行き届いているように見えた。かなり歩いた気がした。渡り廊下を過ぎると門のような扉があった。男はそこを力を入れて開けた。

薄暗い。窓も雨戸で締め切られた廊下に入った。


「この奥が・・・「開かずの間」です」

オレ
「はい」

オレは振り返った。

オレ
「玲子と横山はさっきの部屋に戻っていてくれ」

そう言ってオレは次の扉に近づいた。男は引き戸を横に滑らせて扉を開いた。オレは全神経を集中した。そしてその部屋に入った。

陽の光が射さないその部屋は暗かった。そしてかなり温度も低かった。広さは10畳ほど、正面に襖がありオレはそこを開けた。その瞬間・・・

シューという音と共に白い蒸気のようなモノに覆われた。かすかな眩暈を感じた。

「キャーーー」

美香が悲鳴を上げた。

オレ・・・
「大丈夫か?」

美香・・・
「注意してたから・・・大丈夫」

オレは前を注視したまま意識だけで美香と話していた。

美香・・・
「美穂も大丈夫よ!青ざめているけど」

オレ・・・
「気をつけろ」

オレは奥の部屋に足を踏み入れた。目の前の空間がひずんだようにグニャリと揺れた。オレは目を閉じた。意識だけを集中させた。オレはゆっくりとその場に胡坐をかいて座った。

目を閉じてもその光景は同じだった。体に纏わりつくような痛みに似た痒み・・・そしてその空間自体が誰かの意識の中に居るような錯覚・・・いや錯覚ではなくてそこにはソレが存在して広がり、口を開けて待っているようだった。

オレの中の龍が暴れている。オレはそこに意識を集中した。自分の意識の中で大きな龍が赤い目を光らせて獰猛そうな表情でオレを見ている。龍が吼えてオレを飲み込もうとした瞬間、オレの意識が飛ばされた。

そしてオレは浮いていた。

体を少し傾けるだけで、まるで海の中を移動するように流れるように移動できた。暗い空間の外は開かずの間が広がっていた。開かずの間の中にある別の空間。そこにオレは居た。意識を向けた方向だけが奥行きを持って広がる。その奥に何かが・・・居た。

オレはそこへ向かった。

目の前に居る。目の前に広がる空間がが動いた。赤い目のようなものが光っては消えた。

「ぐぉおおおおお」

咆哮と同時に鋭利な牙が並んだ大きな口が開いた。赤い肉の大きな口それに飲み込まれそうになった。オレは横に飛び退き背後に回ろうとしたそいつは体を回すようにして再び赤い牙だらけの口を開きオレに向かってこようとした。

