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このまま君だけを奪い去りたい


DEEN:「このまま君だけを奪い去りたい」

WANDS:「このまま君だけを奪い去りたい」

オリジナルよりWANDSバージョンの方が合ってると思いますけどね(笑)
1987年7月-----------


7月15日・・・藤原神社拝殿「広間」

高瀬母
「ご無沙汰しております。龍斎さま」

そう言って高瀬の母親は深々と手をついて頭を下げた。オレは夏用の薄い狩衣姿でテーブルの前に座っていた。

オレ
「婦人会の活動も活発でお忙しいと聞いております。いつもありがとうございます」

高瀬母
「いいえ。私なんか何も出来ておりません」

そう言ってオレの正面に座った。

高瀬母
「以前にも増して龍斎さまがよく来られるので氏子の皆さんも喜んでおります」

オレ
「ははは・・・施設が出来てから、関西からのお客さんがよくくるものですから、こっちへ来る機会も増えました。

高瀬母
「そうですか^^それは何よりです」

オレは目の前の冷たいお茶を口にした。そして黙って待った。

高瀬母
「ところで龍斎さま。美穂はお気に召しませんか?」

オレ
「いつも親身になって世話をしてくれて、本当に感謝してます」

高瀬母
「娘は何も言わないのですが、最近は帰って来てもため息をつくことが多くて、きっと未だなのだろうと思っているんですが・・・」

オレ
「・・・」

高瀬母
「美香さんはすっかり女らしくなって、どんどんきれいになって羨ましい限りですわ」

オレ
「そんな風に見えますか?」

高瀬母
「美穂はダメでしょうか?」

オレ
「おかーさんに似て美しいお嬢さんです。間違いを起こさないように、しっかりと理性を働かせて居ます」

高瀬母
「間違いってそんな・・・」

オレ
「私の代になる前から色んな事があって、大きな犠牲を払いながらここまで来ました。これからは、新しいルールで新しい藤原神社を運営していこうと思ってます。」

高瀬母
「その事はよくわかっているつもりです。しかしながらこれまでの伝統も大事ではありませんか?」

オレ
「もちろんそうですね。でも、そんな伝統で美穂ちゃんの将来を決めてしまうのはどうでしょう?問題がありすぎると思います。」

高瀬母
「でも宮司は美香さんとはそうなられました」

オレ
「美香とは・・・これまでに修羅場をかいくぐって来た仲です。その中で自然とそうなってしまった」

高瀬母
「本人が希望してもダメなんでしょうか?」

オレ
「希望してないと思いますよ」

高瀬母
「・・・」

高瀬母の目が少し光ったように感じた。オレの脳の中がチリチリと感じ始め、欲望が湧き出してきた。オレはそれを理性で押さえ込んだ。

高瀬母
「失礼したしました」

オレ
「いえ。そんな事をしなくても、いつだって高瀬さんを抱きすくめたいと思ってますから常にそれを押さえる努力をしている成果ですよ^^」

高瀬母
「そんな・・・」

オレ
「たかがセックスです。でもそれは経験の豊富な方との場合です。若い純真なお嬢さんとはそんな風には出来ません。どうかご理解下さい」

高瀬母
「では・・・私となら・・・」

オレ
「あははは^^はい。喜んで!」

高瀬母
「・・・」

オレ
「では失礼します」

オレは立ち上がって広間を出た。そして母屋の方へ向かった。その時には高瀬が後ろについて来ていた。そして自室に戻った。

オレはテーブルの前に座った。高瀬は冷たいお茶をオレの前に置いた。

高瀬
「龍斎さま・・・母とはしないで下さい」

オレ
「えっ!話しの内容をどうして知ってる?」

高瀬
「母は、男性をその気にさせる「術」を持っていますし、きっと龍斎さまに私の事をお願いしたと思いますから・・・」

オレ
「心配しないでいい(笑)オレはこれでもやせ我慢は得意なんだ」

高瀬
「・・・」

オレ
「あっこの間は我慢できなくて、手でしてもらったけどな^^;」

高瀬
「我慢なんかしないで下さい」

オレ
「お世話係のお前を手篭めにするような事はできない。オレはお前と一緒に何処か食事に行きたいと思ってる」

高瀬
「えっ!」

オレ
「当然だろう?オレはお前のプライベートを知らない。映画を観たり、食事をしたり、飲みに行ったり、そんな風に普通のコミュニケーションをして、相手の事をもっと知りたいと思ったら・・・」

高瀬
「・・・」

オレ
「少しは格好をつけて、いい男ぶってみたいじゃないか(笑)」

高瀬
「そんな、私なんかに・・・」

オレ
「週末。付き合ってくれるか?」

高瀬
「えっ?」

オレ
「デートしよう^^」

高瀬
「・・・」

オレは返事を聞かないまま立ち上がった。

オレ
「道場へ行く」

高瀬
「はい」

オレは母屋から出た。夏の日差しが照りつけている。竹林の脇の小路は日差しが少し遮られて涼しかった。

今のままだとオレは与えられた環境に甘えて、美穂を犯してしまうだろう。それはそれでひとつの形だと思えばそれでもいいが、最初からそういう形でするのはダメだ。ちゃんとデートをして・・・そうしてから、次は巫女姿の時の美穂を犯す!馬鹿げた理屈をつけて正当化しようとしていた。

オレは高林の向こう側、神殿の裏に建てた道場へ行った。一礼してオレは道場に入った。

田川
「お疲れさまです^^」

オレ
「おう^^」

道場内には4人の警備の連中が汗を流していた。

オレ
「今日は師範は?」

田川
「はい。お休みです」

オレ
「そっか。じゃーまた今度だな(笑)」

田川
「すみませんムーさん。いえ龍斎宮司。出来ましたらオレとお願いできませんか?」

オレ
「ん?やるか?」

田川
「はい」

オレは道場の隣の部屋に入り、そこにあった胴衣に着替えた。竹刀を適当に選んで防具を持ち道場に戻った。

オレは田川と正対するように座り頭に手ぬぐいを巻いて、防具をつけた。そして前に出た。

田川が先に蹲踞の姿勢で待っていた。オレも同じようにして竹刀を構えた。そして立ち上がった。

正眼の姿勢で向き合った。先に動いたのは田川だった。

田川
「せいやっーーーー」

オレの切っ先を払って打ち込んできた。オレは竹刀で受けた。息をもつかせぬ田川の攻撃は藤原流とは少し違うようだったが、それなりの圧力はあった。

田川が息をつく刹那を狙ってオレは攻撃に転じた。そして小手を打ち後ろに跳び下がった。

田川
「まだまだっ」

再び田川の威勢のいい声と共に連続攻撃が続いた。オレは右利きの田川に対して左へ左へと回る込むようにしてその攻撃をかわした。田川は下がり大きく息をしかけた瞬間。オレは遠間から一気に飛び込んで面をとりに行った。

