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優しく歌って


Roberta Flack「Killing Me Softly With His Song 」

1973年日本でも大ヒットしました。確か高校の時にでした。学校へ行かずにずっと喫茶店でバイトしていた頃・・・有線でよくこれがかかっていました。

という事でYou Tubeのデザイン変わった?そういやGmailも新しいデザインを試せとかなんとか言ってたな?
1988年5月----------------------

5月15日・・・川越藤原「宮司室」

廊下から田崎の声がかかり客を案内してきた。オレは立ち上がって迎えた。

前野
「お邪魔します^^あ大宮司、よく陽焼けしておられますねー(笑)」

オレ
「あはっ神社は連休も関係ないのに、私は世間並みに海で遊びほうけてました(笑)」

田崎はオレの正面に座布団を用意した。前野氏は田崎に礼を言って座った。そしてオレも座った。田崎はお茶の用意をしてから部屋を出て行った。

前野
「早速ですが、ドイツは龍斉さまお一人だけで行かれると聞きましたが・・・大丈夫でしょうか?せめて随身を1人でも連れて行かれてはどうでしょう?」

オレ
「いえ。ひとりの方が動きやすいですから・・・それに今回は非公式な形ですし、先方もその方が対処しやすいでしょう^^」

前野
「やっぱり美香さんが居ないとこういう時に問題ですねー」

オレ
「どうしてです?」

前野
「いや龍斉さまは、危険な状況ではいつも美香さんを同伴させていましたから・・・それなりの経験と力があったんだろうと、やっぱり美香さん以外は無理なんでしょうね?」

オレ
「いえ、そういう問題でもないのですが・・・ただ今回は特に危険もありませんし、機密事項の方が多いでしょうからひとりで行きます」

前野
「そうですか。わかりました。ではお気をつけて行って来て下さい」

そう言って前野さんは立ち上がり部屋を出て行った。何か他に話があったはずだが・・・急ぎの話ではなかったようだ。

入れ替わるように廊下から声がかかり、宮内さんが入って来た。

宮内
「龍斉大宮司。お疲れさまでございます」

オレ
「あははは(笑)宮内さん固い言い方は勘弁して下さいよ」

宮内
「いえ、ついそういうお姿ですと、気軽には声をかけづらいフインキが漂ってますから^^」

オレ
「まさかー(笑)銀座のクラブで飲んでるとの変わりませんよ」

宮内
「ははは^^そういう笑顔は一緒なんですが、黙って人の話を聞いていらっしゃる時なんかは、こうなんていうか、威厳があって圧倒されますよ!これは私だけじゃなくて皆さんそうおっしゃってますよ」

オレ
「そうですかー?ちょっとカッコつけてるだけです(笑)」

宮内
「ところでちょっと小耳にはさんだんですが、パリの次はニューヨークに藤原を開社する予定だと聞きましたが、いつ頃の予定なんでしょうか?」

オレ
「えっニューヨークにですか?私は聞いてませんよ」

宮内
「ふむ。やはりそうですか」

オレ
「どういう事でしょう?」

宮内
「実は、巫女に私も同様の事を聞かれたので、誰がそんな事を行って居るのか訪ねたら・・・美樹さんだと!それで直接美樹さんに訪ねたら、私はそんな事知らないと言われまして、どうしたものかと・・・」

オレ
「他にも何かありましたか?」

宮内
「美樹さんは常に、新しい藤原は・・・と言う言い方で、巫女たちに何かと龍斉さまの言う事を聞いて巫女が頑張らなければならない。と言うような事を言ってるようなんです。もっともそれ自体は悪い事ではなくて、むしろいい事なんですが、少し先鋭的なところがあるようで、どうなのか?と」

オレ
「そうですか。美樹も頑張ってるというのは、耳にしててこの間久しぶりに話をしましたが、そういうような事は一切私との間ではありませんでした。

もしこれ以上何かあるようならすぐに教えて下さい。よく話し合ってみますから」

宮内
「あっいや、私の取り越し苦労かもしれませんし、あまりに気になさらないで下さい。龍斉さまには現実にこれからドイツなどでもお忙しいのに、申し訳ありませんでした。」

オレ
「いえ。普段は飲んだくれてヒマなんですから^^そうだ!今度久しぶりに銀座へ一緒に行きましょうよ!」

宮内
「あははは^^いいですねー楽しみにいています(笑)では、私はこれで^^」

宮内さんは一礼して下がり部屋を出て行った。

15代藤原龍斉から初代大宮司、龍斉になってからの大きな変化がこれだった。それまで親しかった人達が妙に遠慮した話し方に変わった。もっともそれまでの利害を伴わないただの友人関係から、藤原神社へ正式に入った事でなんらかのけじめみたいなものを考えてそうなったのかも知れないが・・・

オレは入り口脇の内線電話で社務所に連絡を入れて、美樹の手が空いているようならこっちへ来てもらうように頼んだ。

背中が痒かった。この連休はグアムに釘付けになった。4月の末からほぼ2泊3日づつで、玲子、裕人、裕美それからキョーコ、裕子、裕蔵、そして下條アキラと過ごした。金沢のひとみと裕美も誘ったが、連休中はやはり本業の金沢の旅館が忙しいので出にくいと言う理由で連休が終わってから別途家族旅行をする事にした。

それぞれがオレの家族だった。どの子供も可愛かった。血の繋がっていない裕子でさえ、オレの事を慕ってくれる。きっとあまり会っていないひとみのところの裕美もそうあってくれるだろう。それはその母親になった女のオレに対する気遣いの表れだとオレは思っていた。

廊下から声がかかり美樹が入って来た。入るとすぐにそこに座って手をつき挨拶をした。さっき田崎がしたように・・・オレはテーブルの前を奨めた。美樹は立ち上がりそこへ座った。

オレ
「今年は連休も忙しかったようで、大変だっただろう?お疲れさん^^」

美樹
「いえ、あのくらい大した事ありません」

オレ
「ははは^^気合いが入ってるな!」

美樹
「あっお茶をお取り替えします」

そう言って美樹はキッチンへ行ってすぐに戻って来た。皿に載せたグラスをオレの前に置いた。冷たい茶が入っている。そしてテーブルの上の空の茶碗を片付けた。

オレ
「ありがとう」

美樹
「龍斉さまがドイツに行かれると聞きました」

オレ
「うん。個人的にちょっと呼ばれてな」

美樹
「研究所のお仕事でしょうか?」

オレ
「それもあるけどな、2月に行った時にドイツに興味を持って^^」

美樹
「そうですか。ドイツにもいつか藤原が出来るのでしょうか?」

オレ
「ははは^^それこそ遠いいつか、そんな風になるかも知れないな」

美樹
「龍斉さま。この間のお願いをどうかそれまでにお願いしたいのですが・・・」

オレ
「この間の・・・」

忘れていたわけではない。そして会えばその話になるだろうと思ってもいた。それでも宮内氏の懸念が気になって美樹を呼んだのだが・・・

美樹
「どうか、私を目覚めさせて下さい。お願いします」

オレ
「うん。その事は小林先生とも何度か話し合った。実はドイツに行くのもそれと関係があって、向こうの研究を体験して来る事も一つの目的なんだ。それを踏まえた上で効果的な方法を考えようと思う」

美樹
「・・・ありがとうございます。でも、私は龍斉さまにしてもらう事が一番の解決方法だと思ってます。いえ、確信があります。それでダメだったら他のどんな方法でもダメだろうと思ってます」