右手を前に出した。手には藤原神社で見た神刀が握られていた。口が襲い掛かってきた。オレは両手で上段に構えて一気に渾身の気合を込めて振り下ろした。

「ぐっぎゃああああ」

そして気合を発して突きを入れた

「ぐぅうううううう」

閃光に似た光が目の前を覆いオレは眩しさのあまり目をつぶった。闇が崩れ目の前の視界が開けたように感じた。そこは開かずの間だった。

香・・・
「あっユーちゃん?」

オレ・・・
「おう^^どうした?」

香・・・
「口のお化けに飲み込まれてしまってた。ここは何処?」

オレ・・・
「開かずの間だ。ひとりで戻れるか?」

香・・・
「わからない・・・」

オレは声が聞こえる方に意識を移動させた。香の素っ裸の姿が見えた。

オレ・・・
「ははは^^オレが見えるか?どんな格好をしてる?」

香・・・
「正装で烏帽子をつけて、腰に刀を差してるわ^^」

オレは香に手を伸ばしたが、自分の手が見えない。そして香の体に触れる事もできなかった。オレはぴったりと香にくっついた。

オレ・・・
「一緒に行くぞ!病院だ」

香・・・
「はい」

オレは意識を動かした。周りの景色がグニャリと崩れた瞬間それが流れた。元に戻ると病室に浮いていた。隣に香が居るのが分かった。

オレ・・・
「ほらお前を心配そうに本橋が見ている」

香・・・
「こっこれはどういう事?」

オレ・・・
「意識を体に戻せ」

香・・・
「どうやって・・・」

オレはさっきと同じようにぴたりとくっついて香の体に入った。そして香を置いてオレだけもう1度そこを出た。

オレ・・・
「ほら目を開けろ」

それまで眠っていた香が目を覚ました。


「あっ私・・・眠ってた?」

本橋
「良かったー気がついてくれて、お医者様を呼んでくるわね」

本橋が出て行った。

オレ・・・
「どうだ?異常ないか?」

香・・・
「ユーちゃん。何処?やっぱり夢じゃないんだ?」

オレ・・・
「ははは(笑)」

オレは隣の病室に行った。壁は何も問題なく通り抜ける事が出来た。母親だけが付き添っていた。少女は昨夜の状態のまま眠っていた。

オレは意識を集中させ少女の中に入った。

オレ・・・
「里奈ちゃん。もう大丈夫だ^^隠れなくていい」

少女・・・
「・・・」

オレ・・・
「あの大きな口のお化けはやっつけたから心配しないでいい」

少女・・・
「ほんと?もう来ない?」

オレ・・・
「ああ。本当だ。もう来ない」

少女・・・
「あなたは誰?」

オレ・・・
「龍斎って言うんだ」

少女・・・
「龍斎・・・あなたも閉じ込められたの?」

オレ・・・
「いや、里奈を助けにきた」

少女・・・
「そう。ありがとう」

オレ・・・
「もう目を覚ましても大丈夫だ。ママが待ってる」

少女・・・
「うん」

オレは意識を飛ばした。そして少女の中から出た。里奈は目を覚ました。

里奈
「ママ。。。」


「里奈っ!気がついたのねーーーあーーー里奈っ!」

母親は里奈に抱きついたオレはその間に挟まれそうになった。オレは病室の天井付近に浮いた。そして「開かずの間」に戻った。オレの体は部屋の中央に座っていた。その後ろに美香と高瀬が座っていた。

オレ・・・
「美香。何か変化はあったか?」

美香・・・
「あっユーちゃん。心配したのよ!大丈夫?」

オレ・・・
「ああ。大丈夫だ。もう片付いた」

オレは意識を動かして高瀬の前に浮いた。

オレ・・・
「美穂!終わったぞ」

高瀬は声を出して「はいっ」と応えた。オレは自分の体に戻った。そして立ち上がった。

オレ
「終わった。行くぞ!」

美香&高瀬
「はい」

オレたちは開かずの間を出た。そして渡り廊下を歩き広間に戻った。最初に座っていたテーブルの前に神刀をはずして座った。

玲子
「どうだった?」

オレ
「ああ。とんでもないのが居た(笑)でもとりあえず終わった」

玲子
「そう」


「終わったとは?どういう事でしょう?」

オレ
「里奈ちゃんは意識を取り戻して、今頃ママと抱き合ってるでしょう」


「ほっ本当か!」

廊下から男が声をかけて入って来た。そして目の前の男に耳打ちした。目の前の初老の男は立ち上がった。


「病院から娘が電話してきた。ちょっと失礼する」

男は部屋から出て行った。

横山
「香ちゃんも大丈夫ですよね?」

オレ
「ああ。あいつももう気がついてる。大事ない」

美香
「でもあの部屋・・・妖しいわ」

オレ
「うん。たぶんあの部屋の下に何か残骸があるんだろう。あとで掘り返してお祓いでもしておけばいい」

男が戻ってきた。テーブルから少し離れたところに座った。そして手を付き深々と礼をした。


「龍斎さま。本当にありがとうございました」

オレ
「どうぞ手を上げてください」


「里奈が、里奈が元気に電話に出てくれました」

オレ
「そう。それは良かったですね」


「里奈は・・・龍斎さまが助けてくれたと」

オレ
「あははは^^」

オレたちは来た時と同じように自宅に戻った。そしてオレは2階の寝室に行った。美穂が着いてきた。そしてジーンズとTシャツに着替え階下に下りた。次に美香と高瀬が着替えた。