田川は防ぎそこからオレの連続攻撃になった。そして息をつくと見せかけて半拍置いて小手を決めた。

田川
「ふーまいりました」

「ありがとうございました」

オレは最初の場所に戻り面をはずした。あまり汗はかいていなかった。オレは立ち上がった。

オレ
「またやろう(笑)」

田川
「はい(笑)」

オレは道具を戻して母屋に戻った。そしてすぐに風呂に入った。高瀬がすぐにやってきた。

田川はニューヨークで合気道をやっていたと思ったが、どうやら向こうでしっかりと剣道をやっていたようだ。実力的には2段ぐらいだろう。だけどそれはあくまでもスポーツとしての剣道だった。武道としての剣道、もう少し古武術としての藤原流をやらないとプロとやりあう実戦では通用しない。

午後からの祈祷を終えてオレは源と一緒に赤坂へ戻った。


▼18時・・・赤坂自宅


洋子
「お帰りなさい^^」

オレ
「おう^^ただいまっ」

オレは洋子を軽く抱いてキスをした。そして居間に入った。オレはダイニング・テーブルの前に座った。すぐに洋子はビールを用意した。オレは少し大きめのグラスにビールを注いでもらって一気にそれを半分ほど飲んだ。

オレ
「ふぅー生き返った(笑)」

洋子
「ずいぶん日焼してるわねー?オキナワ楽しかった?」

オレ
「えっあーうん。。。」

洋子
「どなたと一緒だったのかしらねー?^^」

オレ
「ははは・・・何だ鎌をかけたのか(笑)」

洋子
「そういうのあなた弱いもの(笑)」

オレ
「あはっ!^^腹減ったなーメシ行こうか?」

洋子
「何が食べたい?」

オレ
「そーだなーやっぱり洋子のすき焼きかな?」

洋子
「じゃーここで作りましょうか?」

オレ
「そう?そうか!(笑)」

洋子
「いいお肉屋さんを見つけたの^^ちょっとじゃー買い物に行ってくるわ」

オレ
「いや、一緒に行こう」

洋子
「うん」

オレはベンツを運転して洋子とふたりで築地あたりの洋子が見つけたという肉屋に行った。家には源と警備の島田が居る。4人で食うには多すぎるとは思ったが、きっと後で誰かまた来るだろうと思い10人分以上を買った。