オレ
「んーそんな事はないと思うけどなー?焦らずに色々とやってみよう」

美樹
「はい。そうですね」

オレ
「そう言えば、ずいぶん巫女が増えたようだけど、何人ぐらい居るんだ?」

美樹
「はい。常勤の巫女は12人です。神事がある時はもう10人程お手伝いと言う形で入って来ます」

オレ
「そう。たくさん居るんだな」

美樹
「9月には赤坂も開社の予定ですし、それまでにしっかりと研修をして新しい藤原の巫女になってもらわなければと、思いますから」

オレ
「新しい藤原か・・・」

美樹
「はい。龍斉大宮司が築く『藤原』です」

オレ
「それはどんなモノなんだろうな^^」

美樹
「龍斉さまのお力を分けてもらって、巫女たちが氏子や崇敬者さんたちの悩みや病苦を少しでも和らげ、或は助けて、社会に貢献する事です」

オレ
「そう。それは美樹が考えている事なのか?」

美樹
「はい」

オレ
「宮司や神職の人たちも、日々そう願っているだろう。たぶんオレの数倍もその為に頑張っていると思うけどな」

美樹
「これまでの藤原神社の宮司や神職の方々は・・・願ってるだけでした。現実にそれを行って来たのは、代々の美湖姫でした。

でも新しい「藤原」は違います。言い伝え通り、本当の龍が舞い降りてきて藤原を助けてくれたのです。そして新しい藤原に変わったのです。

これからは巫女がもっと力を得て、新しい藤原の為に尽くさなければならないんです」

オレ
「そっか。でも他の巫女たちはそんな風に思っていないだろう?」

美樹
「いえ、徐々にそう言う思いの強い巫女たちが増えて来て頑張ってます」

オレ
「例えばどんな風に頑張っているんだ?」

美樹
「今はまだ礼儀作法を最初から習っているところですが・・・」

オレ
「ほーそれはいい事じゃないか!それで一体誰に習ってるんだ?」

美樹
「婦人会の会長の高瀬さんです」

オレ
「そうだったんだ。今後会ったらオレからもお礼を言っておくよ」

美樹
「はい。ありがとうございます」

オレ
「じゃーオレはちょっと研修センターの方へ行ってくる」

美樹
「はい。行ってらっしゃいませ^^」

オレは先に部屋を出た。宮司室から直接外に出る玄関を使って、狩衣のまま草履を履いて出た。

美樹の応え・・・「巫女が力を分けてもらって」「巫女がもっと力を得て」それは超・心理学研究所へ通う美樹の口から出たと言う事は、小林先生の意思がそこにあるからだろう。そして、高瀬婦人が巫女の礼儀作法からなにがしかの教育を始めているようだ。

そして「新しい藤原」この表現自体オレはあまり使っていない。それが広まっている事実の裏にオレは奇妙な不安感を持った。

気合いの籠った声、竹刀の弾ける音が風に乗って聞こえて来た。道場の脇を通り新しく出来た「研修センター」に立ち寄った。

入ってすぐの受付のようなところには、警備の人間がいた。オレの姿を見て立ち上がり姿勢を正して挨拶した。

オレ
「お疲れっ^^」


「お疲れさまですっ!すぐに田川主任を及びしますので、どうぞこちらへ」

オレ
「ははは^^大丈夫ひとりでウロウロして見学させてもらうから」


「いえ、ただ今すぐにっ!」

男はそう言って慌てて受話器を持って連絡をしようとしていた。オレは中へ入り廊下を歩き最初に目に入った部屋の引き戸を開けて入ってみた。そこは会議室のように長い机が並べられ、右手にスタンド式の大きなホワイトボードがあった。オレは正面の窓際に行きそこから外を眺めた。道場との間にはゆったりとしたスペースがあり、花壇の造作がされていた。

田川
「ムーさん^^」

オレ
「おう^^道場はいつもこんなに活気があるのか?」

田川
「ええ、このところずっとN警備保障の連中が研修を受けに来てますから(笑)」

オレ
「そっか(笑)大変だな」

田川
「ムーさん。隣へ行きましょう^^食堂になってますから、今なら珈琲ぐらいは用意できますから」

オレ
「そっか(笑)」

オレは田川と一緒に隣の食堂へ入った。明るい色彩でデザインされた食堂はカフェテリア形式の食堂だった。田川は珈琲マシーンから珈琲を入れて持って来た。

田川
「エスプレッソタイプですけど、なかなかいけますよ^^」

田川はオレの正面に座って、テーブルの上に珈琲カップを置いた。オレは小さなカップタイプのフレッシュを開けて珈琲に入れた。そしてスプーンを使った。

オレ
「とても神社の中にある食堂とは思えないな(笑)」

田川
「はい^^神社の警備が仕事で、ここはオレたちのアパート!mar'sBLGみたいな気分ですよ(笑)」

オレ
「あははは^^mar'sBLGかー(笑)」

オレは珈琲を口にした。オレはやっぱりこいつらと話をするのが一番楽しかった。

オレ
「ニューヨークもいい季節だろうなー」

田川
「はい。きっとセントラル・パークはもう気の早いニューヨーカーは上半身裸で走ったり、日光浴してるはずですよ^^」

オレ
「田川。本当は帰りたいんじゃないか?(笑)」

田川
「あははは^^たまにそんな気になる時はありますけどね!それよりきっと面白い事をまたムーさんが始めるでしょうから、オレはその時の為に鍛えておきますよ(笑)」

オレ
「面白い事・・・うん。楽しみにしておけ!(笑)」

田川とふたりでメシを食いに出かけ、なんとなく入った鮨屋でふいに鮨屋をやろうと思った。その店の大将に3ヶ月で鮨職人になりたいと言って怒られた。すったもんだの末に田川が自分から鮨屋へ修行に行く事を決めた。そしてオレたちはなんの脈絡もないままニューヨークへ移り住んだ。オレは3年、田川は5年、ニューヨークに居た。田川はオレより3歳年下だが、今ではすっかり兄弟、友人のような関係になっていた。

その後、建物内をひととおり案内してもらってオレは竹林の奥にある遠山の工房に向かった。

ここも人が増えた。それに伴って新しい建物も建ち、独自のコミュニティーを築いていた。もっとも田川とはずっとニューヨークで一緒だった事もあり、すこぶる関係はいい。遠山はここへ来てからやはりその影響もあり、「大物」の作風に大胆なデザインを取り入れて、新しい挑戦を始めていた。

それぞれがニューヨークで共に暮らし、ニューヨークで共に楽しみ、共に学んだ。それに替わる次の「面白い事」オレ自身もまたそれを探していた。

オレは一旦宮司室に戻り、露天風呂に入ってからジーンズとシャツに着替えた。そしてあらためて研修センターの食堂に行き、警備の連中と一緒にそこで夕食を摂った。オレはご機嫌だった。

その後、場所を変えて酒を飲んだ。圧倒的に若い連中にニューヨークの話や珍事件の話、そして特警を使った逮捕術や合気の型などを実際に体を使ってそれぞれが得意なモノを披露した。爆笑が絶えずオレは最高に気持ちが良かった。

▼24時・・・宮司室

すっかり酔っぱらってオレは部屋に戻って来た。田川と若い奴ら数人が散歩だと言いながら、オレに着いて来た。警備のつもりだったんだろう。オレは彼らを宮司室に入れもう少し飲みたかったが、彼らは神殿のある建物で騒ぐ事を遠慮したようで、すぐにセンターに戻って行った

オレは仕方なく喉の渇きを癒す程度のビールを飲み、素っ裸になってベッドに入った。すぐに眠りについた。

鍵の音、人の気配。女の匂い。オレはすぐに誰が入って来たかわかった。女はオレが眠る奥の部屋に静かに入って来た。衣擦れの音、どうやら女は着ているモノを脱いだようだ。そしてベッドに入って来た。オレの体に半分被さるように女の体がくっついてきた。女はオレの乳首のあたりにキスをして、オレの股間を指で弄った。オレのモノはすぐに大きくなって喜んでいた。

女な体を下にずらし始めた。毛布を取り去りオレのモノをいきなり口にした。先端部分を口に含み動いていた。オレのモノは与えられる快感に怒り出し、大きく膨らんでいった。女の体が動いていた。