オレはソファに座った。玲子が冷たいウーロン茶を持ってきた。インターフォンが鳴った。玲子が対応した。

玲子
「香ちゃんと本橋さんが帰ってきたわ^^」

玲子と横山が玄関に向かった。話し声が聞こえて彼女らが居間に入って来た。オレは立ち上がって香を迎えた。そして香と軽く抱き合った。本橋ともそうした。そして皆でソファに座った。

2階から着替えが終わった美香と高瀬が降りてきた。オレは手招きをした。

玲子
「香ちゃん。ごめんねーとんでもない事お願いしちゃって」


「いいえ。とっても面白い経験をさせていただきましたから(笑)」

本橋
「もうっ!こっちは心配しっぱなしだったんだからね!」

横山
「あはっ^^ムーさんが居るんだから大丈夫だよ本橋は心配性だなー」

本橋
「あーらっ横山君。私もムーさんの事は信じてるわ!でもそれとこれとは別でしょ!( ̄^ ̄)」

オレ
「あははは^^でもまだ完全には終わってない」

美香
「あの部屋には絶対何かあるわ・・・」

高瀬
「龍斎宮司のお祓いが必要です」

横山
「ふむ。そうなんだ」

玲子
「後で、向井さんに電話してそのあたりの事を伝えておくわ」

オレ
「・・・腹減った。。。」

そしてその日は、全員ここに泊まる事になった。そして翌日にお祓いに行く事となった。


▼22時・・・自宅「寝室」


玲子
「ねーユーちゃん。高瀬さんって巫女さんでしょう?ユーちゃんはあの子と寝たの?」

オレ
「なっ何を言い出すんだっ!んな事あるわけないだろう」

玲子
「そう?あなたが井戸水を被った後、素っ裸のあなたの前にしゃがんだから吃驚しちゃった(笑)あなに褌をつけてたのは暫くたってからわかったわ

それに着替える時もあなたは一切何もしないで、高瀬さんがかいがいしくあなたに衣装をつけていた」

オレ
「オレも褌だけは自分でするから勘弁してくれ!って何度も言ったんだけど、ダメなんだって・・・そういう決まりらしい」

玲子
「それにしても、向井家に行った時のあなた・・・とても凛々しくてオーラが出てるようだった。神々しかったわ。。。」

オレ
「ん?ああいう衣装を着ると誰でもそんな風に見えるんだ」

2人用のソファに並んで座り、窓に広がる夜景を見ながらビールを飲んでいた。香と本橋、美香と高瀬、はそれぞれ2人一緒に客間に入り、横山は一人で客間を使っていた。

昨夜に続き、裕人と裕美は岡本の実家で面倒をみてもらっていた。

玲子
「いつの間にか『龍斎さま』になっていたのね。。。」

オレ
「なんだ?どうしたんだ?」

玲子
「なんか私の知らないユーちゃんにどんどん変わって行くみたいで・・・」

オレ
「あはっ^^オレが変わるわけないじゃないか(笑)」

オレは玲子を抱き寄せた。そしてディープなキスをした。

オレ
「玲子だって、人前でちゃんと『家内』です!ってオレの嫁をやってくれたじゃないか」

玲子
「アレは、他に言いようがないから」

オレ
「なんだ?嫌だけど言ったって言うのか?」

玲子
「ほんとは、ちょっと自慢げにそう言ってみたかったのよ^^」

オレ
「ははは・・・(笑)眠い」

玲子
「昨夜は徹夜だったものね。ベッドに入ろう^^してあげるから」

オレは素っ裸になった。玲子はオレの前にしゃがんで褌をとった。オレのモノは大きくなっていた。玲子はそれを口にした。

そして玲子は緩いセックスをした。オレは玲子の乳に顔を埋めて眠った。


翌日・・・


開かずの間の床をはずして、その下の土を掘り返した。かなりの土を取り出し1メートル以上掘り下げると、土の中に大きな木箱が埋まっていた。向井家の男たちはその周りの土を取り去った。