そしてネギ、イトコンニャク、たまねぎ、白菜、その他の調味料をスーパーで買い二人でまた自宅に戻った。


「お疲れ様です^^」

オレ
「今夜はすき焼きだぞ!皆で一緒に食おう^^」


「いいんですかー^^洋子ママ」

洋子
「たくさん買ってきたから遠慮しないでいっぱい食べてねー」


「はいっ^^お願いしまーすっ!」

洋子はキッチンに立った。源も何かを手伝っていた。そしてテーブルの上にカセットコンロを置きすき焼きの用意が出来た。

オレ
「源。島田も呼んで来いよ」


「はい^^」

全員が揃ったところでビールでカンパイした。洋子はオリジナルのわり下をつくりさっそく肉から焼き始めた。

オレ
「島田は関東だったかな?」

島田
「はい。栃木ですけど^^」

オレ
「一応関西風の味付けだ。でも旨いもんは旨いから^^」

洋子
「卵つかう人!」


「はい」

島田
「いえ」

オレ
「なんだ?すき焼きに卵は必須だろう?(笑)」

洋子
「好き嫌いがあるわよ^^さーどうぞ」

オレ
「おしっ^^じゃーオレが」

それぞれ肉をオレはとりわけて、彼らの器に入れた。


「うわーーー旨いっ!」

島田
「美味しいです^^」

オレ
「うん。旨い^^絶妙な味付けだな」

オレは途中ですき焼き奉行を洋子から引き注ぎ注意しながら肉を焼いてはそれぞれの器に順番に放り込んでいた。洋子にもしっかりと食べさせた。


「ムーさん。田川さんがびっくりしてましたよ」

オレ
「ん?」


「今日道場で田川さんと稽古したんでしょう?田川さん子供扱いされたってムキになってました(笑)」

島田
「ムーさんは日本刀相手に木刀で勝つんだから、そりゃー防具つけた稽古なんて寝てても大丈夫ですよねよー^^」

洋子
「ユーちゃん。そんな事してたんだ?(笑)」

オレ
「ん?あー襲われた時にな^^だけど島田。あん時は柳田がパチンコを飛ばしてくれたから、オレが勝てたんだ(笑)」


「あははは^^柳田さんアレ以来パチンコのプロになる!って張り切ってますもん(笑)」

洋子
「この人ほんとは挑発に弱いのよーすぐにひとりでいっちゃうの」

オレ
「ふーーーん。そうなんだ(笑)」

洋子
「シャングリラに皆で来た時でも、ゴキゲンで帰ったと思ったら、ビルの前でケンカするんだから(笑)」

オレ
「あはっ^^アレは余興みたいなものさ」


「横山さんから聞きました。(笑)ムーさんひとりでチンピラを3人ぶっ飛ばして走って逃げたって」

島田
「やっぱり笑いながらやっちゃったんですか?(笑)」

オレ
「ああいうのが一番面白い(笑)」

洋子
「もうダメですよ!」


「洋子ママ。ムーさんとケンカしてくれるチンピラはもう東京には居ませんよ(笑)」

オレ
「いや、渋谷辺りに居る不良少年達はまだまだ元気そうだぞ」

島田
「あっあいつらは相手にしちゃーダメですよ!数にモノを言わせて無茶やりますから」

オレ
「へーそうなんだ。でも世の中には怖い大人がたくさんいる事を教えてやらないとな」

洋子
「そんな事、あなたが教えてあげる必要はないのっ!(笑)」

オレ
「まーそうだな(笑)」

オレはビールを飲み干して、箸を置いた。

オレ
「ふーちょっと調子に乗って食べ過ぎた(笑)」


「ごちそうさまでした。こんな旨いすき焼き初めてですよ^^」

島田
「うん。こんなに肉ばっかり食えたすき焼きも初めてです^^」

洋子
「そう^^もういいの?ずいぶんお肉余っちゃったわ

明日のお昼は牛丼にしようか?」


「はいっ^^是非お願いします」

島田
「ラッキー♪^^」

源と島田は後片付けを手伝ってから、自分たちの部屋に戻った。オレはヨーコと一緒にソファの方へ行った。

オレ
「洋子。ありがとう(笑)あいつらも喜んでたな^^」

洋子
「いいえ。どういたしまして(笑)こんな事なら毎日だって大丈夫よ」

オレ
「ははは^^それはありがたいな」

オレはキャメル・ライトを咥えて火をつけた。洋子はキッチンの方へ行った。毎日でも大丈夫。それはそうしたいと言う事なのか?そうだろうな。困るのはオレか?

この間、ニューヨークへ連れて行った。オレが過ごした時間を見たいと言うから・・・そしたら不幸にもオレが駐車場で銃撃され襲われた。幸いな事に腕と肋骨の骨折程度で済んだが、洋子にとっては相当ショックだったようだ。それだけにそれまでの危険な騒動についてもそれらが決して冗談ではなく真実だったと思うようになっていた。

珈琲のいい香がした。洋子はそれを持ってソファに戻ってきた。そして目の前でフレッシュミルクを入れてスプーンを使いオレの前に出した。

洋子
「どうぞ」

オレ
「ありがとう」

オレは備前焼の珈琲カップを手にした。そして珈琲を飲んだ。

洋子
「宮司の仕事ずっと続いてくれればいいな^^」

オレ
「あれはあれで結構鬱陶しいルールがあるんだぜ」

洋子
「でも似合ってるし、周囲からも尊敬されているわ」

オレ
「尊敬か(笑)今度、また藤原神社の施設に泊まりに来いよ^^」

洋子
「うん。川越も観光するにはいいとろこだし、お店の子たちを連れて行こうと思ってるわ^^」

オレ
「ははは^^そっか!」

洋子
「来年は芦屋も出来るんでしょう?忙しくなるわね^^」

オレ
「そうだな(笑)」

ナイトクラブの経営者・・・そんなモノは有名無実だ。毎日女と遊んでいるとしか思われない。洋子はオレがmar'sと言うバンドをやっている頃を知っている。オレがまだ夢を持って音楽にのめり込んでいた姿を知っている。そういう意味では、宮司をやり拝殿で祝詞を読み、お払いをする。そういう目に見えた仕事をしている事に喜んでいるのか?そしてそういう姿は・・・洋子自身が尊敬に値すると思っているのだろう。


■7月18日・・・芦屋「ブラームス」


バラの花束を持ちサングラスをかけたまま店内に入った。そしてカウンターの方へ向かった。ヨーコがこっちを向いて微笑んでいた。オレは花束を渡して、ヨーコと軽く抱擁を交わしてカウンターに座った。