次の瞬間、女の口がオレのモノから離れたと思ったら、よりきつい刺激的な快感が間髪入れずにやってきた。女がオレの体に乗って、その股間でオレのモノを銜えていた。


「うぁーーー」

女は声を上げて何度かオレのモノを出し入れしようとしたが、手をオレの肩の横についた。


「あー龍斉さま。お願いです」

「あーーー可愛がって下さい」

美樹は切なさそうに切れ切れに声を出してそう言った。オレはそのままの姿勢で美樹の両太ももを引き上げた。そして腰のしたあたりを両手で持って美樹の体を動かした。


「あぅ あーーー」

「龍斉さまー」

「うぅぅぅ」

オレは手を動かしながら激しく腰を使った。美樹の声がそれに伴い大きく、甲高く鳴き声のように変わっていった。


「うっ うわーーーあーーーあーーー」

強烈な穴の締め付けの後、穴の奥が少しだけ弛み熱いモノを溢れ出させた。美樹はいった。

オレは美樹の体を降ろした。そして四つ這いにさせた。美樹の腰を持ち尻に乗るようにしてオレは無造作に美樹の女の穴に突き立てた。


「あぅー」

オレは自分のモノを穴の奥深くまで一杯に入れた。美樹は痛がらなかった。そして一杯突っ込んだまま美樹の腰を上下に動かしながら、腰を使った。オレのモノは美樹の穴の奥を突き始めた。


「あゎゎゎ あゎゎゎ あゎゎゎ」

美樹は言葉にならない声を上げ始めた。経験の少ない若い体。まだ出産もした事のない女の穴。玲子や理恵でも狂う強烈な快楽を、その体に今与えようとしている。失神、いや脳の中の細胞が沸騰するかも知れない。

オレはそのまま責め続けた。


「うおおおお ぐああああ あああああ」

美樹は頭を上に突き出すように咆哮しいき続けた。立て続けにいっているようだった。オレは美樹の尻から自分のモノを抜いて、その体をベッドに放り投げるようにした。


「うぁーあーーー」

美樹はまだ腰を動かして快楽に翻弄されていた。脳に突き刺さった快楽の矢は抜けずに股間から全身に広がり駆け回っている快感に耐えられないようだった。

オレはそれを注意深く見ていた。オレの気を入れていかせた女・・・純子はそれで女は狂うと言った。そしてそれを美樹が味会えば、覚醒するとも・・・

徐々に美樹の体は治まりつつあった。


「うぅぅぅ」

美樹の頭を持ってこっちに向けた。口は半分開き、少しよだれを流し目は開いているが虚ろで、忘我の表情になっていた。

オレはベッドヘッドに状態を凭れさせていた。そして美樹の頭、首の後ろを揉みほぐすように軽く撫でた。

オレ・・・
「美樹。オレのモノに顔を擦りつけろ」

美樹
「はい」

オレは念を送った。美樹は声を出して応えた。それは普通の反応だった。そしてその通りに美香はオレの股間に状態を乗せるようにしてオレのモノに顔を擦りつけ始めた。そして小さく声を上げた。

美樹
「あーーー龍斉さま」

オレ・・・
「美樹。声を出さずに強く念じてオレに伝えろ!」

美樹・・・
「あー龍斉さまー何でも言う事聞きます」

「龍斉さまの巫女です」

「龍斉さまだけの巫女です」

オレ・・・
「よし風呂に入る」

美樹・・・
「はい。お世話させて下さい」

オレ・・・
「世話はしなくていい」

美樹・・・
「お願いです。一緒に、一緒にお風呂へ」

オレ・・・
「一緒に風呂に入りたいのか?」

美樹・・・
「はい。龍斉さまと一緒に入りたいです」

オレ・・・
「ついて来い」

美樹・・・
「はい」

その間中美香はオレのモノを口に含んで動いていた。美香はどうやら目覚めたようだったが・・・本人はまだその事に気づいていないようだった。

オレはベッドを降りて露天風呂に向かった。鬱蒼とした樹々に囲まれ、風の音だけが聞こえた。外の空気は冷たく気持ちがよかった。

オレは木桶で湯を汲みかけ湯をして露天風呂に入った。

すぐに美樹はやってきた。頭の髪を軽くアップにしただけで体に何もつけないまま入って来た。下腹部の黒々したところだけが白い体と対照的に妖しかった。美樹もかけ湯をしてから湯の中に入って来た。そしてまっすぐにオレに近づいてきた。

美樹・・・
「龍斉さま、私・・・」

オレは知らん顔をした。美樹はオレに体を寄せてきた。

美樹・・・
「私の思いは伝わってるのでしょうか?」

「私は目覚めたのでしょうか?」

「教えて下さい。龍斉さま」

オレ・・・
「ああ。まだ弱いがお前の声は聞こえている。お前は・・・目覚めた」

美樹・・・
「あーーー龍斉さま。ありがとうございます」

美樹は体を強くオレの体に擦り付けるようにしてきた。そしてその顔をオレの顔にこすりつけた。

美樹・・・
「龍斉さまー」

オレ・・・
「この事はまだ誰にも言うなよ!言ったら・・・お前を捨てるぞ」

美香・・・
「はい。誰にも言いませんから、あー捨てないでっ」

オレ・・・
「オレが目覚めさせた女だ。オレが調教する」

美香・・・
「はい。何でも言う事聞きます。何でもしますから捨てないで下さい」

オレ・・・
「ああ」

オレは美樹を抱いてキスをした。美樹の舌を吸った。緩く強く・・・風の音だけが聞こえていた。

翌朝6時・・・

木刀振りを終え、シャワーを浴びた。オレは素っ裸で出てくると部屋には美樹と田崎がいた。

オレ・・・
「田崎にオレの着替えを手伝えと言え」

美樹・・・
「はい」

美樹
「田崎さん。龍斉さまの着替えのお手伝いを」

田崎
「はい」

オレ
「あっ悪いな田崎^^」

田崎
「いえ」

田崎は美樹の前だからかちょっと緊張していた。そしてオレの体をタオルで拭き始めた。そして後ろから絹の長襦袢をオレに羽織らせた。田崎は前に回りオレの足元にしゃがんだ。そしてオレに褌を付け始めた。腰の後ろに手を回した時、オレのモノに顔が少し触れたそれだけでオレのモノは大きく起き上がった。田崎はそれを見ないようにしていた。

オレ・・・
「田崎はキスしたいと思ってるかな?」

美樹・・・
「そんな・・・」

オレ
「美樹。腹が減った^^」

美樹・・・
「はい。ただ今」

オレ・・・
「違うだろう?声を出して言った事には声を出して答えるんだ」

美樹
「はい。申し訳ございません」

オレ・・・
「今のは声を出してないだろう?」

美樹・・・
「あっすみません」

オレ・・・
「コレ自体が調教なんだぞ」

美樹・・・
「はい。気をつけます」

田崎は黙々とオレに狩衣を着せていた。

田崎
「龍斉さま。髪をときます」

オレ
「うん。ありがとう。美樹。朝食はシンプルでいいぞ」

美樹
「はい。かしこまりました」

オレはその場に座った。田崎はオレの後ろに回り、髪をタオルで少し強く拭きながら乾かしていた。そして櫛を使いオレの髪を後ろで束ね、いつものように白いこよりでオレの髪をとめた。