「引き上げましょうか?」

向井祖父
「・・・」

オレ
「その場で開けてみましょう」

向井祖父
「そうしてくれ」

男がスコップの先をうまくつかって、上側の板を外した。何度かそれを繰り返した。そしてその板を外した。


「うっ!」

男2
「うわっ!」

向井祖父
「・・・」

予想した通り、人間の白骨が横たわっていた。

オレ
「お祓いをしますから、この部屋から出て下さい」

男たちはビニールシートを敷いた床に這い上がってきた。そして部屋を出て行った。

オレ
「お神酒を・・・」

美香がひょうたんを両手で恭しく差し出した。オレは儀式的にそれを受け取り、掘り起こした穴にある白骨に振りかけた。

「ぐおおおおお」

咆哮と共に水蒸気のように白っぽい煙が舞い昇り、やがて消えた。美香から「おおぬさ」を受け取った。

オレは両手でそれを持ち、左、右、左と3度大きく振った。そしてそれを美香に渡した。

オレ
「これでいいでしょう」

向井祖父
「・・・ありがとうございました」

オレたちはそこを出て広間の方に向かった。そこには昨日のメンバーに香と本橋が加わり、正面に向井夫妻が居た。

オレたちは席を開けた玲子と横山のところへ座った。向井祖父は同様にオレの正面に座った。

向井祖父
「龍斎様。この度は本当にありがとうございました」

男は再度深々と頭を下げた。同様に隣に居た向井夫妻も頭を下げた。

オレ
「悪霊が里奈さんにとりついた。それを根本から取り除く事が出来たと思いますので、もう大丈夫でしょう」

向井父
「それは・・・一体何だったのでしょう?」

オレ
「さー何だったんでしょうね?私にはわかりません」

向井母
「もしかして、あの部屋から亡霊が出てきたんじゃないですか?」

オレ
「亡霊ですか?私にはわかりません。それでは私はこれで」

向井祖父
「龍斎さま。厚かましいのですが、ふたりだけでお話がしたい」

オレ
「・・・いいでしょう」

向井祖父
「では、向こうの部屋で」

オレは向井祖父に案内されて廊下を歩き左へ曲がったところの部屋に通された。座布団が用意されオレはそこに座った。

向井祖父
「龍斎さまはアレが何か?誰なのか?何故なのか?一切聞こうとされませんが・・・気にならないのですか?」

オレ
「気にしないといけませんか?」

向井祖父
「龍斎さまは、根本から取り除くことが出来たとおっしゃいました。因果を知らずして根本を取り除けるものかと思いまして」

オレ
「ははは(笑)」

向井祖父
「・・・」

オレ
「あなたが殺したあなたの最初の奥さん。」

向井祖父
「なっなんと!」

オレ
「自らの意思じゃなかったのに・・・あなたは私だけを責めた」

向井祖父
「うぉぉぉぉぉ」

オレ
「奥さんはあなたを愛していましたよ!その思いが強すぎて・・・」

男はその場に手をついて下を向いたままむせび泣くように声を上げていた。オレは黙って待っていた。

向井祖父
「私は・・・どうしたら・・・」

オレ
「ご自分の思う方法で、鎮魂してあげればいいでしょう」

向井祖父
「・・・はい」

オレ
「では、失礼します」

オレは立ち上がった。そしてひとりでその部屋を出た。皆が待つ広間に入り、帰る事を伝えた。


▼5月5日・・・赤坂、桜井「はなれ」


小林父
「じゃー死者の怨念が悪霊を呼び寄せたという事でしょうか?」

オレ
「そんなところじゃないですか?よくわかりませんけどね」

美香
「開かずの部屋にお祓いに行った時に私が聞いた事は龍斎さまにすぐに伝ええましたから・・・」


「美香さんすごいわー私なんか病室で里奈ちゃん見てちょっと覗いてみようと思ったら、すぐに引き釣り困れて、あの黒い大きな口のお化けに飲み込まれてしまって・・・閉じ込められてしまった」

美香
「私が居てもきっと同じだったと思う。開かずの部屋にはもう悪霊じゃなくて、怨念だけだったらそんな事はなかったけど、妖しかった」

小林父
「それにしてもムトーさんの周りに3人の能力者が居たとは・・・そしてそれを超える能力をすでにムトーさん自身がお持ちだったとは夢にも思いませんでした」

美香
「里奈ちゃんも同じようにあの部屋に入って、悪霊に精神を取り込まれてしまって閉じ込められたって事なのね?