ヨーコ
「ありがとう^^」

オレ
「最初は年に1度、1週間ぐらいでいいっていう約束だったんだけどな」

ヨーコ
「あら何の事かしら?」

オレ
「藤原の仕事だ(笑)」

ヨーコ
「忙しいのね?聞いてるわよ^^」

オレ
「笑っちゃうだろう?(笑)」

ヨーコ
「ううん。あのマスコット人形もとっても可愛いし、ワッペンや褌もいいわよ(笑)」

オレ
「あははは^^もう知ってるのか?」

ヨーコ
「だって裕美ちゃんのお気に入りの人形だっていうじゃない?もう大笑いしちゃった」

オレ
「ははは・・・どうせまた首に紐をつけて振り回していたんだろう」

ヨーコ
「あははは^^そうよ(笑)」

オレ
「困ったやつだ(笑)」

ヨーコ
「後でちょっといい?」

オレ
「うん」

ヨーコは珈琲にフレッシュクリームだけを入れてスプーンを使いオレの前に置いた。

ヨーコ
「そうだ。来年はこっちにも出来るのよね?」

オレ
「なんかそんな事になっちまった」

ヨーコ
「きっと評判になるだろうなー」

オレ
「そうだといいけどな(笑)」

ヨーコ
「そうなってもヒロは東京でしょう?」

オレ
「少しはこっちへ居るじかんは増えるだろうけど、基本的には東京がベースだ」

ヨーコ
「そうよね」

オレは珈琲を飲みながら違和感を感じた。珈琲を飲み干してヨーコと一緒に店を出た。そしてヨーコの部屋へ行きセックスをした。

オレはヨーコを抱いて脚を絡ませていた。

ヨーコ
「留学・・・したいと思ってるの」

オレ
「裕也は?」

ヨーコ
「もちろん連れて行くわ」

オレ
「・・・」

ヨーコ
「ごめん。不満なんかこれっぽっちもないのよ!それどころかヒロにはいつも感謝してるわ」

オレ
「そんな事を思ったわけじゃないさ」

ヨーコ
「ヒロと一緒にシスコへ行ったでしょう?忘れられないの」

オレ
「誰に誘われているんだ?」

ヨーコ
「誰って?」

オレ
「・・・」

ヨーコ
「ヒロ。もしかして誤解してる?私とユーヤとふたりだけで行くつもりなのよ」

オレ
「そっか」

ヨーコ
「怒ってるんだ?」

オレは上半身を起こしてベッドヘッドに凭れた。そしてキャメルライトを咥えて火をつけた。

オレ
「サンフランシスコに行きたいのか?」

ヨーコ
「特にそこに拘ってるわけじゃないけど、西海岸がいいかなーって(笑)」

オレ
「ふむ」

ヨーコ
「実はその後の事なんか全然考えてなかったりするの」

オレ
「オッケーわかった(笑)ヨーコは何も考えなくていい」

ヨーコ
「そうはいかないわ」

オレ
「サンタモニカなら店がある。店自体は何もしないでも回ってる。そこのマネージャーと言う名目で行けばいい」

ヨーコ
「そこまでヒロに迷惑かけられない」

オレ
「オレの知らないところで動く方が迷惑だ」

ヨーコ
「でも、自分の力でなんとかしたいの」

オレ
「それは留学が終わってからにしろ(笑)それまではオレに甘えていればいい。余計な事を考えるなよ」

ヨーコ
「勝手な事ばっかり言ってごめん」

オレ
「玲子は・・・知ってるのか?」

ヨーコ
「ううん。未だ誰にも言ってない」

オレ
「良かった^^」

オレはキャメルをベッドサイドに置いてある灰皿で消した。

オレ
「どのくらい居ようと思ってるんだ?」

ヨーコ
「やっぱり最低1年、ううん2年かな?」

オレ
「じゃーユーヤの教育も向こうでしっかり考えないとダメだな」

ヨーコ
「うん」

オレ
「費用の事は一切心配するな!さっそく向こうで情報収集をさせる。当分は自分の学校とユーヤの学校生活だけを最優先に考えろ!何かあったら必ず現地のうちの者に相談するんだ。いいな?」

ヨーコ
「ヒロ。。。」

オレ
「淋しく・・・なるけどな」

オレはヨーコを抱きしめた。オレはわかっていた。ヨーコがこのまま囲われ女のような生活に満足しているわけがないと・・・オレとヨーコの関係はいつもそうだった。ヨーコはそうでないといけない。

オレはヨーコにきついセックスをした。そしてヨーコを泣かせた。苛めたかった。オレも・・・何処かへ行きたいと思った。


▼14時・・・芦屋六麓荘「自宅」


駐車場から階段をあがり玄関前に立った。そしてインターフォンを鳴らした。


「はい」

オレ
「オレ」


「はぁ〜いっ!」

玄関ドアが開きオレは招き入れられた。玲子の笑顔。オレたちは軽く抱擁をしてキスをした。そして居間に入った。庭に面したテラスの方にたった。すっかり大きくなった秋田犬のタローが尻尾を振ってこっちに走り寄ってきた。テラスのガラスに前足をかけてガリガリとやっていた。オレはそこを開けてタローと抱き合うようにしゃがんだ。オレの顔をペロペロと舐めまくりオレは逃げた。

オレ
「タロー。後で散歩行こうな^^」

オレはそう言ってテラスのガラス戸を閉めた。

玲子
「タローのはしゃぎ方であなたが帰ってきたのがすぐにわかったわ(笑)」

オレ
「やっぱり犬は敏感なんだな(笑)」

玲子
「不思議よねー?あんまりあなたと会わないのに、ちゃんと主人だと思ってるんだもの」

オレ
「ははは・・・(笑)」

玲子は冷たいウーロン茶を持ってソファの前のテーブルに置いた。そしてオレの隣に座った。

オレ
「その後どう?」

玲子
「向井さんとはすっかり家族づきあいをさせて頂いてるわ^^里奈ちゃんも元気よ」

オレ
「ジーさんは?」

玲子
「こちらがお邪魔した時にはいつも声をかけてくださるの。同居と言っても敷地内に別々に暮らしてるからうまくいってるようよ」

オレ
「そう。良かった(笑)」

オレはさっきヨーコと話し合った留学の件を玲子に知らせた。

玲子
「私、何かまずい事をしたかなー?」

オレ
「そうじゃないさ。ヨーコは玲子の事、大好きだって(笑)それにアイツは前からそんな風に過ごしたいと思ってたから」

玲子
「そう。もちろんユーイチはしっかりとバックアップするのよね?」

オレ
「ああ。ヨーコひとりなら知らん顔も出来るけど(笑)ユーヤが居るからな!一応万全を期す」

玲子
「ありがとう^^」

オレ
「ははは・・・さて、今年の夏休みは何処へ行こう?」

玲子
「連れて行ってくれるのねー?嬉しいなー^^」

オレ
「リクエストは?」

玲子
「オキナワ♪」

オレ
「あははは^^オッケー任せとけ(笑)」

きっとオレがレミとオキナワに行った事をもう知ってるんだ。それを話題にしないし、家族で行きたい場所として選ぶのもオレがオキナワに色んな思い入れがあるのを知っての事だろう。きっと自分自身でそこを体験したいのだろうと思った。

オレは寝室に玲子を誘って緩いセックスをした。そして一緒に風呂に入った。

夕方になって幼稚園に裕美を迎えに行きそのまま甲南小学校へ向って裕人を迎えに行った。ふたりを車の中で着替えさせて、ポートアイランドの遊園地へ行った。

オシャレな屋台が並びオレたちはそこで子供らと一緒に簡単に夕食代わりにした。そしてオレは裕美を抱いたままいくつかの乗り物に乗った。夕焼けが迫っていた。最後は家族4人で大きな観覧者に乗った。

暮れ行く神戸の町が一望できた。そしてオレたちは帰りに岡本の実家に立ち寄った。


「まーユーイチも一緒なんて珍しいわね?」

オレ
「ああ。遊園地の帰りなんだ」

裕人
「はい。おばーちゃんのおみやげ^^」

裕人は遊園地で買った綿菓子を渡した。オフクロは大げさに喜んで見せた。オレたちは奥の居間に行った。オレは車の中で眠ってしまった裕美を抱いたままテーブルの前に座った。