田崎
「終わりました」

オレ
「ありがとう^^」

田崎はテーブルの前にオレの座布団を置いた。オレはそこに座った。すぐに美樹が膳を運んで来た。そしてそれをテーブルに並べた。

オレ
「ありがとう^^」

茶粥に漬け物とノリだけのシンプルなメニューだった。しかしオレはすっかりこのメニューに慣れてしまっていた。当初はお替わりもなかったが、今はお替わりはし放題だった。

オレ・・・
「黙ってないで何か話せ!」

美樹
「はい。田崎さん。お茶の用意を」

オレ・・・
「返事は黙ってする。ひとつひとつ区別しろ!回りの人間に可笑しいと気づかれるぞ」

美樹・・・
「はい。すみません」

オレ
「お茶は熱いのを頼む」

田崎
「はい」

美樹
「食事の後はどうなされますか?」

オレ・・・
「田崎と一発やる!」

オレ
「そうだな。神職の連中とちょっと話をする」

美樹
「では、宮司にもそれを伝えておきます」

オレ・・・
「田崎と一発やると言ってるだろうが」

美樹・・・
「それは・・・困ります」

オレ
「田崎はこの後の予定は?」

美樹
「龍斉さまそれは・・・」

田崎
「えっ?あっはい。社務の方でお手伝いを」

オレ・・・
「何を言ってるんだ?パラレルで違う話題を問題なくこなすんだ。動揺させられても同時に問題なく話をする!」

オレ
「美樹。それってなんだ?」

美樹
「いえ、何でもありません」

美樹・・・
「すみません。気をつけます」

オレ・・・
「なんなら後ろからお前を犯そうか?昨日みたいに」

美樹・・・
「はい。して下さい」

オレ・・・
「事務的に答えるな!嬉しい時は嬉しそうに念じるんだ」

美樹・・・
「はい。申し訳ありません」

オレ
「美樹。お替わり」

美樹
「えっあっはい」

オレ
「ん?美樹はまだ眠いのか?」

田崎
「私が・・・」

オレ・・・
「ほら田崎が変だと思ってるぞ」

美樹・・・
「はい。すみません」

美樹
「いえ。少し大丈夫です」

オレ
「昨夜は遅くまで起きてたのか?」

オレ・・・
「お替わりはお前が持ってくるんじゃなかったのか?」

美樹・・・
「はいただ今すぐに」

美樹
「少し眠れなくて、田崎さん私が行きますから、龍斉さま少しお待ち下さい」

美樹は部屋を慌てて出て行った。訓練初日としてはちょっと厳し過ぎたか?と思ったが、力を得た事に喜んで自分で制御できないままに何かを試すよりは、こうして厳しくやった方が今後の為だと思った。

それはマイヤーの時に感じた。彼女はそれまで自分一人で自分の能力を奔放に使っていた。誰かが聞いているかも知れない。とか同じような能力者と向き合いながら、心で話し合う話題と目の前で声に出して話す話題がまったく別で、尚かつ感情の表し方も違うという訓練をずっとやった。

極端な例で言うと、心で相手を罵倒し怒らせながら、目の前ではお互いを褒め合い笑顔を見せながら、話し合う。そんな極端な事を含めて、同時にやっていた。そしてその程度で混乱していては複数の能力者と同時に別の会話、或は同じ話題での会話は出来ない。相手が必ずしも自分たちの仲間でない時などは特にそうだ。

そしてそういう訓練は、能力者同士しかできない。小林先生でもそれは無理だった。

オレは食事が終わった後、田崎を下がらせて美樹とふたりだけになった。

オレ
「どうだ?難しいだろう(笑)」

美樹
「はい。つい混乱してしまって、申し訳ありませんでした」

オレ
「ははは^^最初は誰でもそうさ(笑)オレと美香、オレと純子、そして3人で同時に別の事を話し合う。それこそ、混乱の極地だ!」

美樹
「そうですか・・・想像もできませんでした」

オレ
「表と裏の感情のコントロール。それと相手の心に入って相手の考えている事を読む。最初はゆっくりと、そしてだんだん要領を掴んだら、そのスピードを上げていく。そんな練習もたわい無ない程度にやってみろ!だけど絶対に相手に気づかれるような言動をするなよ!」

美樹
「はい。」

オレ
「能力者でない人間が強く思った事も聞くつもりが無くても聞こえて来たりする。その場合は大抵怒りの感情だ。口に出して言えない汚い言葉で罵っている声がいっぱい聞こえて来たりする。そんな時は自分でシャットアウトするようなコントロールを身につけないと人間不信になったりもする」

美樹
「はい」

オレ
「普通に暮らすに必要ない力だ。これから苦労するぞ」

美樹
「しっかりと覚悟を持ってやりますので、これからも調教をお願いします」

オレ
「ははは^^セックスの調教は暫くしない(笑)」

美樹
「龍斉さま・・・」

オレ
「不浄な毛があるし・・・」

美樹
「あっすぐに、すぐにキレイにしますから」

オレ
「あはははは(笑)冗談だ」

昨夜のセックスは純子の言うところのレベル1の後いきなりレベル3をした。レベル3のセックスはある意味で治療に近いとオレは思っていた。強烈な快楽を与え半ば狂わせる事で、それまでの精神的な苦労や悩みなどのストレスを脳や意識の中から吐き出させてしまう。快楽に夢中になる事で、心地よい疲労感と安堵感を与える。それはもうたかがセックスの域を超えていた。

オレはいくつかの課題を美樹に与えて赤坂の自宅にテスタロッサを運転して帰った。

▼10時・・・赤坂「自宅」


「お帰りなさい^^」

オレ
「おう^^ただいまー」


「どうしたか?テスタロッサ♪」

オレ
「行き2度エンストさせてしまったけど、帰りは大丈夫だった(笑)」


「あはっ!^^クラッチ深くて合わせにくいと松井さんも言ってました」

オレは居間のダイニングテーブルの前に座った。源はすぐに珈琲を持ってオレの前に置いてくれた。オレは礼を言った。そして自分でフレッシュを入れた。

オレ
「でもあれだな完全にスポーツカーだからあてもなく遊びで乗るのならいいけど、普段運転するのはやはりベンツの方が楽でいいな(笑)」


「そうですか(笑)でも信号で停まるたびに注目を浴びるし、面白いじゃないですか!」

オレ
「そうだな(笑)」

フェラーリ・テスタロッサと言えばその名前の所以かボディーカラーは圧倒的に赤が人気のようだったが、オレはあえて黒にした。もっともそれは黒のテスタロッサが急遽キャンセルが出てタイミング良くこっちへ回って来たからなのだが、もしかしたら松井の工作だったかも知れない。当然ながらオレが乗るよりも松井が乗ってる方がいいのだが(笑)

インターフォンが鳴り源が対応した。玄関に出て行き三浦を招き入れた。

三浦
「おはようございます^^」

オレ
「おはよー^^さっき帰って来た」

三浦
「お疲れさまでした^^研修センターどうでした?」

オレ
「田川らも楽しそうにやってた(笑)昨夜は会議室で宴会もしたしな^^」


「うわーオレも次は絶対参加させて下さい」

オレ
「ああ。合気の演舞や色んな芸を大笑いしながら見せてもらったよ」

三浦
「ムーさん。そういうの好きですね(笑)」

オレ
「銀座で飲むより楽しいぞ^^今度源の裸踊りを見せてもらえ!」


「あははは^^ムーさん。また一緒にケツ出ししましょうよ^^」

三浦
「うわームーさん。私も久しぶりに見たいっ^^」

オレ
「あはははは(笑)」

学生時代の宴会の最後は決まってケツ出しの歌を歌って〆てた。最後にそれをやったのは・・・そうニューヨークでオレが卒業した時のパーティーか?その時、源も三浦も居たが、それらをすべて知っていた初代ニューヨーク・ママ。そして赤坂のビッグ・ママと呼ばれていた沙也乃はオレの元から去り、もういない。

オレは中2階の自室に上がり着替えた。

デスクの向こう側にまわり革張りのハイバックチェアに座った。ここから見ると右が居間からの上がり口、正面のドアの向こうが2階への上がり口、そして左側のドアは桜井のはなれに続く通路。それらが結果的にオープンに見える。

余裕の広さは、ここで打ち合わせが出来るようにソファを置いていたが、結局大人数の打ち合わせは居間で行っている。ここで話をするのはほとんどが1対1で、このデスクを挟んでこっちと向こうで話しをするパターンが多い。