それを龍斎様が退治したのはいいけど、香さんも里奈ちゃんも自分で自分の体に戻る事はできなかった。

龍斎様がついていて一緒に体に入れたという訳なんでしょうか?」


「私は始めての経験だから・・・よくわからないの」

小林父
「美香さんはどうなんです?これまでに意識、精神を体から離した事はないのですか?」

美香
「そんな事ができるとは考えても居ませんでしたし、経験もありません」

小林父
「それはやはりムトーさんだけが出来る事なんですね」

オレ
「全神経を集中すると・・・一匹の大きな龍が表れるんだ。赤い目をした獰猛な龍。そいつがオレを襲ってくる。そしたらオレは逃げようとするんだろうな?瞬間的に飛ばされて・・・その場に浮いているんだ」

小林父
「浮いているとは?例えばここでそうなったら、ここの部屋の中に浮いていると言う事ですか?」

オレ
「ああそうだ」

小林父
「それで移動したりできるのですか?」

オレ
「オレはダイバーだったから海の中に浮いている感覚に近いと思うけど、実際にはもう少し自由な感覚だな(笑)

まっその話は次の機会にしましょう小林さん」

小林父
「んー残念(笑)」

美香
「香さんも藤原神社へ暫くいらっしゃいませんか?できたら少し訓練されたらいいんじゃないかと思います」


「訓練?」

美香
「いろんな相談者が来られるんですけど・・・」

美香はそれ以上は言葉にしなかった。きっと小林さんを意識したのだろう。美香は香にダイレクトに意識で話しかけていた。美香と香のやりとりはオレにも聞こえていた。

美香はそうしながらもテーブルの前のお茶を飲んだりして、表面的にはとりつくろっているが、香はぼーとして意識の話に夢中になっているようだった。

小林父
「もしかして・・・?」

オレ
「(笑)」

小林父
「私だけ・・・聞こえないって事ですか?」

オレ
「ははは^^そうかも知れませんね」

オレ・・・
「普通の人の前でいいかげんにしとけよ」

美香&香
「はい」


「ユーちゃん。私、藤原神社へ行っていい?」

オレ
「そうだな。精神力を鍛える事ができるかも知れないな」

美香
「私も楽になるから嬉しい(笑)」

小林父
「あー目の前にこんな奇跡があると言うのに・・・」

オレ
「なんです?」

小林父
「私も何かできませんか?」

オレ
「じゃー神職の修行でもします?」

小林父
「えっ神職・・・ですか?」

オレ
「そうすれば神殿にも入る事ができますし、相談の立会いも可能ですよ!その後お祓いでもすればいい」

美香
「あっ!それいいですね^^」

小林父
「はい^^是非お願いします」

オレ
「冬の禊は寒いですよー(笑)」

小林父
「うっ!でも頑張ります。神道についても猛勉強しますよ(笑)」


「私も勉強しよーっと(笑)」

オレ
「(笑)」

オレたちは桜井の玄関から出て、外を歩いて自宅に戻った。


「お帰りなさい^^」

オレ
「おう^^ただいま」

居間に入ると松井と横山が待っていた。美香と香は2階で少し話し合うと言って上に上がった。

松井