お袋が座布団を何枚か出してきた。オレはそこへ裕美を寝かせた。


「ユーイチあんたも仏壇に行っておいで」

オレ
「オレは仏教徒じゃないからいいよ」


「またそんな事言って・・・」

玲子
「最近は宮司さんだからそんな事ばっかりね(笑)」

玲子は家に入ってすぐに2階へあがり仏壇に手を合わせてきたようだ。そしてキッチンへ立ち、熱いお茶をいれて持ってきた。


「来年ぐらいには帰って来るんだって?」

玲子
「いいえおかーさま。芦屋に神社ができるから帰ってくる頻度が多少は多くなる程度なんですよ」


「ずっと芦屋で神主さんすればいいのに」

玲子
「この人は藤原の15代の宮司ですから、なかなかそういう訳には」


「東京は・・・遠いからねー」

オレ
「そんな事言わずに1度来いよ!温泉もあるんだから」


「まー温泉が恋しい季節になったら考えるわ」

オレ
「そーだな(笑)」

オレ達はお茶を飲んだ後、裕人が眠そうだったので帰る事にした。芦屋の自宅に戻りオレは裕美と裕人と一緒に風呂に入った。そしてそれぞれのその小さな体を確かめるように洗った。風呂を上がると玲子は子供らを寝かしつけた。そして居間に下りてきた。

オレは居間にタローを入れて、タローを撫でながら遊んでいた。

玲子
「ユーイチも犬が好きなのね」

オレ
「家には・・・ボスが居たからな」

玲子
「おかーさまに聞いたわ^^」

オレはタローを外に出した。名残惜しそうにまだテラスのガラス戸に前足をかけてガリガリやっていた。オレは静かにブラインドを閉じた。

玲子は新しいビールを持ってオレの隣に座った。そしてオレのグラスにビールを注いだ。

玲子
「おかーさま喜んでたわね^^」

オレ
「そーかー?」

玲子
「おかーさまは嬉しい事を嬉しそうにしないのよ!特にあなたの事は」

オレ
「よく知ってるな(笑)」

玲子
「でも、ほんとに来年が楽しみだわ^^」

オレ
「玲子はオレが宮司になった事を喜んでるのか?」

玲子
「うん。とっても嬉しい^^」

オレ
「そう(笑)」

玲子
「ユーイチは面白さを感じてない?」

オレ
「さーまだ始めたばかりだからな(笑)」

玲子
「でもあなたは昔から人助けはよくしてたわ^^その形が宮司ならいいと思うけどなー」

オレ
「人助けか(笑)」

玲子
「うん。でもあまり無理しないで、あなたが思うようにしてね!」

オレ
「(笑)」

神社の宮司。神の使徒・・・誰もが平和で穏やかなイメージを持つ。これまでが騒動の連続だっただけに、皆オレが宮司に納まってくれればいいと願っているようだだった。

オレは玲子と2階の寝室に上り、緩く長いセックスをした。そして玲子の乳で眠った。

▼翌日・・・

午前中に大下社長の自宅に顔を出しに行った。ヒロミ親父の病院にも行き、外へ誘って昼食を共にした。

そしてもう1度自宅に戻り、玲子とふたりで向井氏の自宅を訪問した。オレは別棟の向井氏の居室に入った。

オレ
「ご無沙汰しております」

向井祖父
「わざわざおいで頂きありがとうございます」

年配の女性が声をかけて入って来た。そして冷たい麦茶を置いて出て行った。オレは会釈だけで礼をした。

向井祖父
「一度龍斎さまにはゆっくりとお話を聞いてもらいたいと思っていたのです」

オレ
「そうですか」

向井祖父
「開かずの間の白骨・・・龍斎様はすべて理解なさっていたようですが、その理由までご存知なのでしょうか?」

オレ
「いえ。知りません。アレは巫女に教えてもらった事ですから」

向井祖父
「なんと!巫女さんが・・・」

オレ
「ええ。霊の言葉を聞いてオレに教えてくれました」

向井祖父
「そうだったのですか」

大きな和室。障子の向こうから明るい陽が射しているようだ。鳥の声が微かに聞こえる。眠くなるような昼下がりだった。

向井祖父
「私の子供は・・・4人居ます。その内、本当の子供は里奈の母親の逸美だけです」

オレ
「・・・」

向井祖父
「他の3人は、私の親父と私の前妻の間に生まれた子供です。そう言う意味では私とは兄弟です。

私は知らなかった。長い間、私の前妻は私の父の女になっていたのです。

その事実を知った時、私は愕然としました。父に対する怒り、前妻に対する怒り、それを子供が3人もできるまで知らなかった自分自身に対する怒り・・・

あの日、私は前妻を花隈の料亭に誘い詰問しました。前妻は泣いて謝りましたが・・・私は許せませんでした。許しを請う前妻を目の前に私は短銃を前妻に渡して自決を則しました。

前妻は胸に短銃を当てて・・・引き金を引きました。その時になって初めて後悔して前妻を抱えて病院へ連れて行こうとしましたが・・・空襲警報が鳴り始めて、運転手の沢井が前妻を抱えて車に乗せ3人で病院へ急ごうとしましたが・・・大火災が発生してそれを避けながら山の方に逃げるのが精一杯でした。