スカイの自室やNYのロフトのように、間仕切りを立ててすぐには見えないようにして・・・ベッドを置くか?ふとそう思った。

ドアがノックされて三浦がトレーを持って入って来た。そしてオレの前のデスクに冷たいお茶を置いた。

オレ
「ここやっぱり改装しようか?」

三浦
「どんな風にです?」

オレ
「落ち着くようにベッドを入れようかと思ってる(笑)」

三浦
「あはっ^^NYのロフトみたいにしましょう^^」

オレ
「うん(笑)」

オレは三浦が持って来た冷たいウーロン茶を口にした。

三浦
「昨夜、私も銀座で飲んでたんです」

オレ
「ほー銀座で?」

三浦
「麻美ママに誘われて、一緒にクラブ「アルファ」に行って来ました。美咲ママもちょうど居て3人で楽しく過ごしました^^」

オレ
「そう^^3人で楽しんだんだ?(笑)」

三浦
「はい^^ちょっとエッチな話もして(笑)」

オレ
「ふーん」

三浦
「レベル1からレベル3までの話になって、あー私はレベル2までしか知らないなーって思ってたら、麻美ママや美咲ママも同じようで、レベル3ってどんなのだろう?って話題で盛り上がってしまいました。」

オレ
「ははは^^女の秘密の話だろう?男のオレにはわからないなー」

三浦
「元々その話は、麻美さんが純子さんから聞いたようなんですよ!もちろん純子さんはレベル3を知っていて・・・それを味わったら狂ってしまいそうだって」

オレ
「あっそう」

三浦
「私はムーさんに始めてレベル2を教えられて・・・ムーさん以外ではそうなった事がありません。レベル3を教えて下さい」

オレ
「アホっ!オレがそんな事できるわけないさ(笑)ましてトモ子相手にすぐに我慢出来なくて我侭してしまうさ」

三浦
「できたら次の機会にお願いします^^」

三浦は笑顔でそう言ったが、目は光っていた。女同士、一般論のように離していてもそれはオレとの関係においての話だという事は誰もがわかっている。そう言う意味では元ギャラクシーの女だったトモ子の女の闘争心に火がついてしまったのかも知れない。

オレ
「他に何かなかったか?」

三浦
「美咲ママが昼間の仕事が忙しくなってきて、困ってるような事を言ってました。たぶんムーさんに相談があると思います」

オレ
「困ってるとは?」

三浦
「はっきりと聞いたわけではありませんが、クラブ「アルファ」を誰かしっかりした人に任せるか?適任者が居なければ処分も考えてるようでした」

オレ
「処分・・・あそこはそれなりに流行ってるだろう?」

三浦
「そうみたいですね。麻美ママももったいないって言ってましたから」

オレ
「宮内さんが川越に入りっぱなしで一灯画廊も今や美咲が継いでるもんなーそう言う意味では「アルファ」にまで手が回らないのは、仕方ないな」

三浦
「ムーさん。私は嫌ですよ!私は秘書から離れませんから」

オレ
「ん?あートモ子をアルファのママにってか?(笑)それもいいかもな^^」

三浦
「ムーさん!!!」

オレ
「ははは^^お前の後の秘書役出来るヤツが居ればいいが・・・居ないからな(笑)」

三浦
「はい^^」

最近でこそ二人で居る時はそれなりの対応をするようになったが、三浦は基本的には女としてはクールな方だった。語学力もあり仕事も出来る。そしてセックスも上手だし、横山や三井ともうまくやっている。三浦に変わる人材は・・・居なかった。

三浦
「沙也乃ママ。元気でやってらしゃるのでしょうか?」

オレ
「沙也乃か・・・」

三浦
「ムーさん。私は秘書ですよね?」

オレ
「どうした?」

三浦
「ちょっとした事でもお知らせする事が・・・ムーさんのお役に立てる事ですよね」

オレ
「ああそうだ。特にマイナスの情報は必須だ!言えっ!」

オレはつい厳しい口調になった。三浦は何か隠している。それを言うか言わないか迷った挙げ句の前振りだった。

三浦
「すみません。沙也乃さんは理恵ママに言われて桜井の女将を辞めたんじゃないかと噂になってるようです」

オレ
「何だとー!」

三浦
「あくまでも女の噂です。理由は・・・わかりません」

オレ
「松井や横山は知ってるのか?」

三浦
「それもわかりません。女の噂ですから知らないのではないかと思いますけど・・・」

オレ
「お前が理恵なら、どんな事を考えてそうする?」

三浦
「はい。桜井の女将は、ムーさんの自宅の隣でいつもムーさんと一緒に居れますし、極秘の話も一緒に聞く事が出来ます。そういう意味では、ムーさんの信頼が厚くママの中のママ。ビッグママと呼ばれてもいい立場です。

私が理恵ママだったら・・・それは許せないと思います。だからと言って自分が桜井の女将に今更なる事は出来ません。それを認めてしまう事になるからです。

であるならば、桜井の女将を自分の思い通りになる人になって貰いたいと思うでしょう。洋子さんを桜井の女将にする為に、沙也乃さんを説得します」

オレ
「説得?」

三浦
「はい。例えば・・・大阪に戻って、ミナミの店の統括責任者になってくれないか?或は北新地も含めて自分の代わりに見てもらえないか?と・・・」

オレ
「・・・」

三浦
「そこまで理恵ママに言われたら、無下には断れません。理恵ママの意を察して沙也乃さんは日本を出たのではないかと思います」

オレ
「誰からも洋子を桜井の女将にと!は言われていないぞ!当の洋子からもだ」

三浦
「私は沙也乃さんが辞めると知った時、次は洋子さんだと思いましたよ!ムーさんの事をよく知っている古い付き合いの人はムーさんが洋子さんを女将にするだろうと思ってたはずです」

オレ
「そうか。理恵が・・・迂闊だった」

三浦
「でしゃばった事を言ってすみません」

オレ
「洋子をはずすか・・・」

三浦
「そんな事・・・出来ません!」

オレ
「お前がやれ!」

三浦
「洋子さんをはずしたら・・・洋子さん。死にます」

オレ
「何でわかる?」

三浦
「そういう人です」

オレ
「じゃー理恵を・・・」

三浦
「あり得ません」

オレ
「お前はギャラクシーの女か?」

三浦
「そうではなくて、理恵ママは特別ですから・・・」

オレは三浦を試すように出来もしない事を言ってみたが、三浦はそんな事は百も承知というような顔で応えた。

キョーコとの事なんか所詮は問題ではなく、やはりそこには理恵の意思が働いていたんだと今頃気づくとは・・・そしてその事に対してオレは理恵に何も言う事が出来ない。いや、理恵がそうしたことにすら怒りさえ覚えなかった。三浦に指摘された通り・・・オレにとって理恵は特別な女だった。そしてその理由は、誰も知らない。理恵本人すら知らないだろう。

三浦
「では失礼します。下に居ますので・・・」

オレ
「うん」

三浦は部屋から出て行った。オレは通路からはなれに入った。そして内線で洋子を呼んだ。すぐに洋子はやってきた。

洋子
「お疲れさまです^^」

オレ
「おう^^」

洋子
「珍しいですね?そちらから入ってくるの?」

オレ
「ん?そう?洋子と一緒に弁当食いたいと思って^^」

洋子
「あらー本当に?^^じゃーすぐに用意を!」

オレ
「ははは・・・よろしく」

洋子は内線を使わずに部屋を出て行った。昼飯を一緒に食うぐらいで・・・そんなに嬉しいそうにするな。

すぐに洋子は仲居を連れて食事の用意をした。そしてオレの正面に座りビールを注いだ。オレは洋子のグラスにビールを継いだ。軽くグラスを合わせてオレはそれを半分程一気に飲んだ。洋子はまたビールを注いだ。そして食事が始まった。

洋子
「真っ黒に陽焼けして、狩衣を付けた姿は色っぽくて精悍でしょうねー^^」

オレ
「ははは^^遊び人の大宮司って有名になっちまってる(笑)」

洋子
「あらっあなたは何をしてても、それが仕事よ^^」

オレ
「理恵みたいな事を言うんだな(笑)」

洋子
「あはっ^^姉は永遠のライバルよ!でもこの間電話で羨ましがられたわ」

オレ
「何で?」

洋子
「桜井に入ってあなたと毎日会えるからって^^」

オレ
「そう」

洋子
「ちょっと気を使っちゃった(笑)私も「ちゃん」を付けて呼ばれたいって」

オレ
「あはははは(笑)」

どうやら洋子は知らないようだった。オレはそこに理恵の怖さを見たように思った。いや怖さというより、それはもう絶対的な女の強さだと思った。理恵は洋子が自分の妹だから桜井の女将にしようと思ったわけじゃない。新しい時代に対応させるためにただ洋子が適任だったから、そう仕向けた。三浦の秘書も容認しているのは、それがオレのためになると思っているからだろう。感情論だけで言うならギャラクシーの女だった三浦をオレの近くに置いておかない。あの佐和子ですらそうなのだから・・・