「さっそくですが、ムーさん。前野さんのご両親が来られて、千賀子ちゃんのニューヨーク行きよろしくお願いしますとご挨拶されました」

オレ
「あっ!忘れてた。。。千賀子、親を説得できたんだ。無理だと思ってたのに」

横山
「ニューヨークへ連れて行く約束をしたんですね?(笑)」

オレ
「いや、きっと親が反対するだろうと思って親の許可が条件だったんだけど」

松井
「ムーさんと一緒だと言えばオッケーするに決まってるじゃないですか」

オレ
「なんで?」

松井
「なんで?って(笑)千賀子ちゃんの命の恩人だと思って安心してますよ!」

オレ
「あっそう。。。」

横山
「とりあえず航空券の手配はかけました。大株主のプレッシャーをかけてゴールデン・ウィーク中の満席の便をなんとかしてもらいましたから」

オレ
「ははは・・・すまんな」

小林父
「ニューヨークへ行かれるんですか?」

オレ
「ええ。知り会いの卒業式を見るのに、ちょっと行って来ます」

横山
「とうとう卒業かーこの間まで語学留学だったのにちゃんとジュリアードを卒業するんだ。嬉しいでしょう?ムーさん」

オレ
「ああ。そうだな」

松井
「ユーコちゃんやヒロミちゃんがが一番若いと思ってましたけど・・・(笑)」

横山
「うん。今や中学生とだもんなー(笑)」

オレ
「ははは・・・勘弁してくれ」

オレは源が持ってきてくれたウーロン茶を飲んだ。

横山
「ところでムーさん。押入れのダンボールが三分の一に減ってるんですけどね?」

オレ
「ん?そう?」

横山
「田川の様子もおかしいんですよね?その事を聞くと、源は真っ青な顔してしゃべらないし」

オレ
「ふーん」

松井
「(笑)」

横山
「田川を問い詰めたら・・・白状しましたよ」

オレ
「なんだよ知ってるんならいいじゃないか(笑)」

横山
「サイコロ博打で30億すったって・・・ったく」

小林父
「なんと・・・30億博打で負けたんですか?ムーさん」

オレ
「いや、アレはちょっと田川がぐずぐず言うもんだから、賭場に連れて行って

田川が最初に負けたんだ。次に源が負けた。最後にオレが負けた。

あははははは^^(笑)」

小林父
「3人で3回やって30億負けた?1回10億の勝負ですか!!!」

横山
「ムーさん。どーしてオレも連れて行ってくれなかったんですか!!!」

オレ
「あははは^^それで怒ってるのか?(笑)」

横山
「当たり前ですよ!オレはその前の大勝負も見てないんですよ( ̄^ ̄)」

小林父
「ムーさん。もしかして博打に嵌ってるんですか?」

松井
「いえ。そうではありません(笑)色々因縁があって博打で60億勝ったんですよ!

きっとムーさんはそれを半分返すつもりで、わざと博打場へ行って負けてきたんだと思いますよ(笑)」

横山
「でも、あの人にも半分届けたんでしょう?ムーさん」

オレ
「ん?そうだったかな?」

松井
「なるほどやっぱり(笑)」

横山
「博打で負けた人に30億渡して、ケンカ相手に30億返してやって・・・こっちから最初に3億持ち出してるんですよ?