その間に前妻は息を引き取りました。神戸の街が燃えていました。

明け方近くに三条の自宅に戻り、開かずの間の床下に沢井とふたりで埋めました。

前妻は神戸の料亭から逃げる最中に生き別れとなった。と言う事で届けて死亡が認められました。父はその翌年に亡くなりましたが、何もそれらの事には触れないままでした。

そして翌年。私は後妻を娶りましたが、子供は出来ませんでした。

あれから40年・・・数年前に嫁に先立たれ、里奈があんな事になるまで、死に追いやった罪を感じながらも私はずっと前妻を許していませんでした。

今回、藤原神社を建立していただけることになって、ようやくひとつの区切りがついたような気がします。」

オレ
「そうでしたか」

向井祖父
「私ももうそんなに長くは無理でしょう。後の事なんですが・・・娘の逸美に託そうと思ってます。出来れば逸美が男子を産んでくれればいいのですが・・・

龍斎宮司。私が後継を逸美にすれば、前妻の3人の子供らは必ず反対して騒動が起こるでしょう。

逸美の後見をお願いできませんか?」

オレ
「どうしても逸美さんでないとダメなんですか?」

向井祖父
「父に何も言えなかった自分が許せない思いと、父の思い通りには絶対にしないと思う気持ちは今もって消えません。

向井の代は逸美、そしてその子供に継がせたいのです」

向井祖父はオレを正面から見て頭を下げた。ここにも戦後が残っている。いや、その凄まじいばかりの思いは、今もって解消していない。オレは障子の向こうの景色を想像した。

オレ
「私に出来る事なんてたかたかお祓いをする事ぐらいですよ!」

向井祖父
「どうかよろしくお願い申し上げます」

オレは立ち上がって向井祖父の別棟から向井夫妻の居る家に入った。リビングに通されると、向井父が居た。オレの来訪を聞いて急遽戻ってきたらしい。

向井父
「龍斎さま。川越では大変お世話になりありがとうございました」

向井母
「芦屋にも温泉が出たそうで、これからは芦屋藤原神社でもあのような施設ができるそうで今から楽しみにしてるんですよ」

オレ
「ははは・・・川越はいい街ですからまたいつか是非来て下さい。芦屋も急いでますけど、まだまだ時間がかかりそうですから」

玲子
「どんな神社ができるのか私たちも楽しみなんですよ(笑)」

話は子供達の夏休みの話題になった。そして玲子がオキナワに家族旅行を計画している事を話すと向井夫妻も同じようにオキナワに行きたいと言い出した。そして出来れば2家族でオキナワ旅行をしようと言う事になってしまった。玲子もすっかりその気になって、オレは仕方なく賛成した。


■7月25日・・・12時「赤坂自宅」


梅雨が明けて、日本の夏がやってきた。都市部はヒートアイランド現象で、その暑さは異常とも思えたが、街はいつもと変わらず動いていた。

横山
「じゃーオキナワを止めてグァムですか!」

オレ
「うん。その方が受け入れ態勢が整うようだ」

松井
「国際興業所有のホテルですよね?」

オレ
「そうだ。団体での慰安旅行は断念して、グアム島5泊6日のペアチケットにする」

横山
「それってムトー商会グループの全従業員にですか?」

オレ
「そうだ(笑)」

松井
「もしかして・・・オレたちもですか?(笑)」

オレ
「全員だ(笑)」

横山
「ありがとうございます^^さてと誰と行こうかなー?」

オレ
「たぶんオレは8月中はグアム・サイパンに行きっぱなしになりそうだ」

松井
「東京、大阪から3時間ちょっとですよね!」

オレ
「うん。オキナワへ行くとのあまり変わらない」

松井
「ムーさんは前野さんたちと向こうで何かやるわけですか?」

オレ
「何でも取り残されている遺骨収集をやるから、神官として一緒に来てくれって事になった」

横山
「この間の前野さんの話ですね?」

オレ
「うん。グアムに行った後、サイパン、テニアンなど北マリアナ諸島の調査に行くらしい」

横山
「でもそういうのって国がやるんじゃないんですか?」

オレ
「厚生省も何度かやってるそうだが、範囲が広すぎて間に合ってないそうだ。どうもその辺りの真意はよくわからない」

松井
「じゃー巫女も必要ですよね?」

横山
「誰を?」

オレ
「んーーー今回は誰がいい?」

松井
「香さん。どうでしょう?」

横山
「泳ぎも出来てるしいいんじゃないですか?」

オレ
「そうだな」

松井
「警備はオレがついて行きたいところですが、うるさいやつが居るので今回は譲ります」

オレ
「あははは^^田川か?いいだろう(笑)」

横山
「じゃーオレは佐和子さんが帰ってきたら斉藤さんとMaggieの方を集中的にやります。」

オレ
「よろしく頼む^^」

オレたちは櫻井の弁当を出前してもらってそれを食いながら、打ち合わせを続けた。オレは秋の例大祭に向けたいくつかの準備を松井に指示した。雅楽に合わせた演舞をオリジナルでつくる件や新しい衣装など・・・来月は、完全に夏休みでオレはこっちで仕事をしない。玲子にも夏の旅行をオキナワからグアムに変更することを早く知らせようと思った。

そして彼らは食事が終わるとそれぞれの仕事に戻って行った。

オレは午後から前から約束して延び延びになっていた「芝居」を余と一緒に観に行った。


▼22時・・・新宿「アダムス」


大内
「どうだった?蜷川演出は?」

オレ
「ん?あー良かったよ」


「ヒロはほどんど居眠りしてたわ(笑)」

大内
「なんだよ!良くなかったのか(笑)」


「ううん。良かったと思う」

オレは国産のウイスキーの水割りを飲んでいた。そしてこのBarには全く似合わない格好だった。

大内
「なーヒロ。お前、NYUの演劇学科首席卒業だろう?本格的に役者やれよー」


「ヒロはミュージシャンだから・・・難しいのかも」

オレ
「それ以前にオレは映像学科たぜ(笑)」

大内
「うむ。そうらしいなそれはそれでいいじゃないか?プロの役者としてお前ならいつでも看板になれるさ

それから、演出やってもいいじゃないか?」

オレ
「ははは(笑)

なるほど板の上の演技は全身で表現できる。そしてそのライブ感は音楽に匹敵する。ましてや一人じゃないから、やり直しが利かない。役者として考えるなら面白いさ(笑)」


「じゃー何故躊躇してるの?」

オレ
「オレ飽きっぽいし、すぐに余所見するから(笑)」

大内
「何か他の事を狙っているのか?」


「全然わからない」

オレ
「六本木行こうぜ!(笑)」

オレは腰を上げた。オレは新宿が好きではなかった。どこか集まってくる人間に明るさがない。熱く議論するのもいいし掴みあいも面白いさ。だけどいつまでも70年代をいや60年代を引きずった白けたムードにオレは胡散臭さを感じてしまう。