▼14時・・・クォーリー1Fカフェ


すでに沙耶は店内で待っていた。オレはそこへ近づいた。沙耶は気付いて小さく手を振っていた。

オレ
「相変わらずきれいだから、どこに居ても目立ってる^^ほら、沙耶が笑顔で手を振るから店中の人間が注目してる」

沙耶
「んーユーちゃん。会った早々いっぱい煽ててくれて嬉しいわ^^」

オレは側を通ったウエイターにアイスコーヒーをオーダーして席についた。

オレ
「ほらっ聞こえないか?あんなキレイな女性の相手が、あの男だなんて幻滅って(笑)」

沙耶
「あはっ^^そんな事ばっかり言って(笑)」

オレ
「本当さ^^沙耶の顔を見ただけでドキドキしてるんだから」

ウエイターがすぐにオーダーしたものを持って来た。沙耶はそれを自分の方に引いてフレッシュとガムシロを少量入れストローをさしてオレの前に置き直した。オレはその様子を見ていた。目線を下げた沙耶の表情、その指先、どれもが美しかった。

沙耶
「どうぞ^^」

オレ
「ありがとう^^」

沙耶
「裕子も喜んでたわ^^ユーちゃんとグアムで過ごせて」

オレ
「うん。いつの間にか泳げるようになってたし、ジェットスキーも怖がらずにオレの後ろに乗れるようになった。きっとすぐに海の中にも潜ってこれるようになるぞ!^^」

沙耶
「そう^^」

オレ
「沙耶とは何処へ行こう?」

沙耶
「私は桜井がいいわ^^」

オレ
「何処か旅行する方がいいだろう?」

沙耶
「ううん。何処かの旅館に泊まっても、桜井の「はなれ」よりいいところはないわ!それに露天風呂もまだ入った事無いし^^」

オレ
「ははは・・・桜井ならお安い御用だ^^いつでも来れただろうに(笑)」

沙耶
「これまでは、沙也乃さんが居たからなかなか行けなかったわ」

オレ
「そっか。でもこれからは遠慮しないで、はなれで過ごそうな!^^」

沙耶
「うん。露天風呂すごく楽しみよー^^」

オレはアイスコーヒーのグラスを持ち、ストローに口をつけた。そう言えば、沙也乃とキョーコ、沙耶がひとつの家に住み始めてから、沙耶は自宅にもほとんど来なくなった。と思ったら、やっぱり沙也乃の影響があったようだ。

オレ
「沙耶にも色々気を使わせて悪かったな」

沙耶
「ユーちゃんはそんな事、気にしないでー」

オレ
「ははは・・・」

沙耶
「じゃー今日いい?^^」

オレ
「もちろんさ(笑)またドキドキして来たよ!」

沙耶
「あはっ^^」

久しぶりに沙耶と一緒に過ごす。オレは楽しみだった。そしてオレはその事を誰に遠慮する事なく沙耶を何処にでも連れて行く。

オレたちは店を出て銀座へ行った。三越で買い物をした。沙耶は遠慮したが春夏のシャネルのコレクションをいくつか買った。沙耶はびっくりするほどご機嫌になってオレの腕にじゃれるように絡み付いていた。

多くの男が女のそんな喜びを見たくて頑張っているんだろうなーと思いながら、自分がジジーのパトロンになったような気がした。

そして銀座のステーキ・ハウスで食事をしてから桜井に行った。沙耶は和食よりも旨い肉が好みだった。


▼20時・・・桜井「はなれ」


オレたちは正面玄関から入った。女将の洋子とマネージャーの中野に迎えられ、沙耶と挨拶を交わしてオレたちは洋子の案内ではなれに向かった。

すでに連絡してあったので、テーブルの前には座布団が用意されていた。そして、洋子は丁寧におじぎをして部屋を出て行った。

沙耶
「洋子ママもすっかり女将さんっぽくなったなー^^」

オレ
「そっか?料亭や旅館の女将っていうのは、本来もっと年齢がいってからでないとサマにならないものらしいけどな」

沙耶
「そう?金沢の間島さんもユーちゃんよりひとつ下で女将さんやってるんでしょう?」

オレ
「いや、未だ若女将だ(笑)」

沙耶
「そーなんだ?私、あの人好きよ^^」

オレ
「そう^^」

沙耶
「あんなにキレイな人なのに、すごく男っぽい性格の人でおもしろいんだもの(笑)」

オレ
「そーいや、ミナミでもあいつはうちのバンドにも参加してて、沙耶とは結構接点会ったな?」

沙耶
「うん^^」

廊下から声がかかり、仲居がブランデーセットとワインを持って来た。後はオレがやると言って仲居の須川さんには下がってもらった。オレはワインのコルクを抜いて、沙耶のグラスに注いだ。オレも最初の一杯だけ付き合った。

オレたちはグラスを合わせて乾杯した。

オレ
「一緒に露天風呂は始めてだったよな?」

沙耶
「うん。始めての経験よ^^家に大きなお風呂があってもなかなか二人だけで入るチャンスがなかったものね(笑)」

オレ
「そーだな(笑)奥の部屋に浴衣があるから、タオルを持って行こうか?通路から直接入れるから」

オレたちは先にひと風呂浴びる事にした。奥の部屋で服を脱いだ。沙耶は黒の下着を付けていた。オレはもうそれだけでここで押し倒したくなった。

オレ
「さやーもう脱いでる姿見るだけで我慢出来なくなるよ(笑)」

沙耶
「あはっ^^露天風呂でいっぱい抱いてっ!」

オレ
「あははは(笑)」

オレたちは拡張された洗面所を抜けて外に通じる引き戸を空けた。目の前に露天の岩風呂が湯煙を上げて広がっている。

沙耶
「うわーいきなり露天風呂が^^すっごーい♪」

オレは木桶でかけ湯をしてそのまま湯に入った。沙耶は待っていた。オレが先に入ってしまうのを・・・そしてオレの方を向いた。頭にタオルを巻いただけの姿で立て膝をつくようにしてかけ湯をした。草むらが少し見えている。さすがにプロだった。ちゃんと見せる事を忘れずにそういう仕草をしてくれる。

沙耶は脚を入れゆっくりと入って来た。そして少し深い場所、オレの隣にやってきた。

沙耶
「あーーー気持ちいい^^やっぱり温泉は違うわねー♪

それにすっごくデザインもいいわーさすがユーちゃんねー^^」

オレ
「あははは^^風呂好きだから(笑)」

沙耶
「こんなお風呂に毎日入れたらお肌もピカピカになるでしょーねー^^」

オレ
「一応、桜井の内風呂も、母屋の内風呂もすべて温泉なんだ」

沙耶
「うん^^いいなー(笑)」

オレ
「これからはしょっちゅう来ればいい」

沙耶
「へへへっ^^本気にするぞぉーユーちゃん困っても知らないからねー(笑)」

オレ
「沙耶が出入りしてオレが困るわけないだろー(笑)」

沙耶
「じゃーほんとに来よーっと♪」

沙耶が18歳の時、キョーコと一緒にショーの打ち上げで初めてミルクホールに来た。オレとキョーコと沙耶は3人で一緒に店を出て駅の方へ向かったいた時・・・オレは後ろからいきなり鉄パイプで襲れた。あの時からオレたち3人の運命的な関わりが始まった。

沙耶が二十歳の時、両親が離婚してひとり暮らしを余儀なくされた。その時、オレが住むマンション内に住みたいと沙耶は願ったが、その時空き室がなかった。オレは仕方なく、そこを引き払い、同じマンション内に住めるところに引っ越した。