60億勝ったけどぜんぶそれがなくなったら・・・結局3億の赤字じゃないですか?」

オレ
「ははは・・・そうだな f^^;)」

松井
「アレもこの間の和解金の一部だし、そう目くじら立てるなよ横山」

横山
「まーそうですけど・・・」

オレ
「ははは・・・すまんな(笑)」

横山
「源!ちょっと来いっ!」


「はいっ!」

横山
「オレにばっくれやがって!!!」


「はいっ!申し訳ありませんでしたっ!」

横山
「次は承知しねーぞ!」


「はいっ!」

横山
「もし勝ってたらムーさんの事だ!きっと半分はお前のモノになってたのに・・・バカヤローが(笑)」


「えっ!半分・・・じゃー5億がオレのモノだった?あーオレもうダメだ。。。」

オレ
「ぎゃははははは^^(笑)」

松井
「あははははは(笑)残念だったな源!」


■5月7日・・・


オレ
「やーカール元気そうだな?」

カール
「Oh ^^ムーさん。それにサヤノママにヨモさんも^^ようこそmar'sBLGへ」

紗也乃
「カールもお元気そうでなりよりだわ^^」

四方
「またあえて嬉しいわカール♪」

オレ
「こっちはお客さんの千賀子さん」

千賀子
「始めましてカールさん。千賀子ですよろしくね」

カール
「はい^^ドアマンのカールです。いつでもあなたの為にドアを開けますよ」

オレたちはカールにドアを開けてもらってEVに乗り5階に上がった。そしてオフィスに入った。

片岡
「いらっしゃいませ^^ムーさん」

ヒロミママ
「ようこそニューヨークへ^^」

それぞれ挨拶を交わして、荷物を入れて大きなテーブルの前に座った。オレは千賀子を紹介した。

ヒロミママ
「まー中学生なのー^^それはそれは^^」

片岡
「千賀子さん。どうぞゆっくりニューヨークを楽しんで下さいね」

千賀子
「ありがとうございます^^」

ヒロミママは珈琲ポットをカップを持ってきてそれぞれの前に置き珈琲を入れた。オレは自分でフレッシュを入れてスプーンを使った。

紗也乃
「さっきチラっと見たけどスーパーも出来て便利になったのね^^

ヒロミママ
「私が来た時にはすでにそうなっていましたので、前の事はよく知らないんですけど、初代ニューヨークママの紗也乃さんの事は皆さんからよく伺ってます」

紗也乃
「わたしなんか何にも出来なくて、みんなに手伝ってもらってようやくなんとかなった次第ですから(笑)」

四方
「ここもちょうど5年が過ぎて、6年目に突入したわ^^」

オレ
「いよいよヒロミちゃんも卒業だな^^」

紗也乃
「卒業公演に卒業式♪見れるとは思わなかったから嬉しい」

ヒロミママ
「わざわざ日本から来て頂いてありがとうございます。ヒロミも期待を裏切らないようにって、喜んで練習してるんですよ^^」

四方
「卒業されたらどうするんですか?」

ヒロミママ
「Parisの音楽大学へ行く事に決まりましたので、来月早々にも向こうへ行くつもりです」

紗也乃
「そうParisに?!向こうにもmar'sがありますから、また新しい生活も楽しくなるでしょうね」

オレ
「なんだか向こうの方が賑やかになりそうだな(笑)」

片平
「こっちもまだまだ頑張りますよ^^」

オレ
「うん。何しろここはスタート地点だからな!これからもどんどん新しい事をやっていこう(笑)」

オレたちは部屋の鍵を貰って、それぞれの荷物を運び込んだ。紗也乃と四方は4階の2LDKに入り、オレと千賀子は5階の1LDKにそれぞれ荷物を置いた。そしてオレは千賀子の部屋に行った。

ドアをノックするとすぐにドアが開いた。

オレ
「もう忘れたのか?部屋に入ったらすぐに鍵を掛ける。ノックされても開けない!」

千賀子
「だってヒロだとすぐにわかったもんっ」

オレ
「それでも、ドアスコープで確認してからだ」

千賀子
「はぁ〜〜〜い」

千賀子はオレに抱きついてきた。そして少し背伸びをしてオレにキスをした。オレはゆっくりと千賀子の体を離した。

オレ
「ニューヨーク・スタイルはもっとソフトにやるんだ(笑)」

千賀子
「ヒロの女なんだからハードなキスよ^^」

オレはリビングのソファに座った。そしてブラインドを少し下げて外を見た。いい天気だった。

オレ
「ジーンズにシャツ。それとジャンパーにでも着替えろ」

千賀子
「ジャンパー?そんなの持ってきてない。どうするの?」

オレ
「ハーレーに乗せてやる」

千賀子
「それはなーに?」

オレ
「・・・アメリカン・バイクだ」

千賀子
「うっそーヒロはバイク乗れるの?」

オレ
「ああ。千賀子はバイクのケツに乗った事があるか?」

千賀子
「ケツ?あー後ろにって事?まだないの(笑)」

オレ
「じゃー止めておこう」

千賀子
「いやー乗せてよーバイク♪」

オレ
「ちゃんと言う事聞くか?でないと振り落とされて車に轢かれるんだぞ?」

千賀子
「はいっ^^言う事聞きますっ!」

裏の駐車場、銃撃事件以来オートゲートが付けられて安全対策が施されていた。オレは小さな物置のようになっているところを開けてその中のハーレーを出した。千賀子にタンデムで乗る時の注意をいくつか与えた。