▼23時・・・Maggie's Bar


大内
「こいつらは芸術、いや舞台に関心がないんだろうな?」


「それより楽しい事いっぱいあるから、あえてそこに目を向けないだけよ」

オレ
「ん?ここの客の事を言ってるのか?(笑)」

大内
「まさに金がすべての世の中だからからな」


「ううん。そうじゃない人間もいっぱいいるわ」

オレはジン・トニックを口にした。彼らの注文も聞かずにオレは同じものをオーダーしていた。

オレ
「オレを口説くより現役のプロをもっと誘えよ!これから伸びそうな連中をもっと引き込め!」

大内
「・・・」


「色々所属事務所のからみとかがあってね難しいのよ」

オレ
「どうせハンパなギャラしか貰ってないんだろう?コレは!と思うやつがいたら口説いてみろよ!その気にさせたら、後の事は斉藤がなんとかしてくれるから」

大内
「斉藤?無理だよ。なんだかんだ言っても芸能の世界にはダーティーな部分もあるからな」


「それに大手のプロダクションは媒体とも癒着してるし、すぐに干されるわ」

オレ
「なんだ。最初から諦めてるのか?(笑)」

大内
「現実的な話をしてるだけだ」

オレ
「オレも現実的な話をしてるつもりだぜ^^」


「もしかして・・・ヒロが?」

大内
「ん?なんだ?」


「この間もT電機の広報部に行った時にも何か変だったのよね。斉藤さんも戸惑ってるようだったし・・・変な事も言ってたわ」

大内
「その先を早く言えよ」

オレ
「さーオレは知らない。」


「なんの実績もない劇団の旗揚げ公演に2000万も出してくれるわけないでしょう?」

大内
「だから、その先を言えって!」


「斉藤さんは、はっきり言わなかったけど、きっとヒロの仕掛けなんでしょう?」

大内
「・・・どういう仕掛けだったんだ?」

オレ
「最初に言ってるだろう?オレは知らないって」

大内
「詮索するな!って事か」


「プロをもっと集める。やればいいのね?」

オレ
「そうだな(笑)ベニサン・スタジオよりもいい所を探すように斉藤に頼んでおくよ!じゃーおやすみ♪」

オレはジン・トニックを飲み干した。そして席を立ち先に店を出た。

最初からわかってた。オレは舞台やTVに興味はない。本気でやるとしたら・・・映画しかないと思っていた。資金を集めて配給会社と組んで映画をやる。それにはもう少し時間がかかる。

銀座のクラブ「皐月」へ寄り麻美を拾って彼女の部屋へ行った。オレは朝まで麻美と一緒に居た。


▼翌日9時・・・赤坂「自宅」


美香
「おはようございます^^」

オレ
「おう^^あれ?来てたのか!いつ?」

美香
「昨日の夜です」

オレ
「そっか(笑)」

オレは美香と軽く抱擁を交わして居間に入った。大きなテーブルの前に座るとすぐに純子が珈琲を持ってきてくれた。

純子
「おはようございます」

オレ
「ありがとう^^」

美香
「ねームーさん。8月一杯グアムに滞在するんですか?」

オレ
「ははは^^半分は仕事なんだけどな」

美香
「私はどうすればいいんでしょうか?」

オレ
「5泊6日のグアム・ツアーチケットをあげるよ(笑)」

美香
「仕事は手伝わなくていいんですかー?」

オレ
「今回は香にやってもらおうと思ってる」

美香
「香さん元々の潜在能力が高いんでしょうね。「相談」を受けながらメキメキと力をつけてきましたよー^^」

オレ
「そう^^でも今回はそれが必要な案件でもないようだから」

純子
「それにしてもそういう人間が3人も集まるなんて、信じられない!」

美香
「ほんと(笑)この間までひとりで悩んでいた事がうそみたいだわ」

純子
「小林先生もフォローして下さるし、すごく楽になってきた」

オレ
「その小林教授だけど、こんど「超・心理学研究所」を始めるらしい」

美香
「それは何です?」

オレ
「どうやら前野さんの薦めらしいけど、大学をやめて自由に研究するために独立するそうだ」

純子
「超・心理学・・・面白そうね^^」

美香
「なんだか心強いわ^^」

オレ
「そっか(笑)」

美香にはこれまで北浦さんがついていたが、彼が居なくなってからそういう意味ではちょっと不安だったのかも知れない。純子は弱音をはかないがS会の石本会長との関係も切れて、徐々に明るくなってきたようだった。


▼11時・・・南青山クォーリーマンション・オフィス


オレ
「お帰りー^^」

佐和子
「ただいま戻りました^^」

オレは佐和子と軽く抱擁をかわして半年振りに佐和子の匂いを嗅いだ。そして大きなテーブルの前に座った。

佐和子
「ヒロミちゃん達もParis市内のアパートメントで問題なく暮らしてますよ」

オレ
「そう^^元気でやってるのなら何よりだ(笑)」

佐和子
「もちろんジョエルも元気よ」

横山
「パリコレにはムーさんも行くんでしょう?」

オレ
「そうだな。一応NYとParisには行こうと思ってるけどな!秋の例大祭もあるしゆっくりはできないが」

横山
「Parisはスタッフも充実してきましたし、もう大丈夫でしょう?」

佐和子
「そうね。現地スタッフもそうだけど、向こうで日本人スタッフもスカウト出来たしそういう意味では充実してるわ」

オレ
「さすが佐和子だな^^」

オレは佐和子と一緒にオフィスを出た。そして桜井の「はなれ」に行ってふたりで昼食を摂った。

佐和子
「ひさしぶりの「桜井」のお弁当^^やっぱり美味しい」

オレ
「向こうにも和食はあるだろう?」

佐和子
「中途半端なものはいっぱいあるわ(笑)」

オレ
「そっか(笑)」

廊下から声がかかり仲居が珈琲を持ってきた。佐和子はそれを受け取り、オレの珈琲にフレッシュミルクを入れて、オレの前に置いた。

佐和子
「ピエール氏の事何か聞いてる?」

オレ
「いや何も」

佐和子
「そう。実は幽霊屋敷、いえお城を買ったらしいのよ!面白がってそこでパーティーをしたらしいんだけど・・・ひとり心臓麻痺で亡くなって、ふたりはよほど怖い思いをしたのかショックで今も病院通いしているらしいの。そしてピエール氏自身も体調が悪くて入退院を繰り返しているみたいなのよ」