オレの部屋には常に居候達が居た、横山や浜田、長井、佐伯・・・沙耶は毎日のように日に3度はやって来ては、居候達からも可愛がられて楽しく過ごして居た。

オレは沙耶に一切手を出さなかった。その時すでにキョーコは他の男と結婚していて、沙耶にオレの嫁になるようにと送り込んで来ていたが、オレはそれを信じなかった。そんな中で他の女の事もあり、沙耶は東京のキョーコの元に行った。

その後、キョーコの離婚と時を会わせるように沙耶とも復活した。初めて沙耶を抱いたのもその時だった。オレたちはアメリカへ行く約束をいていた。その矢先・・・オレはひとりで誰にも行き先を告げずに失踪した。

1年半ぶりに帰国しミナミでオレは復活を遂げた。その半年後、再びオレはニューヨークへ行った。今度は失踪ではなく、そこに拠点をつくるために・・・当時すでに沙耶はニューヨーク在住のカメラマンと結婚してニューヨークに住んでいたが、オレたちの拠点であるmar'sBLGに当たり前のように現れて、すぐにそこで気ままに振る舞った。

カメラマンとの離婚騒動の時にもmar'sBLGへ逃げ込んで来た。その後、キョーコがやってくると沙耶は新しくアパートを借りて、キョーコと暮らし始めた。沙耶はしっかりとキョーコをサポートしてニューヨーク生活が楽しく送れるように尽くしてくれた。

そしてキョーコの子供、裕子が英語圏に馴染めず3ヶ月の滞在期間で帰る事になった時、キョーコと一緒に日本に戻った。そしてまた沙耶は新しい男と日本で結婚した。オレは沙耶に対して情けない男を演じた。沙耶はまるで母親のようにオレを宥め、いつでも帰ってくるとオレを慰めた。

そしてオレがニューヨークから戻り東京を拠点にし始めると、沙耶は離婚して三度オレの元に戻って来た。その度に騒動があり、古い仲間の連中はオレと沙耶の関係はまるで昔から男と女の関係でありながらも兄妹のような仲だと思っている。オレとキョーコと沙耶・・・3人の関係は途切れながらも12年も続いていた。

そんな沙耶が誰かに遠慮するなどとは・・・オレの目が行き届かなかった痛恨のミスだった。今年30歳の沙耶。これからも自由奔放に生きて行けばいい。何があってもオレは沙耶を見ている。いつでも保護者のように手を貸す。いくつになっても永遠に愛し合える相手だった。

翌朝・・・一緒に「はなれ」で朝食を摂った後、オレは沙耶と一緒に通りまで行き沙耶をタクシーに乗せて帰らせた。

▼10時・・・赤坂「自宅」

横山
「昨日、沙耶ちゃん来てたんでしょう?」

オレ
「ああ。今タクシーに乗せて帰らせたところだ」

横山
「あははは^^そうでしたか。それはご苦労さまでした」

オレ
「ここんとこ暫く会ってなかったからな、ご機嫌摂るのに苦労した(笑)」

横山
「ムーさんも沙耶ちゃんには弱いからなー(笑)」

オレはソファの前のテーブルに横山が持って来てくれた冷たいお茶に手を伸ばした。そしてそれを飲んだ。

横山
「源と松井さんは川越ですか?」

オレ
「ああ。夕方には戻ってくる予定になってる」

横山
「なるほど、今日当たり源もようやくテスタロッサを運転させてもらってるんでしょうね(笑)」

オレ
「あはははは(笑)あいつも乗りたがってからな」

余りにも松井がいれこんでテスタロッサを自分で手入れしたりするもんだから、源も容易に触れる事さえ出来なかったが、きっと許しが出たのだろうと思った。

オレ
「ところで・・・サンタモニカは何か言って来てるか?」

横山
「いえ、特には聞いていません。以前の予定通り来月には3店舗目の「mangaku 」のオープン予定です。ヨーコさんはもう1年、向こうに居る予定のままですよね?」

オレ
「うん。すっかり気に入ってしまったようだ」

横山
「刈谷はまだ子供が出来ないままですけど、うまくやってるようですよ!」

オレ
「そっか^^」

横山
「沙也乃ママですが、サンタモニカからサンフランシスコへ行くようです」

オレ
「・・・」

横山
「今、片岡に詳細を調べさせています」

オレ
「そっか。シスコかぁ?あそこはいい街だからなぁ?」

横山
「そんないい街ですか!じゃーmar'sBLGでもつくりましょうよ!」

オレ
「あー?」

横山
「mar'sNYのオフィスでムーさんと沙也乃ママ、刈谷、オレの4人で地図や地球儀持って話してたじゃないですか!」

オレ
「ああ。お前がサンタモニカの物件を探して来た時だろう?覚えてるけど、それが何だ?」

横山
「アメリカは西と東とではまったく違う。日本とは太平洋を隔てた西の方が馴染みがある。だからこれからは西にも拠点が必要だって!」

オレ
「だからサンタモニカにしたんだだろう?それがどうした?」

横山
「ムーさん。サンタモニカ・・・嫌いでしょう?だからムーさんの好きなサンフランシスコにもう1度拠点をつくりましょうよ」

オレ
「横山・・・なんかお前隠してないか?」

横山
「隠し事なんてあるわけないじゃないですか(笑)」

オレ
「沙也乃の事で何か知ってるんじゃないか?」

横山
「沙也乃ママは、ひとりじゃ生きていけないでしょ?なんとかしてあげて欲しいなーと思ってるだけです」

オレ
「このバカっ!!!なんで早く言わねーんだ」

横山
「ムーさん。オレもキョーコさんと長いから・・・」

オレ
「ちっ!それでシスコに拠点をつくって、そこのママになって下さい!ってオレが沙也乃に頭を下げてお願いしてくりゃーいいんだなっ!」

横山
「はい^^」

オレ
「そうなると、誰か・・・源。行ってくれるかなー?」

横山
「あいつももう一人前ですから、そろそろ何かを任せてやらないと!まームーさんは寂しいでしょうけど」

オレ
「オレの事なんかどーでもいいんだよ!それより拠点。何がいい?」

横山
「んーやっぱりmar'sNYのように立地のいいところにビルを1棟取得して、1階にカフェでもつくればどうです?」

オレ
「確か、シスコには大きな芸術系大学があったよな?留学生プログラムもそのまま使えるし・・・そうするか?」

横山
「アパート機能を充実させたらそれこそ刈谷やヨーコさんも来ちゃうかも知れませんね」

オレ
「ははは・・・またそんな頭の痛い事を・・・」

横山は沙也乃とキョーコの確執は知っていたようだが、何故桜井を出て行ったかは知らないようだった。しかし、沙也乃がひとりでやっていけない事はわかっているようだった。オレは横山に言われるまで、気付かないふりをしていたように感じてあらためて蒼くなった。

ドイツに行く前に沙也乃に会わなければ・・・と思った。


▼14時・・・超・心理学研究所

小林
「一応潜在能力があるかないかの簡単なテストを受けてもらいました。もちろん本人が希望する限りにおいてですが、結局全員希望という事だったので・・・それが何か問題に?」

オレ
「いえ、特に問題になっているわけではありませんが、結果について誰もが大きな関心を持っているようなので、結果如何で波紋が広がるんじゃないかと思ってます」

小林
「それが誰かに能力があって、誰かにはない!と言ったような結果が出ることで今後の巫女さんたちの間に齟齬が発生するんじゃないかという懸念ですね?」

オレ
「ええ」

小林
「もちろんそれぞれの巫女さんたちのテスト結果は極秘扱いですし、他には漏らしません可能な限りその対策はとっているつもりです」

オレ
「公表しないのは当然ですが・・・可能性のある結果を得た人間はそれなりに自慢したいものでしょうから、自ずとそれは伝播して誰々はこんなテスト結果だった。という話は漏れ伝わってくるでしょうね」