セル一発でハーレーは始動した。

オレ
「しっかりと捉まってろよ!」

千賀子
「はい^^」

ブロードウエイ通りを北に、徐々にスピードをアップしながら走った。そしてリバーサイドパークまで走りハーレーを停めた。

屋台でホットドックとコークを買って、テーブルベンチに座った。

千賀子
「バイク。気持ちいいー^^」

オレ
「バイクはコケたらアウトだ。大怪我するから安易にケツに乗ってもいけない。」

千賀子
「うん^^ヒロとしか乗らないよ^^やっぱりここはアメリカなんだなー(笑)」

オレ
「違う(笑)ニューヨークだ」

千賀子
「一緒じゃない(笑)」

オレ
「ニューヨークは特殊な街だ。すべてのアメリカがこうじゃない。まー難しい事を言っても仕方がないが・・・(笑)」

オレは中学生相手にムキになっても仕方がないと反省した。素直に喜んでいる千賀子と同じ目線で対応するようにした。

ホットドックを食った後、お決まりのコースを走った。コロンビア大学に続く坂を通りの店を見ながら、途中で停まって買い物をしたりしてコロンビア大学の駐車場に停めた。

学生に頼んでバイクに乗っている姿でポーズを決め、ニコンのシャッターを切ってもらった。

オレ
「ここが有名なコロンビア大学だ」

千賀子
「ふーん」

オレ
「いつか千賀子も語学留学とか考える時が来るだろう^^あっちの建物が寮になっている」

千賀子
「ヒロも語学留学したの?」

オレ
「おれはダイレクトにニューヨーク大学に入った。それ以前にサンフランシスコに1年半居たから英語はなんとかなったからな」

千賀子
「へーヒロってずいぶん勉強家なんだー?」

オレ
「ははは^^」

千賀子
「紗也乃さんや四方さんも英語を当たり前に話すし・・・すごいわ!」

オレ
「四方はここの経営学部を卒業した」

千賀子
「そうなんだ。うん。私も留学しよーっと(笑)」

オレ
「まー選択肢のひとつとしてそういう事もできるって言う事だ」

オレたちはまたバイクに乗り大きく東側に向けて走りながら、mar'sBLGに戻った。


▼16時・・・mar'sBLGオフィス


ヒロミ
「ムーさん。怪我はもういいんですか?」

オレ
「うん。心配かけたけどもうすっかり大丈夫だ^^ヒロミもいよいよだな?」

ヒロミ
「はい。卒業公演の翌日にはもう卒業ですから(笑)」

オレ
「そっか^^オレがここを離れて2年・・・よく頑張ったな」

ヒロミ
「1番で卒業したら・・・ご褒美下さい^^」

オレ
「もちろんだ。何でもリクエストしてくれ(笑)」

ヒロミ
「はい(笑)」

期待通りヒロミは卒業公演でもトップをとり首席卒業を果たした。紗也乃や四方も自分の事のように喜びヒロミを祝福した。

翌日には紗也乃と四方、そして千賀子が帰国した。

ヒロミがリクエストしたご褒美は、大したことではなかった。オレはそのリクエストに応えて、ヒロミと二人でハワイに行った。オレは3日間、ヒロミと恋人同士のように過ごす事に努めた。

mar'sBLGを買って初めてニューヨークへ来てから5年。これでオレの関係してきた女たちはすべてニューヨークを卒業した。もうニューヨークママも必要なかった。

そういう意味では、誰にも気を使わずにシンプルにニューヨーク生活をするのにはいい環境になったのかも知れない。

ただ、もうあの頃のような熱い風は吹かないだろう。


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