オレ
「それは初耳だ。ショーコは?」

佐和子
「彼女は全然大丈夫みたいよ!それで、ユーイチが宮司になって、小さな女の子の悪霊を取り払った話をしたら・・・考え込んでいたわ」

オレ
「考え込む?」

佐和子
「そうよ」

オレ
「何かあったら電話してくるはずだから・・・もしかしたら、ピエール氏はそれとは関係ない病気かも知れないな」

佐和子
「私は・・・どうも関係あるんじゃないかと思うの!何の根拠もないただの勘みたいなものなんだけど」

オレ
「ふーーーん」

佐和子
「パーティーをしてそのお城に泊まって、たまたま偶然に心臓麻痺でひとり亡くなった。もともと精神状態の不安定な人が通院している。ピエール氏は持病が悪化した。「幽霊屋敷」なんて有り得ないと思えば、そうなんだけど」

オレ
「佐和子は違うと思ってるんだな?」

佐和子
「このままもしもピエール氏が亡くなれば・・・遺産はすべてマダム・ショーコさんのものでしょう?」

オレ
「佐和子・・・」

佐和子
「これは私が思ってるんじゃなくて、ピエール氏の他の女や親族からそう思われてるって事なのよ」

オレ
「・・・」

佐和子
「もっとも向こうでも「悪霊払い」って言うのはあるみたいなんだけど、もうそのお城は誰も使わないから、それが行われて危険が去ったのかどうかはわからないようだけど

仮にあなたがそれを行えば、ピエール氏が本当によくなるのならいいんだけど、良くならなければ、ショーコさんの立場が悪くなるかも知れないわ」

オレ
「だからオレに連絡してこない?」

佐和子
「私はそう思う」

オレは目の前のテーブルの上にある珈琲カップを持って、珈琲を口にした。

オレ
「それで佐和子はどう思うんだ?」

佐和子
「あなたが行けば・・・解決すると思う」

オレ
「しょーがねーな(笑)」

佐和子
「はい^^」

オレは佐和子を奥の部屋に誘って、半年振りに佐和子を抱いた。そして一緒に風呂に入った。


▼18時・・・銀座クラブ「アルファー」


宮内
「前野さんから聞きましたけどグアムでしょう?その前にパリへ行くんですか?」

オレ
「ええ。向こうでちょっと困った事態になってるようなんでご機嫌伺いに(笑)」

美咲
「ショーコさんの依頼?」

オレ
「依頼じゃないんだけどね。ちょっとおせっかいをしに行く」

麻美
「ショーコさんってこの間のフランス人大富豪の奥様でしょう?」

美咲
「それに世界的なチェリストよ^^ユーちゃんの大学の先輩で従姉なんですって」

麻美
「そうなんだ。従姉なんだ?^^」

美咲
「麻美。何安心してるの?(笑)」

オレはブランデーの水割りを口にした。そう言えば美咲はピエールとショーコがこっちに来た時に一緒にパリに行ってる。ショーコはオレとの関係を口外するはずがないが、もしかしたら美咲は女の勘で気付いているかも知れない。

オレ
「とりあえず藤原のメンバーで行く事になった」

麻美
「誰が行くのかしら?」

オレ
「巫女は美香に高瀬、随身は田川。その4人で行ってくる」

宮内
「若手ばかりですね?(笑)」

オレ
「海外の経験も積んだ方がいいだろうと思って(笑)」

美咲
「佐和子さんも行くんでしょう?」

オレ
「いや、帰ってきたばかりだから暫く日本でゆっくりしてもらうと思って」

美咲
「じゃー向こうでのサポートは三浦さんなんだ?」

オレ
「そーだな(笑)」

麻美
「美咲はよく知ってるのねー?」

美咲
「そりゃー向こうではずいぶんお世話になったもの^^ユーちゃんの事も色々と教えてもらったし(笑)」

麻美
「色々って?」

美咲
「秘密(笑)」

麻美
「もうっ!(ーー;)」

浜田が店に入って来て前に行った。そしてギターとアンプをセットしながらオレが居る事に気付くとちょっと戸惑ったような表情をした。そして、彼は1曲だけ歌い。客のリクエストをこなし出した。

美咲
「ユーちゃんが居ると歌いにくいみたいね(笑)」

オレ
「いつもはもっと歌うのかな?」

美咲
「3曲ぐらいは歌うわ」

オレ
「へー聞いてみたいもんだ(笑)」

麻美
「当然ユーちゃんも歌ってくれるんでしょう?^^」

宮内
「ひさびさに聞けるなー^^」

オレ
「ははは・・・」

オレは仕方なく前に出で浜田と一緒に2曲やった。そしてそのまま麻美と一緒に彼女の部屋に行った。リビングのソファに座った。麻美は冷たいビールを持ってオレの隣に座った。

麻美
「パリは何だか楽しそうね?」

オレ
「ははは(笑)パリに馴染みのある美咲が言うからそう聞こえるんだ。オレ自身パリで暮らした事もないからよくわからない」

麻美
「そうなの?」

オレ
「オレはパリよりニューヨークの方が好きだ(笑)」

麻美
「どっちも行った事ない」

オレ
「NYコレクションの前に・・・行くか?」

麻美
「もしかして連れて行ってくれるの?^^」

オレ
「うん。一緒に行こう」

麻美
「嬉しいー^^」

麻美は抱きついてきた。オレはキスをした。麻美の舌に自分の舌をからませて舌を吸った。麻美はまだ和服のままだった。東京の下町育ち、チャキチャキの江戸っ子だった。単純明快な性格。オレは難しい相手よりもわかりやすい相手が好きだった。

麻美とはまだふたりで旅行に行った事がない。きっとそういう事を言いたかったのだろう。

世間の景気はいい。公定歩合が戦後最低水準になり、株価は2万5千円を超えた。金が余って投機に走り地価は高騰しつづけている。ゴッホの「ひまわり」を53億で落札するバカな日本企業まで現れる始末だ。

何もかもが金の世の中になってきた。オレは大内や余の事を考えた。そんな時勢に逆らうように「舞台演劇」に夢を膨らませるヤツは居ない。

オレはパリのショーコの事を気にしながら麻美を抱いて寝た。


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