小林
「そーですね。本人が得意げにバラしてしまえば、どうしようもありません」

オレ
「そしたらまたオレはきついセックスをしてくれ!とお願いされる事になるんですね」

小林
「・・・やはりそれを問題に」

オレ
「それと「新しい藤原」って何です?」

小林
「それは宮司が大宮司になり新規に分社もどんどん出来る事を含めて「新しい藤原」という表現を皆さん使ってらっしゃるじゃないでしょうか?」

オレ
「検査や能力開発の中に、思想教育も入ってると言うわけですか?」

小林
「いえ。それは誤解です。少なくとも私には政治的背景はありませんから」

オレ
「では誰が?」

小林
「誰もそういう意図はないと思います」

オレ
「じゃー美樹が勝手に独断的にそう思っていると言うわけですか?」

小林
「たぶん・・・」

オレ
「高瀬婦人はどうです?」

小林
「さー分かりません」

オレ
「・・・」

オレはソファの正面に座る小林氏を目を細めて俯瞰で見ていた。あきらかに小林氏は高瀬婦人の名前が出た瞬間から動揺し始めている。

オレ
「外に出ましょうか?」

小林
「・・・はい」

応接室を出た。そしてビルの外に出て通りの向かいにあるカフェに入った。午後のゆっくりとした時間のせいか店内は客も少なく話をするにはちょうどいい環境だった。オレはウエイトレスにアメリカンコーヒーを2つオーダーした。

オレ
「高瀬婦人の術から逃れられる男はなかなか居ませんよ(笑)」

小林
「ムトーさん。申し訳有りません。。。」

オレ
「いえ、研究対象としても興味深い人でしょうし、あの術は女性にとって必殺技になりますよね」

小林
「おかしいと気付いた時には・・・もう遅くて夢中になってしまいました。でも、あの人は決して悪い人ではありません。むしろムトーさんの為にうやろうとしているんです。

ムトーさんは、藤原、藤堂、高瀬の3家の藤原神社における役割を潰した憎い男。だけど高瀬婦人はムトーさんを愛している。しかしムトーさんは高瀬婦人を嫌っている。

彼女は新しい藤原を巫女たちによって盤石なものにしようと思っているんです」

オレ
「新しい藤原とは何ですか?」

小林
「大宮司を教祖とした神社の枠を超えた宗教団体です」

オレ
「バカなっ!誰がどんな思惑でそんな事を考えているのか知りませんけど、オレがそんなまぬけな話に乗ると思ってるんですか?」

小林
「否定されるのはわかってました。でも必要なんですよ!ムトーさん。

人は皆ひとりでは生きて行けません。そして何かに何処かに安心できる場所を求めています。ムトーさんの仲間、家族と呼ばれているムトーファミリーがそうじゃないですか?

ムトーさんは、自分と関わった人間。男でも女でも何かあれば、結局それに巻き込まれながら困っている人間を自ら血を流して助けようとする。

それは任侠なのかもしれませんし宗教かもしれません。それが今、大きく拡大しようとしている中で誰もその事に気付いてなくて、関わっている人間同士の中に徐々に権力争いが起きようとしています。

脆弱です。あまりにも脆弱で危うい。何かきっちりとした規範を設けて組織化しないとムトーさん自身が苦しむ事になってしまいます」

オレ
「それは小林先生だけのお考えですか?」

小林
「いえ・・・」

オレはウエイトレスが持って来たコーヒーにフレッシュクリームだけを入れてスプーンを使った。

小林
「前野さんは本当にあなたの事を心配しておられます。同時により高いステージで活躍される事を願っています。ムトーさんはこれまで通り自由に、思うように行動されればいい。

でもそのファミリーは、藤原はムトーさんが居なくてもしっかりと留守を守り、拡大する組織を率いていける組織にならなければなりません。

その為には今やらなければ間に合わないのです」

窓の外を見た。半蔵門。伊賀の忍者が徳川家康の側近になり天下を取らせた。そして伊賀の忍者が武士になりそれぞれの家をつくった。オレは徳川家康が嫌いだった。てめえが死ぬ間際に徳川500年の計などと馬鹿げたプログラムをつくり徳川の支配の永遠を望んだ。

オレは織田信長が好きだったし、秀吉が好きだった。個人の欲望だけで生きた人間の方が好きだった。

小林
「ムトーさん。どうかご理解いただけませんか?お願いします」

オレ
「新しい藤原をつくろうとするメンバーは誰です?」

小林
「まだそんな大げさなものじゃありませんが、前野さんと宮内さん、純子さんと高瀬婦人そして私の5人が集まって時々話し合う程度です」

オレ
「松井や横山を口説かなかったのですか?」

小林
「はい。いわゆるムトーさんの側近の方々は・・・ムトーさんと常に一緒に居たい人たちですから、ムトーさんの居ない状況を考えることをしません」

オレ
「あははは(笑)あいつらはバカだから」

オレはコーヒーを口にした。不味かった。こんなコーヒーを出す店は潰れればいいと思った。

オレ
「神道に関わってもいいと思ったのは、煩い事を言わないからですよ!新しい藤原とやらがガチガチの組織になって内部で権力争いが起こるような事になるのなら・・・ヤクザのボスやってる方がまだマシだ。前野さんにもよく言っておいて下さい」

オレは立ち上がった。そしてそのまま店を出た。


■5月18日・・・スカイマンション1110号室


インターフォンが鳴った。オレは自室から出て玄関へ向かった。そしてドアを開いて純子を招き入れた。

リビングの中央のテーブルの前の席を勧めた。オレはキッチンへ立ち冷蔵庫からバドの缶を二つ出して純子の正面に座った。そしてひとつを純子の前に置いた。

純子
「すみません。頂きます」

そう言って純子はバドの缶のプルトップを引き、口にした。オレも同じようにバドを口にして一気に半分程飲んだ。

オレ
「わざわざ大阪までやってきて、何か急用か?」

純子
「はい。今度、京都に帰って割烹料理店をやろうと思いまして、ご挨拶にやってまいりました」

オレ
「そう」

純子
「石本会長にもご理解を得られましたので、これからは京都で過ごそうと思ってます」

オレ
「京都かー南禅寺の湯豆腐はよく食いに行ったなー」

純子
「冬の京都が好きなんですか?^^」

オレ
「京都の神社や寺巡りが好きな女が居て・・・よく一緒に行った(笑)」

純子
「そうですか^^是非またその方と一緒に来て下さい」

オレ
「オレだけの女だと思ってたのに、他の男のところへ行ってしまってもう居ない」

純子
「・・・」

オレはバドを飲み干して缶を軽く潰した。

オレ
「ちょっと行ってくるだけだから、とか言ってもう2年半だ(笑)」

純子
「強い人だったんですね」

オレ
「寂しがりやで、いつもオレの事を考えていてくれて・・・安心して甘えられたのに

そうだ。こっちに来てみろ!」

オレは南側の窓際に行った。電動のブラインドを開いた。純子はオレの隣に立った。オレは純子の肩を持ってオレの体の前に持って来た。

オレ
「ほら足元から窓なんだ。落ちそうな気分になるだろう?」

純子
「うわーほんとだ・・・」

オレ
「高所恐怖症じゃないよな?(笑)向こうを見てみろ!ミナミの街が広がっている。二十歳の時、初めてこの部屋からこれを見た時・・・ミナミが自分の街のように思えた」

純子
「そんなに若い時からここで・・・」

オレは純子の体を自分の体の前において後ろから軽く抱いた。前で純子の手を握りながら顔を純子の髪に近づけ純子の匂いをいっぱい嗅いだ。

オレ
「純子には龍を貰ったのにな」

純子
「・・・」

オレ
「悪いな」

純子
「あーーーユーイチ」

純子は振り向いてオレに抱きつきキスをした。オレも純子をきつく抱きしめた。純子はゆっくりと体を離した。潤んだ目でオレを見た。

純子
「京都に来て!」

オレ
「ああ」

純子
「ちゃんと待ってるから・・・来て」

オレ
「うん」

そう言って純子は部屋から出て行った。オレはそこから動かなかった。そして再び窓の外に目をやってミナミの街を眺めていた。